[IGF2002 03]Rise of Nations
文・写真 奥谷海人
今回のIGFで一番の目玉となったのが,Big Huge Games社が2年余りに渡って開発しているリアルタイム戦略ストラテジーゲーム
「Rise of Nations」(以下,RoN)である。Big Huge Games社の名前は人によっては聞き慣れないかもしれないが,同社の設立者兼RoNのリードデザイナーは,ブライアン・レイノルズ(Brian Reynolds)氏なのである。
……といってもなお分からない人もいることだろう。彼は,Microprose社やFiraxis Games社時代には,"シミュレーションゲームの父"ことシド・マイヤー(Sid Meier)氏の右腕として活躍。実質的には「Civilization 2」や「アルファ・ケンタウリ」のリードデザイナーとして貢献した男なのである。だからこそ,本作でも帝国建設をテーマにしたゲームを出してきたのは,当然のことだといえるだろう。
ところが,読者の皆さんも画面写真を見て気付くだろうが,視覚的には非常に"Ageシリーズ"と非常に似た作品となっている。しかも,ジャンルもRTSであるというため,
実際にデモを行われるまでは少し不安だったこと否めない。それでもゲームが進んでいくうちに,ゲームプレイの基本はやはりシヴィライゼーションを踏襲しているのが分かってきた。
ゲームは,まず18文明から自分の国家を一つ選択し,首都をマップの視界領域に建設するところから始まる。そこから,農民ユニットを使って農作や狩りなどで食料を得たり,金や木材などの資源採取を行う。当初は,まだスカウトを送り込んでない地域は"Fog of War"と呼ばれる黒い闇で覆われているし,都市の周辺には学校などの施設を建てるなど,インタフェースも含めてAoEのノリに近い。
時代は細かく分類されており,Ancient Age,Classic Age,Gunpowder Age,Enlightenment Age,Industrialization Age,Modern Age,Information Ageの8種の時代へと,決められた施設を建築する条件をクリアすることによって変化していく。マルチプレイヤーモードの場合は,どの時代からもスタートでき,どの時代で終わるかを決めることもできるのだと,レイノルズ氏の共同開発者であるダグ・カウフマン(Doug Kaufmann)氏はいう。これらの時代には,"ワンダー"(世界の不思議)が二つずつ用意されていて,それをいち早く建てたプレイヤーには特典が付くという趣向だ。またシングルプレイヤーモードでは,18文明のうち五つの文明に焦点を当てたシナリオが用意されている。まだ最終的なチョイスは未定だというが,これらはローマ,フランス,イギリス,中国,ベントゥ(南アフリカ)になるだろうとのことだ。マップは,一番小さいものと大きいものを比較すれば10倍以上はあろうかという面積差になっている。これらのマップを使って,2人から16人までのデスマッチやチーム対戦もできるのだ。
さて,序盤のゲーム進行がAoEに非常に似ていることは前述のとおりだが,それは
プレイヤー同士の対戦を目的としたRTSであるということが大きな理由となっているのだろう。結局のところAoE自体も,それ以前にリリースされた「ウォークラフト」や「コマンド&コンカー」などから見れば,同じようなものであることは事実なのだ。
ただし,レイノルズ氏自身もその点を承知しているようで,ゲームの進行に緩急をつけることで,特色を(とくにAgeシリーズとの違いを)出そうとしているようだ。彼は,RoNの根底に流れるゲームデザインの哲学として,
「人間の壮大な歴史をランチタイムでプレイできてしまうような試み」をしているのだという。そうなると,リアルタイムでのプレイというアクセクしたゲーム時間の中で,シヴィライゼーションのようにディテールまでに目を向ける時間があるのだろうか,という疑問がフツフツと沸いてくる。しかしそれも心配はいらないようで,レイノルズ氏曰く,
「ゲームの設定時点でいろんな制限を課すことができるようになってので,ゆったりとプレイも楽しめるし,RTSに慣れたプレイヤーなら,ほかの同ジャンルのゲームと同じように40分程度で満喫できるようにもなっている」と,自由度の高さを強調していた。RoNでは,ユニットや資源などのマネージメント要素を減らし,戦略要素を増やしているのである。
さてしばらくゲームが進行していくと,少なくとも内政面ではシヴィライゼーションのようなゲームプレイになっていく。周囲に都市を建設し,その周りを施設や農業地で取り囲みながら領土となる境界線を広げていくのである。境界線の内側であれば自国の都市を建設することもできるし,物見台や砦で防御を固めることもできる。さらに,最終的には金や樹木に換算されることになる大理石やブドウなどの嗜好品もあり,それを採取するための小屋を建てることも可能なのだ。この境界線という概念は,プレイヤーには通常のRTSよりも内政を重視させるための仕かけであるようで,序盤から中盤にかけては都市を増やしていくことで領土を拡張するというプレイに終始することになるだろう。
戦闘シーンもAgeシリーズのような感覚で進み,敵の都市を奪うことで自分の領土をさらに押し広げる。都市周囲の施設を破壊してもよいが,都市制圧後しばらくすれば範囲内にある施設も自分のものになるので,ここは敵の生産力を減らすために周囲から攻めるか,とにかく都市を狙って中心部に侵攻していくかという,プレイヤー個人の戦略的な決断によるところが大きくなるはずだ。通常のモードでは,首都を制圧した時点でゲームオーバーになるようだった。
ユニットは,各文明にユニークユニットが二つずつ用意されており,通常ユニットも時代が進化することで,弓兵からライフル兵へと進化させることができる。また,図書館からは"学者"ユニットを輩出でき,これを"ジェネラル"にして軍団の攻撃手法や士気向上に役立てたり,スパイとなって敵地の施設を破壊したり情報を得たりすることが可能だという。敵対する文明とは細かな外交も楽しむことができ,物資の輸出入や戦争協力を要請したりするなどに至っては,細かな部分で"シヴィライゼーションしている"のだ。
Big Huge Gamesの処女作となる「Rise of Nations」は,
アメリカでは2003年春のリリースを目指して開発されており,歴史系RTSファンには期待のゲームとなるに違いない。
日本語化も前向きに検討されているようだった。誰が見ても「Ageシリーズとシヴィライゼーションの結合」だが,それはそれで非常に面白そうで楽しみだ。