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[GC 2005#29]国産RPGと多くの共通点を持つ「The Witcher」
展示は,訪れたメディア関係者数人ずつに対して,まずクローズドなブースの中でオーバービューを解説,その後あらかじめ用意された別のPCを使って実際のゲーム内容をピックアップして解説,という手順で行われた。
クローズドブースの中では,The Witcher開発のテーマと開発に対する姿勢についての説明が行われた。クリエイティブディレクターMichal Kiciński氏によれば,本作のテーマは「RPG REDEFINED」(RPG再評価の試み)だそうだ。
一口にRPGといっても,現在では多様化してきている。そのため今回自分達でゲームを制作するにあたって,RPGを構成する"戦闘" "ストーリー" "音楽" "サウンド" "モーション"といった各エレメントを分解して,それぞれについて研究を進めてみた。その結果得られた答えは以下のようなものだったという。
・ストーリーはRPGにおいて最も重要である
・戦闘システムはその次に重要である
・そのまた次に重要なのは自由度の高さである
・他方,キャラクターの成長とアイテムも重要である
・そしてユーザーフレンドリであることも忘れてはならない
このような研究成果を生かして作られているのが,The Witcherだというわけだ。興味深いポイントは2点。説明を受けてまず初めに感じたのは,「この人達はホントにマジメだなぁ」ということ。いまどき,自分達の作品を見てもらうために,まずその研究発表から行う純粋さというか,まっすぐな攻め方はかなり珍しい。その素直な姿勢は微笑ましくも頼もしくも感じられた。
もう一つ興味深いのは,この箇条書きにされた,彼らの考える"よいRPGの条件"そのものだ。彼らがサンプルとしているのはバルダーズゲート関連作品やMorrowindシリーズのような作品群だろう。そしてそれらを研究した結果,ポーランド人の彼らは最も大切なのは"ストーリー"だと結論づけた。「ストーリーを語ることが最も大切」。この方向性はまさに,日本のコンシューマ系シングルRPGが保持しているものと同じである。
アジアの片隅に住む我々と,ヨーロッパの東に住む彼らが,ともにアメリカ&西欧のゲームを研究して得る結論が,これほど似通っているとは本当に面白い。筆者はこれまで「アメリカ人とヨーロッパ人は全員,決められた筋道のないゲームが好き」と信じ込んでいたのだが,どうやら思い違いだったようである。
むろん,本作ならではの要素も用意されており,その一つは箇条書きの2番目……戦闘に関することだ。「戦闘をできるだけ単純な作業にせず,プレイヤーのモチベーションを保ち続ける」ことが念頭に置かれており,連続してクリックするだけではない,タクティカルなコンバットを実現するための工夫がなされている。具体的には,プレイヤーキャラクターが使う剣技には,Strong Style,Fast Style,Group Styleという三つの"スタイル"が用意されており,好きなときに切り替えられるようになっている。
主人公はSIGNSと呼ばれる魔法の使用にも長けており,魔法には何種類かの"系統"が存在する。これらスタイルや魔法の系統の下には,さまざまな技やスキルがツリー上に連なっており,どのように成長させるかによってキャラクターに個性を持たせていけるようだ。
日本人とは全然違う立脚点を持ちながら,日本人のセンスに近い方向性を打ち出したポーランド人の手によるThe Witcher。この作品が世界で,そして日本でどのような評価を得るのか,その結果を知る日がとても楽しみである。(ライター:星原昭典)
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