業界動向
Tencent,2019年度決算報告を公開。オンラインゲーム事業は年間売上30%の1.8兆円,キーワードが「海外進出」と「外部パートナー連携」
ここ最近では,Funcomと株式売買契約を交わし,プラチナゲームズとの資本提携にも携わるなど,国外での大きな話題が続いており,中国以外のゲーム業界においても,その存在感がますます強くなっていると言っていいだろう。年間約5.9兆円の売り上げで1.4兆円以上の利益を叩き出したその内訳を,ちょっとのぞいてみよう。
※以下はすべて,2020年3月24日のレート,1元=15.67円で計算している
外部サイト:腾讯2019全年财报(中国語)
外部サイト:Tencent Announces 2019 Fourth Quarter and Annual Results(英語)
今回は,2019年第4四半期(10月〜12月)の業績報告,年度決算報告が合わせて公開されているので,まずは四半期分の数字から見てみよう。
テンセントは第3四半期で,1.5兆円の売り上げに3800億円の利益という印象的な数字を残したが,今期も安定的な成長を見せ,四半期売り上げ1057.67億元(約1.57兆円),YoY+25%という快挙を成し遂げた。四半期利益は254.84億元(約3993.34億円)で,これもまたYoY+29%という大幅増だ。
なお,2019年度(1月〜12月)の全売り上げは3772.89億元(約5.91兆円)でYoY+21%。年度の利益は943.51億元(約1.48兆円)で,YoY+22%。どの期においても,前年比20%前後の増加が続いているという,会社規模を考えると驚異的な成長率だ。
関連記事:超巨大企業テンセントの2019年第三四半期は,1.5兆円の売り上げで3800億円の利益
このような数字は何でできているかというと,
・Value-added Service売り上げ※
1999.91億元(約3.13兆円) YoY+13%
・フィンテックおよび企業サービス売り上げ
1013.55億元(約1.59兆円) YoY+39%
・インターネット広告売り上げ
683.77億元(約1.07兆円) YoY+18%
・その他売り上げ
75.66億元(約1185.60億円)
※ゲーム・エンターテイメントなどのサービス課金を含む
となっている。フィンテックおよび企業サービスに注力した分,このセクションは前年比約40%増という結果が出ており興味深いのだが,4Gamerではあくまでゲームに絞って紹介していく。
オンラインゲーム事業は,年度売り上げの30%を占める1.8兆円。海外進出が好調
開示情報によると,2019年度のオンラインゲーム売り上げは1147億元(約1.80兆円)でYoY+10%。世界で最もポピュラーなスマホゲーム(注:テンセント調べ。DAUで算出したもののようだ)のうち,5タイトルはTencent開発のタイトルだ。「PUBG MOBILE」(iOS / Android)「Call of Duty Mobile」(iOS / Android)「英雄聯盟(リーグ・オブ・レジェンド)」の「チームファイト タクティクス」モードが,売り上げに貢献する主要な戦力となっている。
しかし時節柄注目すべきなのが,“海外でのゲーム収入”の割合だ。
ご存知かもしれないが,中国では版号審査(注:版号を得られないと商業化が認められない)や適齢審査などいろいろな制限があり,そういった状況が結果的にメーカーの海外進出を後押ししている。超巨大企業Tencentといえどその流れは踏襲しており,2019年Q4の海外ゲーム収入は,前年同期比で倍以上となっている。しかもオンラインゲーム全体の売り上げの23%は,海外収入によるものとなっている。
一般的には「テンセントってなんかゲーム作ってんの?」というイメージが強い日本においても,2019年冬に「爆走ドリフターズ」(iOS / Android)を配信し,4月9日には大作RPG「コード:ドラゴンブラッド」(iOS / Android)をローンチ予定だ。それらを含め,今後の動きには注目しておきたい。
外部パートナーとのさらなる連携と,eスポーツにおける存在感
ほかにゲーム事業のハイライトでは,
・「リーグ・オブ・レジェンド World Championship」および「Honor of Kings 2019 World Champion Cup」(邦題:伝説対決 -Arena of Valor-)は,ともに最多視聴者数を達成したPCおよびスマホのeスポーツ大会となり,グローバルでのeスポーツ領域を率先する地位を固めている
……と強調されている。
先ほども少し触れたが,2019年末にプラチナゲームズとの資本提携を締結したというニュースを覚えている読者も多いだろう。IRには「外部パートナーの連携関係を広めた」と軽く書かれる程度だが,その実際は我々から見たら世界がひっくり返る規模のものだ。
すでにEpic GamesやSupercell,Netmarble,Ubisoftなど世界の名だたる会社にすべてテンセント資本が入っており,会社によっては100%子会社であったりするわけだが,今でも年間10社ほどのゲーム社に投資を行い,現時点で投資もしくは買収したゲーム会社は100社以上にのぼる。
2019年1月には「WarHammer:Vermintide 2」を作ったゲームデベロッパーFatsharkを,5月に「ディビジョン」を手掛けた開発者が立ち上げたSharkmobを,11月には,イギリスの上場ゲーム会社であるSumo Groupを……と,その影響力は大きくなる一方だ。
eスポーツの分野においても,Riot Games(2011年にテンセントに買収され,2015年には完全子会社化となった)の「リーグ・オブ・レジェンド World Championship」の決勝戦における瞬間最高視聴者数は4400万人を記録し,1分あたりの視聴者数2180万人という記録を打ち立てた。
ケタ違いの数字を叩き出し,さらに異常とも言えるスピードでばく進しているテンセントは,そのふんだんなヒューマンリソースと膨大なキャッシュをもとに,ゲーム開発からパブリッシング,M&A,そしてeスポーツの主催や配信など,碁盤に石を打つかのように着実にエリアを広げている。今後どのような展開になっていくのか,注目していきたい。
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Tencent 2019Q4(10月〜12月)業績報告及び年度決算報告:Tencent Announces 2019 Fourth Quarter and Annual Results
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