E3では毎年,レトロゲームを扱ったコーナーが用意されるが,今回もE3会場となったロサンゼルスコンベンションセンターのサウスホールの一角に,多くのレトロゲームを展示しているブースがあった。
「Videogame History Museum」と銘打たれたこのブースは,北米の数人の有志によって運営される団体が,ビデオゲームに関係するさまざまな製品を保存する活動を広く知らしめるための企画として用意されたものである。同ブースでは,主催者のコレクションの一部である,レトロな家庭用ゲームやアーケードゲームの実機を来場者に開放。さらに関連グッズなども展示されていた。
華やかなメーカーブースとは対照的な薄暗い照明。それがレトロな雰囲気を逆に盛り立てており,昔のゲームセンター的な空気となっていた |
このコーナーについては,2年前のE3 2011の記事でも
詳しくお伝えしているが,今年は2011年のものとはまた違った趣向の展示が行われていた。そんな今回のブースの様子や展示物などを,写真を基に紹介していこう。
今年のVideogame History Museumは,アーケードゲームの筐体を中心に展示が行われていた。展示されていたのは,アップライト型と呼ばれる北米では一般的なアーケードゲーム用の筐体で,ゲームの黎明期から現在に至るまで,広く使用されているものだ。
会場には1970〜1980年代のものを中心に,20台以上のアップライト筐体が設置され,来場者は自由にプレイすることができた。
ブースの中心部にいくつもの懐かしい筐体が置かれている。通りすがりに遊んでいく来場者も多かった |
「スーパーストリートファイターII」の筐体に群がって,ワイワイと対戦プレイに興じる来場者の一行。この周辺だけ,昔の“ゲーセン”の空気が漂っていたようだった |
“ナス型”のレバーは北米のアーケードゲームで使用されるジョイスティックとしてお馴染み。ここに展示されていたもののほとんどがナス型だった |
名作や人気シリーズの作品をピックアップ
アップライト筐体は,画面周りやパネルなどの見た目が楽しいものが多い。こちらはAtariの「Centipede」と,任天堂の「Donkey Kong」だ
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コナミ(現コナミデジタルエンタテインメント)が開発し,セガからリリースされた「Frogger」(1981年)。主人公のカエルを操作して家に帰すという単純なルールだが,現在もリメイクが作られるほど人気が高い。筐体に描かれたタイヤ痕がインパクトあり |
任天堂の人気タイトル「Donkey Kong」(1981年)。ドンキーとマリオのデビュー作で,BGMや効果音が懐かしい。展示されていた筐体は,ボタン操作によって「Donkey Kong Jr.」(1982年)と切り替え可能となっていた |
Atariの「Centipede」(1981年)。画面の上から襲ってくるムカデを撃退するというシューティングゲームである。トラックボールで操作するゲームで,筐体サイドのデザインがなかなかに魅力的だ |
データイーストの「Night Slashers」(1993年)。3人協力プレイが可能なベルトアクションタイプの格闘ゲームで,プレイヤーはゾンビを始めとするモンスター達と戦う。重厚なサウンドや効果音が今も耳に残る,隠れた名作だ |
セイブ開発が手がけた「Raiden Fighters」(1997年)。「雷電」から派生したシューティングゲームのシリーズで,国内外で高く評価され,近年はXbox 360やスマートフォンに移植されている。余談だが,E3会期中に足を運んだサンタモニカのゲームコーナーでは現役で稼働していた |
Midwayの 「Mortal Kombat」(1992年)。キツめのゴア表現が人気の,実写取り込み映像を駆使した対戦格闘の元祖。北米では2011年に PS3および Xbox 360に向けた新作も発売されるほどの人気シリーズだ。とりあえず,会場で血なまぐさいフィニッシュムーブ「究極神拳」(Fatality)を出している人は見かけなかった |
Midwayの「Ms. Pac-Man」(1981年)。“女の子”のパックマンが主人公で,「パックマン」のクローンゲームとしてリリースされたが,後にナムコ(現バンダイナムコゲームス)の公式タイトルとなった経緯を持つ。会場では小さめの筐体で出展されていた |
