インタビュー
[インタビュー]ブロックチェーンによって新しい価値を提供して,ユーザーがもっと夢中になれる環境を作りたい―――YGG Japanは,ゲーム業界に何をもたらそうとしているのか
今のような投資文脈ではなく,ゲームというエンターテイメントの文脈で訴求しないと,ここから先には進みづらい
4Gamer:
話が戻っちゃうんですが,じゃあ僕らプレイヤーの多くが,まだブロックチェーンゲームを体験してない理由はどこにあると思っていますか?
藤原氏:
結果的にそこまでに情報操作がありすぎる……というか,正確に言うと「情報を正しく受け取れていないから」だと思っています。正しく受け取れていないというのは何を言ってるかというと,今のイノベーターとか黎明期における発信者達が,難しい話をしすぎてたんですよね。
4Gamer:
あぁそれはよく分かります。少なくともゲーマーとしては,違う人種なんだろうなぁ,と思います。
藤原氏:
そうなんです。ゲームというエンターテイメントの文脈でユーザーに訴求してるわけじゃなくて,技術とか投資とかそっちの領域で話をするから,ゲームユーザーに情報が届くまでに悪い話が付随されてしまって,結局危ない業界なんだ,危ない領域なんだっていう風に届いちゃってるんですよね。
でもこれは,現時点では仕方のないことだと思っています。黎明期であるが故に,それらのプレイヤー達が確固たる技術のモデルとか新しい形を作り上げたわけで,そこにエンターテイメントのプレイヤー達が入ってきたので,噛み砕いて伝えたはずなんです。進め方としては,どこも間違っていないはずなんです。
世界最大のゲーム配信プラットフォーム「Steam」も,ブロックチェーンゲームを「販売すべきでないゲーム」として挙げて事実上販売禁止にした。一方で「Epic Games Store」は「キチンと法規制に従ったブロックチェーンを使っているゲームを歓迎します」というメッセージを出して歓迎の姿勢を見せているCommunity: A few minutes ago, we were notified that @Steam will be kicking *all blockchain games* off the platform, including Age of Rust, because NFTs have value. Behind the scenes, we've had good communication and have been upfront with Steam. #blockchaingames #NFT
— Age of Rust (@AgeofRust) October 14, 2021
1/4 pic.twitter.com/W4pR3Xl63q
4Gamer:
プロセスの中身そのものは間違ってないかもしれませんが,ちょっと進みが遅くないですか?
藤原氏:
遅いと感じるのは,ブロックチェーン側が速すぎるんです。時間軸が違いすぎると思うんですよね。双方の時間の感覚がかみ合ってないと言いますか。
ブロックチェーンであれ暗号資産であれテクノロジー先行で動いているので,逆にエンターテイメントのプレイヤーが先に入ってきたら,おそらく市場が混乱したと思います。もしかしたら業界がなくなってしまったかもしれません。
4Gamer:
私もさすがに素人ではない自負はありますが,それにしたってブロックチェーンゲームを新たに始めようと思ったときに用語集を見るところから始めなくちゃならなかったわけで,それってさすがにどうかと思うんですよね。いまおっしゃったようなことを是として進めても,結局,状況に変化は訪れないのでは?
