インタビュー
安藤プロデューサー激白? “第二期”「疾走、ヤンキー魂。」は,武闘派ヤンキーライフを満喫できる喧嘩上等MMORPGに
オンラインでヤンキーライフを満喫していた人々の多くは,(類似するタイトルがないだけに)行き場をなくし,途方に暮れていたという。
そんな人々のやり切れない思い,そして復活を願う祈りが天に通じたのか,2007年6月,スクウェア・エニックスとゲームポットの間で本作に関するライセンス契約が締結され,ヤン魂。が“第二期”として復活することがアナウンスされ,大きな話題を呼んだ。
今回4Gamerでは,第一期からヤン魂。をプロデュースしている“ミスターヤン魂。”こと安藤武博氏(スクウェア・エニックス)と,同じく第一期から開発を担当している石渡大助氏(シンクアーツ)にインタビューを行った。
第二期のゲーム内容や,第一期の反省点,なぜこの時代に“ヤンキー”なのか? そして安藤氏のゲーム作りに対するスタンスなど,多岐にわたる内容でお届けしよう……としたら,ボリュームがかなりのものになってしまったので,本日(12月27日)と明日(12月28日)の2回に分けて掲載する。
本日お届けする前編では,第二期ヤン魂。のポイントとなる新戦闘システム「喧嘩ストロングモード」を軸に,ゲームの内容について聞いている。当初は,「今冬サービス開始予定」と発表されていたものの,先に行われた「Gamepot Festa 2007」の会場で「来春」への延期が告知され,ガッカリしている人も多いだろうが,とりあえずこの冬は,このインタビューを読みながら春に始まるヤンキーライフをあれこれ夢想していてほしい。
2Dから3Dになって,生々しいヤンキーが歩き回ることに
ヤン魂。の復活が,2007年5月にアナウンスされて7か月近く経ちました。でも,まだどんなゲームなのか,いまいち見えてきません。そこで現時点で話せる範囲で構いませんので,概要を教えてください。
安藤武博氏(以下,安藤氏):
今回,ゲームポットさんの協力もあって,ヤン魂。の“第二期”としてスタートすることになったのですが,まず見た目が変わってますね。第一期は2Dだったんですが,キャラクターなどはすべて3Dになっています。
4Gamer:
となると,第一期からのデータの流用などはしていないのですか?
安藤氏:
ええ,してません。本当にゼロから作り直しているんで,完全新作と言えるかもしれませんね。タイトルはそのまんまですけど。第一期の雰囲気やユニークなモーションなんかを,3Dで再現しているんです。ちょっと込み入った話をしてしまうと,第一期は2Dだったんで,グラフィックスデータの追加にも限界があったんですよ。一画面に表示できるキャラ数の制限もありましたし。でも3Dにしたことで,このあたりもクリアできるようになったんですね。
4Gamer:
なるほど,そういう恩恵もあるんですね。
安藤氏:
今回,ポリゴンもかなり使ってるんですよ。あと,背景は一枚絵なんですけど,相当作り込んでいるんで,アーケードゲームっぽく見えるかもしれません。
石渡大助氏(以下,石渡氏):
PCゲームにはあまりないタイプのグラフィックスになっていると思います。
4Gamer:
となるとけっこう違うゲームになっているということですか?
安藤氏:
なんとなく,“第二期始動”なんて言ってタイトルも変えずに始めてるんですけど,いざ画面が出てくると,ああこれまったく違う……っていうか新しいゲームだな,と。普通なら「疾走、ヤンキー魂。2」と付けてもおかしくないぐらいの,いわば正統な続編ですね。
4Gamer:
あらゆる面で進化していると?
安藤氏:
ええ。とくにヤンキーが,なんか生々しいんですよ。
「喧嘩ストロングモード」でムカつくアイツを殴るんだ!
