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[SIGGRAPH]Kepler相当のグラフィックス性能をスマートフォンで実現。Samsung,「Samsung reconfigurable GPU based on RayTracing」を披露
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印刷2012/08/10 00:00

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[SIGGRAPH]Kepler相当のグラフィックス性能をスマートフォンで実現。Samsung,「Samsung reconfigurable GPU based on RayTracing」を披露

登壇したWon-Jong Lee氏(SAIT, Samsung Electronics, Korea)
画像集#002のサムネイル/[SIGGRAPH]Kepler相当のグラフィックス性能をスマートフォンで実現。Samsung,「Samsung reconfigurable GPU based on RayTracing」を披露
 Samsung Electronicsは,SIGGRAPH 2012で行われた「Pointed Illumination」というトークセッションにて,現在,同社が開発中であるスマートフォン向けプログラマブル・レイトレーシング・グラフィックス・プロセッサ「Samsung reconfigurable GPU based on RayTracing」(以下,SGRT)の研究報告を行った。

 SGRTは現在,Samsung Electronicsと韓国の延世(ヨンセ)大学との共同研究という形で開発が進められている。性能目標としては,1秒間に2億〜3億レイという数字が掲げられており,スマートフォンへの搭載を目指すべく,低消費電力かつ低コスト化といった要件も同時に満たそうとしているそうだ。

SGRTの開発目標と性能目標
画像集#003のサムネイル/[SIGGRAPH]Kepler相当のグラフィックス性能をスマートフォンで実現。Samsung,「Samsung reconfigurable GPU based on RayTracing」を披露

SGRTの構成が示されているスライド
画像集#004のサムネイル/[SIGGRAPH]Kepler相当のグラフィックス性能をスマートフォンで実現。Samsung,「Samsung reconfigurable GPU based on RayTracing」を披露
 いまのところSGRTは,シーン内オブジェクトの座標変換やソーティングなどの処理をマルチコアCPUで,それ以降の処理を2つの機能ブロックから構成される専用の「RPU」(RayTracing Processor Unit)で行う構成になっている。

 RPUの機能ブロックのうち,1つは,視点からレイを投げてシーン内のオブジェクトとの交差判定を行うもので,「Traversal & Intersection」(以下,T&I)ユニットと名付けられている。
 T&Iは,通常のGPUにはないRPUならではの機能ブロックだが,無理矢理,通常のGPUに例えるならば,「トライアングルセットアップ」(ラスタライザ)に相当する。

 もう1つの機能ブロックは,描画対象ピクセルへのシェーディングや交差判定先で再びレイの生成を行うといった複雑な処理をする「プログラマブルDSP」ユニットだ。こちらは通常GPUに例えるならピクセルシェーダ的な部分といえるだろう。なお,SGRTでは,プログラマブルDSPユニットに「SRP」(Samsung Reconfigurable Processor)という名称が与えられている。

SGRTのブロックダイアグラム
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T&Iエンジンの概要
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 そのほかSGRTの特徴となる部分を解説していくと,T&Iエンジンは,MIMD(Multi Instruction Multiple Data)構成になっており,レイのトラバース処理がハードウェアベースのkd-tree(kd木,空間分割データ構造の一種)探索ユニットによって行われる。空間内のオブジェクトとレイとの交差判定を効率よくするために,交差が起こりえないことが明白なオブジェクトを早期に排除する早期交差判定(Early Intersection Test)の機構が備わっているとのことだ。

早期交差判定と従来の判定を比較したスライド
画像集#007のサムネイル/[SIGGRAPH]Kepler相当のグラフィックス性能をスマートフォンで実現。Samsung,「Samsung reconfigurable GPU based on RayTracing」を披露

 「RAU」(Ray Accumulation Unit)と命名されている,実際の交差判定を行う演算器では,シーン内のオブジェクトのジオメトリ情報をメモリから読み出す工程が必須となる。ここでキャッシュに失敗した場合は,その交差判定スレッドが膨大なサイクルを要する実メモリ読み出しに移行してしまう。そのときに,ただ待っているだけでなく,ほかのレイの交差判定スレッドへと切り換えて,遅延時間を隠蔽するのがRAUとなる。現在のGPUでもよく見られる機構だ。

 先ほど「通常のGPUでいうピクセルシェーダ的なユニット」と述べたSRPは,まさにそのとおりの構成。制御命令をVLIWエンジンで実行制御し,アレイ化された演算器を適宜起用して,実際の演算を並列で処理していくことになる。

