2004/07/17 00:40 |
新キャラクター「Samurai」と,各種モンスター勢揃いの図。いまだ新要素が飽くことなく足されていくMMORPGは,どこまで進化を続けていくのだろうか
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アメリカ時間で7月15日に発表された「ウルティマ オンライン 武刀の天地」(英題:Ultima Online:Samurai Empire)は,シリーズ7年めを迎えたUO拡張パックの6本め。1997年の衝撃的なデビューでゲーム産業に大きなインパクトを与え,すでに100本以上のMMOが溢れている今もなお,人気は堅調で25万人のプレイヤーを確保している。
Ultima Onlineシリーズのエクゼクティブ・プロデューサーを務めるアーロン・コーヘン(Aaron Cohen)氏は,「武刀の天地」で中世ファンタジー一辺倒だったUOに日本テイストを持ち込んだことについて,日本でのアカウント数が全体の40%を占めている現状,そしてファン投票による新職業のリクエストでは,サムライとニンジャがトップにあったことが理由だと説明した。 ご存知のように,長らくウルティマを支えてきたリチャード・ギャリオット(Richard Garriott)とStar Long(スター・ロン)両氏はすでに退社しており,彼らのゲーム内キャラクターであったロード・ブリティッシュは未開の地へと永遠の旅に出立し,ブラックソーンはプレイヤーたちの抵抗にあってソーサリア大陸と共に滅亡している。肯定的に考えると,中心的なデザイナーの影響力はUOにはすでになく,その代わり自在に応用できる世界観のみが残されているのである。 そこでコーヘン氏や,拡張パックのプロデューサーであるアンソニー・カストロ(Anthony Castro)氏は,ウルティマの歴史を紐解き,「Ultima I」の説明文の中に描かれた未知の土地「Land of the Feudal Lords」の一文に注目した。これが「武刀の天地」の舞台となる新大陸「Tokuno Islands」である。
■新大陸"Tokuno Islands"
Tokuno Islandsというのは,日本人なら鹿児島県徳之島を想像してしまい,ファンタジーっぽさがいまいち感じられない名前ではある。しかし,EAジャパンの担当者の話によると,このネーミングはウルティマでいう徳(Virtue)を直訳したものだろうと推定されている。Tokuno Islandsは「Islands of Virtues」なのだ。ただし,現地開発者も「EAジャパンとはUXO開発を通して非常に密接に作業できる体制になっており,この大陸の都市名も日本のファンの公募によって決めてもらう」と話しており,日本のプレイヤーの意見にも非常にフレキシブルに対応してくれそうな気配。大陸自体の名称も,変更してもらえる可能性がないわけではないようだ。 このTokuno Islandsは,地図をご覧になればお分かりのように,森林地帯や氷雪地帯,果ては砂漠や火山までが存在する。この大陸を形成する三つの島の周辺には小さな島々が点在しており,ダンジョンも二つ,さらに三つの新しい神殿が用意されることになるという。リリース後は,ここから新しいドラマの展開が始まることになるのだ。
"徳之島"ではなくて"徳の島"。さすがに全プレイヤーの40%を占めるだけあって,日本の要素がふんだんに取り込まれたものに仕上がっている今作。7年近くが経ったときに国内で10万ものアカウントがあるなど,誰が想像しただろうか
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■サムライとニンジャ
新職業のサムライとニンジャは,もはや欧米でも認識できない人はいないだろうというほど知名度が高くなった。その理解度は個人差があるだろうが,サムライとニンジャがクールなのは日本人にとっても同じこと。ブリタニアの遥か東の海にサムライやニンジャが登場するだけでも,ウルティマファンとしてはワクワクしてくる。 「武刀の天地」では,サムライは秩序(Order),ニンジャは混沌(Chaos)を体現するキャラクターとして登場する。このため,スタート地点である別々の首都が,三つのうちのどれかに一つずつ用意される模様だ。新職業は,Tokuno Islandsで作成されたキャラクター限定になるらしく,ブリタニアではサムライとニンジャで新キャラクターを作成できないということになる。すでにサービスインしている「成長済みキャラクター購入制度」も,新職業には適用されない。
