プレイレポート
[E3 2013]PlayStation 4の最新テクノロジーが可能にする未知の体験「The PlayRoom」。プレイレポート&直撮りムービーを掲載
PS3用モーション入力デバイスとして登場した「PlayStation Move」は,Xbox 360のKinectほどはヒットしなかったため,PS Cameraで仕切り直しを図ると思われていたが,その予想は外れた。ただ,一般ユーザーからは「価格が安くなる」という理由で賛同の声が多いようだ。
PS Cameraを同梱しない理由について,SCEJAのプレジデント 河野 弘氏はインタビューで「PS4が発売される年末時点では,魅力的なソフトが取り揃えられないから」と明かしている(関連記事)。今回,紹介する「The PlayRoom」は,その意味ではかなり魅力的だ。実はこのソフト,PS Vitaの人気作「GRAVITY DAZE」の開発スタッフも参加しているプロジェクトであり,業界内外からも期待を寄せられている。
The PlayRoomとそれを支える根底技術
ソニー・コンピュータエンタテインメント・ワールドワイド・スタジオ,ジャパンスタジオのNicolas Doucet(ニコラス・ドゥセ)氏。本作のプロデューサーを務める。日本で働いているだけあって日本語が堪能だ |
まずは簡単に,本作に必要なPS Cameraについて整理しよう。
PS CameraはPS4専用の周辺デバイスで,PS3における「PlayStation Eye」に近い位置づけだ。PS Moveからのモーション入力を実現したり,DUALSHOCK4の前面にあるライトインジケータ(ライトバー)を認識する役割を担っている。ちなみに,2013年2月のPS4発表時点では「PlayStation 4 Eye」だったが,今回のE3では「PlaySation Camera」と名称が変更されている。
PS Cameraの特徴は,2眼カメラ構成となっていることと,撮影フレームレートが最大240fpsとなっていることだ。
2眼構成は,撮影情景から立体的なジオメトリ空間を把握するため。PS Vitaのカメラは,映像から特徴点を抽出し,PS Vitaそのものを動かして得られる特徴点の時間方向の動きから,カメラの前のジオメトリ空間を把握する仕組みだが,設置するPS Cameraではそうもいかないので2眼構成としたのだろう。
撮影フレームレートが高いのは,もちろん速い動きを認識するのが直接的な目的だが,撮影するフレームごとに時分割的に露出レベルを変化させることも可能になる。この撮影方式を用いることで,暗い部屋でも,明るい部屋でも,あるいは照明条件が突然変わっても的確にカメラ前の情景を把握することができる。ちなみに,PS Cameraはバス速度の制限などで撮影フレームレートが上がると,撮影解像度が下がってしまう特性がある。具体的には,60fpsでは1280×800ドット,120fpsでは640×400ドット,240fpsでは320×192ドットとなっている。
実際にThe PlayRoomを体験
画面に登場するのは,小さなロボットたちだ。造形はピクサーのCG映画「WALL-E」に登場するEVEに近い。
最初に見せてもらった「AR BOTS」は,DUALSHOCK4の内部に住み着いているロボットと遊ぶミニゲームだ。
DUALSHOCK4を手前にフリックすると,内部の様子が画面に表示され,30体近くのロボットがいることが分かる。すでに「遊び」は始まっていて,ロボットの頭上には○△□×ボタンや方向キーが確認できる。ボタンを押すと,彼らの部屋の天井にあるボタンが動いてピカッと光る。ロボットたちは驚いたり,見上げたりと,なんとも可愛らしい仕草を見せてくれる。
ここで意地悪をしてみる。DUALSHOCK4を左右に傾けたり,激しく振ってみると,当然,彼らの部屋も左右に傾いたり,地震のように揺れるのだ。突然の天変地異にざわめきながら逃げ惑ったり,倒れないようにバランスを取ったりと,ロボットたちは思い思いの行動を取る。その慌てふためいている声はスピーカーから,ドタバタと逃げ惑っている足音は振動としてDUALSHOCK4から伝わる。
