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「Duke Nukem Forever」を実際にプレイ。ラスベガスで行われたイベントで堂々の帰還を果たした,ゲーム史上最低かつ最強の男,デューク・ニューケムの近況をレポート
ストリップバーで公開されたDuke Nukem Forever
会場となったのは,ラスベガスのメインストリートにほど近いストリップバー,「Deja vu Showgirls」で,今回のイベントに合わせて,ご丁寧にも看板や店内のポスターまでが取り替えられ,本作の主人公であるデューク・ニューケムが経営しているという体裁が取られていた。彼の店の名前は「Duke Nukem's Titty City」だ。
ゲームの開発を担当するGearbox Softwareの,本作にかける強い意気込みが伝わってくるような舞台設定だ。ちなみにTitsとは,英語で「おっぱい」を意味する(かなり品の悪い)俗語であり,つまりは「おっぱいの街」というなんとも直球勝負な店名になる。2K GamesやGearbox Softwareのスタッフ達は,Titty CityというロゴのついたTシャツを着せられていたが,さすがに,なんとなく気まずそうだった。
「Duke Nukem Forever」公式サイト
「Duke Nukem Forever」日本語ティザーサイト
さて,日本でも公式サイトがオープンし,リリースも2011年夏になることが発表されたDuke Nukem Forever (関連記事)。ご存知のように,前作「Duke Nukem 3D」は,まだWindowsがポピュラーになる以前のOS,「MS-DOS」が使われていた1996年1月にリリースされて,カルト的な人気を獲得したFPSだ。そんなDuke Nukem 3Dの続編として,Duke Nukem Foreverの制作発表が行われたのは,前世紀である1997年4月28日のこと。以来,実に約15年の歳月が過ぎてしまったことになる。制作発表後に何が起きたのか? なぜDuke Nukem Foreverが伝説になってしまったのか? について知りたいという人は,以下の記事をぜひお読みいただきたい。
→開発8年目に入った,あの「迷作」について
→さよならデューク 〜 長いような短いような「Duke Nukem Forever」の歴史
→どうなるデューク 〜 マッチョヒーローを巡る攻防戦が激化
Duke Nukem 3Dはデベロッパの3D Realmsが独自に開発したゲームエンジン,「Build Engine」を使用して制作されたゲームだったが,開発を1人で受け持っていたKen Silverman(ケン・シルバーマン)氏が3D Realmsを退社したことでBuild Engineのアップデートが不可能になってしまう。そのため,1997年にはid Softwareの「Quake II Engine」をライセンスすることが発表された。発表当時は1998年のリリースが予定されていたらしいが,1998年6月になると今度は「Unreal Engine」を使用すると発表され,それに伴って発売日も2000年末に延期となった。
この発表の前後から,販売を担当するパブリッシャも目まぐるしく変更され,Duke Nukem 3Dを販売したGT Interactiveから,Gathering of Developersへ,さらにTake-Two Interactiveへと変わっていった。しかし,いくら待ってもDuke Nukem Foreverが発売される気配は一向になく,いつしか,数多くのベーパーウェア(Vaporware=仕様だけが発表されたが,実際には作られなかったソフトウェア)の仲間入りすることになる。
ゲームタイトルをもじって,「Duke Nukem For-Never」などとも呼ばれ,多くのファンの購買予定リストから消えていったのだ。
Duke Nukem Foreverは,
独自開発の「Duke Engine」を使用
もはやネタと化し,作られているのかどうかも分からない状況のDuke Nukem Foreverだったが,2009年5月8日,突然3D Realmsが閉鎖。その直後には,パブリッシング契約を結んでいたTake-Two Interactiveが3D Realmsに対して訴訟を起こし,いよいよDuke Nukem Foreverの存在そのものが怪しくなってきた。このあたりの経緯は,上記の「どうなるデューク 〜 マッチョヒーローを巡る攻防戦が激化」に詳しいが,実は,この前後の出来事を,今回のイベント会場で聞くことができたので,以下に掲載したい。
答えてくれたのは,シニアプロデューサーのMelissa Miller(メリッサ・ミラー)氏だ。
4Gamer:
はじめまして。まずMillerさんの役職と経歴を教えてもらえますか。
Miller:
私は2K GamesでDuke Nukem Foreverのシニアプロデューサーを担当しています。以前は,「BioShock」や「BioShock 2」のプロデュースに関わっていたのですが,今回はなぜか,Duke Nukem Foreverという,これまでとはまったく異なるプロジェクトを担当することになりました。
4Gamer:
具体的に,2K GamesあるいはGearbox Softwareが開発中だった「Duke Nukem Forever」のプログラムを入手して,制作を開始したのはいつ頃のことなのですか? 3D Realmsとの係争中,「Duke Begins」というプロジェクトの存在が明らかになりましたが。
Miller:
Take-Two Interactiveと3D Realmsの裁判が始まって約1か月が経った6月中旬,両社の話し合いの結果としてDuke Nukem ForeverのIP(知的財産権)と彼らが作っていたプログラムをこちらが引き取ることになりました。3D Realmsから独立したメンバーは,今はGearbox Softwareの開発チームとして作られた,Triptych Gamesというメーカーにいます。彼らのリーダーは,1991年の「Duke Nukem」から一貫してプロジェクトに関わってきた,Allen Blum(アレン・ブルム)氏です。
4Gamer:
そういうことがあったのですね。ところで,Gearbox SoftwareがDuke Nukem Foreverのプロジェクトを引き受けたとき,ゲームはは何%ほど完成していたのでしょうか?
