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“Nehalem+Larrabee+SLI”への壮大な伏線。Skulltrailの全容が見えてきた
SkulltrailでSLIが動作する仕組みが明らかに
SLIライセンス費用は50ドル!?
SLIは,チップセットの種類だけでなく,PCI Expressのトポロジ(接続形態)をチェックして動作条件を判断している。このときPCI Express x16スロットは,それぞれ独立したコントローラに接続したチャネルである必要があるのだ。つまり,“A”というコントローラがあったとして,そこに接続された16レーンを2分割して“A0”と“A1”という,二つの8レーンに分割した状態だとSLIは動作しない。ちなみに,AMDのCrossFireはこのトポロジチェックを行わないため,PCI Expressコントローラを一つしか持たない「Intel P35 Express」などでもサポートできる。
しかしSkulltrailでは,NVIDIA製のスイッチチップによってPCI Express Gen.2 x16を16レーン×2に分割している。本来的な意味でのスイッチチップならGen.1の16レーン×2,マルチプライヤチップならGen.2の16レーン×2になるものの,Skulltrailについて説明したIntelの担当者によって意見が異なるため,どちらなのかは分からない。とにかくその16レーン×2を2組持つことで,PCI Express x16×4スロットを実現している(図1)。
なぜそんな構成を採っているのか,その理由は明らかになっていないが,一つには「PCI Express Gen.2といえども,8レーン×4構成だと,PCI Express Gen.1世代のハイエンドグラフィックスカードを使ったとき,信号レベルでは下位互換となる(=PCI Express Gen.1の8レーン×4として動作する)ため,十分な性能を引き出せない」可能性を指摘できよう。
また,Intel 5400チップセットに対してSLIライセンスを与えてしまうと,Skulltrail以外のワークステーション用マザーボードでもSLIが有効になってしまうため,ライセンス契約の条件としてNVIDIA製スイッチを使用することを求めた可能性もゼロではない。
なお,あるIntel関係者は「Skulltrailは2枚より多くのSLIにも対応できるように設計されている」と明かしており,NVIDIAが開発中とされる第二世代のSLIにも対応する意向のようだ。大手OEM関係者は,Intelはそのため,NVIDIAに対して(Skulltrailプラットフォーム一つ当たり)50ドル前後のSLIライセンス料を払う契約をしているようだと証言する。
「北米では,PCでオンラインゲームを楽しんでいる人が8000万人に上るのに対し,家庭用ゲーム機ベースのユーザーは700万人に過ぎない。この傾向はアジアではもっと顕著で,PCオンラインゲーマー人口の1億1400万人に対し,コンソールのそれは270万人だ」
Otellini氏は,PCゲーム市場のさらなる発展のため,ゲームのマルチスレッド対応を推進すべく,開発環境の整備やパフォーマンスチューニングツールを提供していくことを宣言。その一環としてのSLIサポートとすると,相応の説得力はありそうだ。
そこで,IntelのSkulltrailマザーボードには,サーバー/ワークステーション用のIntel 5400マザーボードにはない特徴が散見される。その一つは,CPU用の電源コネクタだ。Skulltrailでは,CPU用の電源に8ピンコネクタを2個搭載している。ハイエンドゲームPCの開発を手がけるOEM関係者によれば,Skulltrailに組み合わせられるCPUのTDPは130W程度に抑えられるものの,オーバークロック時には250W前後の12V電源が必要とされるため,CPUごとに独立した12V出力を持たせる必要があると,Intelは説明しているという。
現在のところ,CPU用の8ピンコネクタを2個備えた電源ユニットはあるが,筆者の知る限り,2系統の12Vは独立していない。そのため,“Skulltrailプラットフォーム用”には,まったく新しい電源ユニットが必要になるだろうと,同関係者は指摘する。
Nehalem + Larrabeeの伏線となる
Skulltrailプラットフォーム
