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宗教改革500周年にちなみ,キリスト教関連のボードゲームがエッセンに集結。ヨーロッパゲームコレクター協会の展示をレポート
この動きは,ドイツ・エッセンで開催されたボードゲーム見本市SPIEL’17の会場でも見られた。ドイツのマールブルクに拠点を置くヨーロッパゲームコレクター協会(European Society of Game-Collectors)が,「宗教改革500周年 - ゲームの中の宗教」と題した企画展を行ったのだ。本稿では,文化史的な観点からも価値の高いこの展示を,写真を中心に紹介しよう。
ヨーロッパゲームコレクター協会公式サイト(ドイツ語)
出展されていた作品を見ても,カトリックやプロテスタントなどの各宗派がクラシックなものから最新ゲームまで,実に多彩な作品と関わってきたことがよく分かる。
それらの多くは,キリスト教の教義や聖書のエピソードなどを「遊びながら学んでもらう」ためのものだが,現代社会で教会が実施している世界各地への伝道や人道支援などのキャンペーンに対する理解を深めるための,いわば広告戦略の一環になっているものも少なからず存在しているのが面白い。
なお,解説をしてくれたRühle氏によれば,これらのゲームの発売には,各宗派が抱えるキリスト教系の出版社が大きな役割を果たしているとのことだった。
また,宗教を取り扱ったゲームとしては,歴史上の宗教対立をテーマとした作品も忘れるわけにはいかない。16〜17世紀の宗教戦争は,ヨーロッパの中では悲惨な歴史として捉えられていることから,今回の企画展でも大きく取り上げられなかったが,興味深いストラテジーゲームが多数生まれているのも事実だ。
最後に,展示されていたのはキリスト教関連のゲームのみだったが,キリスト教の信者でない筆者でも,宗教とゲームとの「互恵関係」を知ることができ,十分楽しめる内容だったことも付け加えておきたい。
日本でも双六の成立に仏教が大きな役割を果たしたとされるように,共に日常生活に密着する要素である宗教とゲームは,洋の東西を問わず深くつながっているのだろう。今回の企画展を回って,そんなことも考えさせられた。
ヨーロッパゲームコレクター協会公式サイト(ドイツ語)
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