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eスポーツの数字の話 Round01:ゲームの数字が欲しいならDIYの精神だ
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印刷2019/05/17 12:00

連載

eスポーツの数字の話 Round01:ゲームの数字が欲しいならDIYの精神だ

画像集 No.004のサムネイル画像 / eスポーツの数字の話 Round01:ゲームの数字が欲しいならDIYの精神だ

 前回はeスポーツの熱狂を定性的に表すだけではなく定量的に(数値化して)表すことが大切という話をしました。

 それでは実際に企画書をつくる際に使用する数字をどのように準備すればよいのでしょうか。数字は大まかに“確実な数字”“推計した数字”に分類することができます。

 まずは“確実な数字”。ある企業が製品Aの一年間の売り上げ金額を算出する場合を考えてみましょう。製品Aの年間出荷数と売価が分かれば,二つの数字を乗算して売り上げ金額を算出できます。
 年間出荷数や売価といった数字は自社の販売システムに記録されているはずなので,そこからデータを抽出して表計算ソフトで集計すれば求められます。ある企業にとって,製品Aの売り上げ金額は自社が正確な値を把握している“確実な数字”です。

 一方,同じ企業が製品Aの同製品カテゴリにおける市場占有率(シェア)を算出する場合,競合他社が販売する製品の売り上げもどうにかして計算しなければなりません。
 小売り店が販売データを提供してくれればよいのですが,そういうわけにもいきません。小売店にとってデータは資産ですから。企業は小売り店舗や消費者への調査を行い,競合他社の製品の売り上げを推計する必要があります。これが“推計した数字”です。

 ビジネスでは“確実な数字”と“推計した数字”のどちらも使います。自社が保有するシステムから“確実な数字”を拾い集めることは重要ですし,マーケット状況を分析するために調査や計算式を用いて“推計した数字”を準備することも重要です。

 自分がGzブレインに在籍している時に計算した国内eスポーツ市場規模の話をしましょう。2017年に3.7億円,2018年に48.3億円という数字です。この数字は放映権,スポンサー,チケット,アイテム課金,賞金,グッズ,著作権許諾という科目に細分されます。

出典: Gzブレイン
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 チケットや賞金といった科目については,興行企業がさまざまな数字を公開しています。チケットの販売価格はチケット販売サイトで確認できますし,総来場者数といった数字も企業がPR目的で発表しています。賞金についても同様です。これらの"確実な数字"をかき集めていけば(大変な作業ですが)総額を算出することができます。

 一方スポンサーシップや放映権といった項目の数字は公表されていません。なのでこれらの数字については前提条件を置き,計算式を構築して推計する必要があります。

 Gzブレインはゲーム市場に関連する数字を推計するために大量のパネル(アンケート調査を行う標本)を抱えています。このパネルから特定の属性を持ったユーザーをピックアップしてWeb調査を行い,ゲームやeスポーツの“推計した数字”を算出しています。

 パネルの数は25万人,そこから1万人近くの人を抽出してWeb調査を行います。この方法によって大量のデータを確保できるものの,「Webを利用できる」という属性のサンプルに偏ってしまうという欠点もあります。そこで1000人ほどの留置調査(対象の家に訪問して行う調査)を併用することで偏りを補正します。

 パネルを用いてeスポーツのファンの数,動画の視聴者数といった数字を計算します。さらにこれらの数字に係数や計算式を適用して科目別の総額を算出し,それらを合算することで国内eスポーツ市場規模の数字が出来上がります。

 本稿をご覧頂いている皆さんは自身で国内eスポーツ市場規模を計算する必要はありません。Gzブレインが計算した数字を利用すればよいのです。企画書を作る際にはどこかの誰かが計算した数字を見つけることは重要です。ググりましょう。

画像集 No.006のサムネイル画像 / eスポーツの数字の話 Round01:ゲームの数字が欲しいならDIYの精神だ
 ですが,自分がほしい数字がググっても見つからないこともあります。まだ誰も計算していない数字が欲しい時にどうするか。そこはDIY (Do It Yourself,自らやる)の精神です。

 フェルミ推定という手法があります。捉えどころのない数字をロジックを重ねることで推計する手法です。論理的な思考力を測る方法として,Googleの面接で使われているということで有名になりました。

 とても偉そうな名前がついていますが(フェルミ先生ごめんなさい),要は“確実な数字”とロジックを使って“推計した数字”をつくることです。もっと簡単にいうと,お目当ての数字が手に入らないときにDIYで数字を計算しましょうという心がけです。

 なぜ数字を計算しなければならないか。前回もお話しましたが,あらゆるビジネスの意思決定には裏付けとなる数字が必要だからです。経営会議でeスポーツ事業の企画をプレゼンする際に「なんとなく」や「直観で」,はたまた「そう囁くのよ,私のゴーストが」などと言おうものなら,あなたのボーナス査定は攻性防壁で焼き付くことでしょう。

 ちなみにGzブレインの『ファミ通ゲーム白書』,一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)の『CESAゲーム白書』,一般社団法人日本オンラインゲーム協会(JOGA)の『JOGAオンラインゲーム市場調査レポート』といったレポートはゲームの数字を見つける時にとても便利です。

 なのですが,eスポーツの数字に関して言うと〇〇白書や〇〇レポートというものが世に出回っていませんし,ググっても出てきません。

 そんな時はどうするか。

 DIYの精神ですね。

 表計算ソフトを開いて数字の旅へ出かけましょう。

著者紹介:但木一真
1985年生まれ。ゲーム業界/eスポーツ業界のアナリスト。カドカワ株式会社にて,ゲーム業界のマーケティング分析業務に従事しているとき,総務省より公表されている「eスポーツ産業に関する調査研究報告書」を執筆したことをきっかけに,eスポーツ業界の専門家としてさまざまなレポートを発表。2019年4月よりフリーランスとして活動をはじめ,eスポーツ業界に関する記事執筆,コンサルティング,イベント・コンテンツのプロデュース業務を行っている。
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