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[GDC 2024]「The Elder Scrolls: Arena」が誕生するまでのハチャメチャな道のり。TESシリーズの生みの親たちが語るポストモーテム
ラフェイ氏は,元々エレクトロ・ポップバンドのメンバーという経歴を持っており,Bethesda Softworksが設立された1986年に入社。そこから10年ほどの期間にわたってチーフ・エンジニアとしてさまざまなゲームを開発した人物だ。同じころにゲームディレクターとしてヴィージェイ・ラクシュマン(Vijay Lakshman)氏が入社したが,「ゲーム開発者が3人,社長らを含むビジネス担当が7人」という,アンバランスな体制だったそうだ。
その頃のBethesda Softworksは,1998年に第1作がリリースされた「Wayne Gretzky Hockey」や,“id Softwareが大きな影響を受けた”とも言われる一人称視点のアドベンチャー「Terminator 2029」(1992年)で知られるメーカーだった。そして,後者の開発のための脚本やゲームデザインの補佐として雇用されたのが,大学を出たばかりで就職先を探していたというピーターソン氏だ。
ラフェイ氏とピーターソン氏は意気投合し,「ダンジョンズ&ドラゴンズ」といったテーブルトップゲームで遊ぶなどしたことから,ファンタジー世界をベースにした新作「The Elder Scrolls: Arena」を作り出したのだという。
もちろん,1992年の大ヒット作となった「Ultima Underworld」にも大きく感化されていたが,当初はオープンワールド型RPGを作る気などなく,1989年のB級アクション映画「サルート・オブ・ザ・ジャガー」のような,少人数でのグループマッチを描く,アリーナ戦に特化したゲームにしたかったらしい。
なお,初期は「Arena」というシンプルなタイトルだったが,幹部に拒否され,最後の最後で「The Elder Scroll Chapter 1: Arena」になったそうだ。
「Chapter 1」とタイトルに付けられたのは,ピーターソン氏いわく「大ヒットになる予感がしていたから」とのことで,実際に1996年の続編も,当時の正式名称は「The Elder Scrolls II: Daggerfall」と名付けられている。しかし,「Arena」は当初の販売が3000本と低迷し,プロシージャル生成されるオープンワールド型マップがメディアから高く評価されていたとはいえ,ゲーマー受けが良かったとは言い難かったようだ。
それでも,「The Elder Scroll: Arena」はデラックス版が1994年中に発売され,その時プロデューサーとして雇用されたのが,現在エクゼクティブ・プロデューサーを務めるBethesda Softworksの顔役,トッド・ハワード(Todd Howard)氏だ。
当時のBethesda Softworksは,ほぼ同じ開発メンバーが複数のゲームを平行して開発するという,今では考えられない方式の作業を行っていたという。「The Elder Scrolls: Arena」の開発には,コアチームとしてリードデザイナーのラクシュマン氏を含む8人が従事していたが,時には作業を中断して他のプロジェクトに加勢することもあったそうだ。
ラフェイ氏はこの頃を回想し,「Bethesda Softworksは,今とは違って酷い会社だった。賃金は安いし休みなんてなく,ゲーム作りに関わることが楽しいという若者の気持ちを利用していた」と語っている。
事実,ラクシュマン氏を含む6人は「The Elder Scrolls: Arena」を最後に,ラフェイ氏は「An Elder Scrolls Legend: Battlespire」(1997年)を最後に退職しており,それほど待遇の良い職場環境ではなかったことが伺える。最後まで残ったピーターソン氏は「The Elder Scrolls IV: Oblivion」まで脚本に関わり,その後は作家としてデビューを果たしている。
ラフェイ氏とピーターソン氏,そしてラクシュマン氏はそれぞれ別の道を歩んだが,2019年に再び集まりOnceLost Gamesを設立。「Daggerfall」の精神的後継作というオープンワールド型RPG「The Wayward Realms」の開発をスタートした(関連記事)。
現在,ラクシュマン氏はプロジェクトを離れてしまったようだが,新たにTESシリーズ初期2作品の作曲家であり,Epic Gamesやコナミで活動していたというエリック・バーバーリング(Eric Heberling)氏が加わり,現在も開発は続いているという。
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