"Commandosシリーズ"は,6人の個性的な特殊技能員を操って過酷な戦場で任務に挑むという,いわゆる昨今の"リアルタイムストラテジー"とは違う存在だ。それが今では「Commandosタイプ」という一ジャンルとしてほとんど確立し,この形式で開発されたゲームの中にもいくつかの良作が誕生している。
非常に高いゲーム性と高等知能テスト的な仕掛けを持つ「Commandos」は,もはや不朽の名作としてゲーム界に輝く,大変な知名度と人気を誇る作品だ。とても美しく,精密かつ写実的に描かれた戦場ステージマップは,実はパズル盤のように意地悪なトラップが随所に仕掛けられている。グリーンベレーやスナイパー,工兵といった特殊技能員を効果的に運用することで困難なトラップを回避していく。
今回,
Eidos Interactiveが最も慎重に取り扱っていた作品,それが約2年ぶりのシリーズ最新作となる
「Commandos3:Destination Berlin」だ。
今回のメンバーは6人編成。ナターシャはいるが犬はいなくなり,ドライバーがなくなった代わりに全員が運転できるようになった。
開発スタッフがまず最初に言ったのは
「難度が高すぎたというこれまでの反省を踏まえ,今回は難度をグッと引き下げた」ということであった。実際,最初のレベルセレクトに初めて"EASY"が加わり,ステージは狭くミッションは短めに作られているそうだ。
「3」のシングルプレイモードは,
「Stalingrad」「Central Europe」「Normandie」という3本のキャンペーンと18シナリオが用意されている。やはりというか,逆にこのシリーズにしては珍しくというか,今回は有名映画などの作品を強く意識しているらしい。「Stalingrad」は同名の戦争映画からインスパイアされたのは間違いなく,いきなりスナイプ合戦からスタートする。
「Normandie」も「プライベート・ライアン」を明らかに意識した作りとなっており,揚陸艇からオマハ・ビーチへと至り,壮絶な上陸戦を繰り広げる。すさまじい銃撃と砲撃にさらされ血みどろと化していくビーチの光景は,これまでのストイックな「Commandos」シリーズからは少々違和感を感じるほど,ミーハーなチョイスではなかろうか。
「Central Europe」は,いきなりベルリンでの隠密行動から始まるという,最もシリーズらしい内容となっているようだ。しかしいきなり大勢の敵兵士の集会が始まり,この解散直後からゲームスタートする。本当に今回は難度低めに作られているのだろうかと首を傾げたくなるような,いずれも実に挑戦的なステージであった。
ただし今回見させて頂いたのはE3向けバージョンで,実際にはチュートリアルステージが最初に挿入される。ステージ構成の順序にも今後変更が加えられるかもしれない。
今回はお馴染みの俯瞰視点ではあるものの,
3D描画であることを最大限に生かしたパワフルなステージ構成が多かった。基本的にカメラは拡大縮小回転が可能で,建物の裏側まで駆使した三次元的な活動が行いやすくなっている。
トータルの景観として「実にいい雰囲気」なステージグラフィックスの描き込みは,前作までの静的なイメージから動的なイメージへと変化。何もかもが躍動的に,まさにプレイヤーの都合とは関係なく生き生きと動いている。
爆撃機の襲来で建物が崩れ落ちるシーンでは,物理計算によりリアルな倒壊描画を実現させているそうだ(俯瞰視点なのにそういう部分に気を使うのが,いかにもこのシリーズらしい)。空挺部隊のパラシュートの布の質感と,着地してパラシュートがしぼんで地面に折り重なる様子も,そこまで凝る必要があるのかと心配になるほど美しい。
また今回はミッションがスタートする前に,
6人のキャラクター同士の会話シーン(バストアップのグラフィックス付き)が挿入される。こういう演出の追加を嫌がる人もいるかもしれないが,これまで希薄だったキャラクターの内面的な個性は引き立つだろう。
「3」最大の特徴の一つは,
マルチプレイモードの追加だろう。ついに「Commandos」でもマルチプレイが楽しめるのだ。
基本的なゲームモードは"デスマッチ"と"キャプチャー・ザ・フラッグ"の2タイプ。これに複数の軍形態(NPCの敵兵あるいは味方兵が登場するなど)を組み合わせることで,豊富な対戦バリエーションを楽しめる。
プレイヤーは各人が一人の特殊技能員に扮し,互いに協力しつつ敵チームと対決するというのが,本作品のマルチプレイの基本的なスタイル。6人対6人の2チーム対決のほか,3人4チームといった編成も可能。
いよいよパワフルなPCスペックを必要としそうな気配はあるが,シリーズファンの人はもちろん,新たに始めたい人にも適した作りを目指した開発が進められているようだ。2003年夏の発売を楽しみに待とう。