戦闘システムも大幅に変わるそうですが。
安藤氏:
これが一番大きなポイントですね。第一期では,“フォーメーションバトル”といって,バイクの曲芸乗りみたいなことをやって戦う仕組みだったんですが,今回はこれに代わって“喧嘩ストロングモード”というものを用意しています。
石渡氏:
左クリックで攻撃,右クリックでガードというアクション性の高いモノなんです。
安藤氏:
まあ,簡単に言ってしまえば「熱血硬派くにお君」みたいな(笑)。
4Gamer:
一発でイメージが浮かびました(笑)。
安藤氏:
具体的な流れとしては,NPCの敵を見つけてロックオンして,左クリックで殴る。相手も当然,思考ルーチンを持っていて反撃してくるので,右クリックでガードする。こういう攻防とアクション性があるんです。
4Gamer:
これはマウスでコマンド選択をするのではなく,純粋にアクションをする感じなんですか?
コマンド選択ではありません。
安藤氏:
例えばクロスカウンターなんかは,相手がパンチを出してくるのを目で見て,あるタイミングで左クリックをすると決まるんです。
4Gamer:
繰り出せる技というのは,そのタイミングによって変わるものなんですか?
安藤氏:
実はステータス画面にデッキがあって,そこに技を設定していくことでコンビネーションが決まるんですよ。そこでジャブ,ジャブ,アッパーといった形に設定しておくと,これがワンクリックで出るようになっているんです。デッキに組み込む技は,レベルアップをすると覚えていきます。
4Gamer:
では,レベルアップしていけば,攻撃バリエーションも増えるということなんですね。
安藤氏:
そういう意味では,技を磨いて育てていくという要素もあるわけです。あとは……,ゲージが溜まると「真・三國無双」で言うところの“無双乱舞”みたいなものも出せたり(笑)。
4Gamer:
分かりやすい説明,ありがとうございます(笑)。
石渡氏:
その辺に落ちている角材なんかを拾って,殴ったりもできます。
安藤氏:
まあ,「ファイナルファイト」ですね(笑)。
4Gamer:
(笑)。
安藤氏:
角材を持って殴っているうちに,折れて使えなくなったりするんですが,そうするとまた点滅しながら復活するんですよ。
4Gamer:
ゲーム慣れしてる人には,何の違和感もないですね。落ちているのは,角材だけですか?
石渡氏:
バットなんかもありますね。あと……,電柱や電話ボックスみたいに,武器になりそうなものなら何でも。
4Gamer:
ああ,よく落ちてますもんねぇ。最近,電話ボックスはあまり落ちてないですけど。
安藤氏:
全体的な見た目は,懐かしのアーケードゲームっぽいんですよ。最新の技術で作っているのに見た目が'80年代っぽいんで,“80年代ゲームALWAYS”なんて呼んでるんですけど。
4Gamer:
映画の「ALWAYS-三丁目の夕日-」も最新の技術を使ってますからね!
安藤氏:
そういうことです! だから“ゲームALWAYS”なんです(笑)。
強い先輩を殴り倒すには仲間との協力が必要だ!
ところで戦闘は,タイマンだけなんですか? 集団戦みたいなものもあるんでしょうか。
安藤氏:
基本的にはほかのプレイヤーと共同して戦っていく感じをイメージしてます。まあ,「モンスターハンター」みたいな感じですね。……みんなやられてんなぁ,おかしい。ヤン魂。は新しいはずなのに。
4Gamer:
シンクロニシティですね。しょうがないです。
安藤氏:
まあほら,3人いないと強い先輩を倒せないクエストとか,やっぱりありますから。それこそ第一期のキャラクターで言うところの“信長先輩”は,ドラゴンみたいなもので。強いからねぇ。
4Gamer:
ああ,強い先輩って,本当に強いですからねぇ。
安藤氏:
一人で向かって行くとタコ殴りにされますからね。こういうの,みんな想像がつくと思うんですよ。「信長の野郎を倒しに行くから!」って仲間を集めて,みんなで「うぉーっ」と行くんですよ。
4Gamer:
集合場所に来ない奴もいそうですけど。ところでPvPみたいなものはないんですか?
安藤氏:
それは多人数対戦にしようかなと思ってるんですよ。陣地を作って,どっちが先にその陣地を落とすかみたいな形で。ヤンキーって,罠とか落とし穴とか作るじゃないですか。例えば,何週間に一度の週末は陣地取り! みたいな形にできるかな,と。相手の陣地の塀を破壊したり,登ったりしながら攻め込んでいくとか。
4Gamer:
なるほど。確かにヤンキーは多人数対戦をするイメージがありますし。
安藤氏:
バリケードとかも作るじゃないですか。そういうことをゲームで再現しようと思ってます。
ヤンキーだって回復したい! 種族(?)ごとの役割分担
では,タイマンのPvPなんかはないんですか?