この二つの新職業には7種類ずつの特殊能力が用意されており,今回の発表ではそれぞれ3種類が公開された。サムライは,一撃で相手を仕留める"オナラブルエクセキューション",一撃に50%のヒットポイントボーナスを追加する"ライトニングストライク",敵が周囲に増えるほどパワーが強化する"ウィールウィンド"など。 ニンジャの特殊能力は,30秒に渡って自分の分身を作り出す"ミラーイメージ",煙を立てて一時的に敵の目から逃れる"スモークボム"など,いかにも忍者風の目暗まし戦術から,オオカミやヘビのような一見無害の動物に変化して敵地を視察することもできる"アニマルフォーム"が発表された。まだ公式ではないが,サムライには"カウンターストライク",ニンジャには"バックスタッブ","デスストライク"なる特殊能力も資料から見受けられた。
上段がSamuraiで,下段はNinja。Samuraiは,雰囲気的には古き良きWizardryそのもの,といった風情。個人的には,Ninja装備にもう少し"いかにも"なものが用意されていると嬉しいところだ
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■モンスター
サムライとニンジャの抗争に疲れたら,Tokuno Islandsにうごめく20種類以上の新しいモンスターを狩りに行くといい。モンスターも日本の伝承をベースにデザインされたものがあり,Hai Riyo(飛龍?),Lady of the Snow(雪女),Fan Dancer(ファンダンサー)などがいる。ファンダンサーは,鉄扇で攻撃する京劇の女性のような服装で,踊りながら攻撃してくるようだ。モンスターに限ってはモチーフが全アジアにまたがり,三つの尾を持った狐,三つの頭を持つオオカミ,さらにはナーガのようなヘビ男も見られる。Hai Riyoはかなりハイレベルなモンスターになりそうだが,調教の技能を持っていればペットにすることも可能だという。
■プレイヤーハウジングとアイテム
MMOゲームの人気の条件ともなったプレイヤーハウジングは,そもそも初代UOから採用されていたアイデアだが,これは「武刀の天地」でも大きな特徴の一つだ。すべて日本建築をベースとしたアートになっており,木柱や漆喰の壁で作られた建物に住めるようになる。面白いのは,プレイヤーはお金が溜まるのに合わせて新しい敷地に大きな建物を新築するのではなく,道場のような小さな建物を,城になるまで拡充していくという手法が採用されていることだ。またTokuno Islandsでは,指定された特定地域のみの建設に限定されている。 モンスターが落としたりダンジョンに眠る財宝から入手できるアイテムも日本文化を意識した物で,刀剣類から鎧兜のような防具,家具なども中世日本をイメージしたものになる。アイテムの中には,屋内の壁や床の外観を変化させるタイルが存在し,モンスターからルートできるようだ。画面写真で畳が正方形なのもおそらくこのためで,プレイヤーは一つずつ集めたり交換して好みのデザインに仕上げていける。
モンスターは,一転して"各種アジアのごった煮"風味。とはいえアジアの雰囲気は十分で,新たな発見と感動をプレイヤーに与えてくれることだろう
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「ウルティマ オンライン 武刀の天地」のリリースは,2004年11月を予定している。今回,実際のゲームデモは公開されず,アートワークの紹介と基本的なゲームの説明に留まっており,各メディアの報道も似たものになっていることだろう。 エレクトロニック・アーツ社は,「Ultima X:Odyssey」の開発中止に合わせて,元々Origin Systems社のあったEA Austinオフィスも閉鎖した。UXOに関わっていた75%の開発者はレッドウッドシティの本社に移転したため,現在の開発チームの規模はオリジナル作品を作っていたとき以来の大所帯になっているという。しかし,日本風のテイストもあったUXO自体のアセットは,「武刀の天地」に利用されることはまったくないとのこと。リリースから7年経った今も,まだまだコンテンツ面で改良が続き,ゲームプレイでも進化を遂げているUOは,その世界観に日本風味を取り入れることで,ブリタニアにおける秩序と混沌の戦いを描くつもりだ。 「ウルティマ オンライン 武刀の天地」のリリースにあたっては,EAジャパンも相当なキャンペーンを行っていく模様で,これから新機能や追加事項が発表されるにつれ,大きく盛り上がっていくだろう。(文/写真・奥谷海人)
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