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[E3 2006#158]あと数か月で「Tabula Rasa」が完成? リチャード・ギャリオット氏へのショートインタビュー
リチャード・ギャリオット氏(以下,ギャリオット氏):
15分くらいしか時間が取れなくて,すみません。
4Gamer:
いえいえ,こちらこそ急なインタビューをお願いしてしまって,申し訳ありません。では,時間もないので早速本題に移らせてもらいます。
ずばり,何度か仕様変更を施されてきたTabula Rasaですが,その仕様はそろそろフィックスされましたか?
ギャリオット氏:
ええ。Tabula Rasaはこれまで,二つの期間に分けて制作してきています。一つは革新的な要素を盛り込むための期間だったのですが,いくつかの要素はうまくいき,いくつかの要素は失敗しました。そして,その失敗を完全にひっくり返すための作業が発生したため,Tabula Rasaの開発も全体的に遅れてしまったのです。
その後の2年間は,新しいコンテンツを追加するために費やしました。Tabula Rasaには三つの世界があるのですが,その中の一つは,完全に開発が終了しています。
4Gamer:
なるほど。ではその開発の終わった一つめの世界が,今回E3で出展されているものなんですね。
ええ。ちなみに,この今回出展したE3バージョンは,テスト用で内部のスタッフだけに公開していたものだったんですが,これが外部に流出するという問題が起き,外部のユーザーが少し増えてきてしまっている状態です。それらの問題が完全に解決できたら,E3後のそう遠くない時期に,一部メディアなどにテストアカウントを配布しようと考えています。
4Gamer:
おお,ということは,今年こそ完成ということですか?
ギャリオット氏:
まだリリース日はお話しできないんですが,開発は実に順調に進んでいます。時期がくれば,真っ先にお伝えしますよ。
4Gamer:
非常に期待しています。がんばってください。
ところでTabula Rasaは,リチャード・ギャリオットという著名なゲームクリエイターが開発するMMORPGですが,そのギャリオットさんは,何を目指し,どのような方向に向けてTabula Rasaを制作しているんでしょうか。
ギャリオット氏:
私が過去に携わった作品は,ほとんどがファンタジー設定を用いたゲームだったのですが,今の私は,どこにでもある世界ではなく,オリジナリティ溢れる革新的な世界を作ってみたいんです。例えば,将来のMMORPGプレイヤーが遊んでも,気に入ってくれるような作品ですね。もちろんTabula Rasaは,私の作りたかった世界に仕上がりつつありますよ。
なるほど。やはりみんなは「ギャリオット」といえば中世ファンタジーの世界を想像しますから,この作品にちょっととまどってるんですよ(笑)。でもあなたの思想の基に作られたのであれば安心です。あとは一刻も早くその世界を見せてください。
しかし「中世ファンタジーのMMORPG」といえば,事実上あなたが作り上げたといっても過言ではないと思うのですが,今のMMORPG市場を見て,どのような印象を受けますか?
ギャリオット氏:
一部の評論家は,MMORPG市場を小さなものとして認識しているようですが,MMORPGのマーケットは,今後もどんどん拡大していくと思います。
しかしMMORPGというジャンルの基礎部分は,私が開発した「ウルティマ オンライン」や「EverQuest」などの第一世代MMOと今でもほとんど同じ構造だと考えています。でも私はTabula Rasaで,その構造を変えてみたいと思っています。
4Gamer:
自ら作り上げたものを,自らの手で一度解体するというわけですね。
ギャリオット氏:
ええ。私は25年間もゲームの開発に携わっていますが,かつては,ゲームで物語を伝えるということが,開発者にとって一番重要な部分だったのです。ところが今のMMORPGのシステムときたら,ストーリーテリングについてはほとんど重要視されていませんし非常に難しいと思っています。重要度なんてこれくらいしか(親指と人差し指で小さい様を表現しつつ)ないですよね(笑)。
でもそれもなんだか違うと思います。私は,昔のRPGにあったような「物語る」仕組みを,Tabula Rasaに取り入れてみたいと考えているんです。
4Gamer:
そういう話を聞くと,今のTabula Rasaが持つFPSライクな戦闘システムにはやや違和感があるのですが……。
ギャリオット氏:
あぁなるほど。大丈夫ですよ,心配しなくても(笑)。確かにSFの世界設定といい,アクションゲームのようなテンポといい,Tabula Rasaはシューティングゲームと誤解されることがありますが,基本は完全にRPGです。
4Gamer:
確かに遊んだ感じは「アクションゲーム」というものとはまた違いました。
ええ。インタフェース的に見ても全然違うものです。FPSではターゲットとすれ違うと,それを攻撃するためにプレイヤーキャラクターは振り向かなければなりません。しかしTabula Rasaでは,敵とすれ違っても,ターゲットを固定したままなので,そのまま攻撃できるんですアクションゲームファンにはまったく物足りないでしょうが,これはRPGですから!
FPSタイプといっても,攻撃や回避に関してはさほどシビアな設定ではないので,あくまで,戦闘を「楽しむ」アクション性を加味するための導入だと考えてもらっていいでしょう。
4Gamer:
なるほど,よく分かりました。
……あぁ,もう時間がないですね。最後に一言,Tabula Rasaに期待している4Gamer読者にメッセージをお願いします。
■ギャリオット氏のビデオメッセージは「こちら」(17秒:8.5MB,MPEG-1)
ギャリオット氏:
日本のみなさんこんにちは,ロード・ブリティッシュことリチャード・ギャリオットです。私は今,NCsoftでTabula RasaのExecutive Producerを務めています。4Gamer読者の皆さんに挨拶させてもらうと共に,Tabula Rasaをあとほんの数か月で完成させることを約束します。それでは,Tabula Rasaの世界で会えることを楽しみにしていますね。
4Gamer:
本日は,お忙しい中,時間を割いていただいて,本当にありがとうございました。
氏の言葉を信じるならば,2006年夏にはTabula Rasaが(クローズドな形で)公開され,2006年内には,一般公開もされるという。
果たしてTabula Rasaは,現在のMMORPG市場のパワーバランスを突き崩すことができるだろうか。そして,自らがその基盤を作り上げたMMORPGというゲームジャンルを,自らの作品で壊すことができるのだろうか。一刻も早く,Tabula Rasaが一般公開される「歴史的な1日」に立ち会いたい。(大路政志)
- 関連タイトル:
Richard Garriott's Tabula Rasa
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