藤原氏:
でもそれは普通のゲームでもそうじゃないですか? 説明書を読むことが当たり前だったファミコンとかスーパーファミコンの時代とかありましたよね。説明書を重要視していた時代というか。
4Gamer:
あの当時の説明書は,コモンランゲージで書かれてたと思うんです。HPとかレベルアップとか皮の鎧とか,わざわざ説明しなくても共通認識としてありましたよね,たぶん。
でもブロックチェーンゲームはそうではない。プレイヤーとしては丸っきり畑の違う「投資」の文脈から来てるものなので,用語もそれに応じたものになっていて,そもそも基礎用語からして分からないと思うんです。
藤原氏:
おっしゃりたいことは理解できます。今後はメディアもしっかり確立されてきて,インフルエンサーも登場して,コミュニティもキチンと形成されていくと思うので,誰かに簡単に聞けたり,情報をもっと正確に素早くキャッチアップできるとか,そういう体制が整ってくるはずです。
4Gamer:
いまはその過渡期であると。
藤原氏:
現状,そういうものがあまりにも上層レイヤーにあってしかも分散的だし,そもそも基礎的なリテラシーがないと情報を取得すべき場所すら分からないわけです。しかも取得しにいった先がフルに英語で書かれててわけ分からないとか。このあたりがまだ整理整頓されてないだけだと思うんですよね。だから逆に言うと,今キャッチアップできてる人は,アーリーアダプターでありイノベーターです。
4Gamer:
でもその人達だけいてもダメだというのが先ほどの話なんですよね。
藤原氏:
そうなんです。さっきからこうやってお話させていただいて思うのは,今のこのブロックチェーンゲームのマーケットを俯瞰的に捉えられてるのは仕方がないな,と。それは誰がいいとか悪いとかそういう話ではなく,今のフェーズがそういうものでしかないからなんです。だけど将来を考えたときには,このまま進むようなことはありませんよということを私は言わなきゃいけなくて。
4Gamer:
どういうフェーズに変わっていくんでしょう。
藤原氏:
もっともっと業界が広く解釈されて噛み砕かれて,世の中に届くときにより分かりやすい形にしてくれるプレイヤーがこれからどんどん増えていくし,私達自身もたぶんそのプレイヤーの一員だと思うんです。
4Gamer:
とりあえず煩雑すぎて面倒くさいのをなんとかしてほしいです(笑)。
藤原氏:
そこもです(笑)。いま言ったようなプレイヤーが増えてくることによって,ウォレットの作成や資産の移動が2ステップで出来るようになったとか,そういう状態になっていくんじゃないかなと思ってます。
ユーザーがどんどん増えて大きくなれば,コミュニティが主体になってパブリッシャの機能を持つ日も来るはず
いやあ,それはいますぐでもやるべきですよね。プロセスを見るだけで正直やる気が失せます。そこまでしてやりたいものでもないですし……。たぶん普通のゲームプレイヤーであれば,MetaMaskを作る時点で「もういいや」ってなる気がします。
藤原氏:
僕も過去のソーシャルゲームのときのマーケティング経験で言うと,1タイトルで大きい金額を使ってマーケティングして,ワールドワイドで数百万人のお客様を事前登録で集めるわけですよ。で,1か月後とか2か月後にどれくらいのユーザー様が残ってるかな,MAUを見てみよう……数十万MAUです,みたいな。
4Gamer:
そんなに減るんですね。きつい。
藤原氏:
いやもうほんとに。あれ? 残りのユーザーはいったいどこに? ってなります。獲得に対してこんなに情熱をかけて,お客様に訴求をして,このゲームは素晴らしいということを伝えてプレイしていただいて,コミュニティもちゃんと形成されたのに,ほんの2か月で全てが崩壊してしまうんです。
それがものすごく悲しいと思っていたんですけど,やっぱりそれはプロジェクトとかプロダクトに依存しているからなんですよね。
4Gamer:
なるほど,そういう表現は初めて聞いたかもしれません。既存のゲーム業界の文脈ではあんまり出てこない発想ですね。
藤原氏:
これからの時代は,やはりコミュニティビジネスに近づいていくはずです。先ほどの話で言うならば,ウォレットの作り方が分からないとか,どのゲームが面白いとか,そういうことをコミュニティで話すのが非常に重要になってくる時代ですし,そうなると1つのプロダクトとか1つのプロジェクトに依存しない形になるはずなんです。
4Gamer:
それが本当なのであれば,やはり既存のゲーム業界とはあまり相性がいいとは言えませんね。
藤原氏:
そうですね。それもまた,受け付けられない理由なのかもしれません。でも私達がそれを進めることによって変化は訪れるし,ユーザーの立場で話すならば,一つのゲームで知り合った仲間と,ゲームが変わっても環境が変わってもずっと継続的に話せるっていうのは,そういうものを作っていきたいという思いはありますね。
4Gamer:
ユーザーの立場じゃない視点で言うならどんなことがあります?
