インタビュー
I've Sound結成20周年! 総帥・高瀬一矢氏に元ZUNTATA・COSIOが聞く,“Outer”新譜制作の裏話や作曲環境の移り変わりなど
実はこの度,僕の敬愛するサウンドクリエイター集団「I've Sound」が結成20周年を迎えました。それを祝うI've 20th Anniversaryプロジェクトの一環として,6月23日にはI've内のユニット・Outerの新譜「Rebellious Easter」が発売されたり,7月4日にライブ「Outer one-night stand GIG "Rebellious Easter"」が豊洲PITで開催されたりしています。
僕は2000年前後の
そんな僕ですので,4Gamerが「Rebellious Easter」に関する高瀬一矢氏の取材を行うという噂を聞いて,いてもたってもいられずインタビュアーを担当させてもらいました。ファン的なパッションがところどころで溢れちゃってる気もしますが,今回のアルバムやライブのお話,Outer再結成の経緯,個人的に気になっていた制作環境などを高瀬氏に聞いてきましたので,どうぞお楽しみください!
※インタビューは6月中旬にリモートで実施。
高瀬一矢氏 |
COSIO |
■「Rebellious Easter」製品情報
発売日:2021年6月23日
価格:3300円(税込)
型番:GNCV-101
備考:あにばーさる(NBCユニバーサル公式オンラインショップ)では限定セットを販売中。アニメイト,Amazon.co.jp,ソフマップ/アニメガ,楽天ブックスでは各種ショップ特典あり。Apple MusicやSpotify,Amazon Musicなど,各種配信サービスでも提供中。
収録曲(全13曲):
- 01.omen
- 02.Elimination (「CRブラックラグーン3」テーマ曲)
- 03.Rebellious Easter
- 04.EaRtHwOrM
- 05.Masturbation
- 06.明日の向こう - Will you take my hand mix -
- 07.ハレルヤ?!
- 08.めぃぷるシロップ - The wolf inside mix -
- 09.Red fraction - Transcendence mix -
- 10.ねぇ、…しようよ!- Outer Burst mix -
- 11.裁
- 12.ジェイルを破れ!
- 13.Chatty Cemetery
Amazon.co.jpの「Rebellious Easter」販売ページ(※Amazonアソシエイト)
■HISTORY ONE [Explicit] 製品情報
発売日:2021年6月25日
価格:2000円(税込)
備考:「Outer one-night stand GIG "Rebellious Easter"」を記念してリリースされた,初期〜2012年のナンバーを再録したデジタルアルバム。Apple MusicやSpotify,Amazon Musicなど,各種配信サービスのみで提供。
収録曲(全9曲):
- 01.Synthetic Organism [Explicit]
- 02.L.A.M -laze and meditation- (feat. KOTOKO) [Explicit]
- 03.Leave me hell alone [Explicit]
- 04.Dirty Boots (Cover) [Explicit]
- 05.Ha!!!ppiness [Explicit]
- 06.Bullshit!! Hard problem!! [Explicit]
- 07.BARE END (feat. KOTOKO) [Explicit]
- 08.easy prey [Explicit]
- 09.RISE-UP! [Explicit]
Amazon.co.jpの「HISTORY ONE [Explicit]」販売ページ(※Amazonアソシエイト)
祝・20周年……でしたっけ?
4Gamer:
I've Soundが20周年とのことで,おめでとうございます。最初に私から基本的な部分をお聞きしたいのですが,この“20周年”とは,どこからのカウントなのでしょう。1990年代の末には活動されていましたし,メジャーデビューは2000年代の半ばですよね。
高瀬一矢氏(以下,高瀬氏)
“I've”って,一番最初は美少女ゲームのブランドとして立ち上げたチームだったんですよ。アイドルを育成する「Lips〜笑顔の行方〜」というゲームの企画があったのですが,それを雑誌に載せるとき,「あ」で始まるブランド名だと目次の一番上に来るから,「I live」の略だったか何だったか,そういう理由も付けてI'veとしたんです。たぶん1997年あたりから雑誌には出ていたと思います。
でも「Lips〜笑顔の行方〜」が発売されず幻となって,“I've Sound”で世に出た「吐溜 -TRASH-」が,いつだったかなあ。
4Gamer:
1999年ですね。
高瀬氏:
そこから考えると1999年からですが,キリがいいので「2000年から」ということにしたんですよ。
4Gamer:
……ん?
高瀬氏:
知名度が上がったのは,その後にビジュアルアーツの「Kanon」で「Last regrets」のアレンジをやったりしてからですし。
4Gamer:
それで2021年に20周年記念の展開をされているというのは,つまり……雰囲気優先という?
