業界動向
2022年上半期の中国ゲーム産業報告が発表される。成長にややかげりが見え,コロナ政策によるeスポーツへの影響も深刻
外部サイト:2022年1-6月中国游戏产业报告(中国語)
※以下はすべて,2022年7月25日のレート,1ドル=136.27円,1元=20.16円で計算している
中国ゲーム産業2022年上半期,全体売り上げは約2.98兆円で,YoY−1.8%
2022年上半期,中国ゲーム産業全体の売り上げは1477.89億元(約2.98兆円)でYoY−1.8%と,初めてのマイナス成長になった。ここ数年は右肩上がりの著しい成長を遂げていたが,中国国内のユーザー規模においても成長の限界に達したか,こちらもYoY−0.13%の6.66億人という数字となっている。
プラットフォーム別の内訳を見ると,中国モバイルゲーム市場での売り上げは,1104.75億元(約2.23兆円)でYoY−3.74%。これが全体のおよそ75%を占めている。ほかのプラットフォームについては以下のとおり。相変わらずコンソールプラットフォームは厳しい戦いを強いられている。
市場別 | 売り上げ | 成長率 | 市場全体占有率 |
---|---|---|---|
スマホゲーム | 1104.75億元(約2.23兆円) | YoY−3.74% | 74.75% |
PCゲーム | 307.4億元(約6197.18億円) | YoY+2.85% | 20.80% |
Webゲーム | 27.06億元(約545.53億円) | YoY−10.4% | 1.83% |
コンソールゲーム | 8.81億元(約177.61億円) | YoY−1.02% | 0.60% |
その他(※) | ‐ | ‐ | 2.02% |
※AR/VR,アナログ,アーケードゲームを含む模様
中国製ゲームの海外進出は,激しい競争の中にあっても引き続き成長路線
全体の売り上げ成長率の減少は,中国国内市場の売り上げ減少と,中国ゲーム企業の海外成長の二つが合わさって生じている。
国内売り上げのうち,中国製ゲームによる売り上げは,1245.82億元(約2.51兆円),YoYは−4.25%だ。
一方,中国製ゲームによる海外の売り上げは,89.89億ドル(約1.25兆円)でYoY+6.16%。成長スピードこそ以前より緩くはなってきているが,中国国内のさまざまな規制を考えると,今後の海外進出も盛んにこそなれ止まることはないだろう。
この1兆円超えの売り上げが,それぞれどこの国から得られて―――すなわち中国ゲームメーカーにとってどの国がメイン市場になるかを表した,国別売り上げ割合グラフが以下に示すものだ。
Top3の順位は変わっていない。アメリカ(31.72%),日本(17.52%),韓国(6.29%)を合わせて55.53%で,中国製ゲームの海外売り上げの半分以上をこの3国で稼いでいる。日韓の市場が占めている割合は微減しており,欧米市場への注力が増えつつあるように見える。
ついに市場規模が6兆円に。さらなる躍進を遂げた2020年の中国ゲーム市場は,アメリカと日本が重要な2国に
「未成年保護法」や「ゲーム適齢提示」,App Storeからのタイトル大量削除など,2020年の中国ゲーム産業は波乱に富んだものだったが,産業白書のような数値情報が発表されたので,ダイジェストを報告しよう。
中国タイトルの中での海外売り上げトップ100を見ると,人気のゲームジャンルは
・シミュレーション/ストラテジー(35.81%)
・RPG(ARPG/MMORPG含む)(16.38%)
・シューター(FPS/TPS)(11.33%)
と,実に63.52%の海外収入がこれら3ジャンルのタイトルとなっている。それらに比べるとシェアは少ないものの,タワーディフェンスやリズムゲーム,経営シミュレーションなどのタイトルもトップ100に上がってきており,中国ゲームメーカーがさまざまなゲームジャンルにトライしてレッドオーシャンからの脱却を図ろうとしていることが見てとれる。
上半期のコロナ対策でダメージを受けた中国eスポーツ業界は,オンラインイベントへの転向を進行中
最後は,eスポーツ業界の数字だ。
2022年上半期に施行された,ロックダウンなどを筆頭とする中国当局によるゼロコロナ政策は,eスポーツ業界に対してネガティブな影響を与えることとなった。上半期のeスポーツ市場の売り上げは764.97億元(約1.54兆円)で,YoY−10.12%。売り上げについての詳細などは,同イベントで発表された「2022年1〜6月中国eスポーツ産業報告」に記されている。
外部サイト:2022年1-6月中国电子竞技产业报告(中国語)
内訳からちょっと抜粋してみよう。
eスポーツゲームによる売り上げは,637.12億元(約1.28億円)でYoY−11.59%。とはいえ,これでもeスポーツ産業全体の83.29%を占めている。ゲームそのものを除いた項目としては,eスポーツゲームの配信収入が全体の13.96%で,イベント収入は1.24%。クラブ収入が1.01%,その他の収入は0.52%となった。これらの収入は,全部合わせて127.85億元(約2577.5億円)で,YoYは−2%となっている。
「eスポーツ産業」というひと括りの言葉で表してしまうが,言うまでもなくeスポーツ企業の業態はさまざまだ。この報告書では,その業態分布が以下のように示されている。
業態ジャンル | 分布比率 | |
eスポーツゲームメーカー | 23.80% | |
eスポーツスタジアム | 22.40% | |
eスポーツイベントサービス提供 | 21.65% | |
eスポーツメディア | 10.99% | |
eスポーツクラブ | 6.28% | |
ハードウェア&設備 | 7.02% | |
eスポーツ教育 | 4.46% | |
その他 | 3.39% |
中国でeスポーツを展開しているタイトルのプラットフォームを見ると,PCゲーム24タイトル,スマホゲーム34タイトル,マルチプラットフォームのものは7タイトルで,ブラウザゲームが3タイトルとなっている。ジャンルに目を向けると,上位3つは以下のとおりだ。
・FPS/TPS(26.09%)
・MOBA(17.39%)
・スポーツ(10.14%)
前述のように,コロナ政策による影響をダイレクトに受けた2022年上半期の中国eスポーツ産業は,多くのイベントをオンラインへと転向していた。実際,上半期に開催されたイベントの半数近く(49%)はオンライン開催で,ハイブリッド開催は19%,オフラインのみの開催は32%となる。
中国製ゲームの海外売り上げは今もゆるやかな成長を見せているが,中国国内市場全体に目を向けると,モバイルゲームでもPCゲームでもeスポーツでも,マイナス成長になっていることが目立つ。
ただ,これらが上半期の厳しいコロナ政策による停滞なのか,最近ほとんど発行されていない版号※の問題なのかはまだハッキリとしない。売り上げの快調な新作もまだまだ出続けているので,今後も注目していきたい。
※中国で新規タイトルをリリースする際必要となるライセンス。この上半期で計2回,合計105タイトルしか承認されなかった
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