企画記事
新人ライター座談会。「ゲームライターになって1年,どうだった?」リアルな今と苦労を同期と語り合った
私は専門学校(2年制)を卒業し,専業ライターになった身だ。同期もそれなりに数がいる。声をかければ集まるだろうと答えると,「なら縁のある場所で座談会でもどうでしょう」と返事があった。
というわけで11月某日。普段からDiscordで仕事の相談をし合っている「バンタンゲームアカデミー」ノベル学科 ゲーム・アニメライター専攻 21期生の5人が,母校で久しぶりに顔を合わせた。
はてさて,業界の闇でも愚痴り合うのか。あるいは希望の光でも伝え合うのか。未来のさらに若きライター志望者たちへの参考にと,約3時間にわたって語り合った,新人たちの声をどうぞ。
お相手は私,オクドス熊田と愉快な同期たち。
なぜ,ライターになったのか
オクドス熊田:
というわけで「ライター1年目の僕ら」を振り返りたいのですが。まずは,なぜライターを志望したのかを聞いていきましょうか。
ちなみに僕はありきたりですけど,ゲームが好きで,ゲームに関わる仕事をしたかったからって理由です。文章を書いたり読んだりするのも好きだったので,ちょうどいいやと思って。
長い付き合いであらたまるのも恥ずかしいんだけど(笑)。
あみだ:
僕は対戦格闘ゲームを小学5年生くらいのころからやってて,格ゲーになにかしらの恩返しをしたかったってのが理由ですかね。
公立の大学も受かってたけど,「大学を卒業しても結局バンタンに入り直しそうだ」って思ったので。じゃあ最初からここでライターを目指そうって。それでバンタンに入学しました。
フリーダム山中:
僕はもともと,バンタンの他学科に行くつもりだったんですよ。でも当時は定員がオーバーしてたらしくて,代わりにゲーム・アニメライター専攻を紹介してもらったのがきっかけ。
昔からゲームが好きだったし,「発売前のゲームに触れられるのいいなあ」みたいに考えて,この道を選んだ感じです。
オクドス熊田:
あー,もともとライターとかメディア志望じゃなかったんだ。
フリーダム山中:
そうそう。なんで,最初はファミ通さんも,4Gamerさんも知らなかったくらい。知っててGameWithさんだったかな。もともと自分がゲーム情報を調べるクチじゃなかった,ってのもあるんだけど。
なんでまあ,バンタンにはなにも知らない身で入って,そういう基礎の基礎から教えてもらった感じ。
松尾:
分かる。俺もまったく知らなかった。攻略もあんま見なかったし。
ありみち:
松尾くんもなんだ。
松尾:
ずっとニートやってたからねー。んである日,友達とゲームやってたら「働いたほうがいいんじゃね?」って話になって。
じゃあゲームに関われる仕事でも探してみるかーって。そんでネットで検索してみたら一番上がバンタンだったから,それで入った。
オクドス熊田:
“ゲーム 仕事”で調べたのね。
松尾:
「お,ッポイから行ってみっかー」みたいな感じね(笑)。
だけど在学中さ,よく言われたじゃん。講師の人に「志望するメディアはどこですか」って。だから最初のころ,好きなメディアがないとライターとしてやってくのは難しいのか? ってずっと思ってた。
ありみち:
まあでも実際,今になってみると「ご紹介いただけるならどこでも!」みたいな感じではあるよね(笑)。
松尾:
分かる!
オクドス熊田:
俺はずっと「4Gamerさんで書きたい!」って思ってたなあ。
あみだ:
ずっと言ってたね。
松尾:
実際そういう指針があったほうが,なんやかんやよかったはず。
オクドス熊田:
ありみちさんは? ライターになった理由。
ありみち:
私はコネが欲しくて。
あみだ:
言ってた。在学中から。
ありみち:
ライターって,まあ言ってしまえば「ライターです」って名乗れば,専門学校に入らなくてもなれちゃうじゃないですか?
でも仕事にするならやっぱり,仕事先のツテはある程度,ううん,いっぱい必要だなと思って。「あのメディアで書きたい」って考えても,そこで働く人とのつながりがないと難しいかも,って思って入学した。
オクドス熊田:
そこに至る以前から,ライターにはなりたかったんだ。
ありみち:
そうね。在宅ワークが魅力的だったのが大きいかな。ゲーム好きだし,本も好きだし,書く仕事がしたいっていうのもあった。
例えばレビューみたいに,誰かに魅力を伝えるのも好きだったんだよ。だからライターとしてのコネを求めてバンタンを選んだ。
4Gamer:
皆さんの同期って何名くらいだったんですか。
オクドス熊田:
僕ら21期生は9人です。
4Gamer:
わりと少人数。在学中の関係で言うと,全員が「僕らは同じ学科の同じチームだ!」みたいな意識を持ったりも?