高瀬氏:
そうです!(笑)
4Gamer:
な……なるほど。そういった最初期のI've Soundの中で,Outerというパンクバンドが立ち上がったのには,どのような背景があったのでしょうか。
高瀬氏:
僕は昔パンクをやっていて,自分のルーツであるパンクと当時やっていた打ち込みを融合させてみたらどうなるかな……と考えていたんです。そのときKOTOKOちゃんがオーディションに来てくれて,声がすごく通るし,何か頼んでみると「できないかもしれないけど,やってみます!」と言ってくれるので,「この子は使えるな」と思って(笑)。
タイミング良く,13cm(※1)から「発情カルテ」への楽曲提供のお話をいただいたので,そこでやってみることにしたんです。KOTOKOちゃんが“KOTOKO”というアーティストとして目指す方向性とは違うので,“謎のボーカル”ということにして,バンドにはOuterと付けて。実はKOTOKOちゃんって“KOTOKO”の名義より先に,Outerの「Synthetic Organism」でデビューしているんですよね。
※1 ビジュアルアーツ傘下のブランド。運営会社はぐーぱんちで,創設者はUYE!こと上原功士氏。
4Gamer:
KOTOKOさんの別名義と言えば,「satirize」での“宮崎麻芽”もありましたが,そこはどういう使い分けだったのでしょうか。
高瀬氏:
当時,浜崎あゆみが流行っていたじゃないですか。
(爆笑)
高瀬氏:
「浜崎あゆみっぽい曲を作るから,それっぽく歌ってよ」みたいな感じで。これも方向性が違うので,名前を変えて。
COSIO:
そんなお遊び的なノリだったんですね(笑)。
高瀬氏:
割とそんな感じでした。今聞くと,曲のクオリティもちょっとひどいですよね(笑)。
4Gamer:
「satirize」にはどこか頼りない感じもありますが,それもアングラ的というかダークな雰囲気に一役買っていて良いのではないかと。それはそうと,サイドプロジェクトであるOuterが,なぜこのタイミングで復活したのでしょう。ZUNTATAで例えたら「30周年でズンチャチャ復活!」みたいな,不思議なノリなんですが。
高瀬氏:
そうですね。昨今,新型コロナウイルスの影響で,世の中の雰囲気が悪いじゃないですか。それで20周年ということもあり,何かインパクトのあることをやりたくなったんです。NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン(以下,NBC)の西村(潤)プロデューサーに相談してみたら,「Outerやらない?」と言ってきて。「ここでか!」と驚いたのですが,Outerは10年前の夏コミでアルバムを1枚出したきりだったので,そこからのアニバーサリーという意味も含めて,やってみようと思いました。
COSIO:
そのアニバーサリー的なところで言うと,「I've GIRL's COMPILATION」の新しいベスト盤を予想したり,個人的には「SHORT CIRCUIT」の新作が出てほしかったりもしたのですが,ここでOuterというのはファンとしても意外でした。そうして作られた「Rebellious Easter」には,ロックとエレクトロが融合しつつも,メロディーラインにしっかり“I'veらしさ”のある13曲が収録されていますが,中でも「とくに力を入れた」という曲はありますか。
高瀬氏:
僕としては1曲目の「omen」ですけど,最初にデモを出したときは皆に不評だったんですよ! 「その曲はOuterじゃなくない?」みたいなことを言われて。
COSIO:
ええっ! ハードロックに近い感じのガチガチな曲じゃないですか。僕的には全然アリですよ。
高瀬氏:
もう1つ推し曲なのが,10曲目の「ねぇ、…しようよっ!」のRemixです。このアレンジはかなり悩んだんですけど,「Nirvana(※2)のコード進行を持ってきたらどうかな?」と思いついたので,それっぽいフレーズをAメロに被せて……だからマイナーコードになっているんですよ。
※2 1987〜1994年に活動したアメリカのロックバンド。2ndアルバム「Nevermind」でグランジスタイルのブームを引き起こした。
COSIO:
入口はガチガチのロックなので,「これは本当に『ねぇ、…しようよっ!』になるのかな?」という不安さも感じました(笑)。
その予想の付かない感じが“Outerらしさ”なのかなとも。
高瀬氏:
ああ,そうかもしれないですね。あと,4曲目の「EaRtHwOrM」も聴いてほしい曲です。“ミミズ”って意味のタイトルですが。
COSIO:
2拍3連から急に始まるやつですよね。
高瀬氏:
KOTOKOちゃんの書いた歌詞がブッ飛んでいて……これを作っていたとき,性別に関する差別問題みたいなことが世間の話題になっていたんです。そのニュースに対して,KOTOKOちゃんが「女性蔑視ってよく言うけど,女だって男を蔑視しているじゃない」と言い出したのですが,それが歌詞に込められているんです。
COSIO:
タイトルからしてすごいですし,“女性も男性を蔑視している”という視点はなかなか無いですよね。
高瀬氏:
歌詞も「上からも下からもどうぞ」ですからね(笑)。
KOTOKOちゃんに「どういう意味なの?」って聞いたら,ミミズって雌雄同体だから,一匹は頭を相手の身体に突っ込んで,もう一匹も同じようにして,要はシックスナインみたいな体勢で交尾をするんだそうです。それが「上からも下からもどうぞ」なのだと。視点が違うだけでお互い様なのに,性差も上下も無いミミズみたいになりたいのか……という歌詞なんですよね。「ミミズが交尾してる動画,観るー?」とも言われましたが,それは遠慮しておきました(笑)。
COSIO:
よく調べられていますね,KOTOKOさん。僕が直撃世代だった「SHORT CIRCUIT」でもKOTOKOさんが歌詞を書かれていましたが,あのブッ飛んだ歌詞が洗練されて今日につながっているのを感じます。
高瀬氏:
