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「Lucky’s Tale」を生んだPlayfulが,新たなプロジェクト「Wonderland: Your Home in VR」の映像を公開
登壇したのは,PlayfulのCEOであるPaul Bettner(ポール・ベトナー)氏と,リードデザイナーのDan Hurd(ダン・ハード)氏の2人。
当初はこの2人を含めた4人(実際に開発しているのは3人)しかいなかったというPlayfulが「Oculus VRという会社がVRゲームを作る開発チームを探している」と耳にしたときにまず行ったことは,Unityを使ってアイデアを100種,そしてプロトタイプを30種も製作することだった。
実際Playfulは,Unityのライブラリからアセットを借りて既存の人気作品をVR向けにアレンジする,という手法で「Katamari」や「Super Capsule Brothers」といったデモを作っていった。
「Super Capsule Brothers」は,その名前からも推測できるように,あのスーパーな兄弟が主人公のアクションゲームをもとにしたもの。これはプログラマーの1人が1人称視点ではなく,カメラが横に浮かんでいるスタイルで試作したものに好感を覚えたため,それをOculus VR側に提出した結果,ゲーム開発のサポートが決まったのだという。そしてこれが「Lucky’s Tale」の原型となったそうだ。
ちなみに,2014年に初めてデモを公開したときも,Unityのライブラリに無料で公開されていたアセットを流用したままだったという。とにかくスピード感を重視した開発だったようだ。
さて,そうやってプロトタイプを手早く作り,VRの特性に慣れることの重要性が語られたところで,ベトナー氏は「プロトタイプつながりで」と,これまでに外部では見せたことのないというデモ「Wonderland: Your Home in VR」(以下,Wonderland)を披露した。
ベトナー氏は,作家Neal Stephenson(ニール・ステファンソン)氏が著作の「Snow Crash」で提唱した「メタバース」というオンライン世界に言及し,「それが5年後,10年後,20年後に実現できるかどうかは分からないが,もし本当にメタバースが我々の生活の一部となると信じているなら,そこへの道筋を作ることに参加したい」という意思でこのデモを開発したと明かした。
Wonderlandは,4人の女の子が湖畔の別荘に集まり,カラオケや釣り,キャンプファイアーなどを楽しむという内容。キャラクターは全身で表現されており,バトナ―氏は「全身のトラッキング機能が開発されていることが前提です」と紹介していた。
また,そのデモ映像の中でユニークだったのが,プレイヤーが1人称視点のままで,テレポートなどのギミックを使うことなく,さまざまな場所に移動できること。走るときのように,両手に持ったコントローラを前後に振って移動する仕様になっていたようだが,この“手のプレゼンス”により「驚くほどVR酔いしなくなった」とハード氏は語っていた。
腕を振るスピードに比べて,移動のスピードはゆったりだったが,このあたりもVR酔いを軽減するためかもしれない。集まった開発者たちも,この新しいアプローチには興味津々といったところだった。
Wonderlandはテクノロジーデモとして作られているものであり,これがPlayfulの次のゲーム作品としてリリースされる可能性は低そうだ。しかし,Noah Falstein(ノア・ファルシュタイン)氏も提言したような「実験の失敗を恐れない姿勢」(関連記事)は,勢いのあるVR市場の独立系デベロッパらしいものであり,今後の彼らに期待したいところだ。
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