インタビュー
サービスの土台をきちんと見直してきたこの1年。「トリックスター0 -ラブ-」の運営チームにインタビュー
今回は同社のパブリッシング事業部 部長を務める岩澤泰洋氏と,ディレクターを務める深井洸介氏に,リニューアルから半年経った今の時点での手ごたえや,3周年を迎えた本作の今後の展望などについていろいろな話を聞いた。プレイヤー必見の情報が満載だ。
ジークレスト,パブリッシング事業部 部長,岩澤泰洋氏 |
ディレクターの深井洸介氏。開発者ブログの筆者で炎上経験多数 |
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。過去の掲載記事を見たのですが,最近はメディアへの露出というか,運営の皆さんがいろいろなところに顔を出すことが多くなってきている印象を受けます。ところで岩澤さんは,いつごろからトリックスターに携わっているのでしょうか?
ジークレスト 岩澤泰洋氏(以下,岩澤氏):
大体1年くらい前からでしょうか。昨年(2007年)夏に「トリックスター0 -ラブ-」へリニューアルしたのが,私が入って最初の大きな仕事です。
4Gamer:
運営に携わってからこれまでの1年を振り返って,いかがですか?
2007年の3月に大規模アップデートを行ってから,2007年8月まで,アップデートはほとんどありませんでした。そのためプレイヤーの皆さんにとっては,期待値が沸点近くまで高くなった状態で迎えたアップデートだったと思います。しかしコアプレイヤーにとって,そのアップデートの内容は肩透かしをさせてしまうものでした。
4Gamer:
確かにあのときのアップデートは,チュートリアルエリアの変更など,どちらかというとこれから始める人向けの内容が多かったですね。
岩澤氏:
こちらの狙いとしては,ゲームを全体的にリニューアルしたくて,低レベル向けのコンテンツから順番に積み上げるように修正していく予定だったのですが。しかしすでにそういったレベルを過ぎてしまった人にとっては,直接的なメリットが少なかったようです。この点は正直,反省しています。
4Gamer:
なるほど。ではリニューアルの対象となった新規プレイヤー層からは,どのような反響を得たのでしょう?
岩澤氏:
新規プレイヤーにとっては,そもそもの比較対象がないので厳密には分かりませんが,それほど悪い反応ではなかったと受け止めております。
4Gamer:
最初の話に戻りますが,岩澤さんが携わるようになってから,メディアへの露出やオフラインイベントの開催,Lievoとの提携など,ゲーム内外の動きが活発になっている印象を受けます。これは,意図してそうしているのですか?
岩澤氏:
以前の運営と比べ,プレイヤーの皆さんとのタッチポイントを増やすことを常に考えています。つまり我々だけのペースで運営を行うのではなく,プレイヤーが求めていることや不満などをなるべく正面から受け止めるということです。
4Gamer:
運営側のスタンスの変化によって,何か具体的な変化はありましたか?
岩澤氏:
大きな不満を抱えているプレイヤーは,自身のブログなどで直接,私の名前を出されるようになりました(笑)。名前を出される側にとっては結構しんどいものがあるのですが,それが一種のガス抜きになっている面もあるので,それはそれで構わないと思います。
以前の運営はメーカー主導というか,スタンドプレイで行ってきたという反省があるので,まずはこの部分を改善していくのが,今の大きな目標の一つです。
4Gamer:
なるほど。フィードバックを得るための手段というのは,主にサポートへのメールなどだと思うのですが,そのほかに何か特別なことはされていますか?
ジークレスト 深井洸介氏(以下,深井氏):
昨年の秋から,開発者ブログを公開していますが,ここには率直な意見がたくさん届きますね。例えばゲーム内でのイベントを行うと,「バランスが悪い!」といったお叱りの声もダイレクトに届いたりします。もちろん,どんな厳しい意見も,当たり前といえば当たり前ですが,削除などは行っていません。
4Gamer:
そうなんですか。そのほか運営するに当たってどういった点に注意されていますか?