DUALSHOCK4のタッチパッドに指で触れると,彼らの部屋の天井に光が差し込んだ。「うわぁぁ……」と感嘆の声をあげて,その光をじっと見つめるロボットたち。この時点で,ロボットのことが好きになってしまうはずだ。
そのまま,タッチパッドをフリックすると,ロボットを現実世界の部屋に召喚できる。人の顔を認識してプレイヤーを見上げたり,不思議そうに現実世界を見回したり,ここでもバラバラの行動を取っている。プレイヤーが手を振ると,これに気がついて手を振り返すロボットもいるが,無視しているロボットもまだまだいる。
またしても意地悪をしてみた。足を伸ばしてロボットたちがいるあたりを蹴ってみると,キックされたロボットが吹っ飛んだり,転んだりしている。これでプレイヤーの存在を無視していたロボットも,こちらに意識を向けてくれるわけだ。
一通り遊んだ後はロボットたちの回収だ。これはDUALSHOCK4のボタンを押して,掃除機のようにロボットを吸い込んでいく。
技術的な補足をすると,DUALSHOCK4の位置はPS Cameraが撮影したライトバーにより判断している。
部屋の床や奥行きなどの構造は,特別なキャリブレーションを行っているのではなく,2眼カメラで撮影した2つの情景映像から自動認識を行っている。プレイヤーの動きについては,Eye Toyのように映像全体中の部分モーションを認識することで実践している。
次に見せてもらったのは,その昔,ATARIが最初期のテレビゲームとしてリリースした「PONG」を,現代風にアレンジした「AR HOCKEY」だ。
フィールド内を飛び回る球を,パドルで跳ね返すエアホッケーのようなゲームだが,パドルの上下移動はDUALSHOCK4のタッチパッドで操作する。さらに,DUALSHOCK4を上下左右に動かすと,ゲームフィールドが伸びたり縮んだり,あるいはうねらせることもできる。
跳ね返したボールが相手に向かう間に,DUALSHOCK4を動かしてフィールドを変形させると,ボールの軌道が予測不能になるというわけだ。あまり調子に乗りすぎると,今度は跳ね返えってきた球を見失うことになるので,シンプルながらも楽しい。
ゲーム終了後には,DUALSHOCK4を振ってシャンパンシャワーを堪能できるという演出も楽しめる。
最後に紹介されたのは,The PlayRoomのガイド役「A5081」と交流する「Play With A5081」。ちなみに,A5081という名称は「ASOBI(あそび)」に似た形状の数字を当てはめてロボットっぽくしたものだという。
空を飛んでいるA5081をくすぐったり,なでたりすると,嬉しそうなリアクションを返してくれる。逆に叩きまくると,それまで温厚だったのが,目を真っ赤にして反撃を仕掛けてくる。時々,反撃する相手を間違えたりする「ゆるさ」もまた可愛らしい。
A5081の攻撃が命中すると,その効果はプレイヤーの動きにリアルタイムに追従する。例えば,ビームで顔が凍ってしまうと,氷の3Dグラフィックスに覆われて,顔を動かすと氷の塊もその動きに付いてくる。
こうした一連の表現には,ちゃんと顔認識が行われており,エフェクトグラフィックスは的確に顔に対して合成されている。
この顔認識を逆手に取って,「いないいないばぁ」をA5081に仕掛けることも可能だ。プレイヤー全員が手で顔を覆い隠すと,部屋に人がいなくなったと勘違いしてA5081はオロオロしてしまう。そして,手をどけると,人が現れたことに無邪気に喜ぶのだ。
このほかにもさまざまなミニゲームが用意されており,実験的なプロジェクトの割には完成度が高く,シンプルで楽しい。ぜひともPS Cameraのバンドルソフトとして提供してほしいものだ。
4GamerのE3 2013特設ページ
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