松尾:
いや,俺はないです。
オクドス熊田:
……まあ,こういうヤツもいますけど(笑)。僕としてはそういった意識はけっこうありましたね。
チーム制作っていう,3人ずつに分かれて6ページの誌面を完成させる,といった課題もありましたので。
4Gamer:
それぞれ入学前のテキストライティングの経験などは。
ありみち:
いや,ここのみんなは未経験だったんじゃないかと。
オクドス熊田:
ですね。趣味で物書きしていた子は何人かいましたけど,仕事の話になるとゼロだったんじゃないでしょうか。
最初にお伝えしなければ……
オクドス熊田:
じゃあ仕事の話を聞いていきたいんだけど,まずさ……。
松尾って,もうライターを廃業してるんだっけ?
松尾:
そうね。今ある仕事を片付けたら違う業界で正社員になるつもり。
オクドス熊田:
そうなんだよねえ……理由はどんな感じ?
松尾:
シンプルに貯金が尽きた(笑)。
オクドス熊田:
うーん,シンプル(笑)。
フリーダム山中:
生きてけないもんな。お金ないと。
松尾:
俺はWebじゃなくて,攻略本とかビジュアルブックとかの誌面の仕事をそれなりにもらってたんだけど。やっぱさ,ツテが足りなくて。収入が安定しなかった。定期的に仕事がこないっていうか。
あと,誌面の仕事は原稿料が支払われるまでにタイムラグがあるのもキツかった。11月に仕事して,納品して,校了して……その支払いは来年の2月です,みたいなことが普通だったから。
オクドス熊田:
数か月以上はかかるわけだ。
松尾:
誌面ばっかやってるとさ,これでがっつり稼いでる講師の人たちはすごいってあらためて分かったわ。化け物だなって思う。
ありみち:
授業の合間に,誌面の見開きラフ(※)とか仕上げてたよねえ……。
※雑誌のページを構成するためのレイアウトラフ(設計図)。どこに画像を置き,どこに文章を,どれくらの長さで入れるかなど,ライター側がざっくりとしたラフを書き,デザイナーさんに送る
オクドス熊田:
Webに軸を移す,って考えはなかったの?
松尾:
いや,できればWebでも仕事したかったから,いろいろ動いてはみたのよ。講師の人に尋ねてみたり,ライター採用の面接を受けたり。それでも結局,どこともつながれなかった感じ。
まあでも,ちょうどいい転換期だと思ってる。いったん正社員っていう経験を積んどけば,今後の人生で役に立つこともあるだろうし。
ありみち:
正社員だと,銀行の融資とか住宅ローンとかもかなり通りやすくなるしね。私はどっちも経験あるけど,「正社員である」っていうのは返済能力としてはけっこうアドバンテージがあるように感じた。
松尾:
今の生活のまま30歳に,って考えたとき,ライターを続けられるとも思わなかったしね。どうせ転職するなら早いほうがいいだろって。
でも,もし正社員の面接がどこも受からなかったら,そんときは腹くくってライターを続けるしかないって思ってた。そしたらうれしいことに3社受けて3社とも受かったから。まあいいかなって。
だけど思ったよね。少し前に,もうちょっと面接の練習もしておけば,ライター採用の面接とかも受かったのかなあ……って。
オクドス熊田:
やっぱ悔しさもあるんだ。
松尾:
んー,でも「時の運だよな」って割り切れた。新人ライターとしてはいろいろ貧乏くじを引いたと思うけど,次がすんなり決まったから。そういうもんかなって。俺そういうのも楽しめるほうだし。
オクドス熊田:
松尾はそうだよね。転職も「あいつなら問題ないだろ」って思ってた。まあ,寂しくはあるけどさ(笑)。
あらためて,今なんの仕事してる?
オクドス熊田:
本題に戻るけど,俺的にありみちさんは仕事をガンガンやってるイメージあるんだよね。今ってどんなことしてるんだっけ。
ありみち:
私はゲームレビューがほとんどかな。ファミ通.comさんを中心にいろいろと。前はいくつかのメディアさんとお付き合いしてたけど,メディアそのものがなくなっちゃったり,依頼が途切れちゃったりして。
だから「もうちょい仕事先を増やしたいー!」って思ってます。
フリーダム山中:
なくなっちゃったのってあそこか。僕もやってたあそこ。
ありみち:
そうね。いろいろ企画したし,志摩スペイン村とか行ったなあ。
オクドス熊田:
ありみちさんってたしか,卒業生からの紹介で「るるぶWeb」さんでも記事を出してなかったっけ。
ありみち:
1回だけね。そのあとの仕事にもつながればよかったけど,たぶん,つながらないかもって気もしてる……(笑)。
個人的な願望だと,今は女性向けの記事を書けるメディアさんとつながってみたいかな。今のところ,読者層が女性寄りの媒体さんとのお付き合いがないから。そのあたりとコンタクトを取ってみたい。
オクドス熊田:
なるほど。じゃあ山中さん,どうすか。
フリーダム山中:
主に関わりがあるのは,だいたい4媒体。ファミ通.comさん,ファミ通Appさん,Gamerさん,GameWithさんあたり。
なかでもGamerさんで仕事させてもらうことは多いかな。けっこうやりたいこともやらせてもらってるし。
オクドス熊田:
そいや「BanG Dream!」のライブレポートとかやってたね。
フリーダム山中:
それもそうだし,個人的に今年一番やってみたかったライター仕事が「VALORANT Champions Tour 2023: Masters Tokyo」の取材だったから。やらせてもらえたのが本当にありがたかった。
あみだくんの紹介があってこその縁だったから,本当に感謝してる。
オクドス熊田:
そっか。そういやあみだが先につながってたんだっけ。
確か,バンタンの先輩からの紹介だったよね?
