インタビュー
アバターとスキルを分離して,さらなる楽しさを提供。「スキル分離システム」を導入する「ペーパーマン」運営&開発スタッフインタビュー
朝倉脩登氏 |
ジョン・ジェホン氏 |
アバターとスキルが分離したことで生まれる“着せ替え”の楽しさ。今後はアバターのデザインにも注力
4Gamer:
本日は,よろしくお願いします。8月18日に実装される「スキル分離システム」は,ペーパーマンの根幹を大きく変えるような内容だと聞きました。いったい何が起きるのでしょうか。
朝倉脩登氏(以下,朝倉氏):
もともとペーパーマンは,アバターに設定されたステータスの組み合わせで,スキルが発動するシステムを採用していました。しかしこれまで運営してきた中で,プレイヤーの皆さんから寄せられる意見をもとに検討した結果,アバターとスキルを分けたほうが,より“ペーパーマンらしい”内容になるだろうと判断したのです。
4Gamer:
ペーパーマンらしさというと,具体的には,どういったことでしょう?
関 芳樹氏 |
アバターの楽しさですね。アバターを着せ替えていく楽しさをより堪能していただけるよう,運営側で考えていた部分をVoidPointerに提案しました。ゲームの基盤となるメインシステムに関する修正の提案でしたので,長い時間をかけて考え,企画修正などを経ています。
ジョン・ジェホン氏(以下,ジョン氏):
運営側の提案を検討したのちに,公開テスト後の要望などを整理し、再び追加制作と修正などを行ったので,着手してから1年以上かかってますね。
関氏:
その間に公開テストとアンケートをそれぞれ2回ずつ実施しました。その結果をもとに,ようやく実装にこぎ着けたんです。
朝倉氏:
それくらい大きな規模のシステムなんです。ペーパーマンが生まれ変わるというといい過ぎかもしれませんが,確実に楽しみかたが変わることは間違いありません。
4Gamer:
なるほど。それでは,あらためてスキル分離システムの内容を教えてください。
関氏:
これまで,ペーパーマンにおけるスキルは,アバターに紐づいていました。そのため,ゲーム内で人気の高いスキルを選ぼうとすると,アバターの選択肢が限られてしまい,みんなが似たような外見になってしまっていたんです。
そこで今回,一つのアバターを見た目の部分と,スキルを持つ「ペーパズル」の二つに分けました。アバターは「ヘア」「トップ」「ボトム」「靴」「アクセサリ」の全身5か所とセットがありますが,同じ部位同士ならペーパズルを交換できます。これにより,見た目の組み合わせと,スキルの発動をそれぞれ独立させることが可能になったのです。
4Gamer:
つまりプレイヤーは,アバターを購入するときに,外見のみで選ぶことも,ペーパズルのスキルのみで選ぶこともできるようになるわけですね。
ところで,これまでにプレイヤーが購入したアバターはどうなるのでしょうか。
関氏:
見た目とペーパズルの分離した新しい仕様の同じアバターを,無償で提供します。なので,損をすることはないですし,新たに買い直す必要もありません。
4Gamer:
いい方は悪いですが,必要なスキルを発動させる組み合わせを一度作ってしまうと,それ以降は,不要なペーパズルが増えていくことになりませんか。
関氏:
ええ。そこで,ペーパズルを合成できるようにしました。これは,ほかのゲームでいうところのエンチャントに近いイメージで,二つのペーパズルを合成してステータスを変化させることができます。うまくいけば,より優れたペーパズルを作れるでしょう。
ジョン氏:
合成による数値の変動には,一定の法則があります。具体的な合成の組み合わせ公式については公開できませんが,プレイヤー同士で情報交換をして探ってほしいですね。ただし,レベルが高いペーパズルの場合は,失敗する確率が高いので,色々な組み合わせを試してみてください。
4Gamer:
開発に1年以上かかったというお話ですが,最も苦労したのはどんなことでしょう。
ジョン氏:
データ量の多さに泣かされました。単純計算でこれまでの2倍の量ですから,それをどう処理するかが大変でしたね。ペーパーマンの場合,身体の部位ごとにパーツが分かれているので,膨大なデータ量になるんですよ。
その次は,スキルレベルの調整です。実は,インタビューを受けている今も,担当者達が最良のバランスを目指して微調整を続けています。
朝倉氏:
スキル周りは,ペーパーマンのゲームシステムの根幹なんです。どんなタイトルでもそうですが,システムの根幹に大きな変更を加えるケースは滅多にありません。これは,自社開発だからこそ実現できたことでしょう。