Miller:
それについては具体的に把握していないのですが,ゲームはかなり完成に近いものであったと聞いています。ただ,雑に作られている部分があったり,ボイスも中途半端な状態であったりで,プログラムをアップグレードさせていく必要がありました。今は,ほとんど完成しており,さまざまなチューンアップを行っている段階です。
4Gamer:
ところで,ゲームエンジンは,Unreal系のものをライセンスしているのですか?
Miller:
いえ。ゲームに使用されているのは,強いて名づけるなら「Duke Engine」とも言うべきものです。長い開発期間でさまざまなゲームエンジンが試されたことはご存じでしょうが,結局は自社開発のゲームエンジンになったのです。開発が伸びた理由も,そのあたりにあったようです。
4Gamer:
そうなんですか。独自開発のエンジンということで,MODサポートの可能性が気になりますが。
Miller:
それについては,現時点ではお答えできません。
4Gamer:
それは残念です。本日はありがとうございました。
正式名称が「Duke Engine」というわけではないようだが,Duke Nukem Foreverは独自開発のゲームエンジンで開発が進められており,そのことが理由でゲーム開発が遅延したというのは面白い話だろう。
2006年に3D Realmsは,スウェーデンの大学に所属する研究者が開発した「Meqon」という物理エンジンの採用を発表しているが,こうしたことから,Duke Nukem Foreverには,ほかのゲームエンジンにはない機能を使ったユニークなグラフィックスが存在する可能性が十分にある。
ストーリー 〜デュークが挑む新たな戦い
バーということもあって,イベント会場は割とこぢんまりしており,そこに約30台のXbox 360が並べられていた。デモは,セーブデータのないゲーム開始時点の設定になっており,難度を三段階に調整できた。筆者はとりあえず,Normalモードでのプレイを開始した。
ゲーム序盤は,いかにもDuke Nukemシリーズらしく「トイレシーン」だ。丁寧なことに「放尿:LT」という表示が画面に表示されるので,それに従うとデュークが用を足す。約15年待って帰ってきたデュークとの再開は,よりによってこんなシーンからだ。
トイレは,ハリウッドを本拠する架空のアメフトチーム,Detonatorsのホームスタジアムにあるらしい。ちなみに,大小のトイレのほかに,シャワーを浴びたり,蛇口をひねっって水を出したり,さらには手の乾燥機を作動させたりできるなど,必要以上に細かい。
用を足してトイレを抜けると,EDF(Earth Defense Force)の隊員達が仮の本部に利用しているロッカールームがあり,ホワイトボードを使って彼らが作戦にもならない作戦を立てているところに出くわす。このホワイトボードにもインタラクトができ,赤や黒のマーカーで何かを書いたり,イレーサーで消したりなどが可能だ。こんな無駄な機能がいっぱいあるから,開発が遅れたのではないだろうか,と思ったが言わないことにした。
ところで,アメフトチームのスタジアムと聞いてピンと来る人は,Duke Nukem 3Dの経験者だろう。Duke Nukem 3Dのエンディングは,ハリウッドの有名なサインも見えるスタジアムを舞台に,どういうわけかチアリーダーの応援を受けているラスボス,Cycloid Emperorと戦うというものだった。
今回のDuke Nukem Foreverのデモでも,ロッカールームを抜けてスタジアムに向かおうとすると,姿は見えないが,どうやらCycloidらしい大型エイリアンがバカスカとロケットランチャーを撃ち込んで来る。「前作のエンディングが,今回のオープニングなのか」と思いながら,ロケット弾を避けつつ,EDFメンバーから2連のロケットランチャー“Devastator”を受け取り,スタジアムに向かうエレベーターに乗り込むのだった。
エレベーターを降りると,スタジアムには雨が降り,しずくで画面が濡れているなど,グラフィックスの圧倒的な進化が感じられるが,それ以外の状況は(なんと)ほとんど同じだ。
たちまち,筆者の脳裏にDuke Nukem 3Dの思い出が甦ってくる。Cycloidの放つロケットが弧を描いて向かってくるが,Devastatorを撃ちながら横に移動すれば,ロケット弾はほとんど当たらないというのも,15年前と一緒の仕様ではないか。しかも,Cycloidを倒したあと,転がり落ちた眼球をゴールポストの中央に蹴り込むところまでまったく同じだ。
ここからどうやってゲームが発展していくのか,と思ったとたん,これまでのシーンが実は主人公デュークが自分のために作らせたゲームを遊んでいたという設定であることがハッキリする。
ゲームで遊んでいるシーンも,所有するカジノの屋上にあるペントハウスで,Holsom Twinsという学生服を着た双子と一緒にプレイしており,女好きであるという設定は変わっていないようだ。
ところが好事魔多し,ラスベガス上空で静止状態にあった巨大宇宙船がいきなり動き出し,あのエイリアン達が再び侵略を開始するのだった。
