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[TGS 2019]“コミュニティは命”。位置情報ゲームの現在と未来が語られたセッション「位置情報ゲームサミット」聴講レポート
現実のフィールドをゲームの場として遊ぶ“位置情報ゲーム”を手掛けるベンダーが一堂に会し,同ジャンルの現在と今後の可能性を語ったセッションの模様をレポートしよう。
「ポケモンGO」(iOS / Android。正式名称は「Pokémon GO」)が巻き起こした社会現象をきっかけに,老若男女問わず広く親しまれるようになった“位置情報ゲーム(リアルワールドゲーム)”は,現実とバーチャルの世界をリンクさせ,プレイヤーが現実世界を移動しながら遊ぶ“アウトドア”を基本としているゲームジャンルだ。
位置情報ゲームと一口に言っても同ジャンルはさまざまな広がりを見せており,陣取りをするもの,アイテム集めをするもの,他者の移動に依存するもの,ライフログを目的としたものなど,その中身はここ数年で多様化してきている。
位置情報ゲームサミットに集ったベンダーが手掛けるタイトルも,それぞれに異なる特徴があるので,まずは参加企業を簡単に紹介しよう。
「Ingress Prime」(iOS / Android),「ポケモンGO」,「ハリーポッター:魔法同盟」(iOS / Android)といった世界的なヒットタイトルを開発するNiantic,2019年6月にキャプテン翼のリアルワールドゲーム「TSUBASA+」(iOS / Android)の開発を発表したMIRAIRE,現実世界を歩いて“街を再発見”し仮想通貨アルクコインを得られる「ビットにゃんたーず」(iOS / Android)のリアルワールドゲームス,全国9100以上の駅をめぐり全駅制覇を目指す「駅メモ! - ステーションメモリーズ!」(iOS / Android)をリリースするモバイルファクトリーの4社だ。
■登壇者
Niantic カントリー マーケティング マネージャー 山崎富美氏 |
MIRAIRE 代表取締役CEO 志賀雄太氏 |
リアルワールドゲームス 代表取締役 清古貴史氏 |
モバイルファクトリー 代表取締役 宮嶌裕二氏 |
なぜ位置情報ゲームを遊ぶのか
中でも印象的だったのが,「Ingress」のへビーユーザーである清古氏のエピソードだ。「Ingress」では,現実世界で見つけたさまざまなスポットをゲーム内のポータルとして登録申請できるのだが,現実世界での自分の行動がゲーム内に影響を与えられるこの体験が新鮮で魅力的なのだと話す。この体験が,ほかのプレイヤーが登録していない自分だけが知るスポットを探すモチベーションにつながっており,街の再発見,自ら冒険に出る動機につながるという。
スポットを探しに山に登るというエピソードや,沖縄で開催された「XMアノマリー」(※)の際には太平洋を制圧するためにサイパンまで遠征したという自身の体験談も語られた。
(※)「Ingress」で行われるイベントのことで,レジスタンスとエンライテンドの両陣営による大規模な陣取り合戦などが行われる。現地での戦いも重要なのだが,戦況を有利にするために周辺地域のポータル奪取に遠征するプレイヤーもいる
この体験に近いものとして,志賀氏は「なんでもない道を歩くことが楽しくなる」というエピソードを語った。例えば道ばたのお地蔵さんのような小さなオブジェクトは,ガイドブックに取り上げられることもなく,また日常生活でも見過ごされがちだ。しかし位置情報ゲームにおいては,これらのオブジェクトですらもスポットとしてリンクしており,ゲームを通して現実世界を観察することで新たな発見が生まれやすいのだという。
山崎氏は,「Ingress」をプレイしている際に「キーをください」「Xmpバースターを渡すのでここを壊しておいてください」という具合に他プレイヤーから声をかけられることも少なくないと話す。そして,こういった交流から自然とコミュニティの輪が広がり,個ではなくチームで戦っている連帯感が生まれていく点を魅力として挙げた。
また,テーマから外れるかもしれないと前置きしつつ,東日本大震災によって失われてしまった場所が「記憶のポータル」として「Ingress」に登録されているというエピソードを語った。
このポータルは,東北の復興支援を目的とした「Ingress」のイベントで植えられたもので,現実世界では見ることが叶わない被災前の風景を,バーチャルの世界をとおして想いを馳せられるものだ。こういった貴重な体験ができるのも位置情報ゲームならではだろう。
プレイヤーが部屋を出る意味
1つ目のトークテーマでは,登壇者自身の体験に基づいたエピソードが語られたが,2つ目のテーマ「プレイヤーが部屋を出る意味」では,サービスの利用者(プレイヤー)を軸とした事例や見解が述べられた。
例えば「駅メモ!」は,プレイヤーを歩かせるウォーク型ではなく,電車に乗って移動させるライド型で,全国に存在するあらゆる駅にチェックインすることがプレイヤーの1つの目的となる。宮嶌氏によると,「駅メモ!」で9100駅を制覇したプレイヤーは700人ほどいるとのことだった。
老若男女問わず幅広い層がプレイする「ポケモンGO」においては,それぞれのプレイスタイルが多様化していると山崎氏は話す。それは,プレイヤーが部屋を出る意味にもつながるところで,バトルを楽しみたい,健康のために歩きたい,子供と一緒に遊ぶためというように,同じゲームであってもプレイヤーのプレイの目的はさまざまで,部屋を出る意味も違っているのだ。
ここでモデレーターの山田氏から,「位置情報ゲームには同じゲームを楽しむ人を集められる力がある」と,横須賀で開催された「Pokemon GO Fest」の様子が紹介される。
