テストレポート
NVIDIAがなぜか語らない,ForceWare 80.xxのデュアルコアCPU対応の真偽を検証する
先日お届けした80.40βの記事では,デュアルコアCPUに最適化されたと判断できる結果は得られず,同じく「こちら」でお届けした記事におけるNVIDIAの回答でも,近い将来のデュアルコアCPU最適化は否定されている。
しかし,ハードウェア情報サイト「VR-Zone」に掲載された81.26βでのベンチマーク結果は,このドライバにデュアルコアCPU最適化が施されていることを示しているのである。実際のところ,どうなのだろうか。
そこで81.26βを使ってベンチマークテストを行い,真偽のほどを確かめてみることにしよう。テストの条件は下に示したとおり。VR-Zoneでの検証と異なるデュアルコアCPU,Athlon 64 X2 4800+/2.4GHz(Toledoコア。以下4800+)ベースのシステムを用意し,ベンチマークソフト「3DMark05 Build1.2.0」と,実ゲームである「Far Cry」「DOOM 3」で,現行の正式版最新ドライバ「ForceWare 78.01」(以下78.01)と比較しつつ,パフォーマンスを確認した。
テスト環境:
CPU:Athlon 64 X2 4800+(Toledoコア),Athlon 64 4000+(San Diegoコア)
マザーボード:ASUSTeK Computer A8N-SLI Deluxe(nForce4 SLI,BIOS 1011)
メインメモリ:PC3200 DDR SDRAM 512MB×2(2.5-3-3-8)
グラフィックスカード:ASUSTeK Computer EN7800GT/2DHTV/256M(GeForce 7800GT,グラフィックスメモリ 256MB)
HDD:Seagate Barracuda 7200.8 200GB(7200rpm)
OS:Windows XP Professional+SP2
チップセットドライバ:nForce4 AMD Edition 6.66
ディスプレイドライバ:ForceWare 78.01,ForceWare 81.26β
また参考のため,4800+と同一のクロックで動作し,L2キャッシュ容量も同じシングルコアCPU,Athlon 64 4000+/2.4GHz(San Diegoコア。以下4000+)を用意して,78.01適用時に同一のテストを行っている。
■明らかに二つのCPUコアが使われた動作状況
3DMark05 Build120の結果から解説しよう。まずはグラフ1を見てほしい。シングルコアの4000+でも78.01よりは81.26βのほうがスコアが高くなっているが,上昇率は1%に満たない。この程度の上昇であれば,単純にドライバのチューニングが進んだことによるものだと判断できるだろう。
しかしデュアルコアの4800+は,明らかに4000+よりもスコアが高い。シングルカード時では1%弱の上昇に留まるが,NVIDIA SLI動作時のスコアの上昇率は9%にも達する。単純なチューニングの結果や計測誤差によるものとは見なしえない差だ。
デュアルコアCPUに対応していないプログラム(グラフィックスドライバも一種のプログラムである)を動作させた場合,デュアルコアCPUを使ったとしてもCPUコアは片方しか使われない。つまり,4800+のスコアは4000+のスコアとほとんど同じになるはずなのだ。ここで有意な差が出たということは,二つのドライバでデュアルコアCPUの生かし方が異なるということだ。
続いて,3DMark05の個別テスト項目でプログラマブルシェーダの性能を測定したのがグラフ2,3,4である。これを見る限り,4000+と4800+でプログラマブルシェーダのスコアは変わっていない。比較的ピュアにグラフィックスカード側の性能を見るテストでスコアが変わらず,総合テストでスコアが上昇している以上,CPU側のパフォーマンスが伸びている,つまりデュアルコアCPUを活用していると判断してよいだろう。
3DMark05のベンチマーク中のCPU負荷状況を,Windows XPのタスクマネージャで調べてみたものが下の画面である。
シングルコアの4000+では78.01,81.26βともに100%で変わらない。デュアルコアの4800+は分かりやすいように2CPU(コア)を一つのグラフで表しているが,78.01では50%のところで頭打ちになっているのに対して,81.26βでは50%を超える部分が見られる。中でもテスト内容の「Game Tests GT3-Canyon Flight」では,50%を大きく超えていた。
その半面,ベンチマークテストの後半にある,プログラマブルシェーダの個別テスト)では50%で頭打ちになっていることも確認できる。この画面を見る限り,81.26βがデュアルコアに最適化されていることは間違いないだろう。
■SLIで,描画負荷の軽い状態なら実ゲームでも効果あり
Far Cryの結果をグラフ5,6に示す。4000+では78.01から81.26βで1.5%ほどのフレームレート上昇に留まっているのに対し,4800+では最大で20%もの上昇率となっている。解像度を上げたり,アンチエイリアシング(8x。グラフ中ではAA8と表記)と異方性フィルタリング(16x。グラフ中ではAF16と表記)を適用したりと,グラフィックスチップに負荷をかけた場合,グラフィックスチップ側がボトルネックとなるため,差は小さくなる。
DOOM 3の結果がグラフ7,8である。4000+では78.01から81.26βで,1%以下のごくわずかな上昇に過ぎないが,4800+では最大11%の上昇率となっている。DOOM 3では,解像度を上げたりアンチエイリアシングや異方性フィルタリングを適用したりすると極端にフレームレートが低下し,ドライババージョンによるパフォーマンスの違いがまったく表れなくなった。
検証結果から判断するに,81.26βは間違いなくデュアルコアに最適化されている。10月に正式リリースされるドライバの細かいバージョンは今のところ不明だが,81.26βの作りが引き継がれるとすれば,デュアルコアCPUの利用者には大きな朗報だ。そして,デュアルコアCPUのシステムではないユーザーにも,Release 75ベースのドライバと比較して多少のパフォーマンスアップが見込めるだろう。
なお,近く実現されるという「NVIDIA SLIモードの切り替え時に再起動が不要」という機能は,81.26βでは実装されておらず,切り替えのたびに再起動を求められた。本日の別記事で触れた「NVIDIA 81.82 Beta ForceWare Driver」だと,再起動は不要になっているとのことであるから,公式ドライバできちんと実装されていることを期待したい。
81.82ではほかに,「Black & White 2」での動作不具合の解消やパフォーマンスの改善が図られているが,デュアルコアCPUでの動作に関し,言及は依然としてない。NVIDIAがどのタイミングでアナウンスを行い,ドライバの正式な仕様に盛り込むのか,現時点では不明だ。
最後になるが,81.26βはβ版かつリーク版のドライバであるため,どんな不具合があるか分からない。導入するときは,くれぐれも自己責任で行ってほしい。(桑原雄二)
- 関連タイトル:
GeForce Driver
- この記事のURL:
Copyright(C)2011 NVIDIA Corporation