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[SPIEL\'18]ソビエトの不味い飯を振る舞うカードゲーム「Soviet Kitchen」,スマホを使ったその華麗な力技の成果をレポート
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印刷2018/10/29 15:20

プレイレポート

[SPIEL'18]ソビエトの不味い飯を振る舞うカードゲーム「Soviet Kitchen」,スマホを使ったその華麗な力技の成果をレポート

 PCゲームとアナログゲームの融合という試みは昔からあるが,スマートフォンやタブレットの発達によって,その挑戦の幅は確実に広がっている。アナログゲームを実際にプレイする場に対して,これらのスマートデバイスはより持ち込みやすく,またゲームに取り込む工夫もしやすいからだ。
 SPIEL'18に出展されていたAndreas Wilde氏が手掛ける「Soviet Kitchen」もまた,アナログゲームにおいてスマートデバイスを活用するゲームだ。ユーモアにあふれたこの作品を,簡単に紹介しよう。

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スマートフォンにカードを読み込ませて,判定!


 本作は4人まで同時にプレイできる協力型ゲームだが,1人でも楽しめる。
 プレイヤーはソビエト時代の料理人となって,オーダーをもとに料理を作ることになる。ソーセージやサラダといった料理が注文されるが,ここで重要になるのは色合いだ。プレイヤーは,スマートフォンアプリが示す「明るい紫っぽい色をしたソーセージ」や「鮮やかな青色をしたサラダ」といったものを作らねばならない。

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最初に,スマートフォンアプリからオーダーが提示されるので,プレイヤーは互いに相談しながら,手札から「なるべくその色に近い色合いの材料」を選んで,秘密裏に場に出す。材料は原則として飲食に適さないものだが,小さいことを気にしてはならない
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カードをスマートフォンのカメラにかざすと,自動的にカードの情報が読み取られる。しかるにミキサーで材料が撹拌されて……
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完成である。しかしながら一致度は20%。一致度が高ければ高いほど,支払額(スコア)が高くなる

 先に述べたように食材は原則として食用ではない。むしろ食材によっては高い毒性を有している(カードの左上に毒性値が書かれている)。プレイされたカードの毒性値は,その食事を食べた人物に蓄積されていき,一定値を越えると客は死んでしまう。アバンギャルドである。

 カードの中には特殊な効果を持ったものもある。「マジックマッシュルーム」は,そのラウンドに提示されたオーダーと同じ色の食材として扱われる。まさにマジックだ。しかも毒性値が下がる。実にマジカルだ。
 「無色」として判定されるウォッカや,手札の交換を行う「社会主義者によるパーティ」といったカードもある。また放射性廃棄物のように「明らかにこれ混ぜちゃダメですよね」という食材もあって,こういった食材を使うと客は「恒久的に残る毒性値」を獲得してしまう。

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マジカルなマッシュルーム
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マジカルなマッシュルームのウォッカ漬けが炸裂し,100%オーダーが一致
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放射性廃棄物をミキサーにかけると,あまり良くない感じに発光する

食材は実に多彩。食材とは……? という気持ちにもなるが小さいことは気にしてはならない
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 何はともあれ,オーダーされた料理を全部作ると,客はその満足度(=どれくらい色が一致したか)に応じて支払いをしてくれる。プレイヤーは,より高い支払いを目指して奮闘することになる。

1皿に対して3つの食事を作り,477ルーブルを獲得
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「カードをスマホに読ませる」方法は,なかなかの力技


 さて,ゲームの内容を把握してもらったところで,「スマートフォンでカードを読み取ると言うけれど,どうやって読んでいるのだろう」というあたりが気になるはずだ。
 この点について,本作は非常にドラスティックな手段を用意している。カードの裏に,それぞれ別々のQRコードを印刷したのだ。スマートデバイスのカメラにそれを読み取らせて,取得したデータをもとにアプリが各種処理を行うという仕組みである。

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このカードの裏には,それぞれ……
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異なるQRコードが印刷されている
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カメラにQRコードをかざして,読み取らせるという仕組み

 確かに,普通の人にはQRコードを相互に見分けることはほとんど不可能だし,特定のQRコードを覚えておくというのも無理だろう。また,世の中にはQRコードが「読める」人もいると聞くが,すべてのプレイヤーがQRコードを読解可能でない限りは,ゲームの結果はそこまで大きく左右されないと思われる。

 また本作においては,「どれくらい指定の色に近いか」を判定するのはスマートデバイスである。このため,仮にオープンハンドで本作をプレイしたとしても,「これと……これで,比較的近い色になるんじゃない?」「本当に? こっちのほうがマシじゃない?」といった見解の相違は自然に発生する。
 実際,SPIEL'18の会場において本作はしばしばオープンハンドでプレイされていたが,だからといって目指す色がうまく再現されるわけでもなく,毒による死を回避できていたわけでもなかった。

それってルール違反じゃないですかね,くらいの勢いで緊密に情報交換しても,ダメなときはダメ
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 また,本作には徐々に使用カードがアンロックされていく,キャンペーンモードも存在する。そこまでやるかと思わなくもないが,ないよりはあったほうが遊びがいはある……かもしれない。
 肝心のアプリだが,Android版はすでに配信されており,iOS版も2018年12月3日にはリリースされるとのこと。果たして本作が日本に入ってくるかどうかは不明だが,iOSユーザーは今少し我慢が必要だ。

いわゆるレガシー・スタイルのカードアンロック
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 本作の「カードの裏にQRコードを印刷して,それをスマートデバイスで読み取らせる」というアイデアは,応用範囲が広いように思える。
 また,「複数のカードをもとにして,アナログで処理するとなると計算が大変(ないし非常に面倒)になる処理を,アプリで解決する」という発想もまた,ゲームの表現の幅を広げるにあたっては有効だし,ゲームバランスの調整もより容易になり得る。

 ライトかつカジュアルに楽しむのに最適な本作だが,さらなる発展や応用にも大いに期待したい。

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ブースの展示もなかなかユニーク
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ポスターもとてもファンシー

デザイナーのAndreas Wilde氏。アプリのプログラミングも氏が担当したそうだ
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