位置情報ゲームではないタイトルでは,リアルイベントで人を集めにくい部分があるという。しかし,現実世界での移動がプレイの前提になっている位置情報ゲームの場合は,開催地で得られるインセンティブを求め,同じゲームを遊ぶプレイヤーが自然とイベント会場へ足を運んでくれるのだ。
リアルイベントといえば,「Ingress」の事例が興味深い。「Ingress」では,Nianticが主体となり開催される「XM Anomaly」が大きな公式イベントとなるのだが,自治体やプレイヤーが主体となって企画・運営する「ミッションデイ」や,エージェントが中心となって開催する「ファーストサタデー」といったNianticが主体ではない公式イベントが世界中で行われているという。
一般的な運営タイトルでは,メーカーサイドが会場を用意し,催しの内容を考え,プレイヤーをおもてなしするようなケースが多い印象だ。しかしNianticのタイトルでは,プレイヤーコミュニティが“よりゲームを楽しむために”自主的にイベントを企画し,運営を行う流れができているのだ。
これは,長年培ってきたコミュニティとの連携ありきとも言えるが,位置情報ゲームには,人と人とをつなぎ,現実世界でのコミュニティの拡大を促進する効果があるということだろう。
Nianticのコミュニティに関する話題は,こちらのインタビューで詳しく聞いているので,興味のある人はこちらもチェックしておくことをオススメする。
「Darsana Prime Tokyo」の戦いは“並行世界”で起きている。Niantic川島優志氏が語る「Ingress Prime」でつながるエージェントの絆とは
Nianticは,2019年3月23日に「Ingress Prime」の公式イベント「Darsana Prime Tokyo」を,ベルサール渋谷ガーデンタワーにて開催する。今回4Gamerでは,Nianticアジア統括本部長の川島優志氏にイベントの開催経緯や見どころをお聞きした。本作を支えてくれるコミュニティへの想いも語られたので,エージェント各位は本稿の最後まで目をとおしてほしい。
コミュニティが生み出す価値
「Ingress」でのリアルイベントのエピソードからも分かるように,「Nianticのゲームにとってコミュニティは命」だと山崎氏は力強くコメントする。
とはいえ,ひと口にコミュニティといってもその種類はさまざま。陣取りの戦略を相談するためのもの,ストーリーを語り合うためのものなど,ゲームのつながりから生まれたコミュニティだけでなく,そのつながりの中から,野球好きで集まる,虫好きで集まる,女子会といった,細かなコミュニティへも派生していくという。
そうしたコミュニティのつながりは,「○○へ行こう」「○○をしよう」といった,プレイヤーたちの行動の動機やきっかけにつながっていくというのだ。
コミュニティの話題から派生して,山田氏は「位置情報ゲームは継続率が高いのでは?」と宮嶌氏に投げかける。モバイルファクトリーでは,これまでさまざまなジャンルのゲームタイトルを開発してきたが,同社がこれまでリリースしてきたタイトルに比べ,「駅メモ!」の継続率は抜群に高いという。その理由として「疲れないこと」を挙げ,「駅メモ!」がゲームとツールの中間にあるタイトルで,生活のルーティン組み込まれやすいからではと分析していた。
次の位置情報ゲームとはどんな姿か
次なる位置情報ゲームといえば,現在開発が進められている「TSUBASA+」ということで,志賀氏に話題が振られる。氏は「現実世界の身近な場所に,ゲームの多様な世界を重ねられることに胸が踊る」と話し,「TSUBASA+」ではリアルな世界の上にサッカーファンが見たい世界をのせるタイトルを目指していると展望を明らかにした。
あわせて,ゲームであることも重要だが,ライフログ,ライフツールっぽさの必要性も説いた。
これを受け「ゲーム内のタスクはシンプルなほうがいいのか?」と山崎氏に質問が投げかけられると,「ポケモンGO」は,子供でも遊びやすいタイトルを目指しており,ベースはポケモンを見つけてモンスターボールで捕まえるというシンプルなものを心がけたと返した。
宮嶌氏は「今後位置情報ゲームと何を組み合わせたものが出てくるか」という質問に対し,「ブロックチェーンに紐付けられた未来」が来るのではと答える。これは位置情報ゲームに限った話ではないと前置きしつつ,ゲームの進化の方向性として「ゲーム内のアイテムの所有権がブロックチェーンに紐付けられ,実際に売買できる次世代のタイトルがヒットする」と予想しており,モバイルファクトリーはそういった取り組みを支援できる環境を整えていくという。
位置情報ゲーム×ブロックチェーンの可能性は清古氏も感じているそうで,プレイできなくなったゲームの財産を他タイトルへ持ち込めるようにし,自社のタイトルに閉じず,他社タイトルとも連携する取り組みとしてブロックチェーンが有効ではとのこと。「これが位置情報ゲームのジャンルにおいても実現できれば」と展望を語った。
「Ingress Prime」公式サイト
「Pokémon GO」公式サイト
「ハリー・ポッター:魔法同盟」公式サイト
「TSUBASA+」公式サイト
「ビットにゃんたーず」公式サイト
「ステーションメモリーズ!」公式サイト
4Gamerの東京ゲームショウ2019特設サイト
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- ジョン・ハンケ 世界をめぐる冒険 グーグルアースからイングレス、そしてポケモンGOへ
- 価格:¥2,430円
- 本
- 発売日:1970/01/01
- INGRESSを一生遊ぶ!
- 価格:¥2,150円
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