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直良有祐氏らがアートディレクションの秘訣を語った,ディライトワークスの「肉会(MEAT MEET UP) Vol.7」をレポート
肉会(MEAT MEET UP)は,「Fate/Grand Order」(iOS / Android)などを手がけるディライトワークスが定期的に開催しているイベント。ディライトワークスでの仕事に興味があるゲーム業界関係者を中心に参加者を募り,テーマに沿ったゲストを迎えたトークセッションが行われるという,“生”の声が聞ける場,キャリア相談や意見交換ができる場となっている。
今回の肉会Vol.7では,いくつもの人気RPGに関わり,現在ディライトワークスのクリエイティブオフィサーを務める直良有祐氏と,同社グラフィック部マネージャーの田口博之氏,アート部マネージャーの角 崇康氏が登壇。「アート」と「グラフィックス」の違いや,ゲームグラフィックスに対する考え方などが明かされたイベントの模様をレポートしよう。
最初に“今日のメニュー”と題されたトピックが簡単に紹介されたのち,直良氏の司会進行でトークセッションがスタートした。
最初のトークは,アートディレクションを行ううえで重要な言葉の定義についてで,今回は,「イラスト」と 「デザイン画」に焦点が当てられた。その違いについて角氏が「最初の印象としては,よく分からないなと(笑)。実際に現場でも,境目がわからない,そもそも定義がないということも少なくありません」と率直に語ると,田口氏も「ゲームデザイナーのほとんどの方が,イコールと思っているんじゃないでしょうか」と明かした。
実際,イラストとデザイン画の定義はそれぞれの現場によって違うようだが,直良氏は「イラストは,簡単に言うとユーザーの皆さんをはじめとする,対象となる人の“感情”に作用させるもの。デザイン画はチーム内で関連する人の“仕事”を決めるもの。前後の工程を意識して,誰にどう作用するかを考えるのがデザイン画です」との定義を明かした。これは自身の経歴の中で培ったもので,業界に浸透させたいとのこと。
この定義づけをハッキリとさせたところで,メインテーマであるゲームにおけるアートの必要性や,アートディレクションとは結局何であるのかという本題に入った。
ここで直良氏はアートの必要性について,「アートはゴールを明確にするために必要で,作りたいものを可視化した最終イメージの共有が一番大事」と説き,田口氏も「全部の工程において,必要なことですよね」とこれに同意。角氏は「簡単そうなことに見えて,これが一番難しいです」と語った。
また,直良氏は「ビジュアルアイデアの提案,作品の特徴づくりがアーティストの一番肝」と解説。「人が見たことないものには価値があります。既視感は多少あってもいいとは思いますが,新規性や独自性がどのぐらいあるのか。そこに重きを置いています」と語ったうえで,「アートはさまざまな人たちに対して,ファイナルビジョンを提示すること」とまとめた。
すると角氏が「新規性があるか,と直良さんはおっしゃっていましたが,0から1を生み出す際にもアートは影響するんでしょうか?」と質問。直良氏は「影響します。ここから1を10,100にしていくときに,ぶれないための根っこがアートです。それがファイナルビジョンであり,アートのコンセプトになります」と回答した。
そのコンセプト作りに立ち会うことが多い田口氏は「手を動かす量よりもはるかに,話し合うことでお互いの脳みそをのぞく時間が多いです」と現場の様子を紹介した。
これについて直良氏は,「確信があれば,まず手を動かしてもいいんです」と補足。続けて「でもそうでない場合が多いので,コンセプトシートというものを活用しています」と話し,「キャラクター」「世界」「敵」「戦い」といったものそれぞれに「テーマ」「モチーフ」「トーン」といったものを決めていくコンセプトシートを披露した。
頭の中で想像したアイデアを客観的に評価するうえで活用し,チーム内でのアイデア共有や,煮詰まったときの見返し用にも効果が高いという。
このコンセプトシートが活用されているディライトワークスでは,具体的にどのような制作体制が取られているのか。その回答は実にシンプルで,アートワークスとグラフィックワークスを分けているとのこと。
この体制になった理由は,プロジェクトの最初から最後まで活躍できる人材はなかなかおらず,人それぞれに得手不得手があると実感したからだという。そのうえで各作業の特性と配分を考え,グラデーションがあるならばはっきり分けてしまおうとなったそうだ。
その後のトークは,「直良氏のアートディレクションとは何なのか」というテーマで展開。
○(丸)を描くオーダーがあった場合,直良氏は○が描かれてさえいれば,それ以外の部分は作家の自由性に任せるのが基本だという。ただし実際の現場では,「その作品らしさを保つコンセプトやトーン,マナーの範囲内で,いろんな人の個性の発露を促し,ユーザーに届けられる形を目指している」とのこと。
さらに直良氏は「コンセプトを決めてゴールを見せる!」「デザイナーの仕事をゴールに導く!」「皆の力を最大化する!」「作品を通して世界を描き切る!」「その世界をユーザーに届ける!」という5つを心掛けて仕事にあたっているとも明かした。
トークセッション終盤の話題は,グラフィックスのコンセプト。
直良氏は「アートの仕事が,ゲーム画面上に出ることは少ない」とし,逆にグラフィックスは「ゲーム画面を通してユーザーに伝えたいこと,最上位で表現したいことを,プロジェクトで共有するためのもの」とした。そう考えることで,キャプチャの方法や必要性,表現方法に関するデザイナーの制作指針を決定できるという。
また直良氏は,「グラフィックはユーザーに貢献し,見ていただくもの。そこがしっかりしないといけない」とも語った。
最後に,ゲームアートの将来性が語られた。「アートを通すことで,作品ごとにいろんなアウトプットの可能性が生まれる。そういった部分のベースになるという点で,非常に有益であると思います。どのメディアであっても,各世界のキャラクターの根幹は一緒。そこを揺るがないものにするために,ゲームアートは大事です」と直良氏がまとめ,トークセッションは終了となった。
その後は質疑応答となり,「人が見たこともないものをイメージ化するうえで,どのようなプロセスを取っているか」という質問が投げかけられた。
これに対して直良氏は「何もひらめかないときは床と一体になる簡単なお仕事をしている感じになります(笑)。でも自分の中に何か足りないパーツがあるだけなので,そこに気づくまで刺激を受けるようにしています。NBAを見るなど,いろいろなインプットをしながら考えることもありますよ」と制作の裏側を明かした。
直良氏を中心に,ディライトワークスのアートディレクションにまつわる制作の指針や見解が明かされた今回のイベント。次回Vol.8は,ディライトワークスのクリエイティブオフィサーであり,FGO PROJECT クリエイティブプロデューサーの塩川洋介氏がスタジオヘッドを務める「DELiGHTWORKS SWALLOWTAIL Studios」のキャリア相談会として,2019年1月11日に開催予定だ。
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