12曲めの「ジェイルを破れ」なんて,NBCから歌詞に“要検討”という判断が下ったんですよ。それで,レコ倫(レコード制作基準倫理委員会)に関わっている弁護士さん5人くらいに見てもらっているんです。その答申を受け取って,KOTOKOちゃんと相談して歌詞を直して……2か所くらい書き換えたかな。
COSIO:
数的には意外と少なかったんですね。
高瀬氏:
まあ5曲目の「Masturbation」っていうタイトルがアリですから,表現自体はそれほど厳しくないんですよ。答申でも「もし問題になる部分があるとしたら,ここでしょう」という程度でした。それより,曲が完成していないから歌詞だけの提出だったのに,いろんな考え方の人が丁寧に検討してくれたことに感激しましたよ。
COSIO:
新曲のほか,過去のI've楽曲のカバーが入っていますよね。そうなった経緯と,選曲の理由について聞かせてください。
高瀬氏:
西村Pと打ち合わせをしていて,最初の段階から「電波曲を何曲か入れてほしい」とか「I'veのセルフカバーをしてほしい」という注文があったんです。でも,I'veの曲って数が膨大なので,メチャクチャ悩みました。
それでも「Red fraction」は,Outerとしてカバーするなら絶対に入れたいと思った曲です。思い入れがありますし,「ブラックラグーン」が20周年で,主題歌に使われたアニメ版がYouTubeで配信されていたりもしますからね。全編英詞なので,歌詞を覚えなければいけないKOTOKOちゃんにとっては地獄だったみたいですけど(笑)。
COSIO:
でも,その地獄にあえて挑んでみたと。
高瀬氏:
レコーディングではバッチリでした。さすがです。
「明日の向こう」はKOTOKOちゃんと相談して入れたのですが,古い曲ですよね。
COSIO:
そうですね,2000年です。僕は世代的にド真ん中の曲ですけど。
高瀬氏:
いい曲ですし,ギターも入れやすいかなと思って採用しました。今回のアレンジでは4つ打ちですが,実は8ビートのバージョンも作っていたんですよ。でも8ビートだと原曲のスピード感が失われるので。
COSIO:
とくに電波曲でそうなんですが,スピード感のある曲を8ビートが基本のロックやパンクにすると,勢いが失われちゃうんですよね。曲目を見たとき,どうなるんだろうと思いましたが,スピード感を保ちつつ,ちゃんとロックもしていて,現代的な雰囲気になっていると感じました。
高瀬氏:
電波曲で言うと,「めぃぷるシロップ」はOVERDRIVEのbambooさんがやっていた「B.G.M Festival」っていうライブでOuterバージョンを演奏したことがあって,当時のアレンジがちょっとカッコ悪かったので練り直してみたんです。「ねぇ、…しようよ!」は歌詞がぶっ飛んでるので,激しいギターサウンドにこういう電波的なものを乗っけると面白いんじゃないかと。
候補としては「常識!バトラー行進曲」も入っていたんですよ。bambooさんに電波曲をパンクでやる“電波ンク”を提案したことがあったんですけど,そういう曲をいくつか作って「SHORT CIRCUIT×Outer」とかでやるのも良いかもしれないですね。
COSIO:
それ出たら3枚くらい買います! 僕としては「きゅるるんKissでジャンボ♪♪」をOuterでやってほしいですね。自分の中でパンク版のイメージはあるので,何だったら僕がアレンジしたいくらいなんですけど(笑)。
高瀬氏:
次回があるとしたら,ぜひお願いします!(笑)
解散したユニットでの曲の作り方
COSIO:
次にお聞きしたいのが,「Rebellious Easter」を作るにあたってOuterが再結成した経緯です。中沢(伴行)さんにしろ板垣(直樹)さんにしろ,I've Soundからは独立されているじゃないですか。
高瀬氏:
ゲストメンバーを迎えたこともありましたが,僕の中でOuterはやっぱり,KOTOKOちゃん,中沢,板垣,(尾崎)武士,僕の5人なんです。
だから「Outerをやる」となった段階で,この5人で集まることは,もう僕の頭の中では決めていたんですよ。それに,1人で13曲を書くのはちょっと無理なので(笑)。
3曲だけ中沢にお願いして,みたいな感じで。それに,板垣……名前より“将軍”って呼ばれてますけど。Outerへの思い入れが一番強いのは彼ですから。
COSIO:
ベーシストの板垣さんは,元々I've Soundの事務周りやマネージメントを担当されていたんですよね。
高瀬氏:
Outerのトータル的なコーディネートもしてくれていたので,それも含めて「やっぱりこの5人でやることになるだろう」と思いながら曲を作りました。独立したと言っても,何かわだかまりがあったわけでもないし,“昔に戻った”感じでしたね。
COSIO:
ああ,良いですね。解散したりくっついたり,イエロー・マジック・オーケストラみたいな(笑)。仲良くやっている感じも伝わってきますし。
4Gamer:
そういう話なら,COSIOさんもタイトーとの絡みは今でも多いですよね。
COSIO:
そうですね。卒業したのに,ZUNTATAさんから「ライブの尺が20分くらいしかないからDJで10分つないでくれ!」とか頼まれたりして,今でもライブに出ているという(笑)。
僕もZUNTATAさんにもわだかまりは無いですし,辞めたのも「新しい活動をしたい」という部分が強かったからで,独立しても仲良くやっているんですよね。
高瀬氏:
仮に何かあっても,時間が経ってますからね。
COSIO:
いやあ,その辺りお答えいただけて良かったです。友達にそれとなく「こういうのって実際どうなんだろう?」と相談してみたら「うーん……」と難しい顔をしていましたので(笑)。
ボーカルに関してもうかがいたいのですが,KOTOKOさんの収録などはどういった進め方でやられているのでしょうか。
高瀬氏:
僕の場合はデモ出しからです。そのデモをKOTOKOちゃんに聴かせて,「ここはこうした方が良い」とか言ってもらって,メロが決まったらKOTOKOちゃんが詞を書き始めて……と。I'veでは曲先が多いですね。と言うか,僕は詞先ってやったことがないんですよ。
COSIO:
レコーディングはどのようにやられているのでしょうか。やっぱりI'veのスタジオですか?
