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App Annie主催の「Top Publisher Awards 2017」をレポート。上位52社のうち日本企業は15社,任天堂が初のランクインを果たす
これは,年間を通してアプリ市場の成長に大きく貢献をしたアプリ提供企業を表彰する催しだ。通年でのアプリ収益額における世界トップ52社をトランプカードに掲載する形で2011年からはじまり,2015年からは表彰式を実施,今年で3回めを迎える。今回は収益額だけではなく,日本カテゴリ別のMAU(Monthly Active Users,月間アクティブユーザー数)ランキングが新設された。
本稿では,日本を代表する“トップパブリッシャ”が一堂に会したイベントの模様をお伝えしよう。
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全世界の消費支出額は2015年比で2倍以上に
最も成熟した市場は日本と韓国
イベントの冒頭では,App AnnieのCEO バートランド・シュミット氏が登壇し,2017年のアプリ市場を総括する講演を行った。まずは,全世界におけるダウンロード数や収益額など“数値”に関する話題からだ。
あらゆる消費活動に必要不可欠なモバイルアプリだが,2017年のユーザーのアプリダウンロード数は1750億に及び,2015年に比べて60%増となった。ユーザー単位で換算すると,1人のユーザーが毎月新しいアプリを2本以上ダウンロードしたことになる。なお,日本単体で見ると25億ダウンロードで全世界の1.4%ほどだ。
また,1日あたりのアプリ利用時間は,2015年から30%増の3時間。日本はこの世界平均値よりもやや高い数値が出ている。
1か月あたりの平均アプリ利用本数は40本,そのうち各々のスマートフォンに80本のアプリがダウンロードされている。日本では,利用数35本に対して100本ものアプリがダウンロードされており,潜在的な利用機会(チャンス)があるとも言えよう。
そして,2017年のアプリストアを介したモバイルへの消費支出額は全世界で860億ドル(約9兆3000億円)に達し,成長率は2015年から2倍以上増えた105%増を記録している。日本や北米など成熟市場における収益力の向上はもとより,何よりけん引したのは成長著しい中国市場である。なお,これらの数値には広告収益や外部決済は含まれていない。
上位52社のうち日本企業は15社がランクイン
非ゲーム部門のトレンド創出にも注目
2016年に引き続きTencentが首位を維持し,前回3位のNetEaseが2位にランクイン。両社ともに収益の中心は中国国内であり,中国市場の大きさが見て分かる。このほか,「リネージュ2 レボリューション」(iOS / Android)が大ヒットを記録したNetmarbleが,前回の9位から3位に急上昇。なお,上位52社のうち日本企業は15社だった。
上位52社の国別の内訳。最もランクインしたのはアメリカで16社にもおよぶ。次いで日本から15社(2016年は17社だった),中国から11社,韓国から4社となり,アジア圏の強さが際立つ |
今回ランクインした日本企業15社のリスト。大半が2016年よりランクインしている企業ばかりだが,ここに来て任天堂が満を持して登場した。2016年12月リリースの「スーパーマリオ ラン」(Android版は2017年3月リリース)をはじめ,2017年2月リリースの「ファイアーエムブレム ヒーローズ」(iOS / Android),同年11月リリースの「どうぶつの森 ポケットキャンプ」(iOS / Android)と,同社が誇るIPタイトルが大ヒット。一方,ソニー(アニプレックス)の「Fate/Grand Order」(iOS / Android)は,2017年8月・9月に全世界で収益1位を記録した |
以下は,日本のアプリ市場に限定したカテゴリ別のランキングだ。大手企業だけでなく,2017年に急成長を遂げたベンチャー企業のアプリが複数ランクインしている。ゲームに関する内容ではないが,どれも市場のトレンドを掴んだ実績あるアプリのため,ぜひチェックしてほしい。
当日は,受賞した日本のトップパブリッシャおよそ30社から70名以上が来場。会場では,Top Publishers of 2017にランクインした日本企業15社のうち,ガンホー・オンライン・エンターテイメント,コロプラ,任天堂,ミクシィを除いた11社の代表へ,シュミット氏から記念の楯が贈られた。
●7位:バンダイナムコエンターテインメント バンダイナムコエンターテインメント NE事業部 第2プロダクション ゼネラルマネージャー 手塚晃司氏(写真右) |
●8位:ソニー(アニプレックス) アニプレックス デジタル事業グループ 本部長 三鍋直貴氏(写真右) |
●10位:LINE LINEマンガ編集チーム マネージャー 村田朋良氏(写真右) |
●13位:スクウェア・エニックス スクウェア・エニックス 第8ビジネス・ディビジョン ディビジョン・エグゼクティブ 広野 啓氏(写真右) |
●16位:サイバーエージェント Cygames 取締役 近石愛作氏(写真右) |
●17位:コナミデジタルエンタテインメント コナミデジタルエンタテインメント プロモーション企画本部 本部長 堀内公博氏(写真右) |
●26位:DeNA DeNA ゲーム・エンターテインメント事業本部 Japanリージョンゲーム事業部 専門役員・プロデューサー 佐々木 悠氏(写真右) |
●28位:ネクソン ネクソン モバイル事業本部 本部長 金起漢氏(写真右) |
●35位:グリー グリー 取締役 上級執行役員 Wright Flyer Studios事業統括 取締役 荒木英士氏(写真右),上級執行役員 Pokelabo・Asia事業統括 前田悠太氏(写真中央) |
●38位:セガサミーホールディングス セガゲームス 取締役 CSO 岩城 農氏(写真右) |
●52位:KLab KLab 代表取締役社長 真田哲弥氏(写真右) |
当日は受賞者を代表して,バンダイナムコエンターテインメントの手塚晃司氏が喜びを語った。手塚氏は,今回の収益部門ランクインの要因に際して,「ONE PIECE トレジャークルーズ」(iOS / Android)の3周年施策が過去最高を記録したことを挙げた。また,海外事業の成長も著しく,「ドラゴンボールZ ドッカンバトル」(iOS / Android)は世界22か国でセールスランキングの首位を記録したとのこと。
しかし,決して手放しで喜べるわけではなく,今回のTop Publishers of 2017にランクインした海外企業の一覧を見て,手塚氏は「世界には競合がまだまだいる。今後も友情・努力・勝利で頑張っていきたい」と決意新たに抱負を語り,受賞の挨拶を締めくくった。
開発費の高騰,海外デベロッパの台頭,プレイヤーの高ARPPU(Average Revenue Per Paid User,有料ユーザー1人あたりの平均収益)化など,さらなる激動の一年が予想されるゲームアプリ市場。群雄割拠の市場で生き残る術は皆目見当はつかないが,数値やトレンドを推し量るのは例年以上に求められるかもしれない。
大手企業顧客数900社,登録ユーザーは大台の100万超えを果たしたApp Annieだが,現在はカスタマーサポートの強化やコミュニティ支援,アカデミーの立ち上げなど,世界最高水上のサポートを提供するために余念がない。同社とゲームアプリ事業者による歩みによって,2018年,まだ見ぬアプリの創出,既存アプリの急成長に期待せざるを得ない。
App Annie公式サイト
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