あみだ:
そうそう。そんで仕事させてもらってたら,編集部の人に「FPSに詳しい子います?」って聞かれて,山中くんを紹介した感じ。
フリーダム山中:
本当にありがと……。
あっ,あとはファミ通Appさんでの仕事も多いです。今は「崩壊:スターレイル」のプレイ日記をやらせてもらったりして。
オクドス熊田:
俺が紹介したやつだ。
フリーダム山中:
そうそう。そもそもあれってどういうつながりだったの?
オクドス熊田:
在学中,講師の人から「ファミ通Appさんにいるバンタン卒業生」を紹介してもらって,そのつながりでお仕事をいただいたのよ。
で,その人が「崩壊:スターレイル」をやってる人を探してたから,山中とありみちさんを紹介した感じ。
フリーダム山中:
いろいろつながってたのね。
オクドス熊田:
GameWithさんとはどう? 確かバンタンでやってた講演会で,編集部の人にあいさつしたらつながったんでしょ。
フリーダム山中:
仕事がパタッとなくなったとき,GameWithさんに「なにかお仕事はないでしょうか」って尋ねたら,本格的につながりができた。
今は月1〜2本のペースでいろいろやらせてもらってる。
あみだ:
僕もGameWithさんにはお世話になってるけど,いろんなメディアのなかでもとくに“ちゃんとしてる感”があるよね。
オクドス熊田:
講演会でもすっごいきっちりしてたしね。若い人多かったなあ。
GameWithに,4Gamerが攻略wikiの話を聞いた。だって「ぇぇ!? あいつと私が今日から一つ屋根の下で同棲生活ぅ!?」なの……
ゲーム攻略情報サイト「GameWith」。ゲームに関してネットで調べようとすると,まずトップ寄りに出てきて,4Gamerの存在感を消してくる競合他社である……が。少女漫画みたいな事情があり,ちょっとすり寄ってみることにした。
仕事は“数をこなす”のが難しい
オクドス熊田:
ではここらで,一番稼いでるであろう,あみだのお話でも。
ありみち:
稼ぎ頭の話,聞きたいわー。
あみだ:
いやいや。んなこと言うけどだいたい同じくらいでしょ。
オクドス熊田:
あみだの仕事先はどこなんだっけ。
あみだ:
ファミ通.comさんとGamerさん。そんでファミ通さんのほうで格ゲーのVTuber企画「りーさるぷらん」に関わらせてもらってる。
オクドス熊田:
えっ,そうなんだ!
あみだ:
担当のVTuberさんがデビューしたあとの企画立案とかイベント取材,あと常設番組のMCとか。そういう方面の話を進めてる最中。
まあなので,今後はもうちょい実入りがよくなるかも。
オクドス熊田:
すげー! 学校にいたころから「動画関係の仕事もやってみたい」って言ってたもんね。おめでとう。
あみだ:
ありがとう(笑)。ただ,格ゲー関係の仕事してるとあらためて「やっぱ格ゲーやる人って少ないのかなあ……」って思ったよね。
みんな:
あ〜……。
オクドス熊田:
同期どころか直近の先輩後輩でも,あみだしかいなかったしね。
あみだ:
お世話になってるメディアさんから格ゲー関係のお仕事をけっこうもらうのも,この方面は人手不足だからだろうなーっていつも思ってる。
オクドス熊田:
「Evo 2023」の取材なんて,複数メディアで書いてたでしょ。
あみだ:
そうね。ありがたいことにいろんなところで書かせてもらった。
ありみち:
若くて「格ゲー書けます!」って人は貴重だろうしね。
松尾:
将来性も買われてんだろー。
オクドス熊田:
ちょうど「ストリートファイター6」もアツいし。需要あるよなあ。
あみだ:
おかげさまで,希望してたことは今のところやれてる。そもそも「格ゲーならいっぱい書けるんじゃないか?」って打算もあったしね。
松尾:
ブルーオーシャン狙い野郎がよぉ!
あみだ:
アハハ(笑)。あとはあれ,連載を持ちたい。それが目標。
オクドス熊田:
やりたいことはできてるけど,もっと欲しいってのは同じ気持ち。俺もLoL(リーグ・オブ・レジェンド)で連載とかしたいー!
ちなみにほかの人はどう? やりたいこと,やれてます?
松尾:
やれてない!
ありみち:
やれてない!
松尾:
MMOの仕事したかった!