高瀬氏:
ええ。昔からある,札幌のスタジオの3階です。9m×8mってけっこう広くて,その1/3を仕切りのガラスで区切って録音ブースに改造しています。KOTOKOちゃんも札幌に住んでいるので,クルマでぴょんって来てレコーディングしていく,みたいな感じで。
COSIO:
ホームスタジオみたいな感じで良いですね,
高瀬氏:
まあ,ホームスタジオに毛が生えたようなところですから。KOTOKOちゃんがオペレーションをやることもあります。
COSIO:
それはすごいですね!
高瀬氏:
KOTOKOちゃんが自分でデモを作ったりもしますし,今回の「ねぇ、…しようよ!- Outer Burst mix -」に入っている僕の声も,僕が録音ブースに入って,KOTOKOちゃんがエンジニアとして「じゃあ(録り)行きますよー」や「4小節前からでいいですかー」と言って,RECボタンをポンと押すんです。1テイク録った後には「今のちょっともう1回やっていいですかー?」とか(笑)。
COSIO:
KOTOKOさんから高瀬さんにNGが出るんですね。その場面を写真に撮ってみたいな。「あれっ? 逆!?」って(笑)。
高瀬氏:
昔からそんな感じでやっています。KOTOKOちゃんのアルバム「イプシロンの方舟(ふね)」に「Little Baby Nothing」のカバーが入っているんですが,原曲から男性と女性のデュエット曲なんですよ。そのときもKOTOKOちゃんが僕のボーカルを録ってくれました。
COSIO:
先ほど“何か頼んでみると応えてくれる”という話がありましたけど,しっとりした曲から突き抜けたテンションの電波ソングまで歌うだけじゃなく,本当に何でもやるんですね!
4Gamer:
KOTOKOさんの作詞の話は先ほどありましたが,「明日の向こう」などの高瀬さんによる作詞はどのようにされていたのでしょうか。主題に関する直接的な言及は避けているのに,言葉選びがうまいのでビジョンが明確に構築される,という印象があるのですが,何か参考にされたものなどはあるんですか。
高瀬氏:
具体的に参考にしたというのは無いんですけど,分かりやすい言葉で情景を伝えてくれる松山千春さんや,さだまさしさんの歌詞が好きなんです。僕は詞で描く場面に自分が置かれているのを想像して,その周りで起こっていることを書いていくんですけど,そのとき松山千春さんやさだまさしさんの,優しくも力強い言葉に影響されているんだと思います。そういう綺麗な表現ができる日本語は,やっぱり好きですね。
パンク出身ミュージシャンと美少女ゲームの接点とは
COSIO:
最初に黎明期のお話を少しうかがいましたが,そもそもビジュアルアーツの所属になったり,ゲーム音楽を作ることになったりしたきっかけは何だったのでしょうか。
高瀬氏:
経済的な事情ですよ。どうにかして稼ぐ方法を探さなければとなったとき,当時在籍していた三上(誠一)がビジュアルアーツとの縁を持っていて「ここに話を持っていくと資金を出してくれるから,それでゲームを作りましょう」と提案してきたんです。それで,いきなりビジュアルアーツに電話をかけてみたんですよ。
電話の相手が関西弁だったことで初めて「大阪の会社なんだ」と知ったくらいでしたが,そこから「Lips〜笑顔の行方〜」の企画書を馬場(隆博)社長に送ったんです。でも,馬場社長は「こんなゲームじゃ売れへんぞ」と。そこから「ワイが絵コンテを描くから,それでゲームを作りなはれ」と言われて,作ることになったのが「吐溜 -TRASH-」で,そのエンディング曲として「美しく生きたい」と「Fuck Me」を書きました。
4Gamer:
アイドル系がダメで猟奇系はアリっていうのが,時代ですね。
その2曲と,「Lips〜笑顔の行方〜」の企画書と一緒に送っていた「Dancemania」シリーズの収録曲や,「EURO」シリーズの曲をビジュアルアーツの専務をされていた上原(功士)さんが聴かれて,「このサウンド良いよ。もっと使おうよ」って僕らを推してくれたんです。「吐溜 -TRASH-」もけっこう売れて,曲が良いって評判になって。
そこから「Last Regret」をアレンジする話が来て,これからもゲームの主題歌を書いて,それを集めてアルバムを作ろうという話になり,そうしてできたのが1999年のクリスマスイブに発売した「I've GIRL's COMPILATION Vol.1 regret」だったんです。内蔵音源でなく,CD-DAのストリーミングでゲームに好きな音を入れられるようになっていたので,そのタイミングに乗っかれたことも大きかったですね。
COSIO:
僕の感覚だと,ゲーム業界,とくに美少女ゲームにエレクトロやダンスチューンを持ち込んだのが,まさにI'veさんだったという感覚です。当時のダンスチューンって,僕の感覚ではJ-popなんですよ。“TETSUYA KOMURO”の時代でしたから。それがゲーム音楽と一気に融合したことで,大きな転換期を迎えたと思っています。
「Air」に付属していた「ornithopter」が衝撃的で,当時ずっと聴いていたんですよ。すごいトランスのクラブミュージックで,こんなのが本当にゲームミュージックなのかなって……まあ,それ自体は実際のところゲームに入っていないんですけど,カッコ良いなあと思っていました。折戸(伸治)さんの綺麗なメロディとの融合もすごく良かったですね。
それで,僕もそういう曲を作りたいと思って,今ここに至ります。タイトー時代には「インストでエレクトロ系の曲なら全部持ってこい!」と言ってたら,「スペースインベーダー」シリーズの曲を担当することになったりもして(笑)。
高瀬氏:
インベーダーの曲をやられていたんですね。あとWikipediaで見たんですけど,COSIOさんって「ひぐらしのなく頃に」の携帯アプリ版でも曲を書かれていたとか。
4Gamer:
そういえばタイトーから出ていましたね。
COSIO:
はい,実はそうなんです。そのときはまだペーペーだったので,竜騎士07さんとお会いして,すごく緊張しました。コンシューマ版の楽曲を携帯電話向けにアレンジして打ち込んだのですが,独自要素が多少あって,オリジナル曲が1つか2つ必要だって話になったんです。そのときはサウンド担当者の権限で勝手に書かせていただきました。もちろん監修に出してOKをもらっています(笑)。
高瀬氏:
COSIOさんって,世代的には僕より一回りくらい若いんですよね。LAUGHIN' NOSE(※3)とかKENZI & THE TRIPS(※4)とかってパンクのアーティストは分かりますか?
