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[TGS2022]Freeverseが提唱する「リビングアセットNFT」とは何か。希少性だけでなく有用性で価値を生み出す仕組みを同社CEOが紹介
NFTと言えば,昨今のIT界隈でも話題になることが多いバズワードの一つだが,それとは少し違うという「リビングアセットNFT」とは何なのだろうか。本稿ではその正体も含めたセッションのレポートをお届けする。
「Freeverse」公式サイト(英語)
希少性だけでなく有用性でも価値を生み出す「リビングアセットNFT」
セッションに登壇したのはFreeverseのCEOであるアラン・エバンス氏と,日本のカントリーマネージャーを務める高橋治彦氏だ。エバンス氏は来日予定だったが,諸事情で叶わずビデオメッセージによるセッションとなった。高橋氏はそれを補足する形での登壇だ。
本題に入る前に,まずは改めてNFTの説明をしておこう。
NFT(non-fungible token)とは,日本では「非代替性トークン」と称される,ブロックチェーン技術を用いて唯一性を保証されたデータのことだ。通常,電子的に保存されるデータは複製が可能で,複製したものはまったく同じものとなるが普通だが,NFT化したデータは代替のできない個として扱うことが可能となる。
現状,NFT化されたデータは,唯一性が担保されることから「希少性」を獲得し,そこに価値を見出すことで,投機の対象となりやすい。また,その唯一性ゆえにコレクタブルアイテムとして利用されることもあり,NBAなどでは試合の決定的なシーンの映像をNFT化し,数量限定で販売していたりもする。
エバンス氏は,NFTの価値が「希少性」で決まり,コレクション目的の用途でしか購入されていない現状を語った。前述したNBAの例などは,まさにその代表例で,決定的なシーンに「数量限定」という人為的な「希少性」を付与することで,そこに価値を生み出している。希少であり,かつ求める人が多いものならば価値が上がるのは必然というわけだ。
こうした現状のNFTの特性を生かした「Play-to-Earn」(プレイして稼ぐ)というスタイルのゲームに注目が集まっているというが,エバンス氏はここで「大前提として人々は楽しむことを目的にゲームを遊んでおり,お金を稼ぐか失うかの心配をしたくない」との考えを示した。
一方で,ゲーム内のアイテムをリアルマネーで取引する需要は,確かに存在しているという。多くのゲームでRMT(リアルマネートレード)は禁止されているが,それでもオンライン上にはその取引所が存在する。ゲームの年間売り上げの約20%がこうした取引に吸い取られている可能性を示す研究もあるそうだ。
こうした問題に対するFreeverseのアプローチが,同社が提供する「リビングアセットNFT」(Living Assets NFT / 生きたアセットNFT)なのだという。通常のNFTは持っている情報が変化しないが,リビングアセットNFTはゲーム内でどのように使用されたかによって変化するのだ。
一例で挙げられたのが,ゲーム内で使用する武器だ。「ノーマルの状態では弱い武器が,強化していくことで強くなる」というゲームは多いが,そのアイテムがNFTだった場合,その価値は「希少性」や「レア度」だけでなく,プレイヤーがどれだけ強化したかで決まる。リビングアセットNFTはそういったアイテムデータを作り出すことができ,単なる収集品に「有用性」という新たな価値を付け加える。
ゲームにおいては当たり前の話ではある。未強化の装備は安値で取引され,強化されたものが高く売れる。その強化が難しければ難しいほど,希少性と実用性が上がり,価値もあがるというのは,既存のゲームでもよく見る仕組みだろう。そのアイテムをNFT化することで,現実的な価値と,プレイヤーの所有権を明確化するわけだ。
また,NFT化することで不正な取引も防止できる。開発者(もしくはパブリッシャ)はNFTアイテムの取引を許可し,そこから収益を得ることも可能になるという。
従来のNFTと異なり,リビングアセットNFTならゲームのエコシステムに深く関わるような仕組みも構築可能だ。
エバンス氏が一例として挙げたのが,同社が実験的に開発したサッカーゲームの事例だ。選手をトレーニングして能力が向上すると,価値も上がり高く売れるようになる。逆にトレーニングをサボっていると能力は下がり,価値も下がる要素を導入すると,価値が下がることを嫌ったプレイヤーはより継続的にプレイするようになったという。
リビングアセットNFTを使えばプレイヤーにゲームを継続的にプレイさせる動機付けも可能になると,エバンス氏は説明している。
Freeverseが目指すのは,ゲームにおける新たな変革だ。かつてゲームが月額課金制から基本無料が主流になったように,NFTによって新たな収益化モデルが誕生すると考えているとのこと。
実際,それが起こりえるかどうかは分からないし,起こりえたとしてどんなゲームが誕生するのかも想像つかないが,リビングアセットNFTはゲームがこれから歩むかもしれない可能性の一つを指し示してる。それがゲーマーにとって,より良い変化であることを望むばかりだ。
「Freeverse」公式サイト(英語)
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