オクドス熊田:
松尾はまあなぁ……でも,ありみちさんはやりたいことやってるイメージだったのに。意外とそうじゃないんだ。
ありみち:
「この仕事やってみない?」って紹介されるもののなかだと,あんまりないんだよね。やりたい企画を出して,それが採用されて,って流れもあるにはあるんだけど……すべてが採用されるわけじゃないから。最終的にボツになったもののほうが多いよ。
オクドス熊田:
そういや,企画がよくボツになるって言ってたね。
ありみち:
最近はいろいろ学んで,「ダメなものを出してもなあ……」って思うようになって,あんまり出さなくなっちゃった。うーん。やりたいことかー。なんなんだろうね〜……。
それに収入は数をこなせば稼げるんだけど,その“数をこなす”のが難しい感じよね。依頼的にも作業的にも,どっちもの話で。
フリーダム山中:
待ってるだけじゃ仕事ってなかなかこないしね。
かといって,営業かけるとなるとまた難しい。
オクドス熊田:
編集部に行って世間話するみたいな文化も,俺らの関係メディアさんだとないもんね。雑談する場所がないというか。
フリーダム山中:
そう。なんで自分たちから「このゲームが好きです!」「このゲームやってます!」ってアピールすること自体が難しい。
松尾:
しかも「相手に刺さる営業とはなにか?」まで考えるとね。流行のソシャゲを何本も並行してやれます,とかなら広く刺さるかもだけど。
フリーダム山中:
僕はプレスリリースの記事化みたいな,メディア的な通常業務もやらせてもらってるんだけど,そうすると日々の拘束時間があって。営業をかけたり,企画を進めたりする時間がなくなるんだよね。
並行していろいろ動けばいいんだろうけど,なかなかね。
あみだ:
やっぱ一番の近道は取材に出ることなのかな。
オクドス熊田:
いろいろ話せるしね。名刺交換もできるし。
松尾:
でもさあ,名刺に書いてあるアドレスに営業かけて,そっから仕事につながったことって一度もないんだよなあ。
ありみち:
ないねー。
オクドス熊田:
俺もごあいさつのメールは送るけどないなあ……厳しいよね。
初めてやった仕事はなに?
オクドス熊田:
みんなはライターとして最初にやった仕事はなに?
松尾:
「マインクラフト」の攻略本! いきなり3案件が重なって血反吐を吐いたわ。しかも,そのうちの二つが運悪くマイクラ。
混乱したよね。「え? 俺が建築してるこれって,どっちのメディアに載るやつなんだっけ?」ってなりながら進めてた。
文体もそれぞれ違うし,ずっと頭グルグルだったし。で,熊田は?
オクドス熊田:
電子書籍サイトでのマンガ「メイドインアビス」紹介記事。学校の先輩からもらった仕事だった。修正指示がめちゃめちゃ入って「こ,これが仕事の原稿か……」って打ちのめされたのを覚えてる。
あみだ:
僕は仕事らしい仕事だと,初めては東京ゲームショウ2022の「ストリートファイター6」の試遊レポートかな。
フリーダム山中:
あれ? その前日にもなんか取材いってなかったっけ?
あみだ:
あっ,そうだ! TGS前日に“龍が如くスタジオ”の新作発表会があって,徹夜でTGSに行ったんだった(笑)。
編集さんと現地で「またお会いましたね……」って死にそうな顔で話し合ったのを覚えてる。キツかったわ,あれー。
フリーダム山中:
僕は「VALORANT Champions Tour」の取材かな。
それか「nosh」の食レポ企画。
オクドス熊田:
そういやnosh食べてたね。在学中だったっけ。
フリーダム山中:
その前に志摩スペイン村の取材同行があった気もするけど。
なんやかんや,学校に行きながら月1で動いてたなあ。
ありみち:
私も山中くんと同じメディアさんで初仕事かな。占い師のVTuberさんに占ってもらって,インタビューもするってお仕事だった。
松尾:
なにそれ(笑)。
オクドス熊田:
ああそれ聞いた。なんか楽しそうな仕事だなって思ってた。
ありみち:
楽しかったよー。あとは「ホグワーツ・レガシー」の企画記事もやった。原作がらみの小ネタを集めて紹介する,みたいな内容の。
オクドス熊田:
バンタン同期のルーラ石田さんと共同でやったやつか。
あみだ:
あれけっこう読まれたんだよね?
ありみち:
数値は分かんないけど,編集さんからの評判はよかったみたい。ありがたいことにホグレガのPR記事も続けてやらせてもらえた。
ただ,最初のころの感想は「割にあわねー」だったかも。この労力のかけ方で,この報酬なら,もっと効率よくできないとって思った。
オクドス熊田:
効率に関しては今も同じこと思ってるわ。
ありみち:
そうね。今でも課題。
4Gamer:
逆に,楽でおいしかった仕事などは?
オクドス熊田:
あー,それだと昔,Excelでデータ集計しただけで10万円近くもらえるお仕事がありました。原稿作業とかもなかったので,めちゃめちゃありがたかったことを記憶しています。
まあそれと,俺は4Gamerさん関連のお仕事ですね。間違いなくほかより多めにもらえてますので……。
あみだ:
僕も4Gamerさんに営業かけようかな……。
フリーダム山中:
楽なので言えば,あんまり動かなくていい,ほぼ見てるだけのイベント取材とかかな。原稿料の話じゃなくて,取材が楽だった。
松尾:
やってて楽しくて実入りもよかったのだと,週刊ファミ通さんの“とっておきインディー”かな。インディーゲーム好きだし。
ありみち:
私もやった。見開き2Pで構成しやすいよね。
オクドス熊田:
ただ,俺らより分かってるプロのデザイナーさんが,より映える誌面のデザインに直すから,規定の文章量が変わったりして焦るよね。
俺たち新人だから,誌面を構成するための技術が足りてないってところは確実に大きいけど,最初のころはびっくりしちゃった。
松尾:
あるある。デザインが上がってきてから原稿を書くから,「ここの文章そんなに書くことなくない!?」みたいなことよくあった。
ありみち:
誌面だとあるよねー,そゆこと。
あみだ:
楽しい仕事ならたくさんあったんだけど。
割のいい仕事ってなると……うーん。
オクドス熊田:
あみだは数で稼いでるイメージかな。
ちなみに楽しかった仕事は?