安藤氏:
タイマンはどうしようかなぁ。
石渡氏:
どっかのタイミングで考えてはいますよ。
4Gamer:
現時点で積極的に用意しようというわけではないんですね。確かに,この戦闘システムでのタイマンは,単調になってしまう可能性がありそうです。
安藤氏:
そうなんです。みんなでやるのが面白いと思うんですよね,やっぱり。みんなでやるか,2人なり3人で共同して戦うかっていうのが,やっぱり主軸になるかなと思ってるんです。ゲームセンターで,筐体ごとの通信で4人ぐらいが共同して進んでいくタイプのものなんかがあるじゃないですか。ああいうイメージが基本になっているんで。
4Gamer:
なるほど,あくまでほかのプレイヤーとは協力する要素が色濃いわけですね。
安藤氏:
一人ではできないことがチームを組んでいるとできたり……というのは入れる予定ですよ。
石渡氏:
役割分担もけっこう明確に出てきますし。
4Gamer:
え……? ひょっとして,役割によって回復係になったりするのですか?
石渡氏:
そうですね,なるべくそういうチームワークが生きるような形にしたいです。
安藤氏:
言いたいねぇ,回復する人ねぇ……。
石渡氏:
残念ながらまだ言えないんですが。
4Gamer:
な,何だろう……。
安藤氏:
ゲームじゃなくて,それを演じる人が凄く増えるようなキャラクターを入れる予定です。回復してくれる……いわゆるマジシャンの役割。
4Gamer:
それは,プレイヤーが選べるものなんですか?
安藤氏:
いわば,種族の一つですね。
4Gamer:
え? ヤンキー……なんですよね? 種族っていったいどういうことなんですか?
安藤氏:
ファンタジー系のRPGには種族がいるじゃないですか。ドワーフがいて,ファイターがいて,マジシャンがいて,シーフがいて……と。これをヤンキー的にたとえていくと,果たしてどうなるか? というのが,実は第二期の見どころなんです。
4Gamer:
例えば,種族が異なると何が違うんですか?
安藤氏:
それはもう,遠くから攻撃するのが得意な奴もいれば,突っ込んで近距離戦をする奴もいる。それは体格にもよりますし。
4Gamer:
体格?
安藤氏:
第二期はキャラクターのバリエーションがあるんですよ。第一期はノーマルヤンキーとノーマルレディースしかいませんでしたが。だからさっき,電話ボックスを凶器に……なんて話がありましたけど,これを持てるキャラクターと持てないキャラクターがいるんですね。プレイヤーが種族というかタイプを選択できるようになっていて……ってこれ,いつのタイミングで公表したらいいんだろう?
難しいですねぇ。
安藤氏:
まあ具体的なことはともかく,ハガーとコーディがいるような感じで理解してもらえれば(笑)。
4Gamer:
さっきから本当にヒドイたとえばっかりですねぇ(笑)。その種族的なものの中には,攻撃魔法っぽいものを使えるのもあるんですか?
安藤氏:
ありますね。“ライトニングボルト”とかじゃないですよ? ……まぁ,強いてヒントを言うなら,シャンパンタワーとか。
4Gamer:
……ホスト?
安藤氏:
今はこれ以上は言えん。
4Gamer:
で,ではどのタイミングで明らかになるんでしょうか。
安藤氏:
いつにしようかなぁ。正直まだノープランで。
まるでジャンプ方式! 強敵を倒すと,さらなる強敵が!
そういえば,第二期ではボスキャラみたいなものも登場するんですよね。
安藤氏:
ボス,いますよ!
4Gamer:
この世界でボスを倒すと,その向こうに何があるんですか? 世界が平和になるわけでもないですよね?
