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BCG開発の未来を切り拓く「KATANA」の詳細発表&日本発チェーンの「勝ち筋」を探るパネルディスカッションをレポート
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印刷2024/07/05 17:08

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BCG開発の未来を切り拓く「KATANA」の詳細発表&日本発チェーンの「勝ち筋」を探るパネルディスカッションをレポート

  2024年7月4日,YGG Japanは新規プロジェクト「KATANA」の詳細を「IVS Crypto 2024 KYOTO」内で開催した新事業戦略発表会で明らかにした。

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 イベントで登壇した,Shake Entertainment/YGG Japanの取締役である原島和音氏によると,KATANAは「ブロックチェーンゲーム開発に特化したレイヤー3プロトコル」と定義されている。KATANAは,エンターテインメント分野におけるブロックチェーンの活用に新たな可能性を切り拓くことを目指しているという。

 原島氏は,イーサリアム創設者のヴィタリック・ブテリン氏の言葉を引用しながら,レイヤー3の重要性を説明した。レイヤー2が主にスケーラビリティ(拡張性)の問題を解決するために導入されたのに対し,レイヤー3は特定の目的や領域に特化したプロトコルを構築することで,ユーザー体験の向上を目指すものだという。

原島和音氏
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モデレーターを務めたCoindeskの神本侑季氏
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 KATANAプロジェクトは,このレイヤー3の概念をゲームに適用し,ブロックチェーンゲーム開発者がより手軽に開発を進められ,同時にゲームプレイヤーが簡単にブロックチェーンゲームを楽しめる環境の提供を狙っている。

 プロジェクトの技術的基盤を強化するため,KATANAはイスラエルの研究開発チームであるStarkWareとパートナーシップを結んだ。StarkWareは,「ゼロ知識証明技術(Zero-Knowledge Proof)」の先駆者であり,高い開発力で知られている。

 ちなみにゼロ知識証明技術とは,ある情報を知っていることを証明するときに,その情報自体を明かすことなく証明できる技術のことだ。いまいち何を言っているか分からないかもしれないが,この技術を使えば,取引の詳細を公開せずに,取引が有効であることを証明できたり,個人情報を開示せずに,年齢や資格といった,特定の属性を証明できたりする。

KATANAの技術構造。Luaからブロックチェーンまでの流れ
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 そんなゼロ知識証明技術に明るいStarkWareと組むことで,KATANAプロジェクトは,より効率的で安全なブロックチェーンゲーム環境構築が可能になるそうだ。また,StarkWareのエコシステム内で進行中の「Full On-Chain Game」や「Autonomous World」といった革新的なプロジェクトとの連携も期待できるという。

 発表会では「みんな分かっているもの」として,とくに言及はなかったが,Full On-Chain Gameとは全要素がブロックチェーン上で動作するゲームで,中央サーバーに依存しない分散型アーキテクチャを構築している。

 そしてFull On-Chain Gameの概念をさらに発展させたのがAutonomous Worldだ。自律的に運営される仮想世界などといわれており,ゲームルール,経済システム,ガバナンスなどすべてがブロックチェーン上に実装されており,プレイヤーやコミュニティが世界の進化に直接関与できる。つまり,開発者が設定した初期条件に基づいて,世界が自律的に発展していくのだ。

 そんなSFチックなプロジェクトをStarkWareは進めており,KATANAはそれらと連携できるようになる。

 KATANAプロジェクトの特徴としては,Luaの採用も挙げられる。従来,ブロックチェーン上のスマートコントラクトはSolidityで書かれることが多かったが,KATANAではLuaを使用できるようにするそうだ。
 Luaは,ゲーム開発領域で最も利用されている言語の一つであり,シンプルな構文と柔軟性を持つ。これにより,既存のゲーム開発者がより容易にブロックチェーンゲーム開発に参入できるようになるという。

 さらに,Luaはユーザー生成コンテンツ(UGC)の作成にも広く使われており,Robloxなどの人気プラットフォームでも採用されている。この特性を生かし,KATANAはユーザーが自らゲームを改変したり,新しいアイテムを作成したりする文化を促進し,より参加型のゲーム環境を創出することを目指している。

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 また,Shake EntertainmentがYGG(Yield Guild Games)の一員であることを生かし,KATANAプロジェクトはYGGのネットワークを通じてさまざまなゲームを世界に発信する計画がある。ゲームギルドとしてスタートしたプロジェクトの強みを利用して,新しく登場した優れたゲームを多方面からサポートしていくそうだ。

 原島氏は,プロジェクトのロードマップについても言及した。2024年9月には海外取引所への上場を目指しており,IVS KYOTOを皮切りに,東京ゲームショウといったさまざまなイベントでプロジェクトをアピールしていく予定だという。

 KATANAプロジェクトは,レイヤー3プロトコルの実用化,Luaプログラミング言語の採用,StarkWareとのパートナーシップなど,独自の強みをもっている。このプロジェクトが成功すれば,ブロックチェーンとゲームの融合はさらに加速し,エンターテインメントの新しい形が生まれる可能性もあるだろう。KATANAプロジェクトは,まさにブロックチェーンゲームの未来を切り拓く「刀」となるかもしれない。


日本発Web3プロジェクトの「勝ち筋」を探るパネルディスカッション


 発表会は前後半に分かれており,後半は原島氏のほかに,衆議院議員(自由民主党)の平 将明氏,Oasysの満足 亮氏,Starkware Labs Japanの海老島幹人氏が登壇し,「世界と勝負する,日本発チェーンの『勝ち筋』」というパネルディスカッションが開催された。

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 ディスカッションの最初は,政策面での進展について自民党でWeb3のプロジェクトチームを率いる平氏が,「Web3に関する政策整備は着実に進んでいます。例えば,暗号資産の取り扱いに関する規制の明確化や,NFT(非代替性トークン)の法的位置づけの整理などが挙げられます。しかし,依然として課題は山積しています」と,これまでの取り組みを説明した。

 そこで大きな課題として挙げられたのが,大企業のトークン保有に関する会計/税制の問題だ。平氏は「大企業が自社発行トークンや他社発行トークンを保有する際の時価評価の扱いなど,まだ解決すべき点が多くあります」と指摘。これらの課題に対して,政府としても柔軟に対応していく姿勢を示した。

 また,平氏は日本の強みを生かすための政策の重要性も強調した。「日本には,長年培ってきたアナログの価値があります。例えば,伝統文化や観光資源,ポップカルチャーなどです。これらの価値をNFTなどのWeb3技術を用いてデジタル化し,グローバルに発信していくことが重要です」と語る。

平 将明氏
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 日本のコンテンツ産業の強みを生かすことの重要性は,ほかのパネリストからも指摘された。YGG Japanの原島氏は,「日本のIP,ゲーム,アニメなどのコンテンツは世界的に高い評価を得ています。これらをWeb3技術と組み合わせることで,新たな価値創造が可能になると考えています。例えば,NFTを活用することで,ファンとクリエイターの関係性をより深めたり,二次創作の仕組みを整備したりすることができるでしょう」と述べた。

 満足氏も,日本のゲーム産業とWeb3の親和性について言及した。「日本には長年のゲーム開発の歴史があり,その知見はWeb3ゲームの開発にも大いに生かせると考えています。ユーザー体験の設計やゲームバランスの調整など,日本のゲーム開発者の強みが発揮できる領域は多いです」と,日本の強みを指摘した。

満足 亮氏
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 Web3の特性上,サービスのグローバル展開は避けて通れない課題だ。この点について,満足氏は「パブリックブロックチェーンの特性上,最初からグローバル市場を視野に入れた展開が可能です。むしろ,グローバルに展開することを前提にサービスを設計する必要があります。日本のコンテンツの強みを生かしつつ,世界市場で競争力を持つ戦略が求められます」と持論を述べた。

 一方で,Startale Labs Japanの海老島氏は,「各国の規制や文化の違いを考慮しながら,サービスをローカライズしていく必要があります。特に,暗号資産の取り扱いに関する規制は国によって大きく異なるため,慎重な対応が求められます」と,グローバル展開に伴う課題を指摘。ほかのパネリストの同意を得ていた。

海老島幹人氏
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 続いて「Web3の普及には,既存の大企業との連携も重要な要素となる」という話に。平氏は「Web3の世界では,大企業の参入が不可欠です。彼らが持つリソースや既存のユーザーベースは,Web3プロジェクトの成功に大きく寄与します。一方で,大企業側にもWeb3に参入するメリットがあります。例えば,新たな顧客層の開拓や,既存ビジネスのデジタル化などが挙げられます」と述べた。

 しかし,大企業のWeb3参入には課題も多い。原島氏は「大手企業とWeb3企業の連携は重要ですが,法律や会計処理などの課題を解決しつつ,新しいビジネスモデルを構築する必要があります。特に,トークンエコノミーの設計やNFTの活用方法など,従来のビジネスモデルとは異なる発想が求められます」と指摘した。

 Web3プロジェクトの成功には,技術の進化と魅力的なサービスの提供が不可欠だ。この点について,満足氏は,「ブロックチェーン技術の進化だけでなく,魅力的なコンテンツやサービスの提供が成功の鍵です。技術的な優位性を追求するあまり,ユーザーにとっての価値を見失ってはいけません。Web3の特性を生かしつつ,従来のWeb2サービスに匹敵する,あるいはそれを上回るユーザー体験を提供することが重要です」と語る。

 また,新たな収益モデルの創出も大きな課題として挙げられた。原島氏は,「Web3の世界では,従来のビジネスモデルが通用しないケースも多々あります。例えば,トークンエコノミーを活用した新たな収益モデルやNFTを活用したファンエンゲージメントの仕組みなど,Web3ならではの特性を生かした事業モデルの構築が求められます」と述べた。

 海老島氏も原島氏に同意し,「技術と事業の両立には,継続的なイノベーションが不可欠です。ブロックチェーン技術の進化に合わせて,新たなユースケースを常に模索し,市場のニーズに応えていく必要があります」と続けた。

 パネルディスカッションの終盤では,各パネリストが自社の戦略と今後の展望について語った。

 Startale Labs Japanの海老島氏は,「既存の大手企業とのコラボレーションを通じて,具体的なプロジェクトを年内に立ち上げることを目指しています。さらに新たな発表ができるよう準備を進めています」と展望を述べた。

 満足氏は,「コンテンツの充実が最重要課題です。特にゲーム分野において,複数のタイトルを並行して開発し,ユーザーに選択肢を提供していきたいと考えています。また,トークン発行後の市場動向にも注目し,適切なサポート体制を整えていきます」と語った。

 YGG Japanの原島氏は,「日本発のコンテンツをグローバルに展開することに注力します。同時に,技術面での進化も怠らず,ユーザー体験の向上に努めていきます。また,新たなビジネスモデルの創出にも挑戦し,Web3ならではの価値提供を目指します」と抱負を語った。

 最後に,平氏は業界への期待と政府の姿勢について次のように述べた。

 「分かりやすい成功事例を出していただきたいと思います。Web3技術を活用して,どのように社会課題を解決し,新たな価値を創造できるのか。具体的な事例が増えることで,より多くの企業や個人の参画が期待できます。そのうえで,税制やレギュレーションの課題については,我々も柔軟に対応していきたいと考えています。官民一体となって,日本のWeb3産業の発展を支援していきます」。

 日本のWeb3産業が世界で成功を収めるためには,技術革新,魅力的なコンテンツ,適切な規制環境,大企業との連携が不可欠という方向で本ディスカッションはまとまった。特に,日本が強みを持つエンターテインメントやコンテンツ産業とWeb3技術の融合は,大きな可能性を秘めている。

 また,グローバル市場を見据えた戦略立案と,各国の規制に対応できる柔軟性も重要だ。さらに,大企業とスタートアップの協業を通じて,新たなエコシステムを構築していくことも,日本のWeb3産業の発展には欠かせない要素となるだろう。

 技術と事業の両立,新たな収益モデルの創出など,課題は山積みだが,官民一体となった取り組みが,日本発のWeb3プロジェクトの「勝ち筋」を切り開くことになるのではないだろうか。

 Web3は,インターネットの次世代形態として,私たちの生活や社会のあり方を大きく変える可能性を秘めている。日本がこの新たな波に乗り遅れることなく,むしろその先頭に立って世界をリードしていくことに期待したい。そのためにも,産学官の連携を強化し,イノベーションを加速させていく必要があるだろう。

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「IVS Crypto 2024 KYOTO」公式サイト

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