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Razerの新作アケコン「Panthera Evo」はどんな製品か。仕様に込められた思いをマークマン氏に聞いてみた
PS4用アーケードスティックの新製品「Razer Panthera Evo」が公式サイトで発売
日本時間の2018年11月2日,RazerはPlayStation 4用アーケードスティックの新製品「Razer Panthera Evo」を公式サイトで発売した。価格は199.99ドル(税別)。なお世界市場では11月中,日本市場では2018年内の発売予定となっている。
現行製品である「Razer Panthera」の後継となるRazer Panthera Evoだが,その実機展示がアメリカ・ラスベガスで開催された「Evolution 2018」の会場で行われていたので簡単なレビューをお届けすると共に,同社のファイティングゲームプロダクツ&コミュニティリードとして製品開発に関わったマークマンことMark Julio(マーク・フリオ)氏へのインタビューをお送りしたい。4Gamer読者も気になるだろう新製品の仕様や,日本展開についても触れているので,格闘ゲームファンはじっくりと読んでみてほしい。
Razer Panthera Evo製品ページ(英語)
Panthera Evoの仕様と外観をチェック
まず現時点で明らかとなっているPanthera Evoの仕様についておさらいしておこう。判明している新機能としては,新たにヘッドセット接続用となる5mmのアナログピン端子が搭載されること,またケースデザインが変更されて,天面のデザインがカスタマイズが可能になる点が挙げられる。さらにレバーは引き続き三和電子製のものを搭載する一方,ボタン用のスイッチには独自のメカニカルスイッチ「Razer Mechanical Switch」を採用するという。
このほか実機を触らせてもらったところ,ケーブルの着脱機能が廃止になり,収納ボックスに収める形になったことと,現行のPantheraで大きな特徴だった天面の開閉機構がなくなったことが確認できた。
マークマン氏に聞く,「Razer Panthera Evo」のコンセプト
4Gamer:
お時間をいただきありがとうございます。さっそくですが,RazerのアーケードスティックがPanthera Evoでどのように変化するのかをお聞かせください。
Mark Julio氏(以下,マークマン氏):
Panthera Evoを開発するにあたって我々が最初に行ったのは,格闘ゲーマー達からスタンダードとして認知されている,現行のPanthera(※「Razer Panthera」のこと)を振り返ってみることでした。そこからより良い操作感や使い勝手を得られるようにコミュニティからの意見や要望を集め,仕様として落とし込んでいったんです。もちろん,自分専用にカスタマイズできるというコンセプトも忘れてはいません。
4Gamer:
では,現行のPantheraとPanthera Evoを比べたとき,機能的な違いはどこにあるのでしょうか。
マークマン氏:
外観を一目見てもらうだけでも,かなりの違いに気付いてもらえると思います。まず現Pantheraに搭載されていた天面の開閉機構は,Panthera Evoでは廃止しました。もちろんPanthera Evoでもレバーやボタンの変更は可能ですが,底面のネジを外して内部にアクセスする必要があります。なのでメンテナンスのしやすさという意味では,少しだけ手間かもしれません。
4Gamer:
内部へのアクセスビリティを犠牲にすることで,得られたものがあるのでしょうか。
マークマン氏:
開閉機構のために複雑化していた部分がなくなったことで,ケース成型が限りなくシンプルに,そしてより頑丈になりました。また現行Pantheraでは難しかった天面デザインの変更が,Panthera Evoではアクリルパネルを採用したことで容易になったんです。
4Gamer:
なるほど。頻繁にボタンやレバーをカスタマイズしないという人にとっては,確かにそのほうが魅力的かもしれません。
マークマン氏:
それから操作系における大きな変更として,押しボタンが三和電子製から,Razerのキーボードで採用している独自のマイクロスイッチであるRazer Mechanical Switchになりました。これによって指に感じるスイッチの反応が速くなり,高い耐久性を獲得することができています。実際の環境でのテストも,数か月前から始まっていますね。
4Gamer:
実際の環境でのテスト,というと?
マークマン氏:
たとえばRazer所属プロゲーマーであるXian選手や,プロレスラーでもあるケニー・オメガ選手(※新日本プロレスリング所属,現役の格闘ゲーマーとしても活躍中)に使用してもらっているということです。そのほかにも多くの人に協力してもらい,競技主体で信頼性を追求されるプロ選手から,格闘ゲームを日々楽しんでいるカジュアル層まで,幅広い層に受け入れられるものを目指しています。
4Gamer:
今拝見しているサンプルのボタンは黒色ですが,ほかの色に変えたいな,と思った場合はどうすればいいのでしょうか。
マークマン氏:
ボタンのカスタマイズは多くのプレイヤーにとって慣れ親しんだものですから,今すぐにとはいかないまでも,将来的にはカラーバリエーションを提供したいと思っています。
4Gamer:
たとえば三和電子製のボタンケースだけを使って改造する,といったことは可能ですか?
マークマン氏:
マイクロスイッチだけでなく,ボタンケースも独自設計なので難しいでしょう。
4Gamer:
ボタンの配置は,いわゆるVEWLIX配列でしょうか。
マークマン氏:
現行のPantheraもそうですが,似ているけれど厳密には異なる配置ですね。手首部分に傾斜はある一方,ボタンから傾斜までの距離はVEWLIX配列より大きく余裕をもった設計になっているんです。だから手の大きな人も小さな人も,安定してプレイできます。
4Gamer:
レバーはいかがでしょうか。何か変更がありますか?
マークマン氏:
レバーは今までどおり,三和電子の「JLF-TP-8YT」を採用しています。ボタンは色や種類,押下の感触の好みによって変更するプレイヤーが多い一方,レバーは依然多くの人が三和電子製を好んでいます。ですので,多くの人が納得するだろう製品を基本にしました。
4Gamer:
なるほど。そのほかの違いというと,Panthera Evoにはヘッドセット端子が搭載されていますね。これは現Pantheraにはなかった仕様かと思います。
マークマン氏:
そのとおり! ここは大きな変更点です。ヘッドセット端子の追加だけでなく,メイン基板とそこから表に出るコントロールパネル部分にも大きな手を加えました。
現行のPantheraはコントロールパネルのボタンや設定類がタッチパネルで分断されていました。この配置自体は,前モデルとなるAtrox(※「Razer Atrox」のこと)から引き継いだものでしたが,なにぶんPlayStation 3(以下,PS3)やXbox 360時代のものにタッチパネルを後付けした形になってしまっていたのは否めません。そこでPanthera Evoでは,必要とされる機能を再考したうえで,コンパネ類の再配置を行っています。
4Gamer:
それによって,ヘッドセット端子が追加可能になったと。
マークマン氏:
はい。他社製品にはすでに搭載されていますし,今のプレイ環境ではボイスチャットも重要な要素ですから,今回の新規設計で追加することは当然の流れと言えます。また合わせて,天面のコンパネ部に[音量調整]ボタンと[マイクミュート]ボタンを追加しています。これがあればいちいち,システムウインドウを開かなくて済みますからね。
4Gamer:
確かに(笑)。外観から分かる違いだと,これくらいでしょうか。
マークマン氏:
もう一つ,レバーボール調整用のホールというのがあります。
4Gamer:
底面の……この「IMPORTANT」と書かれた部分ですか?
