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「ホロライブ」の公式3Dモデルをゲーム開発者に提供。二次創作ゲームを盛り上げる「holo Indie」の新しい取り組みとは?
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印刷2024/09/01 12:00

インタビュー

「ホロライブ」の公式3Dモデルをゲーム開発者に提供。二次創作ゲームを盛り上げる「holo Indie」の新しい取り組みとは?

 人気VTuberグループ「ホロライブ」のタレントを使った二次創作ゲームのブランド「holo Indie」(ホロインディー)をご存じだろうか。すでにholo Indieをパブリシャとする複数のタイトルが「Steam」でリリースされており,2024年7月に行われたインディーゲームイベント「BitSummit Drift」でも,ブースを出展して新作の告知やゲーム開発者へのアピールに務めていたので,名前を聞いたことのある人も少なくないだろう。

Steamのholo Indieストアページ
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 ホロライブの二次創作ゲームブランド「holo Indie」(ホロ インディ)が,京都府のみやこめっせで開催されたインディーゲームの祭典「BitSummit Drift」にブース出展していた。その理由を,カバー社の加持太郎氏畠野貴之氏に聞いてきた。

[2024/07/25 13:15]

 ゲームに限らず,いわゆる二次創作のコンテンツは,どこかの企業が保有するIP(Intellectual Property,知的所有権)を,許可なく使って作られることが多い。言ってしまえば「許諾のないIPの利用」ではある。ただ,そのコンテンツに対して熱心なファンによる活動ではあり,日本の漫画やアニメ,ゲームといったコンテンツの隆盛を支える土台のひとつでもあるので,企業側の黙認により成り立っているというのが実情だ。
 それに対してholo Indieは,きちんとIPの保有者がマネタイズを許諾をした二次創作ゲームをリリースして,ゲーム開発者がその売上げから利益を得られるというのが大きな特徴である。二次創作コンテンツをIP保有企業が公認すること自体は,これまでもなかったわけではないが,holo Indieのような仕組みで行われたことは,なかったのではないだろうか。

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 そんなholo Indieは,ホロライブや男性VTuberグループ「ホロスターズ」を運営する企業「カバー」が設立した100%子会社の「シー・シー・エム・シー」(以下,CCMC)が運営している。そしてholo Indieでは今後,「ホロライブ所属VTuberの公式3Dモデルを,二次創作ゲーム開発者向けに提供する」という,今までにない新しい取り組みを実施する予定であるという。
 なぜカバーとCCMCは,holo Indieを立ち上げたのか。今までにない取り組みに挑戦する理由は何か。カバーのライセンス事業本部 本部長VPおよびCCMCの代表取締役を勤める加持太郎氏と,ライセンス事業本部 プロジェクトマネージャー兼ゲームコミュニティ推進チーム チームリードの金川宗義氏に,holo Indieの取り組みについて聞いてみた。
※インタビューは2024年7月前半に実施した

カバー ライセンス事業本部 プロジェクトマネージャー兼ゲームコミュニティ推進チーム チームリードの金川宗義氏(左)と,同事業本部 本部長VPおよびCCMC代表取締役の加持太郎氏(右)。背景の等身大フィギュアは,過去に実施されたイベント等で展示されたものだ
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カバーがholo Indieを始めた理由とは


HoloCure
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 IP保有企業が,二次創作ゲームを公式にブランド化して配信するという前代未聞の取り組みは,なぜ始まったのだろうか。これについて加持氏は,2022年に登場した二次創作ゲーム「HoloCure」や「Idol Showdown」の登場がきっかけであったと述べる。

加持太郎氏(以下,加持氏):
 HoloCureは,「Vampire Survivor」ライクな二次創作ゲームなんですが,これが非常にクオリティが高いゲームで,いろいろなクリエイターさんが協力して作られているのを見かけたというのが,まずきっかけでした。