※3 日本のハードコア系パンクロックバンドで,結成40周年となる現在も積極的に活動している。日本のインディーズバンド市場を開拓した存在でもある。
※4 シンガーソングライターの八田ケンヂ氏を中心として1987年に結成されたパンクロックバンド。2度の活動休止期間をはさみつつ,現在も活動中。ちなみに1度目の活動休止の後,メンバーの上田ケンジ氏と佐藤シンイチロウ氏によって立ち上げられたのが国内オルタナティブロックの代表的なバンド・the pillows。
COSIO:
名前ぐらいしか分からないですね。
高瀬氏:
Dead or AliveをプロデュースしたStock Aitken Watermanっていう3人組はどうですか? Kylie Minogueなどもプロデュースしていたのですが。
COSIO:
Kylie Minogueはメチャクチャ聴きましたよ。近年でも新譜を出していますし,Dua Lipaとのコラボレーションで出した曲なんてすごく良かったです。
高瀬氏:
その3人の作るサウンドがカッコ良くて,パンクバンドをやりつつも打ち込みに興味を持ったんです。それを聞かせてくれたのが,たまたま知り合った某ハードコア系パンクバンドのベーシストだったんですよ。Modern TalkingやThe Cure,Depeche Modeなんかも,その人から教わりましたね。
COSIO:
あ,Depeche Modeは分かります! エレクトロの重鎮なので。
高瀬氏:
そこから何と言うか,自分の中で“気付き”が起こって,ディスコに興味を持ち始めたんです。18歳くらいの頃でした。パンクバンドをやりつつ,Dead or Aliveなんかも聴いて,髪をウニみたいにした頭でディスコに行ったり(笑)。
COSIO:
その当時は“クラブ”じゃなくて“ディスコ”ですよね。僕がちょうど“クラブ”が主流になった頃の世代なんですけど。
高瀬氏:
イギリスのパンク系アーティストに,なぜか打ち込みに流れていく傾向があったんです。The Shamen(※5)も最初はパンクバンドだったのですが,ハウスに移っていったり。それを真似したわけではないのですが打ち込みにも興味を持ち始めて,Dead or Aliveの「Youthquake」というアルバムに,「You Spin Me Round」って有名な曲があるんですけど,それを聴いて具体的に「こういう曲を作ってみたいな」と思ったんです。
※5 1985〜1999年にかけて活動したイギリスのエレクトロユニット。ラップソングを用いたハウスミュージックを特徴としていた。
COSIO:
僕は高瀬さんって最初からトランスの人だと思っていて,音楽史的にもトランスとロックが融合するような流れはあったので,それがOuterにつながったと勝手に思っていたんですけど,逆だったんですね。もともとパンクで,ユーロやハウスからトランスに。
高瀬氏:
そうです。もともとは「打ち込みはクソだ!」と言ってたくらいでした(笑)。
COSIO:
それ分かります(笑)。
1980年代のシーケンサーから現在のDAWまで,作曲環境の変遷
高瀬氏:
でも,パンクをやっていた頃に1U(ワンユニット。音楽機材の大きさの単位)の大きなシーケンサーを使って,打ち込みで曲を作ってみたこともあるんですよ。クソと言いつつ打ち込みの作業自体は好きだったんです。
バイト中にリズムパターンを考えて,家に帰ったらBOSSの「Dr.Rhythm」(DR-XXXX)に打ち込んだりしていました。自分の書いたものが音として構築されるというのが面白かったですね。
COSIO:
僕が音楽を始めた頃はまだPCのシーケンサーって音があまり良くなくて,単体のシーケンサーを使っていたのですごく分かります。
高瀬氏:
僕はYAMAHAの「QX3」をずっと使っていましたよ。
COSIO:
僕は友達から借りてずっと使ってた「QY100」でした。
YAMAHA公式サイトより,1987年に発売された音源非内蔵型のシーケンサー「QX3」。プロユースモデルの中でも価格を抑えつつ高機能を実現したため,人気を博した |
同じく,2000年に発売された音源内蔵型の小型シーケンサー「QY100」。2014年まで販売された屈指のロングセラーモデル |
高瀬氏:
あー,QY100! QYシリーズは長く新しい製品が出ていましたよね。
COSIO:
でも,PCでMIDIがちゃんと使えるようになってきて,PCに移行しちゃったんです。QYシリーズを極めようかなと思ったこともあったんですけどね。
高瀬氏:
PCはPC-98ですか?
