テストレポート
ともに最大15%の性能向上を謳う「GeForce 310.33 Driver Beta」と「Catalyst 12.11 Beta」。その効果を簡単にチェックしてみた
第5回は,Windows 8とWindows 7の間で3D性能に違いがあるのかないのか,ハードウェアとドライバの構成を揃え,OSだけを切り替えることで比較するというものだったのだが,テストにおいて,本題とは異なる,興味深いスコアが得られた。「余談」という形で記事内に書き加えたように,Windows 8環境下だけでなく,Windows 7環境においても,「GeForce Driver」と「Catalyst」の最新β版で,過去のドライバとは異なる,良好なスコア傾向を確認できたのだ。
このとき用いたドライバは,「GeForce 310.33 Driver Beta」と「Catalyst 12.11 Beta」。いずれも最大15%の性能向上が謳われているものだ。
では実際のところ,従来のドライバと比べて,これら公式最新β版ドライバでは,性能がどの程度向上しているのか。簡単にテストしてみたので,その結果をお伝えしたい。
GeForce 310.33 Driver BetaのNVIDIAコントロールパネル |
Catalyst 12.11 BetaのCatalyst Control Center |
GeForce 310.33 Driver Beta&Catalyst 12.11 Betaをそれぞれ直前の公式最新版と比較
4GamerではGeForce DriverとCatalystが公開されるたびに記事でまとめているため,すでにチェック済みという人も多いだろうが,念のためおさらいしておこう。
まず,NVIDIAから北米時間2012年10月23日に公開されたGeForce 310.33 Driver Betaは,GeForce Driver Release 310世代初のグラフィックスドライバ
という位置づけになっている。
Release 310世代は,GeForce 6&7シリーズを「レガシー製品」と位置づけ,そのサポートを打ち切った一方,主要タイトルに向けた性能最適化がなされているのが特徴だ。4Gamerのベンチマークレギュレーション12.2で採用しているタイトルを例に挙げると,「The Elder Scrolls V: Skyrim」(以下,Skyrim)は公式の高解像度テクスチャパックを導入していることもあって,メモリバス帯域幅に弱点を抱えるKepler世代のGPUでは今ひとつ振るわないのだが,そのSkyrimにおいて,一世代前のRelease 304世代(Release 304〜306)と比べると最大約11%の性能改善効果が得られているという。
●GeForce 310.33 Driver Betaの入手先
→32bit版Windows 8・7&Vista用GeForce 310.33 Driver Beta(162MB)
→64bit版Windows 8・7&Vista用GeForce 310.33 Driver Beta(209MB)
→Windows XP用GeForce 310.33 Driver Beta(141MB)
→ノートPC向けの32bit版Windows 8・7&Vista用GeForce 310.33 Driver Beta(165MB)
→ノートPC向けの64bit版Windows 8・7&Vista用GeForce 310.33 Driver Beta(213MB)
一方,AMDから北米時間10月22日に登場したCatalyst 12.11 Betaは,Graphics Core Nextアーキテクチャ採用のRadeon HD 7000シリーズに向けて性能最適化がなされているというのがウリだ。やはり4Gamerのベンチマークレギュレーション12.2を例に紹介してみると,GeForceだけでなく,Radeonにも最適化されていながら,実際のベンチマークスコアではGeForceに大きく水をあけられていた「Battlefield 3」(以下,BF3)で,10〜15%程度の性能向上を見込めると,AMDは謳っている。
ちなみにAMDは当初,Catalyst 12.11 Betaを「Beta3」として公開したが,公開後1日で,CrossFireX環境における「Medal of Honor: Warfighter」の問題に対処した「Beta4」へ差し替えた。今回テストに用いるのもBeta4版のほうだ。
●Catalyst 12.11 Betaの入手先
→32bit版Windows 8向けCatalyst 12.11 Beta(93.6MB)
→64bit版Windows 8向けCatalyst 12.11 Beta(143MB)
→32bit版Windows 7&Vista向けCatalyst 12.11 Beta(134MB)
→64bit版Windows 7&Vista向けCatalyst 12.11 Beta(184MB)
※Catalyst 12.11 Betaは,リンク先でページを下方向へスクロールさせたところからダウンロード可能。ノートPC用およびWindows XP向けドライバは公開されていない
というわけでテストのセットアップに入るが,用いたシステムは表のとおり。OSはWindows 7で,比較対象のグラフィックスドライバは,一世代前の公式最新版となる「GeForce 306.97 Driver」と「Catalyst 12.8」だ。
GPUは,スコアに最も大きな違いが出ると思われるハイエンドGPUから,「GeForce GTX 680」(以下,GTX 680)と「Radeon HD 7970」(以下,HD 7970)をピックアップ。ハイエンドGPUに合わせて,テスト解像度は1920×1080ドットと2560×1600ドットを選択している。