あみだ:
それこそ“テレビの中の人”に会えるような仕事はやっぱ楽しい。ときどさんとか,いろんなプロゲーマーの方々とお話しできたし。
あとは「ゲームセンターCX」のイベント取材で,有野課長にお会いできたことかな。あれは本当にうれしかった。
オクドス熊田:
分かる。ついでに皆さん,この1年で個人の原稿料は上がった? 交渉次第でギャラを上げられるって聞くけど,やったことなくて。
あみだ:
あー,交渉はしてないけど,ギャラがちょっと上がったりはした。
プレイレポと一緒に公開した動画が20万再生くらいされて,その成果なのか,以降はほかの原稿料もちょっとだけ上がりました。
オクドス熊田:
あみだの場合,普段の働きもあるんだろうね。そのうえで明確な実績もできたし,みたいな感じなのかな。うらやましー!
頭が上がらない人の話
オクドス熊田:
在学中からこれまで,「よくお世話になったな〜」ってメディアさんとか編集者さんっています?
あみだ:
んー,やっぱGamerの人かな。ライターになったばかりで右も左も分からないころ,いろいろな取材に連れていってもらったから。
今ではたまーにキツい仕事もくるけど,恩義がある。
ありみち:
私は誰だろ。やっぱ二城さんかな。波長が一番合う感じだから。
オクドス熊田:
バンタンのだいぶ上の先輩よね。授業にも何回か顔出してくれた。
ありみち:
うん。2人で三重まで行ってきて,とくに苦にも思わず帰ってこられたくらいには波長が合う。
オクドス熊田:
えっ,遊びいったの?
ありみち:
いや取材じゃい。
松尾:
なんだ。2人で旅行する仲かと思った。
フリーダム山中:
そこまでいったらもはやマブダチでしょ。
ありみち:
まあ,そういうこともできるくらい相性いいなって思える。
今もちょこちょこお仕事をもらったりしてるし。
あみだ:
僕はファミ通.comさんでお世話になってる,とよまんさん。取材先であいさつさせてもらってから,ずっとよくしてもらってる。
ああ,あとミス・ユースケさん。あれだけ丁寧に原稿のアカ入れ(修正指示)をしてくれる人はいないなって思ってる。
オクドス熊田:
分かる! ミス・ユースケさんには俺も大変お世話になってる。
言い方が怖いときもあるけど,だいたい「なるほど」って納得できるから,一緒に仕事しててすごくありがたい人だよね。
あみだ:
この記事? で言っていいのかは分からないけど,イメージ通りの不思議な人ではある(笑)。でもめちゃめちゃいい人。
オクドス熊田:
俺はあと,ファミ通.comさんのごえモンさん,河合ログさん。4Gamerさんだと楽器さん,Junpocoさんがとくにお世話になってるかな。
全員,足を向けて寝れない。
松尾:
お世話になった人には頭上がらんよなあ……俺もバンタン講師の江原さんがそう。在学中からずっとお世話になってるし。
オクドス熊田:
卒業後も仕事もらってたもんね。
松尾:
最初の攻略本仕事も江原さんが持ってきてくれた。そのあとも何回か一緒に仕事させてもらったし,本当にお世話になった。
あー,でも結局,明確に“誰か”って話じゃないかも。関わった人数が少ないのもあるかもだけど,全員お世話になったわ。
オクドス熊田:
そうねえ。俺もいろいろミスしたとき助けてもらったし。関わった人の全員にお世話になった。いうてもまだ1年目の新人だしさ。
ほんと,バンタンにはつながりの面でもお世話になってるなあ。先輩経由で,知らない編集さんと面通しさせてもらったりしたし。
フリーダム山中:
僕はあんまりなかったかも。
ありみち:
私もそんなにかな。
オクドス熊田:
そうなの? まあ現場とか知人次第か。
ついでに逆パターンもだけど……キツい相手っていた?
ありみち:
それ言っていいの(笑)?
オクドス熊田:
もちろんフワッとで!
フリーダム山中:
僕はフランクに接せられるのは苦手だったかも。初対面かつメールでネット用語とか使われると,「あー……」って感じになった。
そういう人とは実際に仕事をしてみても,あんまり話がかみ合わないことも多くて。きっと合うタイプではないんだろうなと。
オクドス熊田からのフォロー:
少なくとも僕はやりとりしていて「この人の連絡やだな……」みたいなこと思ってないです(笑)。
松尾:
この人ちょっとなあ,みたいなのはないけど,連絡ツールかな。メディアごとにバラバラなのが不便に感じた。
メールとか,LINEとか,Slackとか,SkypeとかDiscordとか……。
オクドス熊田:
分かるわー。新しいツールを入れたりするのも面倒だしね。
ライターのキャリアに“編集部に入る”はアリか
オクドス熊田:
編集さんの話にちなむと,ライターからのキャリアアップとしてよく“編集部に入る”ってのあるじゃん。実際,狙ってる人いる?