COSIO:
PC-98から始めて,そのうちWindowsに移行しました。
高瀬氏:
僕は楽器店に行ったらMac使いの店員にオススメされて,Macintosh Classic IIっていう白くてちっちゃいアレと,「Digital Performer」を買いました。「こうするとハサミのアイコンが出て,それでシーケンスを切り取れるんだよ」とか教えてもらってワクワクしましたね,
COSIO:
当時PCで作曲していた人は,みんなMacだったんですよね。
高瀬氏:
そうなんですよ。Macか,もしくは「Cubase」(※6)が出ているAtariか。
※6 Steinberg Media Technologiesによる,現在はWindows / Mac向けのDAW。1989年に発売された最初のバージョンはAtari ST向けだった。
COSIO:
僕は作曲を始める前から,家にPC-98があったんです。Windowsでも,YAMAHAから「XGWorks」というCubaseみたいなソフトが出ていたので,それを使っていました。
高瀬氏:
僕もカラオケのデータを作るときはPC-98を使っていました。動作が安定していましたし,ボリュームカーブを付けやすかったんですよね。今なら大抵のDAWで付けられるんでしょうけど,いろいろなカーブを描けるというのが,当時はすごく画期的でした。PC-98では「レコンポーザ」ですか?
COSIO:
僕はMML(※7)で打ち込んだ方が早いと思っていたので,レコンポーザは少し触っただけでした。でも高瀬さんがPC-98での作曲が分かる方で良かった! 先輩方は「作曲ならMac」というのが主流だったので,「PC-98や初期のWindowsでやっていましたよ!」と言うと,よくバトルになるんです(笑)。
※7 Music Macro Languageの略称。内蔵音源を鳴らすためのデータ記述言語。
高瀬氏:
それらの後に,波形とMIDIを両方共使える「Vision」(※8)が出てきて,これは良いなと使っていました。「Digital Performer」で同じことができるようになってからは,そっちを使っているんですけど。
※8 OpcodeによるMac向けDAW。1990年代にはDigital PerformerやCubase,Appleの「Logic Studio」と並ぶ代表的なDAWだった。
COSIO:
今ですと,高瀬さんの制作環境って何を使われているのでしょうか。
高瀬氏:
もう10年前から変わっていないんですよね。Mark of the Unicornの「PCI-424」っていうインタフェースを使って,ソフトはDigital Performerで,バージョン7から上げていません。今はバージョン10まで出ていますが,マシンが対応していないので……。
COSIO:
DAWの環境だけでなく,マシンもずっと変えてないってことですか?
高瀬氏:
ちょっと前にMojave(macOS 10.14)っていう1つ前のシステムのマシンを中古で買ったんですけど,まだ変えられていないんですよ。ソフトも入れ替えなければいけなくて,経済的にも負担ですし,仕事が詰まっていると入れ替えて慣れる時間すら無くて。とりあえずバージョン10のインストールはしたので,「SampleTank 4MAX」(※9)は買ったんですけど。
※9 IK Multimediaによるソフト音源。8000種類のプリセット音色や70種類のエフェクタなどを収録している。
COSIO:
良いですね。それ,僕も持ってますよ。セールのときに買ったらエキスパンションが大量に付いてきたので,たまに「新しい音が欲しいな」ってときにプリセットを試してみるくらいなんですが。
高瀬氏:
僕は15年前から,ずっと基本が「SampleTank」なんです。えげつないほど剥き出しの音が好きで,あれだけを使って曲を作っているくらいです。だからベースのライブラリだけで,もう200くらいは……200どころじゃないかな……自分で作っています。
COSIO:
15年も同じソフトを使うって凄いなあ。僕が15年使っているソフトはCubaseくらいですね。音源だと「Pro-53」と「FM7」です。
Sequential Circuitsのシンセサイザー「Prophet-5」をソフト音源化した,Native Instrumentsの「Pro-53」 |
YAMAHAのシンセサイザー「DX7」をソフト音源化した,同じくNative Instrumentsの「FM7」 |
高瀬氏:
僕は今は大体「Sylenth1」と「Mach Five」を使っていますね。
LennarDigitalのソフト音源「Sylenth1」 |
