イベント
アナログゲームイベント「ゲームマーケット2019 大阪」をレポート。海外のクリエイターや出版社は日本の市場をどう見ているのか
当日はあいにくの曇り模様だったが,開場前には入場待ちの長蛇の列が。開場後も多くのブースでゲーム購入のための行列ができていた。午後になっても,会場内は多数の参加者で賑わい,さまざまなゲームを閉場ギリギリまで楽しんでいた。
神戸に拠点を置くグループSNEのブースは,話題の新作「テストプレイなんてしてないよ レガシー」を販売していた。ゲーム内で起こったことではなく,プレイヤーが普段やっていることを条件に,特殊なカードが使えるようになるという,変わったゲームになっている。
アークライトのブースでは,さまざまな新作の展示・試遊ができるようになっていた。「GUNDAM THE GAME」は,アニメ「機動戦士ガンダム」のストーリーを,ほかのプレイヤーと協力して体験できるゲームだ。
邪神ごとに用意された能力を駆使して,世界を混沌に落としていく「クトゥルフ・ウォーズ」は,拡張版「新たなる邪神」が登場。本編と同じく多数のフィギュアが入っており,さらに迫力のある対戦が楽しめる。
ゲームマーケット大阪には初参加となるディライトワークスは,「CHAINsomnia」「The Last Brave」を販売。「CHAINsomnia」の試遊コーナーは大きな盛り上りを見せていた。
「Magic The Gathering」のブースでは,無料体験会が行われていた。体験用のウェルカムデッキも無料配布されており,すぐにプレイできた。
オインクゲームズのブースでは,5月公開予定の映画「賭ケグルイ」の劇内に登場する「DUAL CLASH POKER」の実物版が販売されていた。2対2のチーム戦で行われるゲームで,より高い数字のカードを出した人が勝ち。ただし,出した数字が被るとアウト,というシンプルなルールになっている。
チーム戦なので,勝つための動きは相方に任せて,自分は相手を妨害するためにワザとバッティングを狙う,といったこともでき,シンプルながらも熱い駆け引きや心理戦が楽しめるのがポイントだ。
開場後に多くの人が押しかけたCOJIRASE LUNCH BOXの「あの子のとなり」は,学校の席替えをテーマにしたゲーム。ゲームで使うアクリル駒に,美少女イラストとアイドルの写真を使ったバージョンがあるのが面白い。
フェイクニュースも混じった平成の出来事を並べていく「平成GO」(反社会人サークル)や,警察に捕まらないように脱ぐのがテーマの「ぼくらはみんな脱いでいる」(アソビホリック)など,商業版ゲームでは見られないようなテーマのゲームも出展されていた。
また,ボードゲームだけではなく,サークルで作った謎解きゲームやパズルゲーム,TRPGのルールやサプリメントなどを出しているブースも見受けられた。
次回のゲームマーケットは,国際展示場駅前に新設された東京ビックサイト・青海展示棟にて,2019年5月25日と5月26日に開催される。東京でも,ゲームマーケットに合わせてさまざまなボードゲームイベントが開催される予定になっているので,興味のある人はチェックしておくといいだろう。
ゲームマーケット 公式サイト
海外クリエイターや出版社から見た日本のボードゲーム市場
最後に,ゲームマーケット2019 大阪に合わせて来日していた,ゲームデザイナー,翻訳家,ボードゲーム出版社のスタッフの3名に話しを聞くことができたので,その内容をお届けしよう。
◯プロフィール
ブルーノ・フェイドゥッティ氏
フランス人ゲームデザイナー。代表作「操り人形」など。普段は教師をしており,今回のゲームマーケットには学校の休みに合わせて来日したとのこと
デイビット・ドースト氏
ゲームマーケット2019 大阪にもブース出展を行った,海外のボードゲーム出版社CMONアジアの社長。「Rising Sun」「ゾンビサイド」など多数のゲームを出版している
