連載
秋山殿,マジ天使! 「買い物Surfer リターンズ!」第1回は誰でも手軽に作れるカラーレジンキットの組み立てにチャレンジ(「買い物Surfer」第5回)
そして今,この地に小さな箱を大事そうに抱え,また一人の与太者がやって来た。そう,買い物の荒野をさすらう,孤高のフィギュアマイスターことgingerである。長く過酷な旅を経てきたのだろう。靴底は擦り切れ,買った当時は1着980円(税込)はしたであろう自慢の一張羅も風雨にさらされ,すっかり色あせている。だが,身なりこそみすぼらしいものの,その瞳には強い光があった。
法の目をかいくぐり,混沌が支配するこの地に命がけの逃避行を続けてきた,この怪人物を支えているものは,仕事にかこつけて,その小さな箱の中身――2013年3月2日にボークスから発売されたカラーレジンキット,「キャラグミン 秋山優花里」を組み立ててしまおうという鋼の意志にほかならない。
だが,いくらやったもの勝ちの無法地帯とはいえ,これは危険極まりない任務である。明らかに趣味に走りすぎだ。エライ人に見つかって怒られる前に,「買い物Surfer リターンズ!」第1回として速やかに掲載してしまわなければ……(編注:「買い物Surfer」第5回です)。
ボークス「キャラグミン 秋山優花里」
マジで天使な秋山殿が出来上がるまで
というわけで,もうお分かりのとおり,今回筆者が買ってきたのはボークスから発売中のカラーレジンキット「キャラグミン 秋山優花里」。カラーレジンキットとは,色分けされたパーツを組み立てていくだけで,ほぼ設定どおりのフィギュアが完成するという組み立てキットのことだ。中でも,ボークスが展開するキャラグミンシリーズはパーツ数が少ないものが多く,ガレージキットの経験がない初心者でも比較的手軽に楽しめる。
今回紹介するキャラグミン 秋山優花里のパーツ数は22とかなり少なく,ちょっとしたプラモデルを作るよりも,工作そのものは簡単だ。2月10日に開催された「ワンダーフェスティバル2013[冬]」のボークスブースで先行販売されているので,すでに完成させている人もいるだろう。筆者も一般販売を機にこのキットを入手してきたので,さっそく作ってみようと思う。よーし,がんばるぞ。
まずは,ゲートやバリと呼ばれる,パーツの余分な部分を綺麗にしていこう。よく切れる,模型用のカッターかデザインナイフ,ニッパーを用意し,不要部分をカット。その後,紙やすりやスポンジやすりで表面を綺麗に整えていく。
さらに,型の合わせ目の部分にできるパーティングラインと呼ばれる線も,紙やすりなどで丁寧に消しておこう。これを全パーツぶん終えたら,一度,接着剤を付けずにパーツを仮組みし,パーツの合いを確認。もし,うまくパーツがはまらない場合は無理に曲げたりせず,パーツを熱めのお湯につけて柔らかくしたあと,指でゆっくり形を整えよう。
こんな風にゲートやバリが残っているので…… |
ゲートは根元を少し残して,ニッパーで切断 |
残った部分をカッターなどで少しずつ削って…… |
紙やすりなどで表面を慣らしたら一丁上がり |
黒く色をつけた部分がパーティングライン |
これも紙やすりなどで丁寧に消しておこう |
さて次は,パーツの塗装,組み立てに移る前に,パーツの洗浄を行っておこう。パーツの表面には,シリコン型から外れやすくするための離型剤という油が付着しており,これが残っていると塗料が弾かれてしまう。パーツの洗浄には,中性洗剤で根気よく洗い落とすといった方法もあるが,やはり専用の離型剤落としを使うのが一番手っ取り早い。
筆者のおすすめは造形村の「キャストクリン」という製品で,パーツの表面にシュッと吹きつけ,あとはいらない紙の上などにパーツを並べて乾かすだけなので,非常に簡単かつ便利だ。ただし,キャストクリンには有機溶剤が含まれているので,使用時は必ず換気のいい場所で作業しよう。
造形村の「キャストクリン」。あっという間に乾くので,ものすごく便利。これはいいものだ |
こんな風に適当なポリ容器に入れて吹き付ければオーケー。換気には十分注意しよう |
ファレホの塗料は容器の先端がノズル状になっており,少量取り出すのに便利。水性なので,乾く前なら水で洗い落とせるのもありがたい |
使用する塗料は以下の4色。さらに,塗料のうすめ液として,ファレホの「エアブラシクリーナー」も用意した。名前は“エアブラシクリーナー”だが,エアブラシ専用というわけではなく,筆の洗浄や,筆塗り時の希釈に使えるので,塗料とセットで購入しておこう。
・セーラー服の襟と袖口――ファレホ ゲームカラー「ダークグリーン」
・セーラー服の胸元――ファレホ ゲームカラー「デッドホワイト」
・靴底――ファレホ ゲームカラー「カオスブラック」
・口――ファレホ モデルカラー「サーモンローズ」
襟のラインを気合いで筆塗り。ちょっとはみ出したり,塗りむらになったりしているが,あとで修正するので気にしない。シャープペンの先に貼り付けて持ち手にしている。手抜きじゃなくてエコです |
できたー! 今回は左の写真にぼんやり写っている手持ちの造形村「スペシャルブラシ 06 緑」1本で塗った。これ1本で十分こなせたが,もう一回り細い筆があっても良かったかもしれない |
部分塗装が終わったら,完全に塗料を乾燥させてから顔パーツに眉と瞳のデカールを貼る。デカールは二組あるが片方は予備なので,使用するぶんだけハサミで小さく切りだしておこう。
ちなみに,デカールには眉と瞳のほかに,ほっぺたの斜線も用意されているが,今回は使用しない。デカールは角度によって光って見えるので,目立つ部分にはできるだけ使わずに済ませたいのだ。その代わり,あとでほっぺにチークを乗せることにする。ところで,この“ほっぺたの斜線”って,正式名称はなんて言うんでしょうかね?