マークマン氏:
ええ。ここはゴムになっていて,取り外すとちょうどレバー軸の真下になっているんです。現行のPantheraをユーザーがどう使っているかを調査したところ,天面の開閉機構は,主にレバーボールの緩みを締め直す目的で使用されるのが大半でした。なので,この穴を用意することにしたんです。ここにマイナスドライバーを差し込めば,内部にアクセスすることなくレバーボールを締め直すことができます。
4Gamer:
ああ,これは便利ですね! これまでの製品には見られなかった工夫だと思います。
マークマン氏:
それから着脱式ケーブルを廃止し,収納型のケーブルボックスを用意しました。これまでの着脱式は,便利だという声をいただく一方で,大会での取り回しを考えると面倒であったり,端子部分に負荷がかかりすぎたりといった問題があって,再検討した結果,今回は一般的なケーブルボックス仕様を選択することにしたんです。
とはいえ改善も施していて,ボックスからケーブルを出す穴を2つ用意しました。一つは多少乱暴に扱っても問題ない大きめのもの,それからもう一つは,ケーブルが固定される小さめの穴です。
4Gamer:
ああ,なるほど。大きい穴からケーブルを出しておけば,筐体が動いてもゲーム機本体が引っ張られることはなさそうです。反対に,従来通りケーブル長が変化しないようにもできると。
マークマン氏:
そのほか廃止した機能としては,天面の開閉機能のほか,PS3への対応も取り止めました。これは昨今のトーナメントシーンにおいて,PS3のタイトルが採用されなくなったことを反映したものです。この機能の需要が今後増えることはないでしょうし,わざわざ切り替えスイッチを確認するのも面倒ですから。
4Gamer:
分かりました。ちなみにこのPanthera Evoはいつ頃に,そしてどんな価格帯で登場するのでしょうか。
マークマン氏:
今回のEVO期間中のフィードバックや,この後のさまざまなプレイヤー,コミュニティ意見を集約し,製品化に漕ぎつけたいと考えています。目標は2018年秋……と言いたいところですが,クオリティを優先するつもりですので,あくまで目標とお考えください。価格は現行のPantheraと同程度(US 199.99ドル)を想定しています。
4Gamer:
日本でも購入できるようになりますか?
マークマン氏:
もちろん! まだ何も決まってないので詳しくは言えませんが,期待していてください。理想は北米と同時発売だけど……今は何とも言えないです(笑)。
4Gamer:
楽しみにしています。ところで,これはPanthera Evoから少し離れた質問になりますが,Mad Catzがなくなった後の,現在のアーケードスティック市場をどう考えているのかを聞かせていただけますか。このEVOの会場にはHORIやVictriX,HitBoxといったさまざまなメーカーの製品が溢れていますし,EVOの公式アケコンはQanbaが手がけています。
マークマン氏:
個人的な意見になりますが,こんな風に多くの製品が世にあって,プレイヤーに選択肢があることはとても良いことだと思っています。HORIの製品は昔から大好きでしたし,Qanbaも幅広い価格帯で製品を展開しています。VictriXは,最初のモデルからSIEのライセンスを取得した製品を発売しています。Mad Catzは残念でしたが,その後を継ぐ製品が続々登場したので,市場全体としてはプレイヤーの期待に応えられているんじゃないでしょうか。
4Gamer:
そんな中で,Razerの立ち位置をどのようにお考えですか。
マークマン氏:
マウスやキーボード,ヘッドセットなどと同様に,Razerにはアーケードスティック専門の開発部隊があります。市場に流通する製品やニーズを細かく分析し,より良い製品を提供できるよう努めているんです。そうした多く選択肢の中から,Razer製品を選んでもらえたらうれしいですね。
4Gamer:
Razerとして,今の199.99ドルという価格帯から外れたアーケードスティック製品というのは考えられないでしょうか。
マークマン氏:
現時点でお伝えできることはありません。一つだけ言えることは,我々はユーザーが何かのきっかけでRazer製品を手にしたその日から,長く大切に使っていただけるものを市場に投入すべく専念しています。なので,今の状態は最適だと思います。
4Gamer:
なるほど。Panthera Evoは現行のPantheraを置き換える製品という理解でいいのでしょうか。並行販売されるのではなく。
マークマン氏:
その点は……実はまだ決まっていません。なにせ,発売日も決まっていないわけだから(苦笑)。ある程度目途がついた時点で明らかになるでしょう。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
さまざまなアイデアが詰め込まれ,よりクオリティに磨きがかかっているというPanthera Evo。その開発はまだ途上ではあるものの,コミュニティの意見を吸い上げたRazerらしい挑戦的な製品になりそうで,期待は高まる。個人的には新採用のRazer Mechanical Switchの押し心地,打鍵感が気になるが……それは今後改めてお伝えしたいと考えている。
あとは現行のPantheraが,日本国内では入荷してもすぐに売り切れてしまうと聞くことが多いだけに,Panthera Evoではその辺りも改善されればと願うばかりだ。
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