HoloCureのプレイ画面
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加持氏:
 そこで,彼らのために我々が何かできることはないか,ということを考えました。その結果,世界中の二次創作ゲームクリエイターの活動を支援して,継続的にうちのコンテンツを作ってもらえるようサポートするために,還元できるような仕組みを作ろうということを目的としています。
 私共のメリットとしては,二次創作ゲームをいっぱい作ってもらうことで,ホロライブのファンの皆様に多種多様なゲームを届けていける。その機会を,holo Indieで創出したいと思っております。

4Gamer:
 二次創作ゲームは,IP保有者が見ない振りをする,いわゆるグレーゾーンで展開されることがほとんどですが,それを企業としてサポートするというのは,イベント的な例外を除けば,ちょっと聞いたことがないほど珍しい話です。なぜ二次創作ゲームの支援を行おうと考えたのでしょうか。

加持氏:
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 まずカバー側の強みというか,特徴としては,もともとクリエイターさんと一緒に成長してきた,という背景があります。立ち上がりから,有名なイラストレーターさんに依頼をしてLive2Dのもととなるイラストを作っていただいたりとか,著名な3Dモデラーの方々に作っていただいたりとか。ある意味,当初は著名な方々の人気を,うちが借りる形で成長できたというところもありました。その意思は,いまでも引き継いでいるというのは,大きいのかなと思っております。
 holo Indieのプロジェクトをやるにあたって,カバーの代表取締役社長である谷郷と話をしたときも,「それいいね」ということになり,私が企画書を起こしました。そのときも,逆に考えると「うちじゃないと,できないことかな」と思いまして。多分,大手のゲーム会社がやろうとしても,「IPを守るためには,公式には認められない」ということになるかと思います。我々は逆に,IPを10年20年と維持するために,IPをこれまでとはまったく正反対の使い方をすることによって,コンテンツの持続性を強化していきたいと考えたのです。
 言ってしまえば,「ブルーオーシャンだった」というところが,一番大きいのかなと思います。

4Gamer:
 確かに,大手の企業がholo Indieのような取り組みを率先してできるかというと,なかなか難しいでしょうね。逆に,カバーがこういう取り組みをすることで,モデルケースになって将来的に波及していくってことも,あるかもしれませんね。

加持氏:
 そうですね。

金川宗義氏(以下,金川氏):
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 普通のIPと違って,VTuber自体がもともと時間を経ることによって変化していく。たとえば,緊張していたデビュー配信と,1年後では全然違うといった振り返り配信を,彼女たち自身がやるところもあるように,日々配信していく中で,彼女たちのキャラクター性が作り上げられていくところもあります。
 言い方が難しいんですけど,アニメとかゲームの完全なる創作物のキャラクターたちに比べて,企業として「こうあるべきキャラクー像」みたいなものが固定されているわけではないところが,こういった取り組みができるひとつの要因になってはいるのかなと思いますね。

4Gamer:
 アニメやゲームのキャラクターは,企業が考えて作ったものを発信していくのが基本なので,変化の度合いも計算されたものですが,それに比べると,VTuberはデビューしてから自然に変わっていく人のほうが多いですものね。それはVTuberにしかない特性かもしれません。

 ゲーム開発者が,ホロライブやホロスターズ,カバーが有するキャラクターやIPを使って二次創作ゲームをリリースしたい場合,holo Indieに加入というか,登録してリリースしてねというのが,カバーとCCMCの立場となるのでしょうか。義務付ける,ということではないですよね。

加持氏:
 まずholo Indieは,(クリエイターから)申請していただいて,一定の基準を満たした作品に関して,有償でリリースしたときの収益の一部を還元できるようなプログラムになっております。無償のゲームについても,ホロライブの拡散力を背景とした認知の後押しや,サポートを受けられるというものです。

 結論としましては,(二次創作ゲームをリリースするに当たって)holo Indieに申請しなくてもよいのかなとは思っています。「あくまでも個人でやりたいです」という選択肢は,尊重していきます。やはり半公式と言いますか,公式に収益化を認めるプログラムであり,パブリシャはholo Indieになりますので,二次創作における弊害が生じるといった可能性もゼロではありません。そういう懸念がある方は,ご自身でリリースされるのもいいかなと思っております。