なお,時間の都合もあり,テストに用いるアプリケーションは,前出のレギュレーション12.2から,「3DMark 11」(Version 1.0.3)とBF3,そしてSkyrimの3つに絞っている点はご容赦のほどを。また,今回示したテスト環境は,冒頭で紹介したWindows 8&7比較記事とまったく同じものであるため,GeForce 310.33 Driver BetaとCatalyst 12.11 Betaのスコアは当該記事より流用していることもあらかじめお断りしておきたい。
もちろん,CPU「Core i7-3960X Extreme Edition/3.3GHz」の省電力機能である「Enhanced Intel SpeedStep Technology」と自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」を,マザーボードのUEFI(≒BIOS)から無効に設定している点も,先のテスト記事と同じだ。
Skyrimでの弱点を克服したGeForce以上に,
総合的にスコアを伸ばすRadeonが目を引く
以下,ドライバのバージョンを区別するため,GPU名の後ろに括弧書きで,「GTX 680(310.33)」「HD 7970(12.11)」といった具合に,ドライバのバージョン名から数字部分だけを付記しつつ,順に見ていこう。
グラフ1は3DMark 11の結果となるが,GTX 680(310.33)のスコアは,GTX 680(306.97)とほとんど同じ。Release 310世代において3DMark 11における性能向上は言及されていないので当たり前の結果になったとはいえるかもしれない。
一方のHD 7970(12.11)は,HD 7970(12.8)に対して7〜10%程度の性能向上が確認できる。GTX 680とのスコア差を目に見える形で詰めてきたのは評価すべきだろう。
HD 7970(12.11)の大躍進を確認できたのが,グラフ2,3にスコアをまとめたBF3である。これといったスコアの向上が見られないGTX 680(310.33)と比べると,「低負荷設定」の1920×1080ドットでHD 7970(12.8)の平均84.8fpsから平均114.7fpsへと一気に35%もスコアを伸ばしたのは衝撃的だ。
そのほかのテスト条件でもHD 7970(12.11)は良好なスコアを示し,GTX 680と好勝負を演じられる状況になっている。これは素晴らしい。
一方,Release 310世代でスコアの最適化が謳われているSkyrimにおいては,GTX 680(310.33)がきっちりとスコアを伸ばしてきた。グラフ4,5を見ると,GTX 680(310.33)は,GTX 680(306.97)に対し,「標準設定」で約5%,「Ultra設定」では10〜12%程度のスコア向上を見せ,これまで置いて行かれていた後者で,HD 7970との差を詰めているのが分かる。2560×1600ドットではさすがにメモリ周りの有利不利が出てしまう――GTX 680は256bitメモリインタフェースなのに対してHD 7970は同384bit――ものの,よりユーザーの多い1920×1080ドットで弱点を克服してきた点は高く評価すべきだろう。
念のため,消費電力とGPU温度に違いがないかどうかもチェックしておきたい。
まずは消費電力からだが,ここではゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイの電源がオフにならないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時とすることにした。
測定にはいつもどおりログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いている。
その結果がグラフ6だが,いずれもドライバのバージョンによる顕著な違いはない。GPUコアの稼働率などに変化はないと述べてもいいのではなかろうか。
なお,HD 7970は,無操作時にディスプレイ出力が切れるよう設定しておくと,長く放置したときに「AMD ZeroCore Power Technology」が機能してロングアイドルモードへ移行し,GPUの消費電力が低下するのだが,そのときのスコアもHD 7970(12.11)が83W,HD 7970(12.8)が84Wと,とくに違いはなかった。
3DMark 11の30分間連続実行時点を「高負荷時」とし,アイドル時ともども,TechPowerUp製のGPU情報表示ツール「GPU-Z」(Version 0.6.5)からGPU温度を取得した結果がグラフ7となる。
テスト時の室温は24℃で揃え,システムはPCケースに組み込まず,いわゆるバラック状態でテストを行っているが,ここでも大きな違いはない。ファン回転数の極端な変化も(筆者が確認した限り)ないと,述べていいように思われる。
GTX 680の対抗馬に躍進したHD 7970
いずれの新型ドライバも魅力的
とくに衝撃的なのはCatalyst 12.11 Betaのほうで,これによってHD 7970はGTX 680といい勝負ができるようになった印象だ。一方のGeForce 310.33 Driver Betaは,「宣言どおり,きっちりと性能を伸ばしてきた」といったところで,とくにメモリ周りの弱点から性能が上がらなかったSkyrimで10%以上もの性能改善を果たしてきた点は賞賛に値しよう。年末商戦に向けて,GeForceとRadeonの戦いはまた面白くなってきたと述べてよさそうだ。
GeForce 310.33 Driver BetaとCatalyst 12.11 Betaはいずれも公式β版という扱いで,ドライバの導入はあくまでも自己責任となる。その点は注意してほしいが,普段は公式最新版しか導入しないというポリシーの人でも,今回ばかりは試してみていいのではなかろうか。そう言えるくらい,今回のβ版ドライバは魅力的である。
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