Mark of the Unicornのソフトサンプラー「Mach Five」(画像は最新の「〜3」) |
COSIO:
じゃあ,サンプラーを基盤に作曲されているわけですか。
高瀬氏:
そうそう。新しいサンプリングCDを買ってきたら,Mach Fiveに突っ込んで。
そしてメロディの音色はYAMAHAの「TG77」です。鍵盤がついてた「SY77」や「SY99」の音源版ですね。
COSIO:
ハード音源を使ってるんですか!? TG77って,僕が高校生の頃に出たシンセじゃないですか。僕は1世代下の「MU1000」や「MU2000」を持っていますが,まさかTGの話が出てくるとは。
YAMAHA公式サイトより,1990年に発売されたハードウェア・シンセサイザーのTG77。PCM音源とFM音源を合成できるRCM音源を特徴としていた |
同じく,1999年に発売されたMU2000。MUシリーズのハイエンドモデルとして位置付けられていたのがMU2000で,そこから音声サンプリング機能やMU SEQプレイヤー(MIDIファイル再生機能)などを省略した低価格版がMU1000 |
高瀬氏:
一番最初に買った音源なんですが,ずっと使っています。何しろ聴きやすい音ですからね。メロディって聴いて覚えてもらうことが重要なので,ずっとTG77のエレピを使っているんです。
COSIO:
何か自分的にしっくる来る音ってありますよね。僕も同じような感じで,打ち込むときのクリック音は必ず「SC-8850」(※10)の,ドラムのリムを使うんですよ。オーディオクリックでやったこともあったんですけど,PCの性能によっては遅れることがあるので。TG77もそうだと思うんですが,MIDIとハード音源なら絶対に遅れないじゃないですか。
※10 ローランドから1999年に発売されたDTM用ハードウェア音源。Sound Canvasシリーズ初のUSB接続対応モデル。
高瀬氏:
あとはKORGの「01/W」(※11)ですね。あのシンセパッドの音は「M1」譲りだと思うんですけど,今でもずっと使っています。
※11 01/Wは1991年, M1は1988年に発売されたハードウェア・シンセサイザー。いずれもワークステーション型シンセサイザーの代表的なモデル。
COSIO:
手に馴染んだ音ということですよね。
高瀬氏:
何か構成に困ったら,とりあえず01/Wのパッドを入れてみるんです(笑)。
あとはE-MU Systemsの「Xtreme Lead-1」も使っていましたよ。
COSIO:
Xtreme! あれ欲しかったんだよなー。
高瀬氏:
15,6年くらい前かな。海外の人がトランスでよく使っている音って何だろうと知人に相談してみたら,「皆E-MUの『Xtreme Lead-1』を使ってるよ」と教わったので,すぐに買ったんですよ。
COSIO:
「SHORT CIRCUIT」なんかも全部それで?
高瀬氏:
僕が作ってるやつは全部そうです。でも壊れてしまって……音が鳴らなくなっちゃったんですよね。ヌケも良いし,使い勝手も良いし,全盛期のI'veを支えてくれた音源の1つでした。
Alesisの「QSR」も,少し前に壊れちゃったんですけど,ピアノとストリングスはよく使っていました。環境としては,そんなところですかね。
COSIO:
ありがとうございます。こんなディープに話していただいて……僕自身としても,すごく参考になりました
高瀬氏:
古いものばかりですけどね。
COSIO:
新しい音源を使えばいいってもんじゃないと思いますよ。新しいものって,やっぱり使いこなすまで時間がかかりますし,使いこなしても自分のスタイルに合っているとは限らないじゃないですか。僕も未だにSC-8850を使っていますし,曲中にハード音源を入れるようにしているんです。Rolandが好きなので「Fantom-XR」(※12)とかを。「全部ソフト音源にすればいいじゃん」って言われることもあるんですけど,ハード音源にはハード音源の良さがありますから。
※12 2004年に発売されたハードウェア・シンセサイザー。Fantomシリーズ初の音源モジュールタイプ。
高瀬氏:
ソフト音源って,そればかり使っているとミックスしたときに圧迫感が出るんですけど,ハード音源にはその圧迫感が無いんですよね。ケーブルを通るうちに,その辺が無くなるのかも(笑)。
COSIO:
ソフト音源で全部作ることも無くはないですが,ハード音源を入れると曲全体に“馴染み”が出てくるかなと思っています。
メジャーでもアングラでも同人でも“楽しくやる”
2004年くらいにI've Soundがメジャーデビューしましたよね。語弊のある言い方かもしれませんが,アングラからメジャーにフィールドを移したときの,心境の変化ってありましたか?
