イベント
[インタビュー]スパイク・チュンソフトが考える,日本・アジアゲームのグローバル展開のサポートとは。Bitsummitでキーマンに話を聞いた
会場には,本イベントに初出展となるスパイク・チュンソフトのブースもあったのだが,試遊台や作品展示はなし。ビジネス関係者とのカジュアルな交流の場として,カフェテリアをイメージしたというビジネス商談スペースとなっていた。
なぜBtoBエリアではなく一般エリアで,そもそもどういったビジネスの話をするために出展したのか。
イベントに参加していた,スパイク・チュンソフトの海外事業グループを管掌する飯塚康弘氏に,同ブースのコンセプトに従って“カジュアルにくつろぎながら”話を聞いてきた。
4Gamer:
初のBitSummit出展ということですが,スパイク・チュンソフトはそもそもゲームショウ系のイベントに出展すること自体が珍しいですよね。なぜ,個人開発や小規模スタジオのゲームを中心としたイベントに出展したのかが気になります。
スパイク・チュンソフトでは,これまでの経験を生かし,日本とアジアのゲームの海外展開をサポートしていこうという新たな取り組みを行っています。
そのため,国内やアジアのゲーム開発者やスタジオの人たちと,もっと会っていきたいと思っているんです。
4Gamer:
これまでの経験というのは,いわゆる洋ゲーと言われる海外のゲームを日本に持ってきていることでしょうか。特に,欧米ゲームの国内コンシューマ版を扱っているというイメージがあります。
飯塚氏:
そうですね。海外タイトルの扱いは,スパイク・チュンソフトとして10年以上,スパイク時代から数えると26年くらいになります。海外デベロッパとは長年,“洋ゲーを日本に持ってくる”といったやりとりを続けているのですが,これらの経験やスキルは,その逆となる“日本のゲームを海外に持っていく”にも生かせるものなんですよ。
また2017年には,アメリカに子会社のSpike Chunsoft, Inc.を設立しました。同社では,自社やグループ各社のタイトルの欧米向けローカライズやマーケティング,販売を行ってきましたが,設立から7年近く経ってノウハウも蓄積されたので,その対象を社外のメーカーや開発者にも広げたいという考えがあるんです。
4Gamer:
それはパブリッシャとして,例えばインディーレーベルを作ろうみたいな話ではないと。
飯塚氏:
ええ。そういう話ではないですね。今回の出展はビジネスが目的と言っても,インディーゲームを買い付けるみたいなことをしにきたわけではありません。
スパイク・チュンソフトとしては,まず多くの開発者や会社の方とつながりたい。そのために,開発者や会社の方が気軽に話しかけやすい場所を作るというところですね。
4Gamer:
そもそも,なぜそういう考えに至ったのでしょう。
飯塚氏:
BitSummitのようなイベントに来ると,個人制作のゲームでも本当に個性的で面白いゲームがたくさんあるとあらためて感じます。
でも,そのゲーム全てが成功するのは難しいと思います。たとえ面白いゲームだとしてもです。作る側に必要なノウハウと,売る側のノウハウは違いますから。プレスリリースの出し方ひとつでもそうですし,プラットフォーマーとの交渉もそうです。
また,いいゲームをひとりでも多くのユーザーさんに情報発信し,届けることも重要になりますね。いいゲームが生まれても,世に広まらない。これって,ゲームを売りたい側とプレイしたいユーザー,どちらにも大きな損失なんですよ。
4Gamer:
パブリッシャとしては大ヒットしたかもしれなかったし,プレイヤーにとっては面白い出会いになったかもしれなかった。そういうゲームが,ゲーム自体の内容以外のところで日の目を見ないのは残念ですね。
世界に向けてゲームを出していくとなると,言語はもちろん習慣の違いなんかもありますから。ひとりでいきなり海外のパブリッシャと話をするとなると,なおさら難しそうです。
飯塚氏:
Steamのような世界市場に展開しているプラットフォームによって個人でもゲームを自由に発信できるようになったぶん,そのような問題も多くあると思うんです。
そこで,長年海外市場でビジネスしてきた会社として,ローカライズはもちろん,QAであるとか,条件交渉面,こういうのは気をつけようというアドバイスなどを,微力ながらいろいろな形でのサポートできたらと考えています。
4Gamer:
GDC(Game Developers Conference。サンフランシスコで開催される世界最大級のゲーム開発者カンファレンス)には,うまくいかなかったプロジェクトの話やポストモーテム(事後検証)などのセッションがけっこうあります。失敗を共有する,失敗から学ぶ……みたいなものもあるのかなと。
飯塚氏:
そうですね。やっぱり,どこも失敗って隠したいじゃないですか(笑)。
でも,長年いろいろな国や地域の会社やスタジオとやりとりをしてきて,それは駄目だってすごく理解できるんです。ごまかしはきかないし,あとあと大変なことになると。
4Gamer:
BitSummitに出展したのは,やはりいわゆるインディーと呼ばれる個人クリエイターや小規模スタジオにも気軽に声をかけてほしいからですか。
飯塚氏:
インディーかそうじゃないかは関係ないですね。そもそも,私は個人的にインディーかどうかみたいな線引きは好きじゃないんですよ。
スパイク・チュンソフトの海外ゲームというと,「ウィッチャー3 ワイルドハント」や,最近だと「バルダーズ・ゲート3」といった大きなタイトルのイメージがあると思うんです。
でも実際は,「How to Survive:ゾンビアイランド」シリーズや,「クリプト・オブ・ネクロダンサー」のようなゲームも扱っているわけで。つまりゲームの規模の大小ではなく,僕らが面白いと思うものを取り上げてきました。
大手であるかとか小規模の会社であるとかは関係なくて,また偉そうなことを言うつもりもないですし,相談料いくらでコンサル的なことをやったりするつもりもないんです。
なにか気になることがあれば,雑談くらいの感じでいいので気軽に聞きにきてほしいなと。そこから出会いが生まれ,いつの日か一緒にお仕事ができれば最高だと,そんな気持ちでいますね。
4Gamer:
つまりこのブースは,それを体現していたんですね。
ゆったり腰掛けられる椅子があって,ドリンクを飲みながら気軽にお話しできてと。
飯塚氏:
ええ。だからこうしてビールも用意して,くつろいでもらってという。こちら,お土産にどうですか(笑)
撮影時はちょうど落ち着いていたが,通りかかるとビジネスデイではなく一般公開日でも国内外のゲーム関係者らしき人が歓談している姿があった |
こちらはお土産の写真。ゲーム開発の話や相談をして,スパチュンロゴのコースターとビーチサンダル(しかもげんべい商店製)がもらえるというのはすごい |
4Gamer:
あらためてブースを見回してみましたが,スパイク・チュンソフトのロゴってゲームファンにはおなじみのものですから,会場にきたゲームファンの目にとまりやすいなあと。
ブースを覗いてみたら何もなくて,「ここでは何をしたらいいんだろう」となりますが,「スパチュンが何かしようとしているぞ」と印象に残るようなブースですね。
飯塚氏:
ありがとうございます。
まずは興味を持ってもらい,そこから4Gamerさんのようなメディアの記事を通じて,スパイク・チュンソフトが何をしようとしているのかを知っていただけると嬉しいですね。
4Gamer:
本日は,ありがとうございました。
BitSummit Drift公式サイト
4GamerのBitSummit Drift記事一覧
- この記事のURL: