インタビュー
Razerに聞くゲーマー向けキーボード新モデル「BlackWidow X」。オリジナルキースイッチは“第2世代”に
Tandon氏いわく,「Razerとして,キーボードに関する質問を日本のメディアから受けるのは初めて」とのことで,とても貴重な機会と言えるが,今回は,ビデオ会議で氏が語った内容をまとめながら,Razer BlackWidow Xシリーズの立ち位置を探ってみたいと思う。
広義のRazer BlackWidowシリーズは,スイッチや配列を無視しても9モデル展開に
冒頭で紹介したとおり,Razer BlackWidow Xシリーズは,現行製品であるRazer BlackWidowシリーズのバリエーションモデルだ。両シリーズをまとめて,本稿では「広義のRazer BlackWidowシリーズ」と呼ぶが,Razer BlackWidow Xは現行のRazer BlackWidowシリーズを一切置き換えることない。いまのところRazer BlackWidow Xシリーズで国内発売が決定しているのは最上位モデルとなるBlackWidow X Chromaだけだが,スイッチやキー配列を無視しても,未発表のものを含めて5製品あるため,フルラインナップが揃ったときには,4モデル展開となっているRazer BlackWidowシリーズと合わせて,現行製品はなんと9モデルとなるわけだ。
しかも,実際にはここにスイッチやキー配列の違いも生じるうえ,Razerの直販サイトである「Razer Store」では旧モデルも販売中だったりするので,ユーザーの選択肢はエラいことになってしまう。
下に,登場予定のものも含めて全製品を書き出してみたが,なんというか,
●広義のRazer BlackWidowシリーズ一覧
- Razer BlackWidow Chroma(国内製品名:Razer Blackwidow Chroma 2014):
169.99ドル(税別),フルキー仕様,フルカラーLEDバックライト(Chroma),キースイッチ2種(Razer Green/Orange),英語/日本語配列 - Razer BlackWidow Tournament Edition Chroma(国内未発売):
139.99ドル(税別),10キーレス仕様,フルカラーLEDバックライト(Chroma),キースイッチ2種(Razer Green/Orange),英語配列 - Razer BlackWidow Ultimate(国内製品名:Razer BlackWidow Ultimate 2016):
99.99ドル(税別),フルキー仕様,緑色LEDバックライト,キースイッチ3種(Razer Green/Orange,Cherry MX Blue),英語/日本語配列(※日本語配列はRazer Green switchのみ) - Razer BlackWidow Tournament Edition(国内製品名:Razer Blackwidow Tournament Edition 2014)
79.99ドル(税別),10キーレス仕様,緑色LEDバックライト,キースイッチ2種(Razer Green/Orange),英語/日本語配列 - Razer BlackWidow X Chroma(国内製品名:同じ)
159.99ドル(税別),フルキー仕様,フルカラーLEDバックライト(Chroma),キースイッチ1種(Razer Green),英語配列(※日本語配列モデルの発売予定あり) - Razer BlackWidow X Tournament Edition Chroma(国内未発売):
129.99ドル(税別),10キーレス仕様,フルカラーLEDバックライト(Chroma),キースイッチ1種(Razer Green),英語配列 - Razer BlackWidow X Ultimate(国内未発売):
89.99ドル(税別),フルキー仕様,緑色LEDバックライト,キースイッチ2種(Razer Green,Cherry MX Blue),英語配列 - Razer BlackWidow X(国内未発売):
79.99ドル(税別),フルキー仕様,バックライト非搭載,キースイッチ1種(Razer Green),英語配列 - Razer BlackWidow X Tournament Edition(国内未発売):
69.99ドル(税別),10キーレス仕様,バックライト非搭載,キースイッチ2種(Razer Green,Cherry MX Blue),英語配列
いくら何でも種類が多すぎるのではないかという気もするが,この点についてTandon氏は,「Razerがゲーマーに新しい選択肢をもたらすことを最も重視していることの現れ」だとしていた。
とくに重要な点としては,オリジナルのRazer BlackWidowが装備するトップカバーを,Razer BlackWidow Xでは省略した外観になっていることが挙げられよう。Corsair製のゲーマー向けキーボード風な見た目になっているとも言えるが,この点について,Tandon氏は以下のように述べていた。
「Razer BlackWidow Xシリーズでは,トップカバーを取り除いて,『キースイッチをマウントしているミリタリーグリードの鉄板』をそのまま外装にしました。この鉄板は従来のRazer BlackWidowでも採用しているものですが,チップカバーを取り除いて鉄板自体を外装にしたことで,よりシンプルでクリーンなデザインに仕上げることができたと考えています。」
つまり,キートップが本体から浮いた……というよりも,既存のRazer BlackWidowシリーズにあったトップカバーを取り去った結果としてのルックスというわけである。
実際には,既存のRazer BlackWidowシリーズとキートップの高さはほとんど変わらないそうだが,ただ,まだ詳細は明かせないと断ったうえで,「Razer BlackWidow Xシリーズでキートップの高さが気になるユーザーのため,専用のパームレストを用意する計画があります」ともTandon氏は述べていた。
いずれにせよ,実際のキートップを高く感じるかどうかは,いずれ4Gamerでお伝えできるのではないかと考えている。