石渡氏:
もっと強いボスが現れるんです。
4Gamer:
ああ,ジャンプ方式ですね。
安藤氏:
オラよりもっとつええヤツはいねえか? っていうのがずっと続いていく感じになるとは思います。強いヤツが出てきたら,それを凌駕するもっと強い奴が出てくるという方式で,その時点で一番強い奴に巻き込まれていく感じになるでしょうね。そんなボスにみんなで立ち向かったりするんです。まさにジャンプ的な……「魁!男塾」とか「ドラゴンボール」的な世界ですよ。ヤン魂。が続く限り,次から次へと強いボスを出していきます。
4Gamer:
それをやっていくと,地球上で一番強いのを倒したから次は宇宙へ! みたいになって,訳の分からないことになってしまうのでは? という危惧もあるのですが,大丈夫ですよね?
安藤氏:
大丈夫です! 第一期の最後には,バナナ星人がやってきてしまいましたが。
4Gamer:
ええ。あれはヒドかったですね。もちろん,いい意味ですけど(笑)。
安藤氏:
ヒドかったですよねぇ。あれ,言葉が先行だったんですよ。突然,「oToKoハルマゲドン」という言葉が降りてきちゃって。ハルマゲドンときたら,やっぱり宇宙から敵が来るんだろうな,と。ヤンキーが宇宙人と戦うという絵面も,面白いかな? って。
4Gamer:
確かにインパクトは強烈でした。ああいうノリが,第二期でも期待されていると思います。
安藤氏:
最初のうちは,世界観的にもいわゆるヤンキーものですよね。でも,そこからちょっとずつ,突拍子のないものは入れていこうかなと思っています。遊んでる人が,「こんなのがきちゃったよ,こりゃヒドイ!」って笑ってくれるようなコンセプトのものを。
4Gamer:
ニヤニヤしながら,「ヒドイな〜」って言っちゃうようなものを期待しています。
安藤氏:
任せてください。第一期で思ったんですけど,ヤンキーっていろいろなものと相性がいいんですよ。ロボットを操縦しても面白いし,宇宙人と戦っても面白いし,実写と組み合わせても違和感がないし。すべてを飲み込めるんですよね。「Second Life」よりも懐が広いかもしれない。
4Gamer:
Second Lifeの懐が広いのか? というのは置いておくとして,確かにヤンキーは何と組み合わせても面白いですよね。
ところで,第一期のフォーメーションバトルは,第二期には登場しないのですか?
安藤氏:
喧嘩ストロングモードで十分だと感じてもらえるように,これを掘り下げて面白くしていこうと思っています。ゲームシステムが乱立してしまうと,分かりにくくなってしまいかねないですし。でも第一期で好評だったのは確かですし。
4Gamer:
つまり,何らかの形で復活するようなことも?
安藤氏:
運営しながら考えていこうかな,とは思ってます。フォーメーションバトル専用の区域を用意するなどして,第一期のゼロヨンバトルのようなミニゲームっぽい扱いにするかもしれません。
4Gamer:
あくまでもお楽しみ要素……ということですか?
安藤氏:
やっぱりフォーメーションバトルって浅いので,よくできたミニゲームみたいなものだと思うんですよ。ミニゲームとして成立していて,そこで得られるポイントを喧嘩ストロングモードに生かせるとか,そういう立ち位置ならアリかなと思ってます。喧嘩ストロングモードに取って代わるような,メインのバトルシステムにはなりません。
属性アイテムを装備すると,殴った相手が燃えるかも?
ヤン魂。といえば,個性的なファッションも魅力でした。
安藤氏:
第二期ではさらに,アクセサリも追加するんです。これを装備すると,通常のRPGでいうところの属性みたいなものが付くんですよ。
4Gamer:
属性……というと? 男気溢れる属性とか,パシリ属性とかそういうことですか?
安藤氏:
いえ,これから作ることになるんですが,殴ると燃えるとか……そういうのがあると思うんですよ。あるじゃないですか,殴った相手が炎上しながら転がっていくという……「天地を喰らう」的な(笑)。
石渡氏:
敵にも分かりやすい弱点があるかもしれません。
4Gamer:
この敵は,火に弱い……といった形でしょうか。
安藤氏:
でもそういう細かいことより,「『ドカーン』とやったら燃えたー!」とか,「『ドカーン』とやったら雷が落ちたー!」とか,そんな派手さを楽しんでもらいたいんですよ。燃える……って面白いよね。一人が燃えたら,どんどん燃え移って,3人ぐらいのHPがちょっとずつ減っていくような。
石渡氏:
「三國志」でいうと火計みたいな感じで。
安藤氏:
たまに風向きが変わると自分が燃えちゃうんです。関羽が死んでもうた! みたいなね(笑)。
4Gamer:
え……!