ヤニック・ドゥプラド氏
日本在住のフランス人翻訳家。名古屋外国語大学の教員を務める傍ら,ボードゲームのルール翻訳などを手がける
4Gamer:
ゲームマーケット2019 大阪の感想をお願いします。
フェイドゥッティ氏:
ゲームマーケットに来るのは2回目ですが,小さい出版社(同人サークル)が多く,小さい箱のゲームがたくさんあるのが印象的でした。また去年と比べて,コミュニケーションゲームやパーティゲームが多く出ているように感じました。今年の人気ジャンルになっているようですね。
ドースト氏:
このイベントにはとても感銘を受けました。新しい才能を多く見ることができるので,とてもエキサイティングで楽しいですね。
ドゥプラド氏:
会場は去年よりも広いはずなのに,狭く感じるぐらい人が多かったですね。
4Gamer:
今回のゲームマーケット大阪で気になった作品を教えてください。
フェイドゥッティ氏:
オインクゲームの新作で,トークンを使って感情を表現するゲームのシステムがとても興味深かったです。また,「KOBE」(luck movies)がすごく良かったらしいですが,完売していて買えなかったのが心の残りですね。
ドースト氏:
ドイツゲーム喫茶「B-CAFE」が出していた「KANBAN Menu」と「リキュール・ザ・ゲーム」です。うちの会社で海外版を作れると嬉しいですね。
ドゥプラド氏:
オインクゲームズの「DUAL CLASH POKER」は,見た瞬間に感激しました。また,「code:box2」が,品質に比べて安いという評判を聞いたので,買ってみました。あと,東京のゲームマーケットで購入できなかった「ボブジテン」が買えたのが嬉しかったですね。
4Gamer:
日本で作られているボードゲームについて,気になるところはありますか。
フェイドゥッティ氏:
トークンが薄い紙だったりと,コンポーネントの品質がちょっと低い気がします。また日本のゲームは,1ゲームを長く楽しむような作品が少ないように思えます。あと,機械翻訳で作られた英語ルールが入っていることがありますが,それだとルールがまったく理解できないものもあり,そのあたりが気になりました。
ドースト氏:
日本と海外とでは製作スタイルがまったく違います。アートも違うし,プレイスタイルもよりシンプルです。難しすぎず,ルールがスッキリしている,というスタイルはぜひ続けてほしいですね。実際に私の会社でも,日本のゲームを4作品出版することになったので,とても嬉しいです
ドゥプラド氏:
海外はパブリッシャを通して自分のお金を使わずにゲームを作っている人が多く,あまり経済的なリスクをデザイナーが負っていません。私が日本のボードゲームの魅力の1つだと思っているのは,デザイナーが自分のお金でゲームを作って,自分の力でゲームを紹介して,自分の力でゲームを売る……と,最初から最後まで全部自分でやっているところです。
それだけに,作ったゲームへの思い入れは非常に強いと思っています。日本でゲーム出版社がもっと増えてほしいと思う一方で,同人でゲームを作っているのは日本ならではの魅力なので,これも大事にしてほしいです。
4Gamer:
最後にひと言お願いします。
フェイドゥッティ氏:
アメリカやヨーロッパのように,ボードゲームが社会全体で人気になることを期待しています。ただ,アメリカやヨーロッパは,ボードゲームバブルになっているようにも思えてて,いつかはじけてしまうという懸念も強いです。日本ではそうならないように期待しています。
ドースト氏:
日本でゲーム作りをしている人には,とにかく独創性を貫いてほしいです。それがとても重要だからです。
ドゥプラド氏:
ゲーマー同士でゲームをやるだけではなく,家族で遊ぶというのもとても大事だと思います。自分だけで楽しむのではなく,ほかの人とも楽しみをシェアすれば,ボードゲームがもっと広がっていくと思います。
4Gamer:
ありがとうございました。
- この記事のURL: