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企業研修ボドゲってどうやって作るの? 遊んで学べるボードゲームが集まるイベント「Play & Learn 2024」レポート
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印刷2024/03/27 08:30

イベント

企業研修ボドゲってどうやって作るの? 遊んで学べるボードゲームが集まるイベント「Play & Learn 2024」レポート

 2024年3月17日,企業研修や教育をテーマとするボードゲームが集まるイベント「Play & Learn 2024」が,神奈川県の新横浜3丁目大ホールで開催された。

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 近年,ゲームを用いた教育の効果に注目が集まっている。ゲームのメカニズムを“遊び”以外に応用することは「ゲーミフィケーション」などと呼ばれ,さまざまな分野で活用されている。4Gamerでもたびたび関連する記事を掲載しているので,聞いたことがある人もいるだろう(連載:身近なところにゲーミフィケーション)。

 特にボードゲームは,そういった方面での運用が活発に行われている。レストランチェーン「サイゼリヤ」がオリジナルのボードゲームで研修を行っていたり,CIAがボードゲームを通じて諜報員を教育していたり(!?)と,かなり幅広く活用されているようだ。

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 レストランのサイゼリヤが,「サイゼリヤオリジナル店舗運営ゲーム」を制作し,社員教育を行っているという。一般には馴染みがない研修用ゲームだが,いったいどんな内容で,どんな風に運用されているのだろうか。ゲームを手がけた開発元と,サイゼリヤの担当者に話を聞いてみた。

[2019/11/16 12:00]

 これらのゲームは一般に流通することは少なく,新たにゲームを開発する手順もゼロから構築しなければならない。そんな中,各企業が商談や販売を行ってノウハウを共有し,それぞれの知識を深めていこうというのが,本イベントの主旨だ。

 記事の後半では,イベントを主催する研修ゲームラボの石神康秀氏へのインタビューを掲載しているので,そちらも合わせてチェックしてほしい。

「Play & Learn 2024」公式サイト


就活から思想まで。あらゆる“学び”が詰まったゲームがズラリと並ぶ


 イベントの基本的なスタイルは,「ゲームマーケット」をはじめとするボードゲーム関連イベントに近い。各出展者がブースを構えてゲームやサービスを展示し,試遊スペースを活用しつつ商品の紹介を行う格好だ。

 ビジネスに振り切ったイベントかと思いきや,意外にも雰囲気は柔らかく,和気あいあいとした空気感に包まれていた。目的意識がハッキリしているぶん交流も活発で,そこかしこで意見交換や商談が行われており,多くの人が“楽しみ半分ビジネス半分”で参加していた印象だ。

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 出展者も多様で,依頼を受けてオーダーメイドの研修ゲームを製作する企業から,学生による研究プロジェクトまで,さまざまなスタイルのブースが用意されていた。

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ボードゲームの印刷業者としてお馴染みの萬印堂も出展。普段のゲームイベントとは異なり,企業に向けた製造プランなどをアピールしていたようだ
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スマートエイプが展開する「スマートエイプラーニング」のブースでは,企業向けに提供した商品が展示されていた。製作と販売だけでなく,実際の研修まで含めてワンパッケージのサービスとなっている
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立教大学の共通教育推進室「SCOLA SIP」によるブースには,科学や対話をテーマにしたマーダーミステリー作品などが並ぶ。SCOLA SIPの活動内容は公式サイトにまとめられているので,気になる人はチェックしてみよう
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個人的に面白いと感じたのは,ソフィアによる性格診断「MBTI」をテーマにしたコミュニケーションゲームだ。事前に診断を行い,会話を通じてMBTIの分類を当て合うことで,相互理解とコミュニケーションを同時に行える

 特徴的だったのはプレゼンステージだ。出展者には15分の“プレゼン時間”が提供され,各自が提供する商品やサービス,活動内容などをアピールできた。

 プレゼンの内容は,提供している商品それ自体だけでなく「それを活用して何を伝え,どんな教育効果を持つのか」に焦点をあてたものが多く,エンタメそれ自体が目的であるほかのイベントとはかなり雰囲気が異なる。この部分だけを取り上げるなら,どちらかというと開発者向けカンファレンスに近い印象を受けた。

「ライブ講師 実践会」代表を務める寺沢俊哉氏は,ゲームを通じて来場者を惹きつける方法を語ってくれた。ゲームや体験を学びにつなげるには必要があり,そういったテクニックが重要になるという
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 教育や研修のボードゲームというと,ボードゲームファンの間では「触れづらい存在」として扱われることが少なくない。一般的にボードゲームは楽しむために遊ぶものであり,そこに教育を持ち込むことに抵抗を持つ人もいるだろう。筆者自身も,人が集まるオープンなボードゲーム会で“教育効果”について語られて困るような場面を経験したことがあり,警戒心はやや強めだった。

 一方で,ボードゲームを通じた教育への効果それ自体を否定することはできない。こういった活動を通じて,ボードゲームによる教育のノウハウが共有されれば,どんなメカニズムに,どんな教育的な効果があるのかが明確化されていくはずだ。

 「教育のために用いるゲームとは何か」がハッキリし,ゲームを教育に用いるにあたっての適切な運用方法が確立されれば,そういった抵抗感は解消されていくかもしれない。その流れの一環として,開発者が集う本イベントは有意義なものだと感じられた。これに限らず,さまざまな形で研究や議論が進むことを願いたい。



研修ゲームラボ

石神康秀氏インタビュー


4Gamer:
 まずは「Play & Learn 2024」について,簡単な紹介をいただければと思います。

石神康秀氏(以下,石神氏):
 ボードゲームを活用している団体といっても,研修ボードゲームを作っている会社,ボードゲームを使った研修サービスを展開している会社,ボードゲームを活用している学校や塾など,さまざまな形式があります。イベントに参加いただいたのは,これでも氷山の一角程度でしょう。
 たびたびSNSなどで話題にはなるものの,それらがバラバラに存在しているのが現状です。それを,ひとつの場所にまとめて交流や理解の機会を作ってみた,というのが今回のイベントです。


研修ゲームラボ 石神康秀氏
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4Gamer:
 ほかのイベントではなかなか見られないゲームが並んでいて驚きました。

石神氏:
 いずれのゲームも“学び”という点は共通していますが,その内容によってボリューム感もプレイスタイルもまったく異なりますね。にもかかわらず,各自が独立して存在している関係で,研修ゲームを「自分が体験した1種類」しか知らない人がすごく多いんです。
 そうなると,受けた印象がそのまま“研修ゲーム”へのイメージにつながってしまいます。今回のようにゲームの作り手を集めることで,少なくとも幅があることだけでも分かってほしい,と考えてイベントを開催しました。

4Gamer:
 実際に開催してみて,手応えはいかがでしょうか。

石神氏:
 ゲームマーケットとは異なり,研修ゲームという枠だけで集客をする形になるので不安はありました。ただ,チケットだけで(販売数が)100枚以上が出て,実際に来場してくださっているのを見て安心しました。出展者同士の交流も活発に行われていて,すでに次回開催を望む声もいただいています。

4Gamer:
 本イベントは今後も開催されるのでしょうか。

石神氏:
 みんなで資金を出し合いながら実現しているイベントなので,出展者や来場者の皆さんのご評価次第,といった感じです。もし,スポンサーさんがいらっしゃれば,より安定するかもしれません。

4Gamer:
 娯楽としてのゲームファンの中にも,研修ゲームがどういうものなのか気になっている人もいると思います。そういった場合,どこから探せばよいのでしょうか。

石神氏:
 一般流通しないものが多いので,ハッキリとした回答は難しいところですね。私自身であれば「呼んでくれれば行きます」とお答えできるかもしれません。呼ばれて試遊会を開催していることが多いので,それに参加いただければと思います。

4Gamer:
 教育に用いるゲームと,遊ぶためのゲームでは評価基準が大きく異なるかと思います。ゲームメカニズム上で体験をデザインするにあたり,大きく違うのはどういった点でしょうか。

石神氏:
 答え方が難しいのですが,評価基準は場合によって変わります。「エンタメを目的としたゲームでありながら学べるゲーム」と「学びに特化したゲーム」の間でグラデーションがある,と言えば分かりやすいかもしれません。
 たとえば,市販のゲームで“クリアできないゲーム”は通常存在しませんが,学びに特化したゲームでは意図的にそれを作ることがありえます。まず目標を設定し,着地点がグラデーションのどの位置にあるのかを考える必要があるわけです。

4Gamer:
 企業に合わせてゲームを作る場合は,どのラインを求めているかのヒアリングも重要になりそうですね。

石神氏:
 とはいえ,すべてのボリュームに対応する商品を,1つの企業さんが提供するのは容易ではありません。そういった意味でも,今回のようなイベントを活用いただけたら嬉しく思います。

4Gamer:
 教育や研修に用いるボードゲームは話題になることが多く,興味を持っている企業や団体は多いと思います。そういった方へのコメントなどがあればお願いします。

石神氏:
 このイベントは,研修ゲームを展開する人々が互助的につながって実現したという側面があります。研修ゲームの“幅”を見たいという問い合わせをいただければ,何かしらご紹介ができると思います。

4Gamer:
 まだ生まれて間もない分野ではありますが,研修を目的としたボードゲームにおける,これから克服する必要がある点などはありますか。

石神氏:
 評価基準が存在しない点でしょうか。各自が独立して存在しているため,ジャンルだとか,重い/軽いの基準だとか,そういった指標がないんですね。
 言ってみれば,勢いで作り上げたゲームも,緻密に作られた高度なゲームも,同じモノとして見られているのが現状です。良し悪しは別にして,何かしらのマッピングを提供できるようにしたほうが良いだろう,と感じています。

4Gamer:
 ありがとうございました。

「Play & Learn 2024」公式サイト

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