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[台北ゲームショウ#17]協力ギルドを増やし,中国を統一する三国志MMORPG「一騎當千」。プロデューサー Lim Geon Su氏インタビュー
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印刷2006/02/21 22:08

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[台北ゲームショウ#17]協力ギルドを増やし,中国を統一する三国志MMORPG「一騎當千」。プロデューサー Lim Geon Su氏インタビュー

Lim氏は2000年から2003年にかけ,「ラグナロクオンライン」のプログラムチーム長を経て,サーバープログラム統括の任に就いた後,GravityのCTOとCEOを歴任。2004年に開発会社「LK7」を設立して「一騎當千」の企画を立案し,その後同社はWebzenに合併された。Webzenの中国現地化戦略によって,同タイトルは2004年12月に上海に設立されたWEBZEN CHINAで開発されており,開発スタップは,韓国開発者10人あまりと中国開発者数十人とのこと
 ChinaJoyでプレイアブル出展されて以来,しばらく新情報が途絶えていた,Webzenの「一騎當千」2月19日の記事でお伝えしたように,台北ゲームショウ2006では大々的にプレイアブル展示され,ビジュアルの完成度もかなり上がっていた。
 しかしながら,独特の爽快なアクション要素はさておいて,ゲームの全体の枠組み,そもそもアクション主体の作品なのか,成長重視のRPGなのか,はたまたモチーフの性格に寄ってストラテジー要素や外交要素を重視するのか,といった点は,まとまった形で語られることがなかった。
 台北ゲームショウ2006のタイミングで,プロデューサーの林 建洙氏(Lim Geon Su氏)がインタビューに応じてくれることになったので,今回はそのあたりを中心に聞いてみた。想像した以上に,三国志モチーフらしい高度なシステムを備えた作品になるようだ。



■ギルドで城=領地を奪い,新たな王朝を建てるMMORPG

4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。インタビュー時間が30分だけということで,早速質問を。「一騎當千」については,例えば昨年のChinaJoyで戦闘デモが出展されるなど,部分といいますかテイストだけが伝えられていて,全体が語られる機会が少なかったように思います。そこでまず,一騎當千とはどんなゲームなのか,トータルなところを教えてください。

WEBZEN CHINA 技師総監(CTO:Producer) 林 建洙氏(Lim Geon Su氏。以下,Lim氏)
 一騎當千は三国志をモチーフにして,アクション要素や戦略要素が強調された“MMORPG”です。三国志の時代背景や登場勢力をシステムとして持つ,本格的MMORPGとしてはおそらく初となる作品ですね。そして,数ある三国志ゲームの中で,頂点に立つことを目指しています。

4Gamer:
 具体的なゲームシステムをお聞きする前に,ターゲットとする年齢層やイメージしている潜在的なファン層について教えてください。歴史モチーフだと,ファンタジー作品とは少々異なるような気もしますので。

Lim氏:
 ターゲット年齢層はやや高めの,20代から30代といったあたりを考えています。三国志が好きな人にはMMORPGの楽しさを,MMORPGのファンには三国志という物語の魅力を伝えられたら,というところです。

4Gamer:
 ではゲーム内容についてお聞きします。プレイヤーキャラクターが「武士」「弓箭手」「医仙」といった職業であることは,すでに伝えられていますが,ゲーム全体としては,PvP(対人戦闘)が中心になるのでしょうか,PvE(モンスターハントやRaid)が主体となるのでしょうか?

Lim氏:
 基本的にMMORPGなので,キャラクターの成長やスキルの概念,アイテム探しなどの要素は一通り揃っています。したがって,序盤はもちろんNPCの敵キャラクターを狩っていくわけですが,ゲームプレイ全体としてはPvPに力点があります。それも,単なるPvPではなく,ゲームの目的となる天下統一に向けた,ギルドによる攻城戦が特徴となっています。

