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名越稔洋氏が「龍が如く」シリーズの制作を振り返り,新スタジオにおけるグローバル戦略を語る
セガ在籍時に「龍が如く」シリーズを立ち上げ,現在はNetEase Gamesの100%出資による名越スタジオを率いる氏が,自らの経験や今後の目標について語っている。
2005年に第1作が登場した「龍が如く」シリーズは,ナンバリングタイトルだけでなく,さまざまなスピンオフも生まれている。最初は「チャレンジャー精神」を持って,他にはない魅力を目指して制作されていたが,ファンが増えていくにつれてセールスに対するプレッシャーも生じてきたという。
これに対し,名越氏は「ブレない」ことの重要性を語っている。ファンが増えたからといって,作品の方向性を変えるのではなく,従来のファンが「龍が如く」のどこが好きなのか,それを見失わないようにすることが大切であると述べている。
また,シリーズ作品の制作を振り返り,つねにワークフローの見直しを図っていたことを強調する。1つ1つのプロジェクトに生じた反省点を放置することなく,早期にチームメンバーと共有し,新たなワークフローに組み入れていく。小さい工夫の積み上げが,開発期間の圧縮につながると述べた。
「龍が如く」シリーズと言えば,重厚なドラマに定評がある。それを支えるプロットについて,名越氏は「ゲームとして成立するかどうか」が重要であると語る。どんなに面白い話(プロット)であったとしても,ゲームプレイとして成立しないのであれば,こだわらずに捨てるようにしているとのこと。「ゲームクリエイター」を名乗る立場として,最優先するべきは「ゲームプレイ」と断言する。
名越氏は現代のエンターテイメントについて,「スピードを求めている」「いきなりクライマックスに入ってくるような表現がすごく多い」と評した。
例えば最近の楽曲では,イントロダクションがなく,いきなりサビから始まる構成が受け入れられている。こうした違うジャンルのコンテンツの作り方を参考にして,ゲーム制作に応用することもあるという。イントロダクションを経て,だんだん本編が盛り上がっていくという流れより,いきなりインパクトを与えて徐々に作品の中身やストーリーを理解していく流れのほうが,今は受け入れやすいのではないかと語っている。
今後も受け入れられやすいスタイルは変化していくとしたうえで,それをプロットの中にどのように構成していくのかが重要であるとまとめていた。
今年1月,名越スタジオの設立が発表された(関連記事)。名越氏は「ワールドワイドに向けてゲームを届けていきたい」としたうえで,グローバル戦略として2つの手法を挙げている。
1つは,業界のトレンドを調査して,そのカルチャーに明るいスタッフをチームに迎えること。もう1つは,オリジナルかつユニークなコンテンツを自信を持って,最高の形に仕上げていくことである。
名越スタジオでは後者の手法で「勝負したい」と明かし,それがスタジオのカラーになっていくだろうと述べた。
最後に名越氏は,グローバルに向けたモノづくりをするために,NetEase Gamesグループの一員になったと語り,「グローバルに再挑戦する」ことへの決意を表明している。
「名越スタジオ」公式サイト
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