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    印刷2013/08/23 18:56

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    [CEDEC 2013]「ゲームバランス」をあえて崩す「バランスブレイカー」というシステムとは?

     2013年8月22日,神奈川県のパシフィコ横浜にて開催されている「CEDEC 2013」の2日目に, モバイル&ゲームスタジオの取締役であり,「ゼビウス」や「ドルアーガの塔」を手がけたクリエイター遠藤雅伸氏を講師とした,「すごろくで体感!もう一度プレイする気にさせる『バランスブレイカー』というゲームシステム」と題されたワークショップが行われた。

    モバイル&ゲームスタジオの取締役である遠藤雅伸氏
    画像集#002のサムネイル/[CEDEC 2013]「ゲームバランス」をあえて崩す「バランスブレイカー」というシステムとは?


    「バランスブレイカー」とはモチベーションを保つ仕組み


    ワークショップは多くの立ち見が出るほどの盛況
    画像集#003のサムネイル/[CEDEC 2013]「ゲームバランス」をあえて崩す「バランスブレイカー」というシステムとは?
     ゲームに関する議論が交わされる際,「ゲームバランス」という単語が用いられることが多い。例えば,多人数で遊ぶゲームの場合,「一方的に決着が付くことなく一進一退を繰り返す」ようなものが「ゲームバランスがいい」と評される傾向にある。
     「ゲームバランスのいい」ゲームが喜ばれるのは読者諸兄もご存じのとおりだが,遠藤氏いわく,最近はゲームデザインに「バランスブレイカー」という仕組みを組み込むことが増えているという。

     バランスブレイカーとはふつう,「一方的な勝利を可能とし,プレイ時間やゲームの寿命を著しく縮めるような戦法やアイテム」などに対して,ときおり使われる表現だ。しかし,このワークショップで扱うバランスブレイカーとは,ゲームデザインにおける仕組みのこと。簡単に言えば,「一進一退のゲームバランスを意図的に崩すことにより,決着を早める」ための仕組みで,例えば「運が良ければいきなり勝てる」ようなシステムは,ここでいうところのバランスブレイカーだ。

     バランスブレイカーには,「ゲーム時間を短縮する」「負けたプレイヤーの敗北感を軽減する」といった働きがあり,いずれも再びプレイするためのモチベーションを保つ効果があるという。その一方,ゲームバランスを大事にするクリエイターには,「ゲームをつまらなくするものである」と捉えられがちだ。だからこそ,実際にバランスブレイカーを体験してみよう,というのがこのワークショップのコンセプトである。


    マイナスの要素をプラスに変える,初心者に興味を持たせるデザインとは


     今回のワークショップは,ゲームデザイン上の仕組みとしての「バランスブレイカー」の働きを体感するため,マス目が空白で止まったときに何が起こるかを書き込める「書き込み式ループ双六」で遊ぶという内容になる。受講者達は5人ずつテーブルに分かれ,それぞれの双六を作成・プレイしていった。

    「書き込み式ループ双六」はマス目が空白になっており,自由に指示を書き込むことができる。5人ひと組がチームとなり,遠藤氏の指示に従ってそれぞれの双六を作成しつつプレイするという流れで進行した
    画像集#004のサムネイル/[CEDEC 2013]「ゲームバランス」をあえて崩す「バランスブレイカー」というシステムとは?

     マス目がすべて空白の「書き込み式ループ双六」は,「一周してゴールへ着くごとに1ポイントが加算され,3ポイントに達したプレイヤーが勝ち抜けする」というルールの大枠だけが決まっている状態だ。遠藤氏は,マス目に「そこに止まると何が起こるか」を自由に書き込んだ上で双六をスタートするように指示した。

    第1回目の「書き込み式ループ双六」。話し合いの結果に伴い,マス目に書かれた指示は適宜変更されていった
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     初めてのチャレンジであるせいか,「一回休み」「止まるとポイントを失う」といったマイナスの指示が書き込まれたマス目が多かったようで,遠藤氏は「こうしたマイナスの要素はビギナーほど辛いと感じる」と指摘した。

     ここで遠藤氏から参加者に伝授されたのが,「マイナス要素をプラスに変える」という秘訣だ。例えば「ここに止まるとポイントを失う」というマイナスの指示も,「ここに止まった以外の人がポイントを得る」とすれば,得られる効果は同じながらもゲームへのモチベーションをアップさせられるプラスの指示となる。人は他人の身に何か(この場合だとマスに止まった誰かのポイントが減る)が起こってもあまり興味を持てないが,自分の身に起こること(誰かがマスに止まることで自分のポイントが増える)なら興味が湧くのだ,と遠藤氏は語る。プラスの指示というのは単なる言い換えのテクニックではなく,ゲームへの集中力もアップさせるのだ。
     こうした点を踏まえ,遠藤氏はワークショップの参加者に「すべての指示をプラスのものとし,ややこしい指示をなくし,短時間で終わるような双六」を作るように指示した。


    逆転要素やシーソーゲームはリピートにつながらない


     2回目の「書き込み式ループ双六」には,バラエティ豊かなプラスの指示が書き込まれていった。「ゴールへワープする」「最下位の人に2ポイント加算する」「全員が3マス進む」「無条件で1ポイントもらう」「トップの人のところへ飛ぶ」などかなり強力な効果ばかり。プラスの指示ばかりでゲームが早く終わる傾向にあるため,いろいろなテーブルで「ゲームを早く終わらせすぎないためにはどういった指示がいいか」といった議論が行われた。

    第2回目の「書き込み式ループ双六」の様子。遠藤氏の指示どおり,マス目の指示はプラスのものとなり,短時間で終わるような内容とされた
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     結果として,逆転要素を導入したり,一進一退の展開に誘導したりする指示が多くなったようだ。しかし,逆転要素やシーソーゲームはプレイヤーを疲労させ,もう一度遊ぼうという気が無くなってしまうものである,と遠藤氏は指摘する。
     「面白いゲームなら徹夜だってできるはずですが,こうした(逆転要素やシーソーゲームがある)双六をもう一度遊ぶとなると“もう一度やるんですか?”という反応が返ってきます。つまり,“面白くない”んです」(遠藤氏)


    バランスをあえて崩す,バランスブレイカーを導入した双六デザイン


     そうして遠藤氏から出された指示が,バランスブレイカーを導入したデザインだ。

     「誰かが有利になった場合,このモメンタム(勢い)を一気に突き抜けさせるような」(遠藤氏)要素を入れることにより,ゲームバランス重視ではなくなるものの,「もう一度ゲームを遊ぼう」という気持ちはシーソーゲームのときよりも,遙かに強くなると遠藤氏は語る。

     極端な話,「あるマスに止まった場合,もう一度サイコロを振って1の目が出た場合は無条件で勝ち」という位でもいいし,「3ポイント集めれば勝ち」というルール自体を変えてしまってもいいという。

     「変なことが入っていたほうが実は面白いんです。企画会議に提出した時とき,みんなから苦笑されるような仕様がヒットの要因になることも起こりえます。もしもダメだった場合は外してしまって次の要素を考えればいいんですから。ゲームに詳しい人が“うわっ”となるようなアイデアを入れていきましょう」(遠藤氏)

     こうしてスタートした3回目の「書き込み式ループ双六」には,「このマスに止まっているとき,遠藤さんが見ていれば勝ち」「持っているポイントが2倍に」「かけているメガネをほかの人に渡す」など,これまでにも増して独創的なアイデアが書き込まれていく。中には「あえて空白のマスを残しておき,そこに止まった人がマスの指示を考える」と今回のワークショップ自体をメタ視したようなルールを設定していたテーブルもあったのだから面白い。それぞれのテーブルで,これまでよりも盛り上がっているように感じられた。

    第3回目,バランスブレイカーを導入した「書き込み式ループ双六」。これまでにも増してユニークなアイデアが生まれた
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    第3回目の双六ではどのテーブルも大きな盛り上がりを見せていた
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     さまざまなアイデアが生まれたワークショップも終了の時間。最後に遠藤氏は「バカゲーのような状態になると面白さが出てくるとか,あり得ないような要素を入れてみると意外に面白いといったことがあったと思います。“面白さは頭で考えている以上に変なところにある”という点と,“あっという間にカタがついたほうが次をやる気になる”というモチベーションコントロールを分かっていただければ良かったと思います」と,ワークショップを締めくくった。

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     今後,スマホ用のゲームアプリ市場が拡大していく中において,大切になるのは「ゲーム初心者が楽しめ,短時間で決着が付き,繰り返しプレイしたくなる」ようなゲームデザインだ。今回紹介された「バランスブレイカー」という仕組みは,現代という時代に即したものであるように感じられた。このワークショップを受講したクリエイターや,クリエイターを志す学生が,どのような作品を生み出していくのか期待したい。

    あるテーブルの第1回目~3回目の双六。回を追うごとにマス目の指示がユニークなものになっているのが分かるだろう
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