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[CEDEC 2023]プレイヤーの本音を引き出す秘訣とは。フォーカスグループインタビューの進め方が解説されたWFSのセッション
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印刷2023/08/31 20:28

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[CEDEC 2023]プレイヤーの本音を引き出す秘訣とは。フォーカスグループインタビューの進め方が解説されたWFSのセッション

 ゲーム開発者会議のCEDEC 2023で,WFSのMarketing部シニアマネージャーを務める加藤耕輔氏と,Analysis室アナリストの伊豫部羽人氏によるセッション「ゲームプレイヤーの『本音』を理解する定性分析『フォーカスグループインタビュー』〜学びを最大化するための運営体制と注意するべき3つのこと」が行われた。

 特に運営型のゲームでは,プレイヤーの声を参考にしての改善が欠かせない。本稿では,プレイヤーから本音を引き出し,それをゲームに活かすための方法が紹介されたセッションの模様をレポートしよう。

加藤耕輔氏(右)と伊豫部羽人氏(左)
画像集 No.001のサムネイル画像 / [CEDEC 2023]プレイヤーの本音を引き出す秘訣とは。フォーカスグループインタビューの進め方が解説されたWFSのセッション

 まずは伊豫部氏が,プレイヤーの声をゲームに活かすことの難しさを語るところからセッションはスタート。自身も「自己満足の施策追加や機能改善にならないように」と心がけながら,プレイヤーの行動ログを分析したり,SNSの反応を見たり,ゲーム内でアンケートを取ったりして改善してきたそうだが,それだけでは足りないと感じていたという。

 その理由には,ゲームの面白さというものを定量的に(数値や数量で)表すことが難しいという問題があった。行動ログからプレイヤーの感情を読み取ることは難しいし,アンケートでも「どれくらい面白かったか」といった質問で,統一された基準を設けるのは無理に近い。

 そのため,せっかくプレイヤーにアンケートを行っても,最終的には「●●が面白かったという意見が●件ありました」といった,面白さそのものからは少しずれた形に落とし込まれてしまっていたという。それも1つの正しい分析ではあるのだが,伊豫部氏は「それだけで面白さを測れるわけではない」と話した。

 その解決方法を探り,行き着いたのがフォーカスグループインタビューという手法だった。これによって,プレイヤーの行動の理由や感情の変遷などを明らかにできて,施策の意思決定が早まり,改善の精度も上がったそうだ。

 フォーカスグループインタビューとは,特定の条件で抽出された5名ほどのプレイヤーに集まってもらい,モデレータ(進行役)を通して,ゲームに関する2時間程度のインタビューを行うもの。

画像集 No.003のサムネイル画像 / [CEDEC 2023]プレイヤーの本音を引き出す秘訣とは。フォーカスグループインタビューの進め方が解説されたWFSのセッション

 「特定の条件」というのは,開発会社が感じているゲームの問題を洗い出すためのもので,具体的には「ログイン頻度が落ちている」とか「新規でプレイを始めたばかり」といった感じになる。伊豫部氏によると,このグループ分けがキモになるとのことだ。

 モデレータはプロの人を立て,インタビュールームには集まったプレイヤーとモデレータのみが入り,開発者やマーケティング担当といった関係者は,別室からモニタリングする。これはプレイヤーが本音を話しやすい状況にするためだ。

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 セッションでは,フォーカスグループインタビューから得た意見がゲームの改善にどう活かされたのかが,具体例によって説明された。

 ログイン頻度が落ちているプレイヤーに集まってもらい,1日のプレイサイクルやログインしなくなっている理由,どうすれば再びログインするようになるか等を聞いていったところ,ある人が「ログインがめんどくさい」と発言し,それにほかのプレイヤーも大きく頷いたという。
 詳しく聞いていくと,正確にはデイリールーティンを面倒に感じており,その結果毎日ログインする意味が薄くなって,ゲームから離脱気味になっていることが分かったそうだ。