松尾:
もし,俺がまたこの業界に戻ってくるなら,そんときは編集部を目指すかもしれない。転職先でマネジメント系の業務もあるから。
ライターとしてイチから仕事先を探すより,そのへんの経験とライター経験を生かして就活するって考えたら,たぶん編集部。
4Gamer:
逆に,編集部を目指さない理由はありますか?
ありみち:
まあその,“社員になりたくない”からフリーランスでいたいって理由はあったりします。自分で予定を組んだりしたいので。
オクドス熊田:
同じく。いろんなメディアさんで自由にやりたいって感じです。
あみだ:
僕はシンプルに,校正が苦手なので。
ありみち:
仕事内容としてね(笑)。
あみだ:
自分の原稿を見直すのも苦手なのに,他人のを見られる気がしない。
オクドス熊田:
その流れで「これ向いてね〜」って仕事はある?
あみだ:
「インタビュー」だね。話を聞くのは好きなんだけど,会話を記事の体裁に仕立てるのが本当に大変で……。
オクドス熊田:
分かる……難しいよね。インタビュー現場が楽しげでも,その空気感を残しつつ,どうやって文字に起こすのかに毎回悩んでる。
フリーダム山中:
まだやったことないんだよねインタビュー。でも絶対苦手なはず。
松尾:
うまい人は本当にすごいよね。前にバンタンの先輩と一緒にインタビューいったけど,話の盛り上げ方がめちゃくちゃうまくて感動した。
ありみち:
斎藤講師のインタビューを聞いたことあるけど,あれもめちゃめちゃうまかった。聞きたいことのために,話題をキレイに誘導しながら会話で自然とつなげていく流れがすごかった。
オクドス熊田:
インタビューが上手な人に同行するのは参考になるよね。
あみだ:
そういう熊田くんは? なにか苦手なこと。
オクドス熊田:
俺は「フラットに書いて」って言われるのが苦手だった。出ている情報を客観的にまとめるようなタイプの記事。自分の感じたこととか,主観的な感情を乗せるほうが書きやすいってのもあって。
ありみち:
真逆かも。私は「書き方がフラット」って言われることが多いから,自分の色や感情を求められると難しく感じる。上から順序立ててカッチリ書いていくのが好きなのもあるし。
だから,最初にツカミを作るみたいな,冒頭にキャッチーさを持ってくる書き方とかも苦手かな。
フリーダム山中:
僕も自分の色を出すのは苦手かなあ。出し方も分からない。だからレビューより,情報をまとめる攻略とかのほうが好きだね。
そもそも変な文章を書こうとしても,途中で正気に戻っちゃう……。
松尾:
テンション突き通さなきゃ。
フリーダム山中:
そうできればいいんだけど,書ききるまでに時間もかかるから。
どっかで絶対に冷静になっちゃうんだよね。
ありみち:
メディアごとのやり方の違いもあるしねえ。
あ,あとアレ。「文字起こし」(※)が嫌い。
※インタビューで収録した音声情報をもとに,文字に起こす作業。非常に退屈であり,おおよそのライターにとっての敵
あみだ:
アレ好きな人いないでしょ(笑)。
ありみち:
映像があればうれしいんだけど,音声だけポンっと投げられるとツラい。「この高い声は○○さん……?」みたいな推理ゲームになる。
あみだ:
僕,30分経ってから急に新しい人が喋りだす音源あったわ。
オクドス熊田:
地獄じゃねえか。
学校に行った価値はあった?
オクドス熊田:
バンタンで教わって役に立ったことはあった?
ぶっちゃけ,すべて役立ってるくらいだけど。
ありみち:
誌面の「ラフ」。
松尾:
ラフでしょそりゃ。
オクドス熊田:
やっぱしかー。経験のあるなしでまるで違いそうだもんね。
ありみち:
仮に,未経験のまま急に誌面の仕事をポンッと渡されて「じゃあこれやっといて」みたいに言われたら絶対できないよ,アレ。
フリーダム山中:
それはそう。
オクドス熊田:
俺もだけど,同期の人は誌面の仕事もかじったもんね。ここにいる全員,週刊ファミ通さんの同じ号に載ったこともあったし。
なんやかんや,Webだけで食うってのも可能性がせばまるだけだし,仕事の幅を広げられる技術としてはやっぱ大きかったよね。
あみだ:
でも僕,誌面だと仕事が遅いんだよなあ。
効率としてはどうにも……って感じがある。
オクドス熊田:
俺もそう。誌面オンリーで仕事できる気しない理由がそれ。
松尾:
仕事がくればできるんだけど,こなかったんだよなあ。
あみだ:
あとは斎藤講師が言ってた「営業のかけ方」かな。先方さんに「これが好きです!」っていうのをちゃんと伝えること。
あの教えがあったから,仕事先で「格ゲーの仕事したいです!」っていろんな人に伝えられて,結果的に今につながった。
オクドス熊田:
斎藤講師の「とにかく営業をかけなさい」「これが好きだって言い続けなさい」の教えが実を結んだと。
松尾:
俺もいろんなとこで言い続けたんだけど。
ありみち:
実が落ちた人もいると。
あみだ:
僕も現場での営業かな。あとは新作に触れることとか。
オクドス熊田:
X(旧Twitter)での営業とかは?
フリーダム山中:
ほぼ仕事のPRにしか使ってないな。備忘録みたいな。
あみだ:
僕はやってない。燃えるの怖いし……。
それにプロフィールとかに「ライターです!」って書いちゃうと,個人的な感想とかが書きづらくなるのも怖い。
松尾:
ふとした拍子に,大昔の発言を掘り返されたりね。
あみだ:
問題はなにもなかったと思うんだけど,一応ライターとして活動するときに個人的なアカウントの過去の発言は全部消しておいた。
オクドス熊田:
えらい。
これからやりたいこと
オクドス熊田:
そろそろ締めに向けて,もうちょい希望に満ちた話はない?
あみだ:
希望ってなにさ。
オクドス熊田:
ほらあれよ。これからの展望とか。
俺はLoLの記事もっと書きたい。
フリーダム山中:
攻略っ!
あみだ:
連載っ!
松尾:
国家資格一級っ!
ありみち:
なんか違う志のヤツいる。
私はとにかく,関わるメディアさんを増やしたい。わりとなんにでも興味は持てるほうだから,「なんでもやります」って姿勢で。
松尾:
でも実際,「なんでもやります!」だと営業かけるときに厳しくならない? 俺もそうだったんだけど,「これができます!」って言いきれないから,強い意志を持って働きかけられないというか。
ありみち:
「好きなゲームなに?」って聞かれると困っちゃうんだよね。
松尾:
「MMO好きです」って正直に答えても,使いづらそうだし。
ありみち:
広く浅くがメインだと「ほかにもっと書ける人いるんだよなー……」って思っちゃうのもねえ。
松尾:
MMOなんかは継続してプレイしやすい設計だから,ずっと第一線で書いてるライターさんとかもいるし。個人ブログも強いし。
オクドス熊田:
LoLも格ゲーも,上にいる人たちめちゃめちゃ強いからなあ……。
あみだ:
でも,格ゲーはやっぱり人が足りてなかったり,現場に出られる人が少なかったりで,なんやかんや書ける機会は多いよ。
松尾:
そこらはeスポーツってか,大会イベントもあったりするじゃん。
MMOだとそういうのも少ないから,余計難しかったわ。
オクドス熊田:
希望の話のつもりだったのに,なんか湿っぽいなあ……。
4Gamerさん的には,僕らはどうしたほうがいいとかありますか?
4Gamer:
「バンタン卒業生は仲いいなあ」って所感のうえでの話ですが,やりたい仕事を取りやすくってことなら,皆さんで編集プロダクション的なライター集団として組むのもアリに思えました。法人格も関わる話になりますが,皆さんそれぞれ武器も違って,なにより仲よさそうなので。
オクドス熊田:
僕らも個人間で仕事を紹介し合ったりはしていますが,編プロ的な集団になるだけで違うものなのですか?
4Gamer:
まずは単純に「口座」の話。外注との契約時,あらゆる個人・会社に振込口座を共有してもらいますが,未契約の相手には心理的障壁があります。その多くは単なる「稟議や面接の一手間」ですが,その有無が「じゃあ契約済みの人でいっか」とさせるのが社会の実情です。
その点,“5人いるけど法人口座は1つ”だと,1人(=法人)と契約すれば誰かしらの得意や手数を利用できて,とても気楽に頼めます。
商社や営業などで言われる「まずは1回でも口座取り引きすれば(あとは手続きが楽になるから)勝ち」といった考えに近いですね。まずはお試しの1回,その真意は成果物よりも口座。間違いないです。
オクドス熊田:
なるほど……「これは俺には難しいけど,ありみちさんなら」って思った仕事を,今よりも自分たちで回しやすくなるわけですね。
4Gamer:
最大のメリットは,スケジュール的に断るほかない取りこぼしを活用できることですね。もちろん,法人格もない状態で契約書に書いてあることに違反をするとよくないことになりがちなのでハードルはあります。それに仲のよさと活動の正否も別です。
集団の統制はどうするのか。案件数やお金の管理は。働き方にもしがらみが生まれますし,そもそも要求されるニーズとクオリティを満たせる集団なのか。会社的な話になると,そもそも私の知識では助言すらできませんし。存続に関わる問題がどこから出てくるかも分からない。とくに5人の食いぶちを確保できるのかが分かりやすい難題でしょう。
ですので,あくまで小話的なものですが。
オクドス熊田:
お金はまあ,確かに……でも,俺ら21期生的にはけっこうアリだよね。今いる同期だけでもLoL,格ゲー,MMO,FPS,女性向けみたいに,得意ジャンルに違いがありすぎるし。書き口もそれぞれあるし。
松尾:
全員ゲームの話,合わねえんもん(笑)。
ありみち:
「みんなでゲームやろう」ってなっても「じゃあなにやるよ……」って話し合いから始まってたもんね(笑)。
フリーダム山中:
当時,いろんなゲームをおすすめし合ってたイメージあるわ。
原神とかシャニマスとか。身内でブームだったよね。
オクドス熊田:
いろいろやったね。でもそうか。個々人でやれるジャンルが違うからこそのライター集団っていう形か。なるほどー……。
4Gamer:
この時点で,MOBAとRPGと格ゲーと音ゲーとFPSと女性向けの「これが得意です」が揃いますし。営業も省力化できます。
ただし,これは「取りこぼしの融通」と「依頼の気楽さ」を倍加するためだけの方法なので,戦いの土俵は個人ライターとほぼ同じです。口座や依頼の心理的障壁から先は結局,成果物で測られますので。
あと,ツテに頼らず媒体に突撃するのもありだと思います。誰かからの仲介に頼るのではなく,問い合わせ窓口に直メールとかで。
ありみち:
え,アリなんですかそれ。
4Gamer:
よその媒体に迷惑がかかるかもなので,受付の有無は期待しないでほしいのですが。とりあえず全体窓口に送れば誰かしら目にします。
ゲームメディアには毎日,何百通ものプレスリリースが届くため,査収以前に目につかない可能性も大いにありますが,勝算は高くなくとも,ナシではない。採用がワンチャンスだと思うのもやめましょう。当たって砕けて治って折を見て,また当たりましょう。
これも松尾さんの言う,時の運であることが往々にしてあります。
ありみち:
そうなんですね。
4Gamer:
あと,個人的には「オレなんでも書けます!」と言ってくれるほうがいいですね。「その作品が好きかどうか」は欠かせないトッピングですが,私にとっては「どんな記事でも書けるか」がベースなので。
オクドス熊田:
なんでも書けますは,説得力がないと思ってたのですが……。
4Gamer:
まず好き嫌い以前に,取材やプレイレポートのほか,私も「二度とやんねえ!」ってくらい大失敗した人生初のインタビューにも挑む。前提の手段を削らないようにしましょう。得手不得手はそのあと。記事種別で可否を匂わせると,頼む側も「特定条件で使える人」に区分します。これは依頼段階での「なんでも書ける人」との比較で不利になります。
当然,最初は難しいと思います。失敗もあり得ます。ただ,好きなものしか書かない,書けないで選択肢を減らすより,最初の1回目で「オレなんでも書けます! 今からやれますよ!」とイキリ散らして機会を得るほうがよっぽど大切です。取り返しのつかない失敗となると頭を抱えますが,結果がどうあれ,機会さえ得たらあとは成長するだけ。そうやって能力を高めて,最終的に帳尻を合わせれば問題なしです。
そういう人ほど趣味嗜好の強みとは別軸で,最終的に「この人ならやってなくても書けるだろう」の候補になるので。もちろん,好きなものだけで戦えるライターならそれが最善なんでしょうが。
オクドス熊田:
なるほど……。
4Gamer:
まあ正直に言うと,そうなったところで,双方のいろいろな事情と理由で連絡を途切らせたライターはたくさんいますが。
付き合いが続くかどうかは自分たち,そして編集者という十人十色のあいまいな生き物との戦いになります。ここまでの私の個人的見解ですら,真っ向から意見が違う人もたくさんいる生態系ですから(笑)。
担当編集とのめぐり合わせ次第,と言ってしまうとそれまでですので,ゲーム好きらしく相手に応じた攻略法を考えてみてください。
あ,ついでにゲーム攻略の話ですと山中さん。
フリーダム山中:
あ,ハイ!
4Gamer:
今はあのメディアと仕事してらっしゃるかと思いますが――。
こうして編集さんよりアドバイスを受けた若手ライター陣。その時間は30分以上にもおよび,全員なにかしらの知見を得ることとなった。
座談会の大半はそれぞれの現状報告に終始してしまったが,各々が夢見たライターとして活動したり,苦労したり,あるいは異なる夢に向かったりする様子は届けられたかと思う。ビシッと締められなかったが,我々のこうした未熟な姿こそ,新人ライター1年目のリアルだ。
そのうえで。最後の30分のほうがライターとしてはどう考えても実のある話だった。つまるところ,若手同士でやいのやいの話すより,いろんなことを知っている先輩方の知見に頼るほうがいいのではないか――というのが,座談会後にサイゼリヤで話し合った我々の結論である。
未来のライター志望者たちよ。
これだけは覚えて帰ってほしい。
「編集の人たちにもっといろんな話を聞こう!!!」
(大先輩の話は,若手の話の5倍以上の価値がある)
我々はそう誓い合い,サイゼ代の全支払いを押しつけられたオクドス熊田ともども,それぞれの原稿のもとへと帰っていった。
同校のライター分野は2025年4月以降,今回の参加者たちが卒業した専門学校相当の「専門部」ではなく,大学相当の「大学部」でリニューアル運営される。
「バンタンゲームアカデミー」専門部
「バンタンゲームアカデミー」大学部
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