遊んでいる側からすればいろいとな意見があるかと思いますが,サービスとして当たり前の事をしっかりしようというのも大きなテーマです。例えば,カスタマ対応についてはかなり人員を増やしておりまして,以前に比べるとだいぶ改善されているはずです。
4Gamer:
GMコールへの平均レスポンスタイムなどは,どれくらい短くなっているのでしょうか?
岩澤氏:
トリックスターでは6:00PMまでにいただいたGMコールは,翌日の6:00PMまでに対応する,というルールで行っています。これからこぼれる事例は,現在はほとんどありません。恥ずかしい話ですが,トリックスター0 -ラブ-のリニューアル以前は,GMコールへの対応が2日後といったケースもありました。
そのほかには,サーバーや回線の増強を行うなど,プレイヤーの視点から見て違和感のないサービスの実現を目指しています。時間制限付きのアイテムがサーバーメンテナンスにひっかかったり,サーバーにつながらなかったりなどというときには,普通よりも厚めに補償を行ったりして,グレーゾーンの事例についても基本的にプレイヤーにとってメリットが出るように対応しているつもりです。
4Gamer:
この1年間は,サービスとしての土台を再度見直すことが目標だったのですね。
岩澤氏:
そうですね。振り返ると,私が携わる前のサービスは屋台骨にゆがみがあったような気がします。
4Gamer:
そのゆがみは,現在ではほぼ直ったのでしょうか。それとも,まだ一部で残っているのでしょうか。
岩澤氏:
今のところ大きな問題点はないと認識していますが,今後サービスを続けていく以上,またどこかでトラブルが発生するかもしれません。そのときにスムースに対応できる流れのようなものは出来上がっていると思います。
導入したコンテンツをチューンアップし,
より良いサービスを目指す
4Gamer:
それでは,サービスとしての土台をしっかりとした上で,身も心も綺麗になって今回の3周年を迎えることができた,と……?
岩澤氏:
そう言いたいところなのですが(笑)。実は昨年夏以降のアップデート項目の修正箇所がまだたくさんありまして,それがなかなか終わらないのです。良かれと思って導入したコンテンツでも,実はダメだったりして大変ですね。
4Gamer:
なるほど。失敗したアップデート項目とはどういったものでしょうか?
岩澤氏:
4Gamer:
確かにあのドリルは,リニューアル後のチュートリアルになくて,一体どうしたのだろう? と思っていました。
深井氏:
現在は,チュートリアルが終わってすぐの場所に,1日に1回ドリルを無料でプレゼントしてくれるNPCを設置して対応しています。しかし当時は,そういったところまで見えていませんでした。
岩澤氏:
そのほかには,最近ゲーム内での物価が全体的に高くなりつつあるので,クエストの報酬で得られる金額を引き上げたりとか。そういった細かな調整を随時行っています。
4Gamer:
お話を聞いていると,3周年だからといって派手なイベントをドーン! というわけではないようですね。
岩澤氏:
3周年を迎えるまでに,過去に実装したアップデート関連のチューニングは終えたかった,というのが本音ですね。ちなみに,そのほかの各コンテンツの反響などについては,こちらの用紙にまとめておいたのでご覧ください(下の写真参照)。
4Gamer:
なるほど,コンテンツ単位で「ユーザーの反応」をまとめられているんですか。この1年のアップデートを振り返ると,「忘却の塔」は突き抜けていますが,それ以外は割と初〜中レベル帯向けの項目が多いですね。
岩澤氏:
どちらかというとそうなっています。
4Gamer:
日本はトリックスターの運営が3年間続いていることもあり,プレイヤーのレベル帯も高くなってきていると思います。つまりハイレベル用のコンテンツを求める声が多そうだと思っていたのですが,このあたりについてはいかがでしょうか?