さて,Tandon氏が言う「ミニマル化」は,外観だけでなく,さまざまな部分に及ぶそうだ。いわく「マクロキーの省略や,(従来のRazer BlackWidowシリーズにあった)USBやサウンドのパススルーケーブルも省いています」とのこと。結果として10ドルほどのコストダウンに成功し,「ゲーマーにとって買いやすい価格を実現できました」とのことである。
マクロキーを搭載すること,とくにメインキーボードの左側へ搭載することにゲーマーの間で賛否が分かれることはあらためて説明するまでもないと思うが,であれば両方用意すればいいのではないか,ということのようだ。
また,キートップの刻印は,Razerのコーポレートロゴ刷新に合わせて,そのロゴで採用されているフォントに近い,細身の「New Razer Font」へ切り替わった。現時点で詳細は不明だが,日本語配列モデルでも新しいフォントを採用するとのことである。
もう1つ,キートップが外装から浮いたことを受け,Razer BlackWidow Xシリーズでは,バックライトがキートップから盛大に“漏れる”ようになった。これをRazerでは「華やかなバックライト」としてアピールしていくという。
ちなみに,Razerはプロゲーマー向けとしてバックライトを装備しないモデルも用意しているが,バックライトがゲーマー向けキーボード市場に広まったことについては肯定的に見ているようだ。
とくにバックライトLEDをカスタマイズする「Razer Chroma SDK」によって,バックライトが単なる装飾用だけでなく,ゲームプレイに合わせた表示などを行えるようになり,実際に「Chroma Workshop」から設定をダウンロードできることは,バックライトの普及に大きく影響を与えたのではないかと,Tandon氏は分析していた。
Razer Mechanical switchは今後,Razer専用ラインでの製造に
既存モデルのレビュー記事などでも取り上げているとおり,Green switchは軽いクリック感と大きめの音を伴い,Orange switchはストレートな打鍵感が特徴だ。Tandon氏によると,Razer Mechanical Switchはすでに2億5000万個を生産しており,「ゲーマー向けのキースイッチとしては世界一の生産数を誇ります」とのことである。
Razer Mechanical Switchの公式なスペックは以下のとおりだ。
- Green switch:押下圧50g,アクチュエーションポイント1.9±0.4mm,リセット距離0.4mm
- Orange switch:押下圧45g,アクチュエーションポイント1.9±0.4mm,リセット距離0.05mm
「我々がプロゲーマーから得たフィードバックを分析してみると,アクチュエーションポイントだけでなく,リセットポイントが重要ということが分かりました。たとえばキーを押してもリセットされずにいれば,いつまでもオフにならず,こうした挙動がゲームプレイに大きな影響を与えることになります。
Razer Mechanical Switchは,アクチュエーションポイントだけでなく,リセット距離もゲーマー向けに最適化してある点が大きな特徴です。プロゲーマーからもその点が高く評価されていますね」。
50g,45gというバネ圧についても同様で「軽ければいいというものではありません」と,Tandon氏は競合他社の軽いバネを一蹴する。「軽すぎればタイプミスが増え,重すぎれば速くタイプできません。Razerとしては50g前後がベストなバネ圧だと考えています」とのことである。
さて,そんなRazer Mechanical Switchでは,1つ,重要なアップデートが入った。Razer Mechanical Switchは当初,スイッチメーカーであるKaihua ElectronicsからのOEM供給を受けていたが,Razer BlackWidow Xシリーズのタイミングからは,Razerが自社設計した専用の製造ラインを使って生産する製品に切り替えたのだという。
その製造ラインをどこに置いているか,Tandon氏は明らかにしなかったが,自社設計した製造ラインを持つことによって耐久性や品質が向上しており,また,今後,製造能力を引き上げるときにも,製造ラインの移転などを行いやすくなるそうだ。
「Razerでは専用の製造ラインを設計して,それを使ってRazer Mechanical Swtitchを製造する形に切り替えました。これにより,Razerが設計時に想定していた品質基準を,製造時に厳格に守ることができるようになり,(当初の6000万回を超える)8000万回という打鍵に耐えられる強度を実現できるようになっています」(Tandon氏)。
よりシンプルなRazer BlackWidow Xの投入で,盤石の体制を狙うRazer
本稿の序盤でも触れたとおり,広義のRazer BlackWidowシリーズは,スイッチの違いや言語配列の違いも加味せずとも,9製品に達してしまう。正直,ここまで増えるとどれを選ぶべきか迷うところだが,Tandon氏の推奨はとてもシンプルだ。「多機能を求めるパワーユーザーには既存のRazer BlackWidowが最適。同等の使い心地を手軽に使いたいユーザーにはRazer BlackWidow Xをお勧めしたい」という。実際,シリーズに与えられた「X」の文字の意味そこにあり,よりシンプルになった製品ラインナップを示しているとのことのことだった。
定番製品である広義のRazer BlackWidowで選択肢をさらに広げてより多くのユーザーにリーチし,市場における立場をさらに盤石なものにしようということなのだろう。その点からすると,ニュース記事でも指摘したとおり,価格の内外価格差が大きいのはちょっと気になるところだが……。
なお,気になる日本語仕様だが,現在のところ日本語配列モデルの市場投入が明らかになっていないRazer BlackWidow Xでも,拡充を前向きに検討しているとTandon氏は語っていた。話しぶりからすると,国内で人気の高い10キーレスモデルで日本語配列の製品が登場する可能性はかなり高そうな気配があった。
今後のアナウンスに期待が持てそうである。
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広義のRazer BlackWidowsシリーズ製品情報ページ(英語)
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