TADの「Blood Bros.」(1990年)。2人同時プレイ可能な西部劇アクションシューティング。奥行きが表現された3D画面で,現れる敵を次々と倒していく。1Pがガンマン,2Pがネイティブアメリカンという設定だ |
Atariの「Asteroids」(1979年)。出展作品の中では最も古いと思われるゲームである。三角形の自機を操作して,画面内の隕石を破壊していく。自機の前進や旋回などの操作もすべてボタンにアサインされ,今遊ぶとかなり難しい |
セガの「Dynamite Baseball」(1996年)。セガのMODEL2基板でリリースされた,アーケードでポリゴンによるゲームが隆盛を誇った頃の野球ゲーム。メッセージや選手名は日本語,筐体はアメリカ仕様という珍品だ。画面に表示された槙原や湯舟の名前が懐かしすぎる |
Atariの「RoadBlasters」(1987年)。マシンガンやミサイルを装備した車で,敵車を破壊しながら爆走するアクションレースゲーム。「ナイトライダー」を思わせる,操縦桿型のハンドルでプレイするのだ |
セガの「Virtua Cop 2」(1995年)。アーケードからセガサターンにも移植された,3Dガンシューティングの傑作で,カーチェイスのシーンなどもある。出展されていた筐体は,銃が劇中に登場する「ガーディアン」ではない仕様のものだった |
コナミの「Lethal Enforcers II: The Western」(1994年)。北米版サブタイトルは「Gun Fighters」。実写を取り込んだ映像が映し出されるという,当時としてはリアルな演出がほどこされたガンシューティングシリーズで,この“2”は西部劇がモチーフになっている |
Incredible Technologiesの「Silver Strike Bowling '09」(2009年)。トラックボールを使ったボウリングゲーム。出展作品の中でも新しい部類の作品だが,ゲーム内容と画面がシンプルなため,このブースによく馴染んでいた |
コナミの「グリーンベレー」(1985年)。北米版タイトルは「Rush'n Attack」。特殊部隊員の主人公がナイフ1本を手に,敵基地へと潜入する。冷戦時代という世界設定やミリタリーのテイストは,初代「メタルギア」に通じるものがある |
Midwayの「Motal Kombat II」(1993年)。前作より動きがなめらかになったほか,技も増えている。菅笠がトレードマークのライデン(キャラクターの一人)をあしらった筐体がCool! |
データイーストの「ハンバーガー」(1982年)。コックの主人公が巨大なハンバーガーを作るアクションゲームで,北米タイトルの「Burger Time」のほうが知名度は高いかもしれない。ゲームボーイで発売されたリメイク版が3DSのバーチャルコンソールでプレイ可能だ |
Atariの「Gauntlet II」(1986年)。4人プレイが楽しい「ガントレット」の続編で,能力の違う4種類の職業のキャラクターを選んで,広大な迷路を進んでいくというタイトル。筐体のデザインが秀逸で,展示された作品の中でもとくに存在感があった |
任天堂の「Mario Bros.」(1983)。ご存じ,ゲーム界で世界一有名な兄弟の出世作で,土管から現れるカメ・カニ・ハエを床下から叩いて倒すアクションゲーム。協力したり邪魔をしたりと,2人プレイを楽しむ人が多かった |
2011年の展示では見られなかったゲーム機やそのほかの展示物
1982年に発売されたコモドールのホームコンピュータ「Commodore 64」。名前の64は,同機が64キロバイトのRAMを搭載していることに由来する。北米では1980年代に一大市場を築いたハードで,多くの人気ゲームがリリースされ,1994年まで生産されていた |
Tele-Gamesの「Motocross Sports Center IV」。1977年に発売されたゲーム機で,本体のハンドルを使ったバイクゲームなどを楽しめる。20種類の内蔵ゲームのうちバイクゲームは4種類しかなく,あとはよくあるテニスゲームでお茶を濁しているのポイント。おおらかな時代である |
Atari 2600向に向けたソフトのコピーキット2種類。その当時からこの手の商品が存在していたというのが興味深い。オリジナルのカートリッジを差し込んで,ボタン一つで,ブランクのカートリッジにコピーできるそうだ |
