日本時間2015年11月2日21:01,AMDのGPU部門であるRadeon Technologies Group(以下,RTG)は,「Catalyst」に代わる新たなドライバソフトウェア「
Radeon Software 」を発表した。
Catalystでは,「
Catalyst 15.7 」のように,「年.月」表記がなされ,これが事実上のバージョン表記となっていたが,Radeon Softwareでは,
Radeon Software (メジャーバージョン名) (マイナーバージョン名としての年.月)
という階層構造に切り替わる。メジャーリリース第1弾のバージョン名は「Crimson Edition」だ。
RTGは,Radeon Softwareを2015年中にリリースするとしているが,仮に11月中の公開になるとすれば,その表記は「
Radeon Software Crimson Edition 15.11 」ということになるだろう。
Radeon Softwareにおける新しい命名規則。メジャーバージョンのところにある「2015/2016」なる表記の意味はよく分からないが,メジャーバージョンは,年単位か,それに近い単位で更新されるということなのかもしれない
設定ツールはタイルベースのモダンなデザインに刷新。起動も速く
Radeon Softwareでは,Catalystにおける「Catalyst Control Center」(以下,CCC)的な設定ツールも刷新される。シンプルに「
Radeon Settings 」(※FirePro搭載環境では「FirePro Settings」)と名付けられた新世代設定ツールは,C++ベースのアプリケーションフレームワークである「Qt」(キュート)を用いて1から開発したものになるという。
実際,CCCという過去のしがらみから解き放たれたRadeon Settingsの見た目は,タイルを多用したモダンなものになっている。また,起動速度はCCC時代と比べて圧倒的に向上しているそうで,このあたりにも,1から作り直したことのメリットが出ていると述べていいだろう。
Radeon Settingsは,3ペイン構造になっている。最上段の[Gaming][Video][Display][Eyefinity][System]ボタン(=タイル)を選択すると,中央ペインで詳細を設定できる仕様だ
AMD Performance Lab調べとされる,CCCとRadeon Settingsの起動時間比較。「E-350」APUを搭載し,64bit版Windows 10がインストールされたHP製デスクトップPC「Pavilion DM1」で,「Catalyst 15.8 Beta 」を導入すると,CCCの起動には8秒かかったのに対し,Radeon Software Crimson Editonを導入するとRadeon Settingsは0.6秒で起動したという
ちなみに最下段の[Update]ボタンでは,現在導入されているドライバと,それが最新かどうかなどを確認できる。[Preference]ボタンを押せば,システムトレイに表示させるかなどといった,細かな設定が可能だ。[Notifications]ボタンを押すと,エラーなどの通知を確認できる
Radeon Settingsには,いくつか新要素も入る見込みだ。
最大のトピックは,新設となる「
Game Manager 」で,最上段の[Gaming]ボタンをクリックすることで入れるGame Managerでは,ゲームごとにドライバレベルのグラフィックス設定を行えるだけでなく,GPUオーバークロック機能「Overdrive」も,ゲームごとに設定できるようになる。
Game Manager。汎用的な設定とは別に,タイトルごとの設定も行えるようになった。この点ではGeForce Driverに並んだということになるだろう。ゲームタイトルは,PCにインストールされているものが自動的にリストアップされるが,手動で追加することもできる
ゲームごとの設定項目。アンチエイリアシングやテクスチャといった定番の設定とは別に,テッセレーションモードやフレームレートターゲットの設定も行えるようになっている。“軽い”ゲームタイトルでは,フレームレートターゲットを設定することで,消費電力の低減を容易に行えそうだ
ゲームごとのオーバークロック設定が可能になった,新しいOverdrive。ターゲットとなるGPU温度やファン回転数設定も行えるようである
接続されたディスプレイごとの個別設定が可能になった「Display」メニュー
[Display]ボタンをクリックすることで設定できるディスプレイ周りも,かなり便利になるようだ。スライドによれば,Radeon Settingsでは,接続されているディスプレイごとに,AMD独自のディスプレイ同期技術である「FreeSync」の有効/無効や,内部的にディスプレイ解像度をはるかに超える高解像度でレンダリングを行っておき,表示する時点で縮小することによって映像の高画質化を図るSuper Sampling(スーパーサンプリング)をドライバレベルで実装した「Virtual Super Resolution」の有効/無効,画面の拡大縮小設定を,個別に行える。仕様の異なる製品によるマルチディスプレイ構成を採用しているユーザーからは,熱烈に歓迎されそうだ。
そのほか,ビデオ再生関連と,複数のディスプレイを1つのデスクトップとして扱う「Eyefinity」では,操作のシンプル化が進み,さらに,システム情報も分かりやすくなったという。
左から順にVideo,Eyefinity,System各メニューのイメージ
AMDによるRadeon Settingsまとめ
退職済みの人も含む複数のAMD関係者から筆者が聞いたところによれば,過去何度かあったリストラの影響で,Catalystの全容を把握しているソフトウェアエンジニアは,もはや1人もAMDに残っていないとのことだ。その状況でCatalystやCCCを拡張していくという作業が難しいものになることは容易に想像できるだけに,RTGの誕生に合わせてすべてがリセットされるというのは,大変好ましい動きであるように思う。
ドライバソフトウェアの常として,最初はいくらかトラブルもあるだろうが,個人的には,Radeon Softwareの将来にかなりの希望を抱いている。エンドユーザーが試せるようになる日を楽しみに待ちたい。
Radeon Software Crimson Editionアナウンストレイラー
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