そこはここ1年くらいずっと議論している部分なのですが,現在は初心者向けのチューニングを優先的に行っています。今後もずっとオンラインゲームとしてサービスを行っていく以上,常に初心者の人を入れていかないと,ユーザー層が停滞してしまいます。そのうえで低レベルから高レベルまで,まんべんなく対応していくことが大切だと考えています。
しかし上級者の人達をないがしろにしているわけではなく,例えば一度初級者向けのアップデートを行ったら,次のイベントは上級者向け,といったようにバランスを取っています。
ログインするたびに新しいことが起きる
数々のアップデートが準備中
4Gamer:
今後はどのようなアップデートを行っていくのでしょうか。
深井氏:
駆け足の説明になってしまいますが,4月の主なアップデート項目については「Bossペット販売」,Flashゲームの「すごろく」「外見装備販売」「一次転職スキル追加」「初心者エリアアップデート第二弾」などといったものを予定しています。詳しいことは追ってお知らせできると思います。
5月以降のアップデートについても,ある程度は決まっているのですか?
深井氏:
現在決まっているものだと,特別地域で実施するイベントである「フェスタゾーン」や,まだアップデートが行われていないエリアを一括アップデートする,といったものがあります。こちらも,いずれお知らせしたいと思います。
4Gamer:
なるほど。割とキッチリとアップデートが決まっているMMOも珍しいですね。
そういえば思い出したのですが,「スカッとゴルフ パンヤ」も,トリックスターと同じくNtreevの開発タイトルですね。どちらからもプレイヤーを飽きさせないための勢い,のようなものを感じます。
岩澤氏:
パンヤとは開発部署が違いますが,トリックスター関連の部署も相当な人数がいますよ。中規模のMMORPGなら,1年もあれば1本くらい作れそうな規模だと思います。
4Gamer:
確かにこれだけのアップデートが行われているのなら,とりあえずログインすれば何か新しいものが待っているだろう,といったワクワク感のようなものがあります。さて,そのほかに何か長期的なプランなどありますか?
岩澤氏:
あとはそうですね……ブラウザや携帯電話などを使い,何らかの形でトリックスター本編と関係付けられる外部ツールを開発しています。例えばブラウザでミニゲームをやり,その結果がトリックスターに反映されたりとか。あるいはゲーム内にいる友達と簡単な連絡が行えたりしたら便利ですよね。
トリックスターのプレイヤー層は高校生ぐらいの年齢の人が多いので,携帯電話との連携はとくに力を入れていきたい部分です。
4Gamer:
ゲーム内から携帯電話に連絡できると面白そうですよね。「ちょっとゲーム内でヘルプしてよ!」とお願いしたり。このプランが形になるのはいつ頃でしょうか?
岩澤氏:
目標としては,5月〜7月くらいになっています。
4Gamer:
それはまた,意外と早いですね。
深井氏:
さらに現在,「覚醒システム」というものを検討しています。これはキャラクターが忘れていたスキルを思い出すという設定で,おそらく二次職よりもさらにハイレベル向けの内容になるはずです。覚醒システムは,夏から秋にかけての導入を目標としています。
4Gamer:
新たに覚えるのではなく,忘れていたものを思い出すという設定はなかなかユニークですね。楽しみにしています。それでは,トリックスターのプレイヤー向けにコメントがあれば聞かせてください。
岩澤氏:
深井氏:
今年は4月にオフラインイベントがありますし,これまで以上にプレイヤーの皆さん達と一緒に盛り上げていければと思っています。意見などがありましたら,ブログを通じてでも構わないので,どしどしお寄せください。
日本での運営が始まって3周年を迎えるトリックスター0 -ラブ-。3周年だからといって,なにやら派手なアップデートがあるわけでなはないものの,本作がオンラインサービスとしての基盤を着実に固めていっているのは,プレイヤーにとって嬉しい話だ。運営としてやるべきことをちゃんとやるという姿勢が頼もしいと感じた人も多いだろう。
岩澤氏をはじめとした関係者達は,トリックスターを長いスパンで育てようという気持ちが強い。コアプレイヤーを満足させるために,ハイレベル用のコンテンツを数多く追加していって,気がついたら新規参入者があまりいなかった,というタイトルも多くあるが,初心者向けの手厚いサポートを行うトリックスターでは,そうはならないように思えた。初心者にも安心してお勧めできるタイトルへと成長しつつあるという印象を受けたインタビューだった。
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