4Gamer:
 自分でやりたい人は,ノータッチでいいし,公式と組んでやりたい人はどうぞ,ということですね。冒頭で触れたHolo Cureも,holo Indieのタイトルではないですね。

加持氏:
 もともとholo Indieがない時期にリリースされたという経緯もありましたので。実は,holo Indieのプロジェクトを発表する直前ぐらいに,クリエイターの方に「こういうプロジェクトを動かしてますが,どうしましょうか?」とご意見をうかがわせていただきました。そのときは,「(Holo Cureは)独立でやります。ただ,今ほかに作っているゲームがあるので,そちらはholo Indieでやりたいです」というお話でしたので,その意見を尊重させていただいている形になります。

※「Holo X Break」のこと。

アクションゲーム「Holo X Break」は,Holo Cure開発メンバーが開発してholo Indieからリリースされた
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加持氏:
 なんの連絡もなしに,いきなり「holo Indieをやります」と発表してしまうと,二次創作ゲームコミュニティを敵に回してしまうような可能性もあったので,そこはあらかじめ,ていねいにコミュニケーションをさせていただきました。

4Gamer:
 Steamでholo Indieのラインナップを見ると,今のところはまだ,有償のタイトルは少ないですね。

加持氏:
 そうですね。このプログラムを発表してから,申請いただいたタイトルなんですけども,発表した直後にですね,申請がおそらく50件ぐらいですか,もう即来たんですよ。

4Gamer:
 50件も!

加持氏:
 すでにゲームを開発中だったとか,作り終わってどこかに公開していたというものが正直多かったのです。そうしたタイトルは,すでに無償でリリースしていたという面もありましたが,開発者個人や開発チームにヒアリングさせていただいたところ,元々,好きで集まって作った人たちのゲームが多かった。そうなると,収益については元々何も考えていなかったので,仮に収益化できたとしても,それをチーム内でどう分配するのかといった問題が発生してしまうので,ちょっと現実的には難しい,とは言われていますね。
 しかし今後は,新規で作られるゲームに関しては,有償タイトルの審査が増えるんじゃないかと思っております。

4Gamer:
 これまでにリリースされたのが10タイトル弱ですので(※インタビュー時点,本稿掲載時点では11タイトルが掲載中),現在開発が進行中のゲームも相当あるということですね。

加持氏:
 そうですね,月に1タイトルくらいで新規のゲームを出していければなと考えています。
 プロトタイプの段階で申請していただいているのですが,開発がまだ終わっていなかったり,企画段階のゲームもいくつかあったりしますので,リリースや完成のスケジュールをちょっと調整させていただきながら,スケジュールは組んでいるような状況です。なので,その意味では結構ストックはあるのかなと思っています。
 一方で,リリースまで私共が継続的にやっていくという難しさもありますので,なかなか今のペースよりも上げていくのは難しい可能性がある。もっと一気に出したいという思いはありますが。

4Gamer:
 いわゆるゲームのパブリシャとデベロッパの関係よりは,かなり緩いという感じでしょうか。

加持氏:
 やっぱりクリエイターさんも専業のプロではないので,リリース日を決めて,じゃあここまできちんとやるといったスケジュール管理をするというよりは,空いた時間を使って好きで作ってくださっているような状況です。その意味では,「holo Indieならではの調整の難しさ」っていうのも感じてはいますね。

4Gamer:
 有償ゲームをholo Indieでリリースする場合の収益は,どういうふうに分配されるんでしょうか? 今のところ,プラットフォームはSteamだけですよね。

加持氏:
 Steamだけですね。一旦は,CCMC側に収益が全部入りまして,そこから契約に基づいた料率でクリエイターさんにお戻ししています。(収益の)一部を戻すというよりも,大部分を還元するようなイメージに近いとお考えください。

