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アーケード筐体風バッグ「Arcade Cabinet Backpack」をレビュー。コンパネが付いた異様なバッグ,その実力やいかに
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印刷2020/11/25 15:07

レビュー

アーケード筐体風バッグ「Arcade Cabinet Backpack」をレビュー。コンパネが付いた異様なバッグ,その実力やいかに

※画像はmilktubのLINE BLOGより抜粋
画像集#041のサムネイル/アーケード筐体風バッグ「Arcade Cabinet Backpack」をレビュー。コンパネが付いた異様なバッグ,その実力やいかに
 アーケード畑のゲーマーなら,「もし叶うならアーケード筐体を日常的に持ち運びたい」と思ったことは一度や二度ではないだろう。少なくとも三度や四度くらいはあるはずだ(念押し)。

 そんな夢を叶えてくれるSTUDIO696のアーケード筐体風バッグ「Arcade Cabinet Backpack」(通称・ゲーセンバッグ)が,milktub公式サイトで2020年11月27日12:00に発売される。販売期間は12月11日まで,発送は12月18日以降の予定だ。価格は5万9800円(税込)で,だいぶ高めに感じるが,実現までに想定以上のコストがかかってしまったため,これでも赤字確定の出血大サービスだそうだ。

 今回の販売数は100台で,完売後に再販希望が多ければクラウドファンディングにて追加の制作・販売を行う構想もあるとのこと。詳しくは特設サイトのQ&Aコーナーを参照してほしい。

 そんな本品を1台提供してもらえたので,この奇抜なアイテムがいかなるものか,じっくり紹介&検証してみたい。

milktubの「Arcade Cabinet Backpack」特設サイト




バッグが筐体風になった理由(わけ)


 このような製品が生まれたきっかけは,アパレル制作ブランドSTUDIO696および美少女ゲームブランドOVERDRIVE代表のbamboo氏が,数年前にアークシステムワークスの森 利道氏から「格闘ゲームのプレイヤーに向けたアーケードスティック運搬用のバッグがあるといいよね」という提案を受けたことだったという。

 アーケードスティックを持ち運ぶためのバッグは,これまでにもMad Catz「Arcade FightStick Messenger」,MSY「Team GRAPHT Shield Backpack for Arcade Stick」,Qanba「Qanba Aegis Arcade Joystick Backpack」,三和電子「アーケードコントローラバックパック」など,さまざまな製品がリリースされてきた。しかし,ゲームデバイスメーカーのバッグは個性が強すぎるデザインになりがちで,PCサプライメーカーのバッグは無難すぎるデザインになりがちだ。それらも悪くないが,恐らく森氏はもっと別の個性を持つもの――森氏の嗜好性とSTUDIO696が得意とするデザインラインを考えると,「ロックなデザイン」を想定していたのではないだろうか。

 しかし設計を進めていくうち,タブレットやモバイルモニタを収められるポケットとコンパネがバッグに付いてしまったそうだ。ロックというかパンクというか,とんでもない飛躍が途中にあった気がするが,bamboo氏自身が「なぜか」述べているので,あまり気にしないでおこう。

 バッグ部分の寸法は,おおよそ300(W)×100(D)×500(H)mm。さすがにHORIの「リアルアーケードPro.Premium VLX」シリーズ(長辺570mm)やタニタの「VDC-18-c 18式コントロールデバイス ツインスティック」(長辺650mm)など,携行性を考えられていないレベルのコントローラはさすがに入らないが,たいていのアーケードスティックを収納できる。ただレバーを保護する機構などは無いので,気になる人はカバーを自作するといいだろう。

画像集#016のサムネイル/アーケード筐体風バッグ「Arcade Cabinet Backpack」をレビュー。コンパネが付いた異様なバッグ,その実力やいかに
実際にアーケードスティックを入れてみたところ。まずこちらはMad Catz「GUILTY GEAR Xrd -SIGN- Arcade FightStick Tournament Edition 2 (PlayStation 3/PlayStation 4)」
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三和電子「SANWA Standard ARCADESTICK for PS4 MoNo」(ケツイ〜絆地獄たち〜15周年記念アーケードスティック)。ちなみにこれは筆者の私物で,他は編集部備品だ
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HORI「リアルアーケードPro.V サイレント HAYABUSA」
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Razer「Atrox(Xbox 360版)」


クミ☆タテ 〜AssemblyShow〜


 本品は組み立て式であり,初期状態ではバッグ本体とコンパネ部分は分離している。ただし基本的なユニットは組立済みでハンダ付けや接着などは必要無いので,工作難度としては「IKEAの家具を組み立てるくらい」といったところだ。

開封時の様子
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表面と背面
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 コンパネ部分のレバーボールとボタンは,アーケード筐体や一般的なアーケードスティックより一回り小さいモデルが採用されている。ボタンは30⌀でなく24⌀,レバーボールは35⌀でなく30⌀だ。なお,30⌀のボタンを使いたい場合は相当な加工が必要となる(アクリル板の強度的にも推奨しかねる)が,レバーボールはネジ穴が共通規格なので簡単に交換できる。

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裏面と,一般的なアーケードスティックとの比較。パーツはセイミツ製が採用されている
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一般的なボタンおよびレバーボールとの比較。赤いほうが本品に使われているもので,ボタンはネジ止め式だ。ちなみにボタンが小さいと言っても,左写真の白黒ボタンも内部のマイクロスイッチは本品と同じものが使われていてる
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 それでは組み立てていこう。まず付属の六角レンチで,コンパネの外周にある6つのネジを外し,底面カバーを取り外す。続いてボタン,レバーボール,レバーシャフトのカバーディスクも取り外す。

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 すると,コンパネの基板がネジ止めされた下段パネルから,2つのアクリル板が分離する。上段の天板は透明(写真では保護シートを剥がしていないので白く見える),中段と下段はブラックだ。

 次にデザインシートを切り出そう。記事製作時はプリント済みのものを提供してもらったが,製品版では特設サイトからダウンロードして購入者が自分で印刷するスタイルとなる。

 デザインシートを切り出したら,コンパネの下段パネルと中段パネルで,バッグのコンパネ装着部をサンドイッチする。そして,中段パネルと上段パネルでデザインシートをサンドイッチする。

標準のデザインシート。上が上部ウィンドウ用で,下がコンパネ用
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 たわみの生じる布面を挟むため,ネジ止め位置を合わせるのが割と厄介なのだが,「パネル3段+デザインシート+バッグ本体にネジを通す → ボタンを嵌める → レバーにカバーディスクとボールを装着(ボール留めのネジをしっかり締める) → ボタンに配線する → 底面カバーのネジ穴をネジに通す → ナットを締める」という流れで組めば,比較的スムーズに組み立てられるだろう。

ボタンが付いてるのは「ハメておくと位置決めに良いんじゃないか」と思ってやったことだが,むしろネジ止めの邪魔だった。右写真はデザインシートを挟み忘れている悪い例
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 さて,これで完成……。ん……?

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 コンパネのデザインおかしくない? ネジ穴の位置とか。

 これは……bambooさーん! 送っていただいたデザインシート,出力の版型が合ってませんでした!! まあ,上部ディスプレイ部位にデザインシートを挿入したとき,だいぶ余っていたので気付いてはいたんですが!

 前述の通り,製品版では購入者が自分でプリントアウトすることになるが,そこで出力サイズを間違えるとこうなってしまう。つまりアレだ。きっと「注意喚起せよ」という神の采配だろう。

 ただシートがズレているのも何だし,せっかくだから何かに変えてみよう。「カスタム例を見せよ」と神が言っている気もする。なので,OVERDRIVEの公式Twitterでロックの日(6月9日)に公開された「DEARDROPS」の10周年記念イラストを……。


 加工して,出力して,こう!

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 こんな感じに,好きなデザインを適用できるので,画像編集ソフトを使える人はいろいろ試してみるのもアリだ(なお当然ながら,基本的に私的および自己責任での使用に限る)。

 ディスプレイやタブレットを格納するためのポケットは,紙の版型で言えばおおよそB5サイズ(257x182mm)。B5サイズのコピー用紙を持ちつつ秋葉原をウロウロして調べたところ,あくまで面積からの推測(厚みは軽視)だが,センチュリーのモバイルディスプレイ「LCD-10000VH6」:252(W)×175(H)×32(D)mm(突起部含まず)や,MicrosoftのタブレットPC「Surface Go 2」:245(W)×175(H)×8.3(D)mmは丁度良さそうだ。ディスプレイのサイズとしては,「10.xインチ」ならおおよそ適合すると考えられる。

B5サイズの紙を入れてみたところ。なお端の部分はウィンドウの縁に隠れている
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手元にあった「Diginnos DG-NP09D 8.9インチ バッテリー内蔵モバイルモニター」を仕込み,サイバーガジェットの「レトロフリーク」で「アストロ忍者マン」をプレイしてみたところ
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 上部ウィンドウのポケットは,おおよそ265mm(W)×60mm(H)。厚みが無いので用途は限られるが,導光板とLEDを仕込んでバックライトにしてみたり,薄型のLEDマトリクスを仕込んでデジタルサイネージにしてみたりといった活用も考えられる。ウデに自信があるならば,背面を切り取ってしまえば改造の自由度が大幅に向上する。

4Gamerの20周年記念ロゴをつっこんでみると,こんな感じ
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ARCADUS!