また,ペーパーマンがまだ日本でしか展開していないという点も幸いでした。これが各国展開したあとだったら,ローカライズの際に予想される不具合の発生を懸念して,ここまでの変更はできなかったかもしれません。
ジョン氏:
開発と運営が同じ会社で行われているからできたことだと思います。運営側でプレイヤーの声を聞いて,それを開発に速く正確に整理して伝えているので,システムの根幹に関する難しい修正でしたが,プレイヤーの声を無視しないようにがんばりました。
4Gamer:
なるほど。この時期に,実装するというのは前々から決まっていたのでしょうか。
関氏:
当初は,もっと早い時期を考えていました。しかしプレイヤーさんの意見をもとに,ユーザーインタフェースを変更していたら,結果的に時間がかかってしまったんです。夏休みの期間中に何とかしたいとは考えていたので,ホッとしているところです。
一人のプレイヤーとしても,着たいアバターと使いたいスキルのジレンマがありましたから,それを解消できたのは嬉しいです。
朝倉氏:
今はアバターのクオリティが上がっていて,デザイン性の高いものが増えています。今回,スキルを分離したことで,デザインコンテストやコラボレーションといった企画もどんどんできるようになるでしょう。
新キャラクターは女性スパイ! 秋にはラジオチャットの組み替えシステムも実装予定
4Gamer:
そういえば,5月の「ペーパーマン最強決定戦 in ベルサール秋葉原」で,新キャラクター投入の話もしていましたよね。
朝倉氏:
ええ,あのとき発表したシルエットのキャラクターは「フッド」と「ヴァン」というキャラクターで,ヴァンを9月に実装する予定です。
それとは別に,女の子のキャラクターを入れてほしいという要望が多いので,それにお応えしようとも考えています。
関氏:
もう少しお話してしまうと,「スルル」を実装してほしいという要望が多いんです。しかしスルルはお姫様で,ペーパーマンの象徴ですから,なかなか実現が難しいところなんですよ。
そこで別の方向を模索して,今ちょうど,新しい女性キャラのラフデザインが上がってきたところです。
ジョン氏:
今までのキャラクターで表現することが一番難しかったのが,セクシーなタイプです。その要素をペーパーマンの世界で一番自然に、格好よく表現できるようにしようと思います。
4Gamer:
名前や設定は決まっているんですか。
ジョン氏:
彼女は,スルルが持っている魔法の力の秘密を解くために,パピルス王国に潜入したスパイという設定で制作中です。開発スタッフの間では有名な女性スパイの名前から取ったコードネームで呼んでいますが,実際にゲーム内で実装するときには,名前を公募で決めようと運営側と相談中です。
4Gamer:
実装時期はいつ頃になるでしょう。
ジョン氏:
10月くらいから,少しずつ情報を公開していこうと予定しています。年内実装を目標に作業を進めていますが,仮に遅れてもも2011年2月の2周年記念には実装したいですね。
4Gamer:
ペーパーマンといえばボイスにも人気が集まっていますが,声優さんのイメージはもう決まっていますか。
関氏:
まあ,ラフデザインのイメージから,ある程度高めの年齢になるかとは思います。セリフ回しも,今までのキャラとは違ってくるでしょう。そのあたりも含めて,期待していただけるといいですね。
朝倉氏:
ボイス関連でいうと,秋にラジオチャットのカスタマイズができるシステムを実装します。
関氏:
今のラジオチャットはセットごとに内容が決まっていますが,それをセリフ単位で組み替えられるようにするものです。好きなキャラクター,好きなボイスをプレイヤー各自の好みで組み替え可能になります。早ければ9月に実装したいところですが,詳細が決まり次第発表します。
4Gamer:
それは面白そうですね。
あとはまだ企画段階なのですが,アバターをモチーフにしたボイスを提供できないか検討しています。実は,先日,ホラーをテーマにしたアバターを導入したところ,「ホラーっぽいボイスがほしい」という要望をいただいたんですよ。そこで,アバターとボイスを同じテーマで統一してみたら面白いんじゃないかという話になったんです。
朝倉氏:
京都がテーマだったら,「撃ちますえ」みたいなボイスがあったりね(笑)。
関氏:
そこにカスタマイズが組み合わさると,かなり面白くなるでしょう。
ゆくゆくは世界大会の開催も視野に。2010年末から,念願の海外進出が始まる
4Gamer:
それでは,先ほど少し触れた海外展開について教えてください。ペーパーマンといえば,かなり早い段階から海外を意識していたと記憶しています。
朝倉氏:
はい。7月初頭にリリースした通り,シンガポールのInfocomm Asia Holdingsを通じて,東南アジアの全域独占配信権付与契約を締結しました。そのほか,台湾や中国からも具体的な話が来ています。まずはタイからスタートして,2011年3月頃には2〜3か国でサービスしているような状態になります。
4Gamer:
なるほど。開発チームも大変ですね。
ジョン氏:
企画と開発結果に対する修正の要求が一番多いのは日本ですよ(笑)。色々な方法で修正できるように制作しているので,海外からの要請事項に対しても大きな開発リソースを消費しないで,ローカライズ作業が行えると思います。
関氏:
面白いのは,タイで展開するにあたって,ラジオチャットをどうしようかと現地のスタッフと相談したんです。そうしたら,「そのままでいい」っていうんですよ。彼らからすると,日本語は外国語なので,それが格好いいんだそうです。
4Gamer:
ああ,台湾なんかと同じで,日本の声優さんに人気があるんですかね。でも,ラジオチャットが何をいってるのか分からないんじゃないでしょうか。
朝倉氏:
そう思いますけど,それが逆にいいらしいんです。
感慨深いのは,日本でサービスするにあたって,面白いと思って敢えて残した韓国語の「イッチャ!」「ホイッチャ!」も,そのままタイで使われるというところです。
とはいえ,ローカライズ全般は英語ベースで行います。そうなると,北米での展開も視野に入ってきますね。
4Gamer:
それでは,中長期的な今後の展開を教えてください。
関氏:
今回のスキル分離,そしてラジオチャットメッセージに係わるカスタマイズが実装されると,システム的に一段落つきます。ようやく,コラボレーションなどに力を入れる土台が出来上がったので,順次,企画を進めていく予定です。
またペーパーマンもFPSですから,やはり大会はやりたいですね。先日,インターネットカフェでトーナメントを行えるシステムを実装しましたので,それを使った全国大会を考えています。海外展開も決まりましたから,世界大会も夢じゃないですし。
朝倉氏:
その先は,ほかのオンラインFPSタイトルとコラボレーションして交流戦なんかもやってみたいですね。何だかんだいって,ペーパーマンが上手なプレイヤーは,他でも本当に強いですから。
4Gamer:
それでは最後に,ペーパーマンに期待している読者に向けて,メッセージをお願いします。
ジョン氏:
今日お話したスキル分離システムは,現在,安定した内容でお届けするべく,最後の調整を施しています。この実装が終わったら,よりみなさんに喜んでいただけるよう,アバターやボイスのクオリティを上げていきます。ペーパーマンをより長く楽しめるよう尽力していきますので,よろしくお願いします。
関氏:
開発チームが頑張って開発を続けてくれていますので,我々運営チームは,それを効率よく皆さんに提供できるよう,日々考えています。イベントなどもどんどん企画していますので,期待してください。
朝倉氏:
オンラインゲームの運営は,接客と同じです。みなさんの満足している顔をきちんと思い浮かべながらやらないと,内輪だけで喜んで終わってしまいます。かつてゲームポットがやっていたように,(ゲームポットがもっとも得意とする)みなさんが「バカだなー」といいつつも楽しんでくれる,そんな運営を続けていきたいと考えています。
4Gamer:
ありがとうございました。
Void Pointerの面々 |
前身のサイカンゲームス時代から3年を経て,ついに海外展開が実現したペーパーマン。これと前後して,開発チームのVoid Pointerは,ゲームポット本社から移転し,独立した新たなオフィスで作業を続けている。全18名のVoid Pointerには少々広いオフィスだが,今後の海外展開に伴って,人員は続々と増えていく予定だ。ジョン氏は,これまでこの人数で開発を続けてきたことを振り返り,「人間技ではない,ロボット並みの作業スピードだった」と冗談をいい,現在は最高にモチベーションが高まっていると述べる。
そうしたVoid Pointerの勢いに応えて,関氏らもこれまで以上のサービスを提供しようと運営に臨んでいるとのこと。今回のスキル分離システムは,運営と開発が一丸となってプレイヤーの声に応えようと打ち出した積極的な姿勢の現れである。インタビューで明らかとなった新キャラクターの件も含めて,今後のペーパーマンの展開に期待したい。
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