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[GDC06#13]Electronic Arts開発ディレクターが語る,「Spore」の成功と失敗
さて,トッド氏が最初に力説したのが,ゲームの企画を作るにあたって,「チーム全員が,これから制作するゲームに対して“オーナーシップ”を感じなければならない」ということだ。オーナーシップとは,個人個人が対象のもの(この場合は制作中のゲーム)の所有者・制作者であると自覚することだが,さらにはそこから生まれる責任や改善努力なども含まれる。これを促すために,開発に関わるすべての人とのコミュニケーションを綿密にし,「カスタマー以前の最初のオーディエンス」として,ゲームのコンセプトをよく理解してもらうのが絶対条件だとする。
トッド氏によると,ライト氏がSporeの企画を打ち明けたのが,1999年の9月のこと。しかし,その内容が壮大過ぎたために,当時の技術では具現化が不可能という結論に至った。結局,実に2002年12月までは,5人以下の少数メンバーでプロトタイプや企画の練り直しを行ったという。さらに2005年の6月までプレプロダクションが行われ,その後はチームメンバーも50人を超え,今は70人以上の体制でゲームを制作している。ちなみに,このトッド氏のタイムラインには2007年3月までの時間軸が存在していたので,ひょっとしたらリリース時期は,このあたりを目標にされているのかもしれない。
とにかく,昨年のGDCにおけるSporeの発表では,このThe Sims 2エンジンを利用したものが公開された。しかしそれは見た目が良いという判断からであり,それとは別にプロトタイプの2号が存在したのである。そのプロトタイプも動かしていたが,テクスチャなどはまったく存在せず,まさにプロトタイプの名にふさわしい荒削りなものであった。
キャラクターとなる生物には「Hunger」「Energy」「Health」という三つのパラメータが存在しており,そのほかにも「Food Points」「Social Points」,そして「Brain Level」と呼ばれるバーもある。Brain Levelは,おそらくAIがゲームプレイを通して記憶し,レベルアップすると新たな進化が起こるという仕掛けになっていると思われる。いずれにせよ,このプロトタイプにはゲームのメカニックの部分も存在しており,これを通してチームのメンバーにゲームがどのようなものかをハッキリと認識させたはずだ。
また,このゲームプレイのプロトタイプとは別に,ゲームのもう一つの楽しみともいえるクリーチャー作成のプロトタイプも,開発が同時進行していた。こちらを担当するのは,今回のGDCでコミュニティ・コントリビューション賞を受けた,Chris Hecker(クリス・ヘッカー)氏だ。
ヘッカー氏は,長い間プロシージャル(手続き生成型)モデリングを研究しており,この成果がSporeの開発にゴーサインを出したといってよい。プロシージャルとは,算術演算によって簡単な操作でも自動的にデータを生成させてしまう技術であり,プレイヤーはまさに粘土やブロックで遊ぶかのように,思いどおりの生物を作ることができてしまうのだ。
このキャラクター作成も,まずはプロシージャルアニメーションのデモから始まり,やがてはThe Simsシリーズのようなパラメータで,プロシージャルに生成されたモデリングや成長過程から,自動的に攻撃性,歩行速度,サイズ,草食性,肉食性といったものが付け足されて形を成していった。トッド氏やヘッカー氏らは,実際にクリーチャー同士が戦闘できるようなデモも試作し,チームメンバーのモチベーションを上げることも意図的に行ったという。
今回のGDCでは,ライト氏,そしてこのトッド氏のほか,三つのSporeに関する講義が行われていたものの,どれも実際のゲームシーンを見せることはなかった。今は,おそらく5月のE3に照準を定めて開発を進めているのだろう。トッド氏は,「ウィル(ライト)は,自分のエゴを押し通すような人物ではなく,いつもゲーム開発は円満に進展していく」と話し,リーダーの性格がうまく現場に反映されていることを強調した。(奥谷海人)
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