高瀬氏:
メジャーに行きたいという気持ちはあったのですが,心境の変化は大して無かったですね。NBCがパイオニアLDCだった頃,西村Pから声をかけていただいて,ジェネオンになった後にKOTOKOちゃんが「羽-hane-」でメジャーデビューしましたが,僕としては「やることは今までと同じでしょ」と思っていたので。
COSIO:
メジャーだから100万円のギターを使うぞとか,そういうことは無く(笑)。
高瀬氏:
まったく無かったです(笑)。
COSIO:
とは言え,その後に武道館ライブもあって,I've Sound自体の知名度はさらに上がったじゃないですか。一方でI've Soundの新譜ってだいたいコミケでリリースされてますよね? 企業ブースとは言え,コミケってインディーズの最たる場所じゃないですか。ストレートに言うと,ここまでメジャーになったのに,どうしてコミケでリリースされているのかと。
高瀬氏:
もう20年もコミケに出展していますが,そうなると一緒にやっている板垣さんとは戦友なわけです,馬場社長も「I'veさんは20年来の戦友だ」と言ってくれましたし,恩義もありますから。
COSIO:
コミケに出展する仲間が戦友だっていうのは,すごく分かります。
高瀬氏:
それにコミケって,やっぱりファンの皆に会える大きな機会ですからね。段ボール箱の片付けをしているときに話しかけられるのが嬉しくて,こっそりサインを書いたこともありました。
ここ何年かI've Soundからは僕1人しか行っていませんが,総出で行って設営から搬入まで全部手伝っていた頃は,それ自体が1つのお祭りみたいでした。
あと,コミケだと売れた分だけ現金でもらえるわけですが,それが楽しくて(笑)。
COSIO:
コミケは基本的に現金払いですもんね(笑)。
高瀬氏:
最初はコミケなんて知りもしなかったので,行ってみて「こんな祭典があるのか!」ってビックリしたんですよ。
COSIO:
元々はパンクバンドをやられてたってことなので,文化として接点が全然無いわけですよね。逆に言えば,僕らみたいなゲームオタクがフジロックフェスティバルへ行くようなものなので,カルチャーショックは大きいんだろうなと(笑)。
高瀬氏:
でも,すごく楽しかった。
COSIO:
お話からも,楽しんで活動されているのが伝わってきます。僕も今日初めてお話させていただきましたが,気さくな方で良かったです。怖い人だったらどうしようかとも思ってました(笑)。
4Gamer:
同人即売会というところでは,COSIOさんもM3などに個人で出展されていますよね。私も毎度足を運んでいて,まあ前回は,島みやえい子さんやSHIHOさんの新譜を買いに行くのに必死でCOSIOさんへのご挨拶を忘れていましたが……そういう出展はどのような理念でやられているのでしょうか。
COSIO:
僕は“自分の作品をリリースする場”っていうのが一番大きいですね。タイトーさんからメジャーリリースされたCDもありますが,それは依頼されて作ったものがたまたまサントラになっているに過ぎなくて,好きなことをやりたいようにやったCDをリリースするとなると,やっぱりコミケやM3だな,と。
高瀬氏:
好きなものを作って出せる場は貴重ですよね。
COSIO:
僕はアニソンをカバーするのが好きで,それこそI'veさんのカバーも何曲か作って頒布したりもしていたんです。20年くらい前のことなので,クオリティが低すぎてお聴かせできないのですけど……(苦笑)。
それに,僕も少ないですけどファンの方が来てくれたりするので,そういう場は大切にしていきたいと思っています。
体力づくりしたり,新曲を作ったり,往年のアイドルに思いを馳せたり
COSIO:
このままずっと話していたいくらいなんですが,時間の都合もありますので,今後の活動について聞かせてください。7月4日にライブをされるということですが。
高瀬氏:
だから大変なんですよ。ダイエットして,身体作りをしたり。
COSIO:
身体作りから入るんですか!? 確かにライブって体力使いますけど。
高瀬氏:
15,6年くらい,運動を一切していなかったですからね。練習で自分の体力の無さにビックリしました。それで2週間前から,毎朝5kmくらい歩くようにしているんです。
COSIO:
僕も基本的に家とスタジオを往復する暮らしなので,全然歩くことが無くなっちゃって。
高瀬氏:
僕はほとんど車で移動なので,たぶんもっと歩いてないですよ。
COSIO:
ファンとして気になるのは今後の活動予定なんですが,お話しできる範囲で何かありますか?
高瀬氏:
毎週土曜日20:00から,NAMIちゃんがI'veの曲でDJをやる2時間番組をYouTubeで配信しているんです。まずはそれを見てください!
それと,新人の佐藤アスカちゃんと,RINAのCDを2か月に1枚くらいのペースで出しています。6月末にアスカちゃんの新譜が出るはずだったのが,Outerの活動や他の仕事で延期になっちゃって,ちょっと可哀想な思いをさせちゃっているんですけど。
COSIO:
楽しみにしています!
高瀬氏:
あと「I've GIRL's COMPILATION」も,記念盤やベスト盤を含めて13枚目かな。来年の春に出せればと思っています。その他,ゲームの方の仕事も順調に入ってきていますので,ご期待ください。
COSIO:
これは個人的な興味なのですが,「この人とコラボしてみたい」という希望はあったりしますか?
高瀬氏:
うーん,パッとは浮かんでこないですね。昔のアイドル歌手と組んでみたいとか思いますけど。南野陽子さんとか,斉藤由貴さんとか……でも,そういう話を聞きたいわけじゃないですよね。
COSIO:
いえいえ,本当に興味でお聞きしたまでなので,全然大丈夫です。
4Gamer:
今はアイドルソングが女児向けアニメからCitypopまで,いろんな形で流行っていますから,“今のI've Sound的なアイドルソング”がどういうテイストになるのかは聴いてみたいですね。
高瀬氏:
往年のアイドルがI've Soundで歌うとどうなるかというのは,やってみたい気がします。
COSIO:
一昨年くらいにTikTokの影響で「ダンシング・ヒーロー」が再ブレイクして,荻野目洋子さんがけっこうテレビに出ていたんですが,その辺りどうですか?
高瀬氏:
荻野目洋子さんか……僕も昔「ダンシング・ヒーロー」をカラオケで歌って踊っていましたから,良いかもしれないですね(笑)。
COSIO:
ぜひ聴かせてください(笑)。
最後に,定番中の定番で恐縮ですが,ファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
高瀬氏:
今回,I'veの20周年に絡めてOuterの「Rebellious Easter」をリリースしました。これを聴いて,I'veの20年に込めた僕らの想いや,人格的な変遷を感じてくれたらと思います(笑)。
そして20年間応援してくれた皆さん,本当にありがとうございます。これからもI'veは頑張って最高のサウンドを作っていきますので,よろしくお願いします!
「I've Sound」公式サイト
- この記事のURL: