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[TGS2023]インディーゲームがパッケージ版を展開する意味をゲスト3名が語った「インディーゲーム、代表者会議!」をレポート
イベントにはゲストとして,WSS playground.の斉藤大地氏とPLAYISMの水谷俊次氏,インティ・クリエイツの會津卓也氏が登壇し,「インディーゲームのパッケージ展開」というテーマを中心としたトークを繰り広げた。本稿ではその模様をレポートしよう。
今回のステージでは,与えられたテーマに沿ってゲストがトークしていくという形式で行われた。1つ目のお題は「ハピネットについて」というテーマで,3人がハピネットに持つイメージが語られた。
斉藤氏は,元バンダイの社員らが設立したということを知り「ドラマのある会社なんだろう」というイメージを持っていると語った。斉藤氏はハピネットとバンダイの関係をかなり調べてきているようで,会社間の関係を問う質問にMCもたじたじだった。
水谷氏は,ハピネットの第一印象について「すごい会社だな」と思ったという。PLAYISMがハピネットと初めて仕事をしたのは「シルバー2425」のパッケージ版を展開したときだったそう。当初「シルバー2425」は,パッケージ版を展開するか不透明だったが,ハピネットの営業マンが「ぜひパッケージ版を展開したい」と熱くプレゼン。熱意に突き動かされる形でパッケージ版の展開が決まったことが明かされた。
會津氏とハピネットとの出会いについては,いわゆるパッケージ限定版をインティ・クリエイツが展開しようとして流通を探していたことがきっかけだったという。ハピネットは営業部隊を多く抱えているため,自社に営業がないインティ・クリエイツの代わりに販路を広げてくれる強みがあると思ったのだそうだ。
続いてのトークテーマは,「インディーゲームの魅力について」。
これについては水谷氏は,売上関係なくデベロッパ自身のアイデアが形になることであると語る。パブリッシャが出資しデベロッパが制作するという開発形態だと「開発資金を回収できるか」「売れるか売れないか」というところをかなりシビアに詰めることになるが,インディーゲームはそうした制約がない。人月単価を気にせずにいつまでも作り込める狂気性が最大の魅力であると水谷氏は語った。
水谷氏の話を受けて會津氏は「ほとんど包括して魅力を言ってもらった」とコメント。パブリッシャ出資のゲーム開発では,大衆性や受けることが求められるため,ゲームも尖りすぎないようになるが,インディーゲームは,ディレクターのエゴを押し出したタイトルが作れると語った。
インディーゲームは売上度外視でいつまでも作れるということから,開発が長期にわたることも少なくない。インティ・クリエイツは,副社長の津田氏がかなり作り込む人らしく,開発が延びることがあるそう。ほかの役員から「いつまで作ってるんだ」とツッコミが入った際には會津氏がフォローを入れるとのことだが,結果的に相当な数を売らないと利益が出ないこともあるのだと漏らしていた。
ゲームの延期については,水谷氏と斉藤氏も「ゲームが完成するのは奇跡的なことだ」と同意し,3名ともゲーム開発を計画通りに進める難しさを語っていた。
3つ目は「インディーゲームのパッケージ化について」というテーマで,インディーゲームをパッケージにする意図が語られた。
まず,會津氏は,ゲームを文化として残すと考えたときにはパッケージが必要だと考えていると語る。ダウンロード版はプラットフォームでの配信が止まった場合,インストールしている本体が壊れたら,そのゲームは失われてしまう。しかし,パッケージの場合はアイテムとしてソフトが残るため,新たに本体を買い直せば再びプレイできる。文化として自分たちが作ったゲームを残していくためにパッケージ展開をしていると述べた。
また,インティ・クリエイツには,海外から「今パッケージ版で出しているバージョンはパッチの当たった最終版か」という問い合わせも来るらしく,パッケージ版を文化的なアーカイブとして考えているファンがいることも語られていた。
水谷氏がパッケージ展開する意図は,2つあるという。
1つ目は「ファングッズとしての価値」である。水谷氏によれば,ダウンロード版を既に持っているという人がファンアイテムとしてパッケージ版を求めるケースがあり,そうしたコレクション需要に応えるという側面があるそうだ。
2つ目は「ファミリー層や子どもにインディーゲームを届けるため」という側面である。1つ目とはまったく逆の理由だが,パッケージ版が店頭に並ぶことによって,コアなゲーマー以外の目に留まる機会が生まれる。そうした普段インディーゲームに触れる機会のない人たちへ広がるきっかけをパッケージ化は助けてくれるのだという。
斉藤氏は「パッケージ化そのものが嬉しいから」と,2人とは異なる開発者目線でコメント。自分たちのゲームがパッケージ化されることはある種トロフィーのようなもので,インディーデベロッパにとっては,それほど特別なことなのだという。
また,個人開発者はモチベーションとゲームの作風が直結することが多いそうで,パッケージ化のようなことも少なからずゲーム自体に影響を与えるのではないかと斉藤氏は述べていた。
終盤には,「こんなことできないの? ハピネットさん!」というテーマで,3人がハピネットに願う要望をざっくばらんに話すフリートークの機会が設けられた。水谷氏からは「ハピネットでゲームショップを全国展開してほしい」,斉藤氏からは「海外展開を視野に入れてほしい」という要望が語られていた。
ステージ最後には,ハピネットブースで展開されているWSS playground.,PLAYISM,インティ・クリエイツのタイトルやステージイベントなどの紹介され,セッションは終了となった。PLAYISMとインティ・クリエイツは自社ブースも展開しているので,一般日にTGS会場に行く人はハピネットブースと共に足を運んでみよう。
ハピネットゲームフェス! in TGS2023 特設サイト
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