4Gamer:
 とくにグローバルに展開できることを考えると,無償で配布するよりは,Steamで配信できてお金ももらえるなら,悪い話ではないですね。

 holo Indieでリリースするとなると,当然,ゲーム内容の審査とか,あるいは,もしかしたらデバッグもやっているのかと思いますが,そういう審査はどういうことをやっているのでしょうか。

加持氏:
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 基礎的な不具合チェックは,もちろんやらせていただいています。holo Indieの審査の主要な項目としては,まず,ホロライブプロダクションのIPを毀損していないかとか,あとは他社様の権利を侵害していないか。それから,問題になる表現などが含まれていないかといったところに重点を置いて,審査を行っています。
 互換性とか,ローカライズ対応については,基本的にクリエイター様の判断に委ねております。ローカライズに関しては,一部,我々がお手伝いをさせていただくことも,場合によっては検討させていただいているような感じですね。
 あくまでも,二次創作の体裁を保ちたいということはございますので,コンテンツをこうしてくださいとか,そういった直接的な指示とかはしないですね。

4Gamer:
 今のところholo Indieは,Steamで配信するPCゲームだけですけれど,将来的に家庭用ゲーム機に展開したいという考えは,御社側にあるのでしょうか。

加持氏:
 そうですね。まず2024年5月にholo Indieの公式Xを立ち上げたところ,とくにファンの方々から「PC版以外の展開も出してほしい」という声は,たくさんいただいております。我々といたしましても,家庭用ゲーム機に限らずではありますが,対応プラットフォームの拡充というところは興味を持っておりまして,現時点で,調査とか協議は,何回も行っている状況です。

4Gamer:
 開発者の方々が,そこまで手が回るかという問題でもありますね。

加持氏:
 もちろん,開発リソース的な問題もありつつではあります。ただ日本だとアプリゲームも発展していて,比較的,開発もリソースを割かなくてもできる面もありはするので,検討してもいいかなという感じですね。

4Gamer:
 holo Indieは今のところ,日本語か英語でコミュニケーションできる開発者を対象にしているという理解でよろしいですか。

加持氏:
 仰るとおりです。今の申請フォームは日本語と英語を用意しており,基本的にはそれら2言語で対応させていただいております。なかには韓国語での申請もありまして,それらは機械翻訳で対応している状況です。

4Gamer:
 ホロライブの人気が高い韓国語や中国語の開発者にもニーズがありそうですね。

加持氏:
 そうですね。加えて,東南アジアの国々も開発力は高いので,申請があちらの言語で来ることはあります。


モデルの品質を担保しながら,二次創作ゲーム開発を手助け


 冒頭でも触れたとおり,holo Indieでは,ホロライブ所属VTuberの公式3Dモデルデータを,ゲーム開発者が二次創作ゲームで使えるように提供するプログラムを進めている。
 VTuberの公式3Dモデルデータを「MMD」向けに公開することは,しばしば行われており,カバーでもドワンゴのプラットフォーム「ニコニ立体」を通じて,同様の取り組みを行っている(関連リンク)。それに対して今回の取り組みは,カバーが公式にゲーム開発用として,より高品質な3Dモデルを提供するというのが大きな違いである。

ニコニ立体で公開中のホロライブ,ホロスターズ公式3Dモデルの一例
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 カバーはなぜ,自社の重要な資産とも言える3Dモデルデータを提供するか。そして提供するデータはどのようなもので,どういった用途で使えるのだろうか。

4Gamer:
 ホロライブの3Dモデルデータを,開発者に提供して二次創作ゲームを開発してもらうという取り組みを始めるそうですが,そもそもなぜ,そのような取り組みをしようということになったのでしょうか。

加持氏:
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 まず我々としては,ゲームとかVTuberもそうですが,クリエイティブの集合体だと考えています。ご存じのように,たとえばゲームであれば,プログラミングやイラスト制作,3Dモデル制作や世界のデザイン,さらにはサウンドやエフェクトとか,色々なクリエイティブの集合体がゲームであると。それを,個人のクリエイターさんがすべてをこうカバーするというのは,非常に難しいというのは実態としてあるのかな,と思っていました。
 そこで,これらの開発のハードルを下げることによって,holo Indie作品の応募が増えたりとか,インディーゲーム界隈の盛り上げに貢献できるじゃないか,と考えたのが一番大きいですね。