 それを受けて,開発チームはデイリールーティンの所要時間を減らす方向で調整を行ったという。

 また,そのゲームを友人や知人に勧めてもらうための方法を探るにあたっては,ライトからコアまで,複数のグループへインタビューを行った。そのゲームを誰かに勧めたことはあるか,勧めるタイトルと勧めないタイトルの違いは何か,障害になるものは……を質問したところ,「オススメしたが難度が高いと断られた」「面白いが時間がかかるので,他人には勧めづらい」といった話を聞けて,ゲームバランスを見直し,オススメしやすい環境を作ったという。

 こう書くとかなりスムーズに進んでいるので,アンケートと大差ないのでは……と思う人がいるかもしれない。伊豫部氏は,なぜインタビューでなければいけないのか,その重要性を説明した。

 インタビューでは,プレイヤーの行動や考えの「背景」まで知れるのが大きいという。
 例えばアンケートで「Aというゲームにログインしなくなったのはなぜですか」と聞いても,「Bというゲームをプレイするようになったからです」といった,表層的な答えで終わってしまうことがほとんどだそうだ。
 だがインタビューであれば,「Bはどうやって知りましたか」「Bのプレイを始める前から,Aをアンインストールしていませんでしたか」といったように,そこから深掘りできて,本質的な問題に迫っていける。

 プレイヤーの「熱量」も,インタビューでなければ感じられないという。
 インタビュー中のプレイヤーの表情や声,ほかの参加者の反応や目線などから,数字などには表れない「最も求められているもの」が分かるそうだ。

 伊豫部氏は,その場の雰囲気やインタビューの展開に合わせて,調査を広げたり絞ったりして,軌道修正できるのがインタビュー形式の大きなメリットだと語った。

 ここで加藤氏がマイクを取り,フォーカスグループインタビューを行ううえでのTipsを紹介した。

 まず行うのは,何を知りたいか,どのようなグループに聞くかを決める「調査全体設計」だが,ここにはプロデューサーはもちろん,デザイナーやマーケティング担当者など,「関係者全員」が参加して,それぞれの目線でディスカッションを重ねるべきとした。

 続いては参加者を募集し,実際に出席してもらう人を決めることになるが,ここで重要になるのは,インタビュー当日の参加人数。参加者が少ないと当然ながら得られるものも少なくなるし,多すぎると今度は,それぞれが深く話せなくなってしまうため,人数調整は重要になるとのことだ。
 また,参加者間の世代やゲームの進捗度に大きなギャップがあると,年長者への遠慮やネタバレの懸念から話がしづらくなることも考えられるため,そこにも気を使うという。

 参加者が決まったら,プレイ状況を中心にしたそれぞれのプロフィールシートを作成し,アイスブレイクから本音を引き出す質問までの流れをモデレータとすり合わせる。質問については,誘導尋問になるようなものや,YES・NOで終わってしまうものにならないよう気を付けるとのことだ。
 また,インタビュー時の材料として,例えばゲームのイラストについて10段階評価をしてもらうなどのワークシートも用意するという。

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 インタビュー中は,とにかく発言しやすい空気を第一に考える。参加者の発言は決して否定せず,適度に助け船を出しながら,時間をかけて粘り,本音を引き出す。それができる人となると,やはりプロのモデレータということになるわけだ。
 また,前述のように関係者は別室でインタビューの模様をモニタリングするのだが,加藤氏は,リアルタイムで確認することを推奨していた。

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 インタビューが終わったら,参加者から出た意見を,濃淡問わずリスト化する。そこから何をピックアップし,どのように改善へつなげるかについては,調査全体設計のときと同じように,関係者全員が参加してディスカッションするべきとした。

 加藤氏は,この「全員参加」について,前述の「友人に勧めやすいタイトル」を例に挙げ「『口コミで広げるにはどうしたらいいですか』という,マーケティング寄りの発想だったが,マーケティング担当者だけで進めていたら,ゲームバランスの修正という最終的な施策にはたどり着けなかったかもしれない」と,チーム全体で取り組むことの重要性を説いて,セッションをまとめた。

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