左はPS2の2001年の累計出荷2000万台記念の限定モデル「ヨーロピアン・オートモービル・カラーコレクション」で,日本では1色につき666台限定で,1台5万円で販売された。右は炭酸飲料マウンテンデューの限定カラーで,2004年にドリンクのポイント550点+99ドルで購入できたというもの |
「Game Boy PoP Kiosk」なる,1990年代頃のゲームボーイにおける店頭デモンストレーション機。ゲームボーイポケットのラベルが見えることから,1996年頃のハードだろうか。ゴツい外観がゲームボーイポケットのコンパクトさと相反しているのが面白い |
Activisionの開発機材。「Pitfall II」や「Night Trap」などを手がけたゲームクリエイターのデビッド・クレーン氏から,本ブースの主催団体へと寄付されたものだそうだ。本体&キーボード一体型のデザインが美しい |
「PGP-1」なるAtari 2600用機器で,いわゆるチートを行うための装置のようだ。Answer Softwareという会社から発売されていた。世界に3台しか現存しないそうだが,その価値はいかほどのものなのか |
大ヒットしたAtari 2600の後継機として企画された「Atari 2700」。ワイヤレスコントローラを備えていたが,それに使用する電波がテレビなどの機器に干渉したため,発売が見送られてしまった。その後Atari 2600向けにワイヤレスコントローラが発売され,本体デザインはAtari 5200に引き継がれた |
Atariの子会社Kee Gamesの「Kee Games VCS(Atari 2600)」。ビビッドなカラーが特徴の6個スイッチがあるモデルだ |
1984年に発売されたAtari 7800のクリアカラーバージョン。カラーバリエーションではなく,ハードの開発段階でのプロトタイプだそうだが,これはこれで味がある |
セガの最後のハードとなったドリームキャストの開発機材。SCSIケーブルを使って,Windows機器に接続して使用する。その入手経路が気になるが,検索エンジンで探してみると,国内でも所有している人はいるようだ |
後に「スターフォックス64」へと開発がシフトし,発売中止となってしまった「スターフォックス2」。これは流出したデータを使って有志が作りあげた,SNES(北米版スーパーファミコン)用のアンオフィシャルソフトのようだ |
携帯ゲーム機の各種カラーバリエーションなども展示されていた。Atari「リンクス」のカラーバリエーションは,日本人ならあまり馴染みがないはずだ
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ゲームが玩具としてカテゴライズされていた頃の「LSIゲーム」や「電子ゲーム」と呼ばれていた製品の数々。展示物の何割かは日本製で,お馴染みのキャラクターが登場する製品もある
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来場者が手に取れる場所にさりげなく展示されていたファイルは,なんとゲームの企画書だった。タイトルは「TANK」だが,年代が1976年となっているため,Atari 2600の「COMBAT」の企画書のようだ(アーケード版TANKは1974年リリース)。ファイルには巨大な8インチフロッピーディスクも入っていた
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展示された数々のゲームグッズの中には,映画「シュガー・ラッシュ」でもやたら目立っていた「Q*bert」のものもたくさん用意されていた
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膨大な数のワッペンや缶バッジ。一つ一つだと大したことはないアイテムかもしれないが,コレクションとして揃うとやはり壮観だ。最近はこの手のグッズを入手する機会も少なくなった
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なぜか犬小屋の形をした「Pong」の筐体。調べてみると,小児科の待合室などに置くための子供向けのゲーム機のようで,無料でプレイできる。よく見ると,ポンの生みの親であるノーラン・ブッシュネル氏とアラン・アルコーン氏のサインが入っていた! |