 あとは,私共が提供するモデルであれば,タレントさんのモデルの品質も担保できるというのも,理由のひとつですね。やっぱりタレントさんって,ある意味,VTuber=自分と考えていらっしゃるので,外部で作られたモデルが,意にそぐわないという可能性もあります。そこは,我々だけでは汲み取るのがちょっと難しいところでもあります。
 そうした品質や,タレントさんからも不快に思われないようなモデルデータを提供することによって,(開発者側と)ウィンウィンな関係が築けるんじゃないか,っていうふうに考えております。

4Gamer:
 提供するデータというのは,どういうものを用意なさるのでしょうか。パッと思いつくのは,Live2Dのデータや3Dモデル,あと音声もありますよね。

加持氏:
 現時点では,3Dモデルの提供を第一に考えております。その他には,一部の楽曲。すべての楽曲は,権利のクリアランスが正直厳しいので,一部の有名楽曲の著作権だけをクリアランスして,提供させていただくといったことから始めたいなと考えております。

金川氏:
 3Dモデルに関しては,すでにカバーからMMDとして正式提供しておりまして,すでにそういった取り組みがある中で,ちょっとゲームにフォーカスしたものを何かできないか,というような流れではあります。

4Gamer:
 音楽も公式のものを堂々と使えるのであれば,嬉しいでしょうね。

加持氏:
 やっぱり楽曲を使いたいというニーズは,実際にめちゃくちゃ多くて。アレンジも含めて,それらの権利処理を私共のほうで行い,そういったことをクリアランスした状態を提供できるというのが,一番だと思います。

4Gamer:
 音声もですか?

加持氏:
 はい。ボイスも提供させていただいております。

4Gamer:
 提供する3Dモデルデータは,すでに公開済みのMMD用データと同じものでしょうか。

加持氏:
 MMDはゲーム開発向けではなく動画向けの形式です。そのため,MMDではなくFBX形式で,技術流出にはつながらないような形で,設定情報とかはお渡しせずに,配布するような方法を考えています。


MMDのデータを,そのままゲーム開発用に提供する利用法は,若干グレーなところがございまして。そのためMMDではなくFBX形式で,技術流出にはつながらないような形で,設定情報とかはお渡しせずに,配布するような方法を考えています。

※3Dモデルデータだけでなく,マテリアルやアニメーション用のデータも内包できるファイル形式

金川氏:
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 (ゲームエンジンの)「Unity」上で開発されている開発者の方が多いので,FBXのポリゴンのモデルと,テクスチャマッピングデータをお渡しすることを考えています。Unity上で動かすためには,例えばボーンの設定ですとか,シェーダの設定とかも必要になってきます。ですが,そのあたりは弊社の技術知見ということで,そのままお渡しするのではなく,クリエイターさんのほうで設定していただくことをお願いしようと思っています。
 3Dモデルのポリゴンとテクスチャを提供できるだけでも,かなりクリエイターさんは楽になるのかなと。

4Gamer:
 ボーンやアニメーションの使い方は,「自分で頑張ってね」ということですね。タレントさん自身の動きを反映したものもありますしね。

加持氏:
 あとは,シェーダも独自開発のものを使っているという事情がありますので,それをお渡しするのはちょっと難しいんですね。

4Gamer:
 今回の3Dモデルデータの提供は,あくまでもholo Indieでリリースするゲームに限るということでしょうか? それとも提供自体は,MMDデータのように,どこかのWebサイトでオープンにやっていく形になるんでしょうか。

加持氏:
 今,検討しているところでは,holo Indieのゲームに限って,機密保持契約とかも結ばせていただいたクリエイターさんに限って,クローズドな環境での提供を想定しております。