安藤氏:
いやー,でも考えないとね,属性。正直もうちょっと先の話になるんで。どうやったら面白いかなって話し合ってる段階なんですよ。例えば,相手をしびれさせて動けなくするとかもアリだと思うんですよね。敵がピヨピヨしてる隙に,みんなで一斉に攻撃するとか。そういうバリエーションになってくると思います。真面目な話をすると。
4Gamer:
なるほど,比較的オーソドックスな形になるんですね。
安藤氏:
その辺は,普通のゲームからちょうだいしちゃいます。何せ,オレ達は十分新しいですから,これ以上新しいことは思いつけないんです(笑)。
4Gamer:
開き直りも芸のうちってやつですね。
安藤氏:
そういうことですね。まあでも,衣装とかアクセサリとか,面白くなると思いますよ。第二期ではリュックを背負えるようにもなりますし。
石渡氏:
バイクを乗るときの手袋なんかもありますし。
4Gamer:
そういう細かいところも注目だ,と。
安藤氏:
そうです。細かいところから大きなところまで,独特の雰囲気を出していきますから。
チャリやバイクにまたがったまま武将気分で突撃!
ところで,今回も乗り物は出てくるんですよね?
安藤氏:
ええ,チャリンコやバイクが,ちゃんと3Dになって出てきます。第一期とは違って,車輪もちゃんと回りますよ。第一期はアニメーションで誤魔化していたんですけどね(笑)。乗り物関連で言えば,改造アイテムもけっこう増えます。これも3D化したメリットなんですよ。
4Gamer:
相当個性的なカスタムもできそうですね。画面を眺めているときの楽しさも,第一期以上のものになりそうですし。
安藤氏:
それはもう!
しかもですね,自転車やバイクはただ乗ってグルグル走り回るだけじゃなく,戦闘のアイテムにもなるんです。まあ,簡単に言ってしまうと,「真・三國無双」の馬です(笑)。
4Gamer:
またですか(笑)。
安藤氏:
当然,チャリより原チャリのほうが強いですし,改造バイクはいわば赤兎です。これに乗ったまま,敵にドカーンとぶつかって行けるんです。こういう機能を持たせることで,カスタマイズしたり,眺めたりっていうだけではなく,ゲームそのものに乗り物が直接つながるようになったんですよ。
4Gamer:
さまざまな要素が,ゲーム性を高める方向を向いているんですね。
安藤氏:
そうなんです。今度は長く続けて遊んでもらいたいと思っているんで,長期的なプレイに耐えるような内容にしたいんです。
4Gamer:
そのためにも,戦闘システムなどを大きく変えてきたというわけですか?
安藤氏:
もちろんそれはあります。ただまあ,第一期の当時は倫理的な問題で腰が引けていた部分もありますね。まだ「Grand Theft Auto」なんかもない頃でしたから,露骨に殴り合ったりするゲームは憚られる空気があって。
4Gamer:
まあ,第一期も殴り合うゲームだったとしても,それほどバイオレンスなものにはなっていなかったでしょうね。
そうだと思うんですけどね。ただスクウェア・エニックスというのは,芸能事務所でいうならジャニーズ事務所みたいな会社なんですよ。でもオレは吉本興業みたいなゲームばっかり作るんで,全然かみ合わなくて。かといって,周囲に迷惑をかけるわけにはいかないですからね。自重した部分があったと。
4Gamer:
では,ついに時代が安藤さんに追いついてきたわけですね。
安藤氏:
そうかもしれませんね。第一期は,「ヤンキーのゲームだ!」と注目を集めたのに,実際には,チャリンコでグルグル回ってるだけっていう。
4Gamer:
それで,コンビニ前で座っているという。
安藤氏:
ヘンなゲームですよねぇ(笑)。
まあ,そういう意味でも,一から作り直したってということなんです。だからちょっと開発に時間が必要で,発表直後に遊べると思っていた人はお待たせしちゃって申し訳ないんですけど。
4Gamer:
その分,新・公式祭斗やブログ,ネットラジオでがんばっている……ということですか?
