前回,映画
「ゴッドファーザー」のフランシス・フォード・コッポラ監督が,Electronic Artsのゲーム「The Godfather」(
PC /
Xbox 360 /
PLAYSTATION 3)に対して立腹していた……という,George Chante氏の談話を紹介した。
Chante氏は,U.S. Gold在籍時にセールス・マネージャーという職にあり,マーケティングなどを担当していた人物。今回は,そんなChante氏から聞いた,コッポラ監督立腹の理由などをお届けする。
ゲーム「The Godfather」の企画は,EAのWarren Jenson氏とParamount Picturesとの間で進められていたそうです。
私が知る範囲では,Jenson氏が想定していたのはバイオレンス描写の少ない箱庭タイプのゲームでした。でもEA社内スタッフから,「Rockstar Gamesの『Grand Theft Auto III』が大ヒットを記録した以上,時代に逆行すべきではない」と大反対されたため,完成した作品はあのような形になったようですね。
ただ,これらの企画はコッポラ監督の耳に一切入れられないままに進められていたんです。
コッポラ監督は,「EAとParamountが少しでも話をしてくれれば,ゲーム化のためのアイディアを出すつもりだってあったのに,どうして私に話してくれなかったんだろうか……。私が監督した作品が,私の知らないところで勝手にフランチャイズ化されて,そこに金の亡者達が群がってくるような図式に見えて,本当に腹立たしかった」と言っていました。
さらに「有名な俳優が演じるキャラクターと,無名なゲームオリジナルのキャラクターが混在して殺し合うような設定で,映画のファンが喜ぶのだろうか? ここにも納得いかない。映画が冒涜され,悪用されているかのように思った」と,ゲームの世界観にも不満があったようです。
ただその怒りも,EAでこのゲームのプロデューサーを務めていた,David DeMartini氏がコッポラ監督の自宅へ足を運び,きちんと謝罪したことで収まったようです。なんでも,4〜5時間もの時間を費やして,ゲームのプリプロダクションの段階から開発中の部分にかけて,コッポラ監督が納得するまできちんと説明されたそうですよ。
その場でコッポラ監督も,ゲームに向けたアイディアを出したそうですが,それがどこまで反映されたかは分かりません。
ただ,ここでこの件についてミステイクを犯したのが,EAではなくParamountの版権管理担当者だったという事実が判明したのだそうです。Webメディアの一部では,EAに問題があったというような報道もなされていたようですが……。
なんでもこの版権管理担当者は,適当な仕事ぶりが一部で有名になってしまうほど,各所で問題を起こしていた方だったそうですよ。
実際,映画版ゴッドファーザーの原作と脚本を担当していたMario Puzo氏のご子息であるAnthony氏が,ゲーム化に際して著作権使用料が遺族へ支払われていないのは契約違反であるとして,100万ドルを超える損害賠償請求訴訟をParamountに対して起こしているほどです。
私がU.S. Goldで働いていた当時,ゴッドファーザーをゲーム化するときには,真っ先にニューヨークのPuzo家へご挨拶に行ったものです。そのときMario氏は快く私達を受け入れてくれたんですが,「こういう挨拶は普通,コンテンツホルダーのParamountが最初に行うべきじゃないのかね?」と,少々怪訝そうに語っていたことを思い出します。
このことをきっかけにMario氏は,Paramountと映画の要素を取り入れたマーチャンダイジングなどのフランチャイズに関して,きちんとした金額での契約を交わしたそうです。
というのも,最初にゴッドファーザーが映画化された当時,Mario氏はまだ無名の作家だったため,映画化権の契約金がかなり低いものだったそうなんです。アカデミー賞まで獲得したにもかかわらず,その後も当時の契約のままだったため,Paramountから支払われるロイヤリティは微々たるものだったといいます。
つまり,Mario氏は私達のゲームをきっかけに,自身の作品を使ったビジネスが続けられるのであれば,正当な対価が支払われるべきだと,Paramount側に要求したんですね。
そして,それが通ったはずなんですが,Mario氏が亡くなったことでうやむやになっていた部分もあったのかもしれません。ご遺族が訴訟を起こしたのは,2008年6月ですが,現在も係争中だと思います。
筆者自身,以前コッポラ監督がEAのThe Godfatherに対して怒り心頭であるといった報道を見ていたし,てっきりEAが礼儀を欠いていたのだろうと思っていたんだが,Chante氏の談話によると,どうやらそういうことではなかったようで……。う〜ん,EAさんゴメンナサイ。
次回からは,ある種の難産を経てリリースされたEA版The Godfatherのゲーム内容について触れていこう。
■ドブ漬けゲームスープレックス(47)
PLAYSTATION 3 / Xbox 360
「UFC 2009 Undisputed」(THQ)
日本でもユークスより今秋発売予定だが,UFC(Ultimate Fighting Championship)を題材にしたゲームは,久しく発売されていなかっただけに,待ちきれなくなって海外版を購入!
ユークスといえば,過去に新日本プロレスやWWEの実名プロレスゲームを開発してきたわけだが,そこで培った技術を200%以上パワーアップ&進化させ,スポーツライクな格闘ゲームを生み出してくれたことに,ただただ感謝&脱帽。
本作には選手をエディットして育成していく「Careerモード」が用意されているが,なんとなく「ボクサーズロード」を彷彿とさせるというか,作り上げたキャラクターにトレーニングを課したり,疲労が見えたら休息日を与える必要があったりと,シミュレーション要素も持っていてやり込みがいがありそう。
もちろん,UFCの実名選手がかなりの完成度で再現されているのも,UFCファンにとっては嬉しいところだ。
さっそく,ストライカーのミルコ・クロコップことミルコ・フィリポヴィッチ選手でプレイ開始! したはいいが,いきなりタックルでテイクダウンを奪われ,返し方も分からずあっという間に敗戦。
普段は説明書も読まないし,チュートリアルだって無視しがちな筆者だが,今回はチュートリアルをきちんとこなすことを決意。つまりそれほど熱中度が高く,選手をうまく操りたいと思わせてくれるわけで,このあたりの作りは秀逸であるといえるだろう。
UFCのゲームといえば,かつてCraveが発売(開発元はアンカー。現在アンカーのゲーム事業はクアッドアローへ引き継がれている)した,Dreamcast用のものがあった。当時,格闘技ゲームとしてだけでなく,格闘ゲームとしての新しさに感動したものだが,そして今回も,あのときと同じような感動を味わってしまった。
音声やテキストが多めなので,これを全部ローカライズするのは,きっと並大抵の苦労じゃないな……と思うものの,一日も早い日本版のリリースを期待したい。
■■ジャンクハンター吉田(シネマゲーム研究家)■■
E3から無事帰国した吉田氏に現地での様子を聞こうとしたら,「えっとそのあたりはね,6月12日(金)19時から動画を交えて話そうと思うんだよ,『ニコニコチャンネルGTV』で」という答えが……。 |
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