4Gamer:
 提供するデータを,開発者側でどれくらい改造,あるいは改変してもいいものなのでしょうか。

加持氏:
 基本的には,改変することによって,タレントが不快に思う可能性が増えるだけだと思っていますので,NGにしたいところです。ただ,たとえば「格ゲーの2Pカラーはどうするか」みたいな問題が発生することもあるかとは思いますので,そこはちょっと柔軟に対応して行きたいと思っております。

4Gamer:
 要は,IPの価値をおとしめない範囲であれば検討する,ということですね

加持氏:
 そうですね。たとえば,タレントさんの服を脱がせるみたいなことは,もう完全にNGです。

4Gamer:
 データを提供したゲームについては,審査がより厳しくなったりする可能性はあるのでしょうか? 収益分配の部分は変わらないと思うのですが。

加持氏:
 現時点では,審査や収益の分配方法に違いはありません。

4Gamer:
 もうすでに,開発者側にデータを提供している例はあるのでしょうか。

金川氏:
 3Dモデルは,まだないですね。楽曲やタレントのボイスについては,すでに公開済みのタイトルに実装されています。

4Gamer:
 ボイスは,どのようなものを提供するのでしょうか。ゲームに合わせて吹き込んでもらうわけにもいかないですよね。

加持氏:
 いえ,ゲームに合わせて吹き込んでもらっています。やっぱり,タレントさんも,配信のコンテンツというネタを日頃から探しているわけですが,自分が(ゲーム内に)登場したりする意味では,配信としてもファンとしても盛り上がる面はあります。
 やっぱりタレントさんもクリエイターではありますので,同じクリエイターさんに対するリスペクトとか,協力姿勢とかは非常に強いのかなと。そういった理由もあって,ゲームのクリエイターさんの要望に応じて,収録していただいているような状況です。

4Gamer:
 生成系AIを使って勝手にボイスを作られるよりは,きちんと公式に認可したものを使ってもらうほうが,IP保有者としてはうれしいですね。

加持氏:
 そうですね。AI生成になると,また別の賛否両論あって難しいところかと思いますが,基本的には我々が収録して提供するものか,もしくはYouTubeからの切り抜きで制作していただけるとありがたいですね。

4Gamer:
 実は,今回の取り組みのお話を聞いたときに,生成系AIで勝手にデータを作られたりするのを懸念して,ある意味では先手を打って,「うちはこういう仕組みを用意します」というのを打ち出しておきたかったのかな,とも思ったのですが。

加持氏:
 そうですね……,そこまで深いところは正直考えてはいなくて。どちらかといえば,本当に「クリエイターさんをサポートしたい」というところが,まず第一にあったという感じですね,

4Gamer:
 音声に関しては,とくに(AIで)作り放題になりつつある状況ではありますね。

加持氏:
 技術的な研究は行っているので,(そうなる可能性は)全然あり得るなとは思っています。ただ,それをやってしますと,やはりVTuberらしさ,VTuberとしての存在意義みたいなところにもつながってくると思いますね。ですので,それを実際に使うということはないです。



画像集 No.009のサムネイル画像 / 「ホロライブ」の公式3Dモデルをゲーム開発者に提供。二次創作ゲームを盛り上げる「holo Indie」の新しい取り組みとは?
 インタビューを通じて,加持氏や金川氏が強調していたのは,既存の二次創作ゲーム文化に配慮しながら,IP保有企業としてゲーム開発を支援していきたいという姿勢であった。一方で,3Dモデルや音声データを提供するという形にともなう難しさ,どういう形でどこまでやるのが適切なのかという判断の難しさもあるようだ。ゲーム業界でも,ほとんど前例がない取り組みだけに,考えながら動いている面は多いようである。

 いずれにしても,holo Indieでこれから登場するゲームに,公式提供の3Dモデルデータがどのような形で使われ,どんなゲームとなるのか楽しみだ。ホロライブファンのゲーマーにも,期待してほしい。

ホロライブプロダクションの「二次創作ガイドライン」ページ

CCMC公式Webサイト

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