デカール貼りにはピンセットが必需品。写真のものは造形村の「Vピンセット(曲)」。熟練の職人が1本ずつステンレスを磨き上げた一品だ。デカールの位置決めには,先を湿らせた綿棒を使う |
眉と瞳を貼り終えたところ。秋山殿は思ったより目と目の間が広いので,位置決めに迷ったら前髪パーツを被せてみるといいだろう。完全に位置が決まる前にデカールが乾かないように注意しよう |
さて,ここまでできたら,あとはもうこのまま組み立ててもほぼ完成だが,影になる部分にシャドーと墨入れを行うことで,完成時の見栄えを良くすることができる。今回はお手軽に,シャドーにはタミヤのウェザリングマスター,墨入れにはGSIクレオスのリアルタッチマーカーを使って仕上げてみた。この時,先ほどデカールを使わなかったほっぺに,ウェザリングマスターでチークを乗せてあげた。
どの部分に何を使ったかの内訳は,以下のとおりだ。
・髪――ウェザリングマスター〈Gセット〉「キャラメル」「マロン」で全体の調子を整え,ウェザリングマスター〈Dセット〉「オイル」でシャドー
・顔――ウェザリングマスター〈Hセット〉「ピーチ」で頬にチーク,「ペールオレンジ」で顔の輪郭と耳にシャドー
・セーラー服――ウェザリングマスター〈Dセット〉「青焼け」でシャドー
・スカート――リアルタッチマーカー「リアルタッチグリーン1」で墨入れ,ウェザリングマスター〈Eセット〉「グリーン」でシャドー
・手足および首元――ウェザリングマスター〈Hセット〉「ペールオレンジ」でシャドー
・靴――リアルタッチマーカー「リアルタッチブラウン1」で墨入れ
なぜかと言えば,このキットには台座が付属しないため,自立させようと思ったら足の裏に軸打ちして,自分で買ってきた台座に固定しないといけないからだ。せっかく完成したフィギュアを寝かせて楽しむ人はいないだろうから,この作業はほぼ必須。足の裏に軸打ちする際には上半身が邪魔になるので,接着を後回しにしたわけだ。
説明書には,軸に1mmの真鍮線を使うとあるが,そうめったに使わないし,大量に必要なものでもないので,そこらへんにある適当な太さのスチール製クリップを延ばして使うことにする。筆者はいつもこの手を使っているが,実際これで十分だ。また,フィギュアの台座にはアクリルベースを使うのが一般的だと思うが,色や形はさまざまなものがあるので,自分の好みで選ぼう。ピンバイスで足の裏と台座の両方に軸穴を開け,軸を取り付けてフィギュアを固定したら完成!
おお,なんてこった。秋山殿,マジ天使すぎる……。思わずあんこう踊りを踊りたくなる可愛さではないか! アアアンアン,アアアンアン。周囲に怪しまれないようにほかの仕事もほどほどにこなしつつ,筆者が人目を忍んで編集部の隅でこそこそ作ってもこの天使っぷりなので,この記事を読んで興味を持った人がじっくり作業すれば,もっと上手にできることはほぼ間違いない。ここまで駆け足気味で作成手順を紹介してきたが,これはあくまで一例であり,すべてこのとおりに行う必要はない。
作り方や塗装方法は人それぞれだし,十人十色の秋山殿があってもいいのだ。そして,それこそがフィギュア制作の醍醐味の一つでもある。何より,自分の手で好きなキャラクターを作り上げる楽しさと完成した時の喜びは,一度味わってみなければ分からない。キャラグミン 秋山優花里は非常に素直で組みやすいキットで,ほんの少しの塗装で素敵な秋山殿が出来上がるので,ぜひみんなも挑戦してみてほしい。さて,それじゃあ今日は早めに帰って,秋山殿と一緒にガルパンのBDでも見ようかなっと。
ボークス「キャラグミン 秋山優花里」
●おまけの秋山殿マジ天使ギャラリー
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