藤原氏:
マーケティングですかね。今後のダイレクトマーケティングなんかは,プロジェクトがマーケティングを行うんじゃなくて,コミュニティがマーケティングを行う形もどんどん出てくるはずなんです。コミュニティがどんどん大きくなっていって,いろんな機能を飲み込んだり内包したりして……みたいなところも,ブロックチェーンゲームの面白さかもしれないなとは思いますね。
4Gamer:
コミュニティがそんなに巨大化してマーケティング機能を完全に持ってしまうと,僕らのビジネスも厳しく……。
しかしコミュニティコミュニティと連呼してますが,MMORPGの時代にも,コミュニティに入っていない人,入りたくない人,入れない人はいっぱいいたわけで,そんなにうまくいきますかね?
藤原氏:
あのときはですね,コミュニティがセグメンテーションされてなかったのが問題なんです。初心者の対応をする人はこの人,中級者の対応をする人はこの人,ギルドマスターはこういう役目……とか。
Web3の素晴らしいところは,みんなで分散的にこのコミュニティを作っていこうという考え方を持ってるところですね。なのでコミュニティマネージャーという役職ができたり,初心者に対して対応する人ができたり,インフルエンサーもそのコミュニティにとって重要な役割を担ったりとか,そんなこんなのいろんなロールができてくるはずです。
4Gamer:
それによって,受け入れ可能なユーザー数が増えるという解釈ですね。
藤原氏:
そうです。受け入れられるユーザーをとにかくたくさんにして,より大きくなっていこうと。これに関して,僕が結構ありそうで面白そうだと思うのは,パブリッシャの立場すら奪ってしまうときが来るんじゃないのかな,と。
4Gamer:
いままでおっしゃるようなことがそのとおりに動いていったら,パブリッシャくらいは普通にできそうですよね確かに。「会社として」ではなくて「機能として」ですが。
藤原氏:
そうです,機能として,です。コミュニティが生んだパブリッシャが登場する可能性だって大いにありますよね。そんなことを考えていると,これはゲーム文化の面白い発展の仕方なのかなと思えたりもするんです。
4Gamer:
発展……というか「革命」ですねもはや。
藤原氏:
ええ。今まで特定の会社による独裁政権だったものが,ユーザーが権利を取得し,正しい独立戦争を行っているというか。……確かに嫌われそうですね,はい(笑)。
でも,嫌われつつも,この新しいムーブメントとは付き合わなきゃいけないはずなんです。だからこそ,ゲーム業界の発展のためにお互いが協力し合って,しっかりやっていくモデルもできるはずです。ギルドの捉え方だって,破壊者であり創造者でもあるという可能性だってあるわけですよ。
4Gamer:
両面性があるのはそのとおりですね。いいとか悪いとかそういうシンプルな話ではない。まぁでもお話を聞いていて,御社がYGG Japanというブランドでやろうとしていることはなんとなく分かりましたし,いろいろ「分かっててやってる」ということも理解できました。
藤原氏:
ありがとうございます(笑)。
4Gamer:
じゃあ,あとは……せっかく元ネットマーブルの人が多いんだから,もっと面白いゲームを作ってくださいよ。
藤原氏:
あ,いやいや待ってください。それもまた問題なんですよ。ちゃんとした正しいブロックチェーンゲームのメディアがあれば,いくつも発表されている素晴らしいゲームの情報が,ちゃんとゲームユーザーに届くはずなんです。
4Gamer:
まぁ確かに,聞いてる自分達(4Gamer)もちゃんと紹介してるかと問われると……。
藤原氏:
それが届いていないというのが,メディアとかチャネルがない証拠なんですよね。いちおうスマホゲームを作っていた我々から見ても「これ普通のスマホゲー超えてないか?」みたいな作品はいくつもあるんです。
4Gamer:
でも先ほどの話で言うなら,それは「余計な情報」がくっついてフィルタリングされてるだけなのでは?