安藤氏:
そういうことです。
2008年5月23日の“ヤン魂。記念日”に正式化(予定)
4月にクローズドβテスト,5月にオープンβテスト,そして5月23日に正式サービスというスケジュールだそうですが……。ついこの間まで,“今冬”とのことでしたよね。
安藤氏:
予定は未定なので,さらに遅れる可能性もゼロではありませんが,このスケジュールで行きたいと思っています。
4Gamer:
クローズドβテストの開始に4月を選んだのは,なぜですか?
安藤氏:
いや,単に物理的に完成するのが4月だからです!
本当はね……もっと早くお届けしたいと思っていたんですけどね。やっぱり,一から作っていると時間がかかるんですよねぇ。石渡さんも無理って言うし。
4Gamer:
入学してすぐにヤンキーになっちゃう的な,いわば高校デビューとかそういう現象を意識していたわけではなかったんですね。
安藤氏:
まったくの偶然です! そう言われてみれば,確かにそういう季節ですね(笑)。第一期から“桜”は一つのキーワードになっていたので,開発スピードの問題があったとはいえ,このスケジュールでいければきれいにまとまりそうですね。うん。ちょうどいい季節だ,4月は。
4Gamer:
クローズドβテストの開始から5月23日の正式サービス開始まで,それほど時間はないですよね。
安藤氏:
ええ。実は5月23日って,ヤン魂。にとって記念日なんですよ。第一期のデモ版が始まった日で。だからなんとかして,そこに間に合わせたいという気持ちは強いですから。(石渡氏に)がんば……がんば……がんばろうね。がんばるしかない。ここはけっこう,石渡さんががんばるところなんで,とりあえずがんばれ!
石渡氏:
がんばります(笑)。
4Gamer:
オンラインゲームの特性上,開発状況をパーセンテージで表現するのは難しいと思うんですが,現状ではどれぐらいまで開発は進んでいるのですか?
正式サービス開始の段階がとりあえずの100%だとすると,60%ぐらいまではきたかな,と。やっと画面上でプログラムが動いているのが見えてきたところなんですが,ここからが早いんですよ。これまでずっと,画面が見えなかったんでドキドキしていたんですけど。
4Gamer:
これまでは,見えない部分の開発のみだったんですね。
安藤氏:
紙の上では,「これは面白い!」と思えるレベルまで,徹底的に話し合ったんです。でも,それがちゃんと面白い感じで形が見えてくるかどうかというのが,オレの職業だと一番ドキドキする部分なんですよ。本当に夢に出ましたもん。面白くなかったらどうしよう……って。それがね,いい感じで画面が出るようになってきたんで。
石渡氏:
けっこういい感じになってますよ。
安藤氏:
手応えはあります。ただまあ,これからなんですけどね。細かい部分もがんばって調整していかないといけませんから。今回はゲーム的に妥協するつもりがまったくないんで,「これは絶対に面白い!」って,心の底から言えるまでやりますから,期待していてください。
4Gamer:
楽しみです! が,スケジュールとの兼ね合いが難しそうですよね。
安藤氏:
だからスケジュールは予定なんですよ(笑)。あんまりこんなこと言ってると,ゲームポットさんに怒られちゃうけど。
前編はここで終了だ。
第二期ヤン魂。が発表されて以来,どうせ第一期に課金アイテムが追加される程度なんじゃね? ちょっとだけ新要素が追加される程度なんじゃね? ぐらいに思っていた人もいるだろう。
だが,Gamepot Festa 2007のレポートでもお伝えしたとおり,第二期ヤン魂。は,タイトルや見た目,雰囲気などは残しつつも,完全な新作として生まれ変わるのである。
じゃあ具体的に,どんな感じで遊べるのか? といった疑問を持っていた人もいるだろう。その疑問が,今回のインタビューで少しでも氷解したら幸いだ。
さて,明日掲載する後編では,第一期ヤン魂。の反省点や,安藤氏のゲーム作りに対するスタンス(と挫折),そして第二期ヤン魂。にかける意気込みなどをお届けするので,楽しみにお待ちいただきたい。
- 関連タイトル:
疾走、ヤンキー魂。
- この記事のURL:
(C)2003,2004,2007,2008 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved, Licensed to Gamepot Inc.