 組み立てが済んだところで,本品最大の特徴であるコンパネの使い勝手を見ていこう。まず,PCなどとの接続は,コンパネ裏面のUSB type-Cポートを使って有線でつなぐか,同ポートからモバイルバッテリーで給電してBluetoothでつなぐかの2択となっている。

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モバイルバッテリーで給電する
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コンパネ下部のポケットは余裕があるため,GPD Winのような小型PCや,Raspberry Pi系の基板なら難なく収納可能だ

Bluetoothでは「Gamebag」というデバイス名で認識される。システム的にはUSB接続が「REVIVE USB」,Bluetooth接続が「RNi Joystick」という名称になっており,使いどころがあるかは不明だが両方いっぺんにPCで認識することもできる(右画面はJoyToKey」の設定画面)
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 コンパネを用いたプレイのテスト用として,筆者のSteamライブラリから3本のアーケードゲームの移植タイトルをピックアップしてみた。

メタルスラッグ3


 まず「アーケードスティックの瞬間的な入力が求められるゲーム」として思い当たったのがSNKの「メタルスラッグ3」。DotEmuの移植によるSteam版はXInputのゲームパッドでしか遊んでおらず,あまり良い印象を持っていなかったのだが,アーケードスティックでプレイすると印象が相当変わる。

フレームレートは実機と微妙に違ったり(MVSは59.1856fps,AESのNTSC版は59.599fps),BluetoothやUSB接続なりの遅延はあったりするはずだが,普通にプレイしている限りでは致命的な異常は感じられない。1面の捕虜コンプくらいなら簡単に達成できる
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虫姫さま


 アーケードスティックでプレイするならば,やはりシューティングゲーム。そんなわけでケイブの「虫姫さま」をプレイしてみた。せっかくなので,縦画面にしてみよう。ちなみにケイブの移植タイトルは画面表示位置を細かく設定できる機能があるのだが,それが予想外にもこういったシーンで役に立つ。

縦画面だと,このくらいがMAX表示となる。本体が布製である都合上,どうしても安定感は良くないのだが,基本的に激しい入力が求められないシューティングゲームではそれほど不都合はない
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ストリートファイターII’


 アーケードゲームの花形と言えば格ゲーだ。そこでカプコンの「Street Fighter 30th Anniversary Collection」から「ストリートファイターII’」をプレイしてみたのだが,ここで今更ながら気付いたことがある。コンパネが6ボタンだけなので,「ストリートファイター」シリーズや「ヴァンパイア」シリーズなどの6ボタン格ゲーをプレイするとき,スタートボタンをアサインする余地が無い。スタート用に別途キーボードなどを用意することを推奨したい。

キーボードを用意してみた図。本末転倒な気はするがゲームパッドでもいいし,コンパネの基板はピンアサインに空きがあるので,配線やファームウェアをいじれるならばボタンの増設も可能だ
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 コントローラとしては充分機能するが,レバーボールが小型のため一般的なアーケードスティックとは感触がだいぶ違ってくる。格ゲーをプレイする場合は,レバーボールの換装をおすすめしたい。

 また,大型のアーケードスティックをガチャガチャいわせてプレイすることに慣れている人だと,筐体が軽いゆえの入力ミスに悩まされるだろう。逆に,小型のアーケードスティックを膝に乗せてプレイすることに慣れている人なら,それほど違和感なく使用できそうだ。

コンパネでの操作感を試しているところ。使用するボタンが多いゲームだと,ボタン配置が手に馴染むまで若干苦労する
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ちなみにAndroidでも認識でき,「ダライアスバースト セカンドプロローグ」や「海腹川背 Smart」でレバー操作を行えたものの,ボタンがキーボードとして認識されるらしく,うまく動作しない。Androidのゲームはボタンコンフィグが付いていることも稀なので……
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超電玩パフォーマー


 正直なところ,底面カバーの都合上,コンパネ部分のメンテナンスは難しい。レバーボールのネジを締めやすいよう,レバーの直下にドリルで穴を開けるくらいはしても良いかもしれない(当然ながら自己責任だ)。

 ただ,コンパネが1つあると大助かりするシーンは,ゲーマーならいろいろとあるだろう。例えば「人が揃ったから『ダウンタウン乱闘行進曲マッハ』の4人対戦をしようと思ったのにゲームパッドが1つ足りない!」というときに「そういえばArcade Cabinet Backpackがあるじゃないか」となったり,気になるアノ子が「『BLAZBLUE CROSS TAG BATTLE』やってみた〜い」と言い出したときにArcade Cabinet Backpackのコンパネと収納していたアーケードスティックで手合わせできたり,そういうピンチを切り抜けられる。

 そして何より,「目立つ」ということの利点は非常に大きい。C4 LANなどのLANパーティーに参加するときや,BitSummitやTokyo Sandboxなどのインディーズゲームイベントに出展するとき,本品を活用すれば一躍フロアのスターとなれるはずだ。缶バッジや電飾などで装飾すれば,迫力はさらに増すだろう。

 基本設計は必要十分。あとは,いかに長所を引き出す使い方を考えて,活用(もしくは改造)することができるか。「Arcade Cabinet Backpack」は,言ってしまえばウィンドウとコンパネが付いた“だけ”のバックパックだが,それによって比肩するものが無いほどの「ギーク向け」な特性を手に入れている。

とりあえずレバーボールを金色にしたり,ボタンを光らせたりしてみた。スピーカーシステムを内蔵しても良いだろうし,かつてMad Catzが発売した「Cyborg Gaming Lights」や,Corsairが9月に国内発売した「LT100」などの,光り物系ゲームデバイスを縫い付けてみるのも楽しいだろう。可能性は無限大だ!
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STUDIO696公式サイト

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