藤原氏:
あぁそうですね……。ユーザーさんに届くまでに,いろんな付加価値がついて悪いものになって,インターネットの海のどこかでドロップしちゃってるだけなんです。ここが整理されるだけでも,ブロックチェーンゲーム業界は全然変わるはずなんです。
4Gamer:
確かにそういう状況はあるかもしれませんね。いくつもある情報の中から「うわ,こんなゲームが出てくるんだ」とか「初期投資が高額じゃないならやってみよう」とか,そういうことになってませんもんね,今は。
チャネルもマーケティング手法もなく,業界内でどんどんニッチ化が進んでいる状況を改善しなくてはならない
藤原氏:
その「初期投資」という話ですけど,そこもちょっと考え方が変わってくるかなと思っていて。例えば私もスマホゲーで月3万円とか5万円とか使ってるので,もし毎月5万円だとしたら年間で60万円を,普通に課金額として払っているわけです。それがOKなのに,ブロックチェーンゲームの初期投資3万円のハードルがすごく高いわけです。
4Gamer:
言いたいことはなんとなく分かりますが,それは“イメージ”ですよね。
藤原氏:
そう,イメージだと思うんです。ブロックチェーンゲームに対するイメージというか。Free to Playに慣れているユーザーさん達が,なんでゲームを始めるために3万円を払う必要があるのか,という。
4Gamer:
毎月数万円をガチャに払ってるのに?
藤原氏:
そうです。でもそれって,ちゃんとユーザーさんにマーケティングをして,このゲームはこういうところが面白いよ,みたいなところを訴求すれば済む話だと思うんです,本質的には。そもそもゲームソフトだって8000円とか1万円とかするわけですし,ブロックチェーンゲームを始めるための3万円がなぜ払えないのかと。
4Gamer:
ブロックチェーンゲーム界隈の人は,まずそこに悩むことになりそうです。
藤原氏:
お客様にちゃんと誤解のないように情報を伝えていくとか,期待値を醸成するためにはどういう事前マーケティングをしたほうがいいとか,そもそもさっき情報が届いてないという話をしたと思うんですが,どういうメディアでどういうマーケティングメッセージを届ければ,多くのお客様に正しい情報が届くのか,みたいなところの議論がまったくなされてないだけなんですよ。
4Gamer:
東京ゲームショウだけでもかなりいましたよ,ブロックチェーンとかNFT関連の会社さん。こんなに会社が多いんですし,議論をすればいいだけだと思うんですが,なぜされないんでしょう。
藤原氏:
なぜかというと理由は簡単で,今のブロックチェーンゲーム界隈の人達は,チャネルもないしマーケティング手法も創造できていないからだと思います。
4Gamer:
また一刀両断な感じの……。
藤原氏:
いや,でもそうなんです。クリプトユーザーにしかアプローチができないわけで,クリプトユーザーにしかしないアプローチだったら,それに特化した情報と,クリプトユーザーにとって魅力的に見えることだけしか載せないんですよね。
4Gamer:
業界内でさらにどんどんニッチ化してるだけだ,と。
藤原氏:
それだけの話なんです。だから私達みたいな組織が増えれば,多くのお客様達に,ちゃんと解釈したマーケティングメッセージを載せたほうがいいよとか,事前のカスタマージャーニー※をしっかり作って,事前登録を盛り上げて,どういうことを訴求しなきゃいけないよとか,そういうのがまとめられれば,もっとプレイヤーが増えるはずなんです。
※カスタマージャーニー:消費者が製品・サービスを知って,そこから購入・契約に至るまでの道筋のこと
4Gamer:
そのときはぜひダメな部分も書いてほしいですね。ダメっていうか,ネガティブな部分というか。
藤原氏:
そのとおりです。例えば初期の参入金額が結構高いですよ,とか。あとブロックチェーンゲーム的文脈での攻略情報とかも,正しく載せていきたいですね。トレンド的には今こうなっているから,もしかしたらこういう風になる可能性もあるかもしれないですとか,そういうこともゲームユーザーの皆様にお伝えできるといいかなと。あとはまぁとにかく無茶をさせないことですね。
4Gamer:
ガンガン無闇にお金を使わせない,という意味ですか?
