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低価格版のMayaが登場。インディーズ&モバイルゲーム開発向けの「Autodesk Maya LT 2014」本日発売
Mayaというと,トップクラスの3DCG映画が作れてしまうようなツールであって,ゲーム業界でも広く使われているものの,お値段はソフトウェアだけで50万円オーバーと,とても個人で使えるようなものではなかった。法人でも規模の小さなところでは手を出しづらい価格である。
しかし,昨今ではモバイル(携帯電話・スマートフォン向け)ゲーム市場が急ペースで拡大している。モバイルゲームは,インディーズ系開発者や小規模な開発会社で作られていることがほとんどだ。大企業でも小チームかつ低予算で運用されるケースが多く,全体に開発コストを抑える傾向にある。一方で,スマートフォンの性能は今後もますます上がり,リッチなゲームに対する需要も拡大が予想されている。モバイルゲーム開発にも高度な3Dツールが必要になってくるのは必然といえるだろう。
そのような背景もあって,オートデスクではモバイルゲーム開発者に向けて,同社の主力製品からモバイルゲーム開発に必要な機能だけに絞った低価格版の発売を決めたわけだ。
気になる価格は,11万6550円(税込:希望小売価格)だ。オプションで用意されているサブスクリプションがあると,サポートを受けられたり,アップデート費用を抑えたり,自宅使用などのライセンスの運用が柔軟になったりするので,こちらもチェックしてみるとよいだろう。
面白いのは,通常販売のほかに,期間限定のレンタルプランが設定されていることだ。短期開発で,1か月間集中して使うなら,アドバンスのサポート付きでも約1万円とお手軽になっている。ただし,レンタル版の提供開始は本日というわけではなく,追って発表される予定である。
●希望小売価格(以下,すべて税込)
Autodesk Maya LT 2014 11万6550円
●サブスクリプション(保守サービス/年間)
ベーシック 1万7850円
アドバンス 4万950円
●レンタルプラン
ベーシック1か月 7350円
ベーシック3か月 1万8900円
ベーシック12か月 5万8800円
アドバンス1か月 1万500円
アドバンス3か月 2万7300円
アドバンス12か月 8万1900円
気になるのは,「本家のMayaとどの程度違うのか」だが,まず,モデリング部分はMayaそのままのものが搭載されている。ファイル入力は,Mayaのアスキー形式/バイナリ形式,FBX,OBJなどがサポートされているほか,Maya LT専用のMLT形式も用意される。出力はMLTとFBXのみで,FBX出力時にポリゴン数が2万5000個までになるといった制限が加わる。まあ,2万5000ポリゴンあれば,現行の家庭用ゲーム機で動いているくらいのキャラクターは作れそうだが。
そのほか,HumanIK(同社のキャラクターアニメーションミドルウェア)ベースのアニメーション機能が利用でき,ライティングは,一般的なGPUで素直に扱えるディレクショナルライトやポイントライト,スポットライトがサポートされている。テクスチャのベイキングやノーマルマップのようなことも可能だ。
削られている部分を見ると,スクリプトやプラグインが使用不可,さらに特殊効果や物理演算系の処理がごっそり省かれている。ネットワークでの分散レンダリング機能なども搭載されていないが,これはなくても困る人はほぼいないだろう。
逆に強化されているのは,プレビューウィンドウだ。実際の動作にかなり近いものがそのまま表示されるようになっているという。プレビュー精度が上がっているため,実機でのチェックをそう頻繁に行わなくてもよくなり,開発効率は上がりそうだ。
また,あまり使われないような機能が省かれているので,モバイルゲーム開発用としては全体にシンプルで使いやすくなっているとのこと。
かなり購入しやすくなったのは確かだが,元のMayaは本当にプロ用のツールなので,Maya LTでも動作条件などを受け継いでいる。Windows版では,Windows 7/8の64bit版 Professional Edition(Pro)以上のみがサポートされている。ちなみにグラフィックスカードでは,ATI Radeon HD 5770(512MB)/GeForce GTX 460(1GB)が動作検証した下限とのこと。できれば,QuadroやFireProといったOpenGLアクセラレータがあったほうがよいなど,導入のハードルはまだ高めではある。それでも,これまでは個人ではとても手の届かなかったツールが,手の届く範囲になってきたのは素直に歓迎すべきだろう。
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