Intelがこの時期に,デスクトッププラットフォームのフラグシップにPentium III以来となるデュアルCPU環境を復活させた背景には,次世代CPUプラットフォームに向けた環境整備が関係していると,複数の業界関係者は指摘する。そして,その先に見えるのは,Intelが開発中の高性能グラフィックスプロセッサ「Larrabee」(ララビー,開発コードネーム)の存在だ。
実際,Intelのデジタルエンタープライスグループ担当上級副社長であるPat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)氏は「LarrabeeはGPUではない。HTCに特化したプロセッサだ」と言明する。IntelがHavokを買収し,Intelプラットフォームにおけるグラフィックスの物理演算環境を整えようとしているのも,このLarrabeeが後ろに控えているからだ。そして,強力なグラフィックス物理演算機能を活かすためには,パワフルな3Dグラフィックス環境も不可欠となる。その意味でマルチGPU環境が必要で,使うならAMD傘下となった旧ATI TechnologiesのCrossFireよりもNVIDIAのSLIというのがIntelの本音だろう。
現在,Larrabeeのプラットフォームについては一切情報が開示されていない。しかし業界関係者は,Nehalem世代のマルチCPUマザーボードにおいて,LarrabeeをベースにしたアクセラレータをCPUソケットやPCI Expressスロットに差すことで,グラフィックス専用コプロセッサ的な使い方もできるようになると指摘する。つまり,デュアルCPUマザーボードにおいて,片方のCPUソケットにクアッドコアCPU,もう片方にLarrabeeを搭載し,3Dグラフィックス処理にはSLIを用いることで,いま以上にリアリティのある3D&ゲーム物理表現が可能になるというわけだ(図3)。
個人的には,セッションで隣り合ったゲーム開発者が,「マルチコアCPUへの最適化とLarrabeeによる物理演算機能の強化によって,流れ弾や跳弾の影響といった,これまでは実現できなかった,より現実的な要素をFPSのようなシューティングゲームに取り入れられる。MMORPGなら,バックエンドとクライアントの双方でコンピューティングパワーと物理演算パワーが向上すれば,より緻密なグラフィックスでキャラクターを動かすことができるようになる」と興奮気味に語っていたのが印象的だった。
AMDの後追い?
それでも実装レベルで先行するIntel
IDF会場では,「NehalemのアーキテクチャはAMD K8とそっくり」「グラフィックスコアのCPU統合はIntel版Fusion?」「Larrabeeなどのアクセラレータソリューションは,Intel版Torrenzaかい?」と,IntelがAMDの後追いに終始していると指摘する声が多かったのは事実だ。
その一方で半導体業界関係者は,「グラフィックスコアのCPU統合に関しては,IntelがAMDよりも先行している」と指摘する。CPUとGPUで異なる半導体製造技術を採用しているAMDに対し,Intelはチップセット製造にCPUの半導体技術を流用しているため,プロセス技術さえ進化すればシリコンレベルの統合も難しくない,というわけだ。
もちろん,Intelが現時点で採用している45nmプロセス技術はHi-K素材を採用しているため,いままでよりもプロセスの移行が難しいのも確か。しかし,Intelに近い半導体業界関係者は,同社がすでに複数のグラフィックス統合ソリューションについて開発を進めていると指摘しており,“Intel版Fusion”が順調に進んでいることが窺える。さらに“Torrenza的な”アクセラレータの開発&実装においても,開発環境の整備を着実に推し進めているIntelのほうが,実現は早いだろうと見る関係者は少なくない。
Nehalemは2008年後半に,サーバー/ワークステーション市場から製品投入が開始される。現時点のロードマップでは,2008年末頃にハイエンドデスクトップ市場へSkulltrailの後継製品が投入される計画もあるようだ。
一方,グラフィックス統合ソリューションに関しては,2009年前半にモバイルおよびエントリーデスクトップ市場から製品が投入される見通し。時期的には,AMDの最初のFusion世代製品の市場投入とも重なっており,次世代PCプラットフォームへの移行が本格的に始まるのは,どうやら2008年後半からと見てよさそうである。
- 関連タイトル:
Core 2
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