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NVIDIA,65nmプロセスの普及版ハイエンドGPU「GeForce 8800 GT」を発表
今回は,発表に先立って北米で開催された事前説明会「Editor's Day」の内容を中心に,GeForce 8800 GTとはどんなGPUなのかを説明したいと思う。
65nmプロセス製造
基本アーキテクチャには変更なし
情報筋によれば,DirectX 10.1世代の新GeForceは一四半期分後ろに先送りにされたとのことで,G9x世代の開発コードネームはこれに当てられていたのが,急遽付け替えられたという話もある。いずれにせよ,開発コードネームの命名規則は,ここにきてやや崩れてきたといえそうだ。
あらためて述べるまでもないが,GeForce 8800 GTも,もちろん統合型シェーダ(Unified Shader)アーキテクチャを採用。実装された汎用シェーダユニット「Stream Processor」――GeForce 8800のデビュー時は「Streaming Processor」とされていた――を,レンダリング負荷状況に応じて頂点シェーダ(Vertex Shader),ジオメトリシェーダ(Geometry Shader),ピクセルシェーダ(Pixel Shader)に割り当てる仕組みを採用している。
下に示したブロック図を見てもらうと分かるが,GeForce 8800 GTX/Ultraと比較して,各シェーダクラスタが16基のStream Processorと8基のテクスチャユニット,そしてシェーダクラスタ全体で共有されるL1キャッシュからなる基本設計に変更はない。一方,Stream Processor 16基でひとかたまりとなるブロック(クラスタ)は,一つ少なくなっている。
ROP(Rendering Output Pipeline)ユニット数は16基で,グラフィックスメモリインタフェースは256bit。ROPユニットブロックはGeForce 8800 GTX/Ultraと比較して2ブロック少なく,グラフィックスメモリインタフェースもGeForce 8800 GTX/Ultraの384bitより128bit少ない計算だ。なお,GeForce 8800 GTXとの主な違いは表にまとめたとおりになる。
シェーダクロックはシリーズ最高の1.5GHz
GeForceとして初めてPCI Express 2.0に対応
組み合わされるグラフィックスメモリは容量512MB,あるいは256MBのGDDR3 SDRAM。動作クロックは1.8GHz相当(実クロック900MHz)となる。ただし,グラフィックスメモリ512MB版から数週間遅れての登場となる同256MB版では,カードベンダーによる自由なコア&メモリクロック設定が許可されている。
GeForce 8800 GTに関しては「コアクロックやシェーダクロックのマージンはまだまだある」と明言されているので,より積極的な冷却システムと組み合わせたクロックアップモデルなども投入されてくるのではなかろうか。
外部給電は6ピンのPCI Express用ライン×1のみでOK。GeForce 8800 GTX/Ultraが2ラインを要求していたのと比べると,だいぶ省電力化が進んでいることが分かる。
ここで一つの疑問が浮かぶかもしれない。「GeForce 8800 GTX/UltraよりもGPUコアの規模が縮小されているにもかかわらず,なぜトランジスタ数が増えているのか」という疑問だ。
上の表にも示したとおり,GeForce 8800 GTのトランジスタ数は7億5400万。対するGeForce 8800 GTX/Ultraは6億8100万で,シェーダクラスタ1ブロック分の汎用シェーダユニット(=浮動小数点演算プロセッサ)がごっそり抜け落ちたはずなのに,7300万トランジスタも増加している。これはちょっと腑に落ちない。
ただ,この発表をそのまま受け取る業界関係者はほとんどおらず,「GeForce 8800 GTの3Dコアは,実のところGeForce 8800 GTX/Ultraとまったく同じ。“65nmプロセス版GeForce 8800 GTX/Ultra”を,歩留まり向上のため,1シェーダクラスタと2ROPブロックを無効化したバージョンである可能性が高い」という見方が有力だ。ただし,今回のGeForce 8800 GTコアのエリート版(=優良選別品)をベースとした,全機能ブロックが有効な“G92アッパーモデル”に関しては,今のところ何のアナウンスもない。
GeForce 8800シリーズで初めてPVP2を実装
ミドルレンジ以下のGPUとスペックが揃う
GeForce 8600以下のGPUでは,MPEG-2やVC-1,H.264などのコーデックに対応したハードウェアアクセラレーション機能を持ち,さらに映像ストリームの復号アクセラレーションに対応した第2世代プログラマブルビデオプロセッサ「PVP2」を実装していたのに対し,GeForce 8800 GTX/Ultraでは,そうした機能を持たない,GeForce 7と同じ第1世代の「PVP1」の実装に留まっていた。
GeForce 8800 GTにおけるPVP2の実装は,このビデオアクセラレーションにまつわるアンバランスを修正する改良というわけだ。
写真はリファレンスカードからチップクーラーを取り外したものだが,カードの右上部分,外部給電コネクタのすぐ近くにはデジタル音声入力用の2ピン端子も実装されており,HDMI出力をサポートする製品では,サウンド出力も行える可能性を推測できる。
512MB版が249〜259ドル,256MB版は199ドル
GeForce 8800 GTにメガヒットの予感!?
その根拠は価格。NVIDIAによるグラフィックスカードの想定売価は,グラフィックスメモリ512MB版が249〜259ドル程度,256MB版が199ドル前後になるという。秋葉原のPCパーツショップに対する4Gamerの取材によれば,先に販売が始まる前者は,3万円台半ばから後半の価格設定になる見込み。一方の256MBは2万円台での登場は間違いなく,GeForce 8シリーズ最上位機クラスの性能が,この価格で入手できるのは非常に魅力的だ。
NVIDIAはこれまで,“この種”の製品の投入で大ヒットを記録したことが過去に何回かある。直近の例だと「GeForce 7900 GS」。シェーダアーキテクチャ面での革新はまったくなかったが,その時点における圧倒的なコストパフォーマンスで,PCゲームファンの心をわしづかみにしたものだった。
DirectX 10/SM4.0対応ゲームタイトルは,まだその数こそ少ないものの徐々に出てきており,とくに2007年11月下旬に国内発売される「Crysis」は,DirectX 10時代の本格展開を予感させるタイトルとして注目されている。3Dゲーマーを中心に少しずつDirectX 10への関心が高くなりつつある現在は,DiretX 10というゲームプラットフォームの本格始動時期に相当するといえ,その意味でGeForce 8800 GTは待望の製品といえそうだ。パフォーマンスについては速報を別途用意してあるので,興味を持った人はぜひチェックしてほしい。
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GeForce 8800
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