藤原氏:
そうです。ユーザーの目線に合わせて情報発信をしていかなければいけません。
4Gamer:
いまのブロックチェーンゲームのインフルエンサーの人達って,割とユーザーを煽る人,多いですよね。まぁそうしないと儲からないからなんでしょうけど。私もプレイヤー側なので,かっぱぐ気満々じゃない組織が本当にできるなら,それはそれでちょっと安心します。
藤原氏:
はい(笑)。そういう立ち位置とか目線の違いで,僕らは僕らで解決してかなきゃいけないことが多いなというのはあります。いいなと思うのは,やはりそういうときには情報戦になるわけです。そうしたら,僕らは彼らインフルエンサーよりトレンドを理解していて,今後がどうなっていくのかが分かっている,と。
我々がプラットフォームを作ってSCAM※をなくしたいっていうのは,別にタイトルだけの話ではないんです。詐欺のことを発信するインフルエンサー達も排除するべきだなと思ってます。
※SCAM(スキャム):単語の意味は「詐欺」で,ここでもそのまま「詐欺」の意味で使われている。
4Gamer:
なるほど,そういう意味も。
藤原氏:
僕らの情報をキャッチアップしておけば問題ないよ,ほかの情報に左右される必要はないんだよというくらいの,安心感を与えられるようにしたいなと思っています。
4Gamer:
いままでの話を聞いてる限り,それは投資文脈だけの話じゃないですよね。ゲームプレイヤーを相手にするわけですから。
藤原氏:
もちろん,ちゃんとゲーム文脈です。ゲームをプレイして楽しんでいく過程の中で,もしかしたらそのお客様たちが「あれ? ゲームトークンとか仮想通貨ってちょっと触ってみても面白いかも?」みたいなことを考えたとしたら,そこでリテラシーの分岐が起きるわけですよね。
4Gamer:
そうですね。
藤原氏:
なので,別に入口からリテラシーの分岐を作る必要はなくて,ゲームというエンターテイメントを介して仮想通貨をラーニングしてみて,意外と面白い世界なのかもしれないな,無茶しない程度にちょっとやってみようかな,とか。
しかも,別にそれをいきなり仮想通貨でやらなくてもいいと思うんですよ。いろんなゲームがあるわけで,このゲームのトークン※をちょっと買ってみて遊んでみようとか,そういうので徐々に学習して。
※トークン:広義の意味で,ブロックチェーン技術を使って発行された暗号資産全般のことを指す。流行り(?)のNFTもトークンの一種だ(NFT=Non-Fungible Token)
4Gamer:
まぁ確かにそういう入口から入ってくると「このトークンが100倍になりました!」みたいなよく分からないインフルエンサーのセリフに興味を示したりは……いやするかな。どうだろう。
藤原氏:
ソーシャルゲームと同じようなものだと思うんですよね。例えばダンジョンがあって,レベル10まではフリーでプレイできるけど,それ以降はガチャを引かないと楽しくなっていきませんよ,と。その例で言うなら,今のブロックチェーンゲームはレベル10が入口になっているというだけのことです。
4Gamer:
なるほど,その表現はちょっと納得かもしれません。レベル1から10までが省略されてるから,ちょっととっつきづらいんですね。
藤原氏:
そうなんです。その話で言うなら,レベル1から10をどういう風に作ってあげるかとか,ゲームの情報サイトやコミュニティの中で,ユーザーに対してレベル1から10のチュートリアルを提供して,楽しそうだな,ちょっと自分もやってみようかな,となってほしいですね。
4Gamer:
確かにそこの部分が丁寧にフォローされたら,もっと人は増える気がしますね。いまのブロックチェーンゲーム界隈の記事って,「知らない人」に読ませるようには出来てないですし。
藤原氏:
あと今後は,Free to Playを含んだブロックチェーンゲームもいっぱい出てくると思います。なので,それから始めてみるのもありだと思いますし,いろんな楽しみ方があるはずです。なのでそのあたりの情報精査と,正しい情報の伝え方とか,魅力的な情報の伝え方とか,そういうことをしっかりできれば,もっとマーケット全体が大きくなるんじゃないかなと思ってます。
4Gamer:
それをやっていくために,世界最大のコミュニティを作っていくんだ,と。
良いコンテンツを作るパワーがまだまだあるはずの日本は,ブロックチェーンゲームが良い方向に作用するはず
4Gamer:
しかしリアルTGSは3年ぶりですけど,この3年の間にゲーム業界はこんなことになっていたのかというのがよく分かる出展ラインナップでしたね。ブロックチェーンとNFTとメタバースだけで結構ブースがあったなぁ,と。
藤原氏:
私達が出展した理由も明確で……というか正直言って出展する意味って,利益的な面でいうとほとんどないんですよね。なにせお客様というかファンがいないのに,出してるわけですから。
4Gamer:
相変わらず冷静に捉えてますけど,ではなぜ出展を? 業界内アピールですか?
