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[CEDEC 2018]位置情報ゲームの開発者に朗報。1万MAUまで無料で使える新サービスが紹介されたセッションをレポート
「Ingress」(iOS / Android)や「Pokémon GO」(iOS / Android)のヒット以降,位置情報を用いたARゲームへの注目が高まっている。こうしたマップゲーム(本講演では,“実際の地図と位置情報を用いたスマートフォンゲームで,実際の道路・建物が3D表示されているもの”)を開発するに当たっては,一般的なスマートフォンゲームより多くの工数がかかると広井氏は指摘する。
多くのマップゲームでは,現実の地図がそのままの形で使われるのではなく,ゲームの世界観に合わせた建物が建っている。こうした画面を実現するには,普通にゲームのマップを作るよりも手間がかかるということだ。
まずは対象エリアのマップデータと,ゲームで用いるPOI(Point Of Interestの略で,本講演では“実際の地図上のポイントと,そこが持つ情報”を示す)を収集。続いてこれらのデータをゲーム内で使える形に変換し,地形や建物を3Dモデル化してゲーム独自のデザインを適用する必要がある。
つまり,普通ならゲームの世界観に合わせたデザインとグラフィックス,マップを作成したところで仕事は終わるのだが,マップゲームの場合は,あらかじめ現実世界のマップデータを取得し,3Dモデル化する下準備が必要になるというわけだ。ゲーム向けのマップサービスを使うこともできるが,初期費用や従量課金などの負担が大きくなるという。
こうした手間を軽減するのが,ドリコムが新たにサービスするARアプリ開発プラットフォーム「AROW」だ。ゲーム用のマップデータを提供するサービスと,マップデータを基に建物や道路をUnityの3Dモデルで生成する機能,そして建物をゲームの世界観に合わせた3Dモデルに置換したり,特定の建物にゲーム的な機能を持たせたりといった機能などが提供されるという。個人デベロッパでも気軽に使えるよう,1万MAU程度までは無料にする予定とのことだ。
AROWのマップはオープンソースのマップデータを用いており,建物の高さなどの足りない情報は衛星写真からAIに推測させて作成。完成したマップデータはAROWのサーバーから利用者に提供される。実際にゲームを運用する段階では,マップデータをデベロッパが用意したサーバーに格納する構成が検討されている。これはAROWサーバーへのアクセス集中を避けるためということだ。
AROWのデモンストレーションも行われ,現実の地図データから3Dモデルを生成し,これにテクスチャを貼り付けたり,あらかじめ用意した3Dモデルに置換したりといったことが紹介された。リアルっぽいテクスチャを用意すれば現実味のある街並みになるし,ファンタジー風のモデルと置換すれば“現実と同じ地形ではあるが,雰囲気はまったく異なる”という不思議な光景も作れる。置換のレベルはさまざまで,特定の建物や,ある地域の建物だけを任意の3Dモデルにすることも可能。こうした置換にPOIを組み合わせることで“マップ内にあるコンビニだけを,ショップ機能を持つ特殊な建物にする”といった活用もできるという。
AROWはまずオープンテスト版として提供され,ユーザーの意見を取り入れつつ改良を進める予定だという。また,AROWの機能を使ったサンプルゲーム「アニマルランランド」iOSとAndroid向けに今秋リリース予定だ。現実の街が遊園地風になり,その中を走り回るランゲームになるという。ほかにも,巨大な玉を転がして実際の街を破壊する「ほーるもん」も企画中とのこと。
最後に櫻井氏は「公式サイトで,オープンテスト版の登録を受け付けていますので,ぜひご登録いただければと思います。個人から法人まで,さまざまな新しいゲーム体験を生み出すサポートができればと考えています」と登録を呼びかけ,講演を締めくくった。
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