4Gamer:
 天下統一に関連するのですが,プレイヤーキャラクターにはRealm(所属国家/陣営)概念があるのでしょうか? 例えば魏・呉・蜀などといった……。

Lim氏:
 いえ。時代設定はその3か国にまとまる前,後漢末の混乱期です。システム的には,プレイヤーが「義兄弟」関係(このゲームにおけるギルド)を取り結び,やがて自分の国を立ち上げるのです。つまり,プレイヤー自身が英雄になるわけですね。一般的な視点で言うと,自由度のあるコミュニティ制も特徴の一つということになりますね。

4Gamer:
 なるほど,自分で国を建てるんですね。

Lim氏:
 史実の英雄達は,イベントなどの形で登場します。



■協力ギルドを増やしていくことで,国を大きくする

4Gamer:
 えー,では,ギルドを作ってから,自分の国を持つまでの過程,段階のようなものを,大まかに教えてください。ギルドから国へ,どうステップアップしていくのか。国とは,単純に人数規模が大きくなったギルドなのか,多くのギルドを糾合したピラミッド型の編成をとるのか,といったことです。

Lim氏:
 このゲームでギルドに当たるのが,先ほど出てきた「義兄弟」です。義兄弟に入れるのは,今のところ50人まで。ただしこれは今後変更される可能性もあります。
 ゲームの最初では,すべての城はNPCが占有しています。それを攻撃して奪うわけですが,城を一つ奪った段階で,自分達は一つの「国」になります。そこからさらに隣接する地域の城を奪い,「勢力」として成長していきます。
 勢力になると,義兄弟の人数上限が上がります。先ほど話題にしたように,当初の50人から100人前後になる予定です。そして,複数の城を持った場合,自分の義兄弟の誰かに管理を任せる形になります。

4Gamer:
 例えばストラテジーゲームなどだと,城の管理を任された人の下には,その人独自の部下や軍勢が付くと思います。そうした,封建制度のピラミッド構造に則ったシステムが用意されているのでしょうか? それとも,単純にギルドの規模が大きくなって,みんなで複数の城を持っているイメージなのでしょうか?

Lim氏:
 ピラミッド型です。

4Gamer:
 城を任された人は,そこに自分独自のギルドを立ち上げる形になるのですか? それとも,独自の部下はNPCのみとかになるのでしょうか?

Lim氏:
 全体を手短に説明するのは難しいですが,一つの城を攻撃するときは,ある義兄弟(ギルド)と別の義兄弟が同盟して取り組む形になります。城を陥としたら,メインとなった義兄弟のギルドマスターが領主になります。そして,サブの義兄弟のギルドマスターは,大将軍といった,領主の下の位に就くのです。
 一つの城には3人の大将軍が設定されているので,管理するには,さらに二つのギルドが必要です。ほかのところからもう2ギルドをスカウトして,一緒に管理するわけです。ですから,城が増えれば必然的に仲間のギルドが増えていく形になりますね。
 そして,ほかの城を攻撃する場合,自分の義兄弟に加えて,大将軍に命令を与えて,攻撃軍を編成する形になります。



■関羽や張飛の姿になれるセットアイテムも

4Gamer:
 なるほど,非常に高度なシステムのようなので,ぜひ詳しくお聞きしたいところですが,時間も限られていますので,ほかの気になる部分を先にお聞きしたいと思います。
 一般的なMMORPGでは,序盤に何かと戦ってレベルを上げ,それからギルドに入るという流れがあると思うのですが,このゲームでの序盤の敵はどういった種類のものになるのでしょう? 盗賊集団とか,悪い領主の手下とかいった感じでしょうか?

Lim氏:
 フィールドで戦うのは人間型のモンスターで,すべて三国志の時代背景に沿った設定になっています。また,ミッションなどで戦うことになる相手も,三国志のストーリーに出てくるものです。有名な大泥棒を捕まえるとか,そういった感じです。

4Gamer:
 キャラクターの成長システムは,どんなスタイルでしょうか? レベルベースですか,それともスキルベース?

Lim氏:
 レベルベースです。レベルアップするとステータスが伸びて,各スキルに割り振るポイントも手に入ります。アイテムとして武器や防具もいろいろ用意されていて,その中には関羽や張飛の姿になれるユニークアイテムも含まれています。
 張飛のアイテムはセットになっており,蛇矛や兜,鎧などフルセットを集めないとボーナス効果が発揮されません。そうしたアイテムは領主クラスにならないと手が届かないですから,部下達に命じて集めさせるといった遊び方が可能でしょう。

4Gamer:
 主君の命令で伝説の武器を探しに行くというのは,なんだかリアルな気もしますね。ところで,クローズドβの段階で,攻城戦が盛り込まれるという話を聞いたのですが,その攻城戦について教えてください。城の基本的な構造とか,攻める/守るときの手順などについてです。

Lim氏:
 攻城戦のコンセプトは「リアルタイム」です。開発側で決めた時期(例えば毎週金曜日の夜など)になると,各城を支配している国家は,周辺の城を攻撃するか,周辺からの攻撃に備えなければなりません。
 例えば,ある城を,周辺の3か国が同盟して攻撃すると宣言した場合,防御側の国は他国に救援要請を出すことも可能です。そのために,このゲームには外交的な要素も用意しているし,城の統治を楽しむために政治の要素も用意しています。
 各国家の最高権力者(ギルドマスター)が,攻城戦マップで攻める城を指定します。そして,開始10分前にはメッセージが出て,あちこちに散っていた(攻城戦に参加予定の)ギルドメンバー達も,自動で攻城戦マップへワープします。

4Gamer:
 なるほど。次にサービス日程について教えてください。近々に台湾と中華人民共和国でクローズドβテストが始まると聞きましたが。

Lim氏:
 台湾と中華人民共和国では,年内(2006年内)にオープンβテストまで実施予定です。また,まだ確定しているわけではありませんが,韓国と日本では,今年の末もしくは来年初頭にサービスにこぎ着けられるよう,検討が重ねられています。

4Gamer:
 では最後になりますが,「一騎當千」に注目している日本のゲーマーに,ぜひメッセージを一言お願いします。

Lim氏:
 「ラグナロクオンライン」の開発とサービスを通して,日本プレイヤーのコミュニティ性重視の傾向については,誰よりも把握していると自負しています。
 一騎當千の義兄弟システムは,いわばコミュニティ性を強化するために取り入れたものですが, ラグナロクオンラインが可愛いらしいキャラクターやグラフィックスを通した社交的なコミュニティ性を持つのに対し,一騎當千は領土獲得を目指す戦闘をうまく進めるためという,よりスケールの大きなコミュニティ性の実現を,目標として開発しています。
 日本のゲーマー達は,以前からコーエーの「三國志」シリーズやコンシューマタイトルの「真・三國無双」シリーズに馴染んでいるので,潜在的なファン層は非常に厚いと考えています。
 三国志についての理解度が非常に高い日本のゲーマーのみなさんに,MMORPGの形で新しい三国志のテイストと楽しさをお伝えたいと思います。ぜひご期待ください。

4Gamer:
 ありがとうございました。




 「一騎當千」は,桃園の誓いよろしく,義兄弟から始まって王朝を興し,ゆくゆくは全土を統一するという,三国志モチーフにふさわしい作品になるようだ。
 ヒストリカルモチーフ作品である以前に,明確な境界/設定世界を持つMMORPGという時点で,一騎當千は新しい。世界に明確な範囲があるということは,ゲーム内で起こるすべての競争は相対競争になるということであり,ギルド(義兄弟 → 国 → 勢力)同士は必然的に対立する利害を前提として,合従連衡を繰り返すことになる。ファンタジーMMORPGにありがちな,楽天的なプラスサムの世界ではなく,比較的シリアスなゼロサム(=有限なモノの奪い合い)の世界で,自分達の地位と勢力を高めていくことになるのは,MMORPGの展開としてはかなり独特であり,興味深い。
 果たして,本当に中国統一が可能な(=多数の敗者を作る,ある意味シビアな)設定になっているのかなど,突っ込んで聞きたい事柄は山ほどあったのだが,限られた時間でのインタビューということで,今回はご海容願いたい。ぜひ次の機会に,RPGとしての詳しい内容ともども話を聞けたらと思う次第である。(Guevarista)

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