藤原氏:
そうです。そもそも私は,まず事業者をマスアダプションしていかなきゃいけないと思っていて,この東京ゲームショウでブロックチェーン関連のブースをあれだけ大きいところでやってるんだという事実,その事実を事業者の皆様にもしっかりご理解いただいたうえで,このマーケットを一緒に作っていきましょうよ,と。
[TGS2022]Web3ゲームや経済の有識者2人によるガチトーク。YGG Japanステージイベント「Web3でIPビジネスはどう変わるか」をレポート
TGS 2022の初日(2022年9月15日),ブロックチェーンゲームギルドのYGG Japanブースにて,「Web3でIPビジネスはどう変わるか 〜ファンに愛される世界的IPのつくりかた〜」と題したステージイベントが開催された。Web3ゲームや経済の有識者2人による対談の模様をレポートしよう。
- キーワード:
- イベント
- OTHERS
- ライター:本丸猫左衛門
- 東京ゲームショウ
- TGS 2022
[TGS2022]YGG Japanブースセッション「NFTアイテムガチャの普及で一気に広がる 国内「NFTゲーム市場」とマーケットプレイス」レポート
東京ゲームショウ2022のYGG Japan ブースで行われたブロックチェーンやWeb3,NFTなどに関するセッションのなかから,本稿では「NFTアイテムガチャの普及で一気に広がる 国内『NFTゲーム市場』とマーケットプレイス」をレポートしていく。
4Gamer:
結構大きいブース構えてましたよねYGG Japan。さすが資金を集める会社は違うなーと思って見てました。
藤原氏:
いやいやすごく無理してますよ! でもですね,あのブースの近隣を通りかかった人が「なんだこいつ?」という反応をしてくださってるのを見ると,よかったなぁ,と。
4Gamer:
確かに,業界に対してのアピールという意味ではTGSが最適ですしね。でも対ユーザーでも何か策は作ってあったのでは?
藤原氏:
ユーザーの皆様に対しては,正直あまり期待してなかったというか。それは変な意味ではなくて,さっき申し上げたように「まだ我々のファンがいないから」です。なんでいないかというと,言葉で説明しなきゃいけないことが多いフェーズのときはまだ弱いと思うんですよね。
4Gamer:
あぁ……おっしゃりたいことは分かります。
藤原氏:
例えば展示を見にお客様がいらっしゃったときに,ブロックチェーンとはね,YGGとはね,ギルドとはね……って,言葉で伝えなきゃいけない時間が発生してる時点で,もう負けです。なので,今回そこはもう完全に諦めてました。
例えば視覚的に面白いとか,トレンド的に面白いとか,それをお客様が3秒で分かるぐらい簡単じゃなければ,まだまだお客様に対してのアプローチは難しいなとは思ってまして。
4Gamer:
新しいものは確かにそうかもしれませんね。
藤原氏:
私としては「ブロックチェーンゲーム」という単語だけ持って帰ってもらえればいいかな,って思っています。何も訴求しないし,誤った誤解を与えたくないというのもあったりするので,今のフェーズで推し進めたいかというと,そうでもないわけで。
4Gamer:
意外と控えめです。コインを配ったり芸人呼んでトークショウやったりしてないのは,そういう理由だったんですか?