アメリカ大統領とEDFの長官は,話し合いの決着を優先してデュークに静観することを勧めるものの,デュークは命令に従わない。なぜかというと,エイリアンの侵攻の目的は,地上の美女達を奪って,地球征服に不可欠なハイブリッド生命体を作り出すということだったからだ。彼は,美女がさらわれるのをじっと見守っているような男ではないのだ。
ゲーム序盤,6つのマップのインプレッション
今回のイベントでは,1時間以上プレイする機会があったのだが,率直な感想を言えば,ゲーム冒頭のスタジアムのシーンで感じたように,本作が「Duke Nukem 3Dそのまんま」だったということになるだろう。
デュークの声も前作と同じJohn St. John(ジョン・セントジョン)氏が担当しており,敵を倒すと「Hail to the King」(王を讃えよ),「Come Get Some」(かかって来やがれ),「Balls of Steel」(鉄のタマタマ)などと喜ぶのも同じである。NPCがやたらと長いセリフを話すのは,さすがに2011年発売のゲームといったところだが,全体の雰囲気はまったく同じだ。
おそらくは,約15年もゲームファンを待たせた手前,「Duke Nukemは今も昔も変わらない」ことを,プレイの最初に強く印象づける演出なのだろう。今回プレイした6つのマップのうち,最初の5つはほとんどのシーンが室内で,通風孔のような狭苦しい部分を進むシーンも少なくない。使用する武器も,エイリアンのアサルトウェポン,ピストル,ショットガン,パイプ爆弾などで,登場するエイリアンもトゥルーパーやピッグコップなどと,グラフィックスの進化でリアルな見た目にはなっているが,マップや敵の雰囲気は,前作とまったく同じなのである。
前作と同じプレイ感覚は,悪いことではないと思う。Duke Nukem 3Dをリアルタイムでプレイしていた世代は,今では30代後半以上だろうが,多くが「あのときの興奮が,最新の技術とハードウェアでリファインされたらどうなるだろう」と考えているはずだ。また,Duke Nukem 3Dを知らない世代には,多少古めかしい昔のFPSのプレイフィールが,逆に新鮮なものに感じられるかも知れない。
もちろん,新しくなった部分も少なくない。例えば,ヘルスの自動回復は最近のFPSのスタンダードだ。ちなみに,ヘルスはEGO(エゴ)という名前で呼ばれており,これは,無敵の男であるデュークは多少のことでは死なず,相手にうっかり弾を撃ち込まれてプライドが傷つき,EGO(自我)が崩壊したときに初めて死んでしまうという理由によるものだ。
そのため,EGOメーターが最小になって赤く点滅し始めたときに弾丸を受けても,必ずしも死んでしまうわけではないし,中ボスなどを倒せば,EGOメーターがMAXになる。さらに,ビールを飲むと攻撃力がアップし,ステロイド錠を飲めばしばらく無敵状態になる。
特殊な銃で敵を小さくして踏みつぶすというフィーチャーも健在だが,今回はエイリアンにミニチュア化されたデュークが,子供のリモコンカーに乗り込んで戦うといった場面もあった。
また,ゲーム中にはシークレットも多数用意されているようで,筆者が通風孔で見つけた部屋では,なんと2人の美女がエッチなビデオを撮影しており,これを見たデモ担当者は,なぜかえらい勢いで筆者を誉めたたえてくれた。
グラフィックスレベルが向上したことで気になる暴力表現だが,とりわけグロいというレベルのものはなかった。また,前作の特徴の一つでもあったヌードなど性的なシーンについても,今回のデモを体験した限り,それほど強烈な表現はない。このあたりは,15年前には存在しなかったアメリカのESRB審査で,AOレーティング(18歳未満は購入禁止)になることを避ける処置だろう。
昔の味を残しながら,部分的に着実な進化もとげたDuke Nukem Forever。
以前から,鉱山らしき土地に住む髭をたくわえた老人の姿や,Octobrainらしきモンスターに操られているEDFの隊員,さらには発射された核ミサイルといったシーンを収めたスクリーンショットが公開されてきたが,果たしてどこまでが現在のDuke Nukem Foreverに含まれているのかは,今回のイベントでは分からなかった。
マルチプレイモードが存在することも,インタビューしたMiller氏から聞いているが,詳細は未公開だ。このように,まだまだ発表されていないサプライズは少なくないだろう。
日本では,PlayStation 3とXbox 360向けに2011年夏,リリースされると発表されており,楽しみにしているゲーマーもいるはずだ。いよいよ,アメリカンなマッチョヒーロー,デューク・ニューケムが,我々の前に姿を現す。長い歳月を経て帰ってきた彼は,多くのプレイヤーにどのようなインパクトを与えることだろうか。
- 関連タイトル:
Duke Nukem Forever
- 関連タイトル:
デューク ニューケムフォーエバー
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デューク ニューケムフォーエバー
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