画像集#008のサムネイル/[SIGGRAPH]Kepler相当のグラフィックス性能をスマートフォンで実現。Samsung,「Samsung reconfigurable GPU based on RayTracing」を披露
RAUには,スレッド切換によってメモリレイテンシを隠蔽する機構が備わっている
画像集#009のサムネイル/[SIGGRAPH]Kepler相当のグラフィックス性能をスマートフォンで実現。Samsung,「Samsung reconfigurable GPU based on RayTracing」を披露
SRPは通常GPUでいうところのピクセルシェーダに近いアーキテクチャ

 なお,SGRTはマルチコア構成に対応しており,コア数が多くなればなるほどスケーラブルに性能が上がる設計になっているとのことだ。つまり,SLIやCrossFireXなどに相当するものと考えておけばいいだろう。

SGRTはマルチコア構成にも対応する
画像集#010のサムネイル/[SIGGRAPH]Kepler相当のグラフィックス性能をスマートフォンで実現。Samsung,「Samsung reconfigurable GPU based on RayTracing」を披露

 FPGA(Field-Programmable Gate Array)の実験ボードによるシミュレーションベースのパフォーマンスではあるが,SGRTの性能についても報告されている。下に掲載したのが実際のレンダリング結果だ。

画像集#011のサムネイル/[SIGGRAPH]Kepler相当のグラフィックス性能をスマートフォンで実現。Samsung,「Samsung reconfigurable GPU based on RayTracing」を披露

現時点ではFPGAレベルでの実験なので,今後,スマートフォン向けのSoCにどのように組み込んでいくか,消費電力対策をどうしていくかを検討していくとLee氏は発表を締めくくっていた
画像集#012のサムネイル/[SIGGRAPH]Kepler相当のグラフィックス性能をスマートフォンで実現。Samsung,「Samsung reconfigurable GPU based on RayTracing」を披露
 左側のクルマのシーンは,20万ポリゴン,1光源,影あり,反射あり,屈折ありで,レンダリング解像度が800×640ドットとなる。右側の妖精のシーンは,17万ポリゴン,2光源,影あり,反射あり,屈折ありで,レンダリング解像度が800×640ドットだ。フレームレートは前者が87.82fps,後者が67.83fpsとのこと。

 妖精シーンでいうと,SGRTを4コア構成にして,動作クロック1GHzで動かした場合のパフォーマンスは,毎秒1億7100万レイ〜2億5500万レイになるという。この値は,NVIDIAのKeplerコアで「OptiX」(CUDAベースのレイトレーシングエンジン)を用いてレンダリングしたときとほぼ同等の性能だとアピールされた。

SGRTの性能測定結果。ただし,シミュレーションベースである
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なぜスマートフォンでレイトレーシングなのか?


 実のところ,画面サイズが小さいスマートフォンでのレイトレーシングは,最近にわかに盛り上がってきている。昨年のSIGGRAPH 2011でも,Imagination Technologiesが,自社の「PowerVR」にレイトレーシングユニットを統合させる計画を発表し,注目を集めていた。
 こうした流れは,NVIDIAが推し進めているGPUクラウドと並んで,業界にとってホットな研究テーマとなってきているのだ。

 スマートフォンのディスプレイは高解像度化が進んできているが,細かい文字情報,高解像度の図版を表示させるための応用(表示情報量の拡張や増加)が目的で,ハイエンドデスクトップPC相当の高解像度3Dグラフィックスを表示させるような用途には直結していない。つまり,スマートフォンにおける3Dグラフィックスは,「小さな画面サイズ相応のジオメトリ分解能で十分」という解釈がある。

 その一方で,その映像品質そのものはリアルにしていきたいという動向も強くある。そこで,1ピクセルに詰め込む情報精度,品質を上げていこうというモチベーションが高まり,それが「モバイルグラフィックスのレイトレーシング化」につながっているのだ。

 実際,SGRTの研究報告を行ったLee氏も,「現在のハイエンドデスクトップ向けGPUに対して5〜6年遅れているモバイルグラフィックスの品質を引き上げていきたい」と述べていた。
 これに対するアプローチの1つがSamsung ElectronicsやImagination Technologiesが取り組んでいるレイトレーシングであり,もう1つがGPUをクラウドに置いたクラウドレンダリングというわけである。

スマートフォン向け3Dグラフィックスのクオリティは,ハイエンドデスクトップPCの5〜6年遅れでいい,と決まっているわけではない。これを打開していきたいというアイデアがレイトレーシングだったり,クラウドレンダリングだったりするのだ
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