藤原氏:
私どものブースに入っていただけているパートナーの皆様にも「コインという言葉は使わないでください」「販売促進もしないでください」「でもゲームの魅力は伝えましょう」みたいな感じでやっていただきました。
でも「ゲームとして負けている」のはよく分かっているので,ブロックチェーンゲーム「そのもの」をアピールしたいな,と。
4Gamer:
そこから先にはまだ行かなくてよい?
藤原氏:
本当に知ってほしいお客様には,いまNFTの素晴らしさとかブロックチェーンの素晴らしさを説いたって分からないと思うので。
4Gamer:
まぁ普通はそうですよね,業界人であっても。ただのテクノロジーだから,ちゃんと勉強すればいいだけなんですけど。
藤原氏:
まぁでも勉強しない理由としては,そもそもこのマーケットがちゃんと正しくやっていけるのかというところで,たぶん懐疑的な部分が大きいんじゃないかと思ってるんですが。
4Gamer:
ただ単に自分には関係ないと思ってるだけでは?
藤原氏:
あぁそれも……あるかもしれません。でもマネタイズポイントの変化っていうところで言うと,ある意味ガチャでマネタイズポイントの大きな変化があったと思ってるんですけど,ブロックチェーンでもその技術革新的なところがやはり大きかったりするので,単にゲームビジネスの中のビジネスモデルが変更された「だけではない」というところが,ちょっと大きすぎるかなと。
4Gamer:
大きすぎて,自分とは関係ない畑違いのジャンルだ,みたいな。
藤原氏:
はい。今までみたいに,ゲームのビジネスがレベル1から2,レベル2から3に上がったという話ではなくて,そもそも全然違うところのゲームビジネスが0から始まったみたいなイメージだと思うんです。
だから,やはりその新たなマーケットが本当に出来るのかというところを疑問視してるがゆえに,いま頑張ってテクノロジーを勉強する意味があるのだろうか,みたいな。
4Gamer:
なるほど。ちょっとくらい読んでみるだけでもだいぶ違うと思うんですけどねえ……。
ところで言い方がアレですけど,一般公開のときにブロックチェーンとかNFT関係のブースにあまり人が行ってなかったのは,ちょっと安心しました。
藤原氏:
おっしゃりたいことは分かります(笑)。
4Gamer:
やはり一般の人の認識はまだそういうレベルだし,逆に言うと,東京ゲームショウの一般公開日に会場がオープンしたときにブロックチェーンゲームとNFTに一般のお客さんが殺到してたら,いまのゲーム業界がちょっとだけ心配になります。
藤原氏:
フェーズとして正しい認識をしてそうですよね。そういう意味で言うなら,僕らもブースでセミナーとかやってるわけですよ。しかも一般公開日に。普通に考えてなんの意味もないですよね。一般のお客様がそんなブロックチェーンかなんかのビジネスライクな話なんか聞きたいはずがないんです。
4Gamer:
まぁそうでしょうね。少なくともいまは。
藤原氏:
はい(笑)。じゃあなんでアレをやってるかと言ったら,YouTubeでも配信してるからなんです。事業者の皆さんが,東京ゲームショウでこういったメンバーを集めてセミナーを開いて配信できるようなところまで,ブロックチェーンゲームは来たんだよ,と発信したいだけなんです。
4Gamer:
なるほど,そういう意図が。
藤原氏:
東京ゲームショウでこういうことやってるよ,という事実をまず作ればいいですし,それを事業者のマスアダプションに向けてやれればいいと思います。
4Gamer:
まぁあと企業IR的に考えるなら「やっておかないと株価が」みたいな部分もあると思います。最近だと「メタバース」と「NFT」も完全にそれですけど。
可能性を秘めた“新しい何か”も,突き詰めると結局お金の話に行き着いちゃうのがちょっと不満……というか不安というか。まぁでも繰り返しですがお金は大事ですからね。ないと何もできないですし。
藤原氏:
そのとおりです。
4Gamer:
だから逆に,職人芸的なカルチャーが強く残る日本のゲーム業界にはあまりマッチしないんですかね。
藤原氏:
そうですね。ただ,なぜ日本では日本独自の文化が形成されているかというと,いいものが作れるからだと思うんですね。いいものが作れれば,基本的にお金は後からついてくるだろうという発想だと思いますので。
4Gamer:
そうでもないんですけどね……。
藤原氏:
そう,実際はそうじゃないんですけど,根幹でそうなってるんですよね。でもそこを少し変えていかないとならない時代が来てしまったんです。
技術レベルもかなり高くなって飽和状態になってしまってるとか,IPを作るという部分についても,あらゆるジャンルで質も高くなって選択肢も増えちゃったものだから,何かしらのイノベーションがないと,この業界はもうこれ以上前に進まないところまで来てしまったという可能性があるわけです。
4Gamer:
そういうイノベーションになるものなのだと。
藤原氏:
そうです。日本には良いコンテンツを作るパワーがまだまだあるはずです。ブロックチェーンゲームがいま重要視されてるのって,経済圏をどう作るかとか,グローバルからお金が集まりやすいですよねとか,そういう部分です。
日本っていう国を注目してくださってる国はやっぱり多いので。そこでお金を集めてもっと面白いゲームを作ろうというのが,基本的にいいルートのはずなんです。
4Gamer:
最近ゲーム業界は外資による買収が激しいですが,僕も個人的には嬉しい流れだと思っています。お金にシビアな人達が,日本のコンテンツとか人に価値を感じてくれているということなので。
藤原氏:
そうです。カネカネ言ってて汚いなあとか,Web3はどうせ金で回ってんだろとか,そういうイメージって多かれ少なかれあると思うんですけど,どこから資本を入れて,何をやりたいのかというのは,むしろ僕は重要だと思っています。
ユーザーさんが,素晴らしい作品を出すのを待ってくれてるのであれば,そしてそれを楽しんでくれるお客様がいるのであれば,どこからか資本を入れてそのお客様には還元しなきゃいけない。そうじゃないと基本的にこのビジネスは成り立たないので,そこをしっかりドライにやらなきゃいけないんですよ。なぜならそこにユーザーがいてファンがいるから。
4Gamer:
そういうイノベーションはゲーム業界の“外”からやってくると思ってた節があります。ソシャゲ全盛期にゲーム会社じゃない人達がたくさん参入してきたように。でも実際には中から出てきましたね。
確かにそうですね。スマホゲームに新鮮さや斬新さを感じづらくなってきているのかもしれません。手法もかなり確立されていて,ユーザー獲得や売上もある程度想定ができて,これ以降,何か面白い革新的なマーケティングメッセージとかドラスティックに新しいゲームって,本当に生まれてくるんだろうか……? みたいなところにすごく寂しさも感じていて。
たぶんユーザーさんもそういうことを感じてるんじゃないのかなと思ってるんです。
4Gamer:
だから自分が変える?
藤原氏:
なんて言うか,グーチョキパー以外の選択肢があってもいいでしょう。何か新しいイノベーションがあれば,ゲーム業界もちょっとゴタゴタするはずだと思うんです。このゴタゴタした中で,こぼれたものをちょっといただいて,面白いイノベーションが起きるかもしれないなというのがすごく期待できるポイントなんですよね,個人的には。
4Gamer:
埋めるべきギャップもまだまだあるでしょうし,変えたり埋めたりして,イノベーションを起こしてください。長い時間ありがとうございました。
藤原氏:
ありがとうございました。
――2022年9月18日
- この記事のURL:
キーワード