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次世代高速無線LAN「Wi-Fi 7」がいよいよ日本でも利用可能に。Wi-Fi 6Eより最大5倍速く,遅延は半分以下に
Wi-Fiにおける6GHz帯の利用は,2022年9月に実施された電波法施行規則の改正により可能になっていた。従来の規則では,Wi-Fi 6Eを前提に160MHzの帯域幅による通信が利用可能だ。一方,無線LAN技術の規格化団体である「Wi-Fi Alliance」が2024年確定を目標に策定を進めているWi-Fi 7では,最大320MHzの帯域幅による通信が規格に盛り込まれる。そのため,日本でWi-Fi 7を利用するためには,電波法施行規則の改定が必要だった。それが2023年12月22日に施行されたというわけだ。
細かい話をすると,Wi-Fi 7のベースとなる規格「IEEE 802.11be」が確定するのが2024年6月の予定で,Wi-Fi Allianceによる認証が始まるのは,その少しあとというスケジュールだ。つまり,正式策定前に日本でもWi-Fi 7の利用が解禁されたという形になる。
今回の解禁に合わせて,国内の無線LANアクセスポイントメーカーでは,アイ・オー・データ機器,エレコム,バッファローが,Wi-Fi 7対応製品を2024年春に製品化すると予告している。また,既存製品でも,国内向けにWi-Fi 7機能を無効化して出荷しているものがあるが,これらも順次開放されていくだろう。
Wi-Fi機器の導入を検討しているゲーマーは,Wi-Fi 7対応製品が登場するまで,少し待ったほうがいいかもしれない。
Wi-Fi 7の利点は高速化と低遅延化
Wi-Fi 6Eに対するWi-Fi 7の利点は,まず,通信速度がWi-Fi 6Eの最大9.6Gbpsから,その約5倍となる最大48Gbpsへと高速化することだ。この速度で通信可能なのは,320MHzのチャンネル帯域幅をフルに使って,なおかつ条件がいい場合に限られるが,大容量のデータを従来より短時間で転送できるようになると理解すればいい。
それに加えて,従来のWi-Fiでは2.4GHz,5GHz,6GHzという3バンドのいずれかひとつで通信を行うが,Wi-Fi 7では,異なるバンドをまたいで接続する「Multi-Link Operation」(MLO)を利用できるようになる。
それに加えて,バンド中にノイズや混信などで利用できない帯域があっても,その帯域をまたいでバンド全体を使用する「Preamble Puncturing」という機能も利用できるようになるという。これらにより,従来よりも広帯域での通信が可能になるわけだ。
広帯域化による通信の高速化以上に,ゲーマーにとって見逃せないのは遅延の低減だろう。Wi-Fi 6/6Eの遅延は,おおむね20ms以下とされているのに対してWi-Fi 7では10ms以下,最小1ms以下にできるとされている。これにより無線LAN経由でのネットワークゲームも,遅延を大きく減らせそうだ。Wi-Fi 7からは,「eスポーツもWi-Fi」というスタイルが定着するかもしれない。
また,増え続けるWi-Fiクライアントに対応する様々な技術が盛り込まれているのも,Wi-Fi 7の特徴だ。
たとえば,Wi-Fi 6では,端末ごとに条件の良いサブキャリアを割り当てて時分割を行い,効率的に複数の端末と通信を行う「直交周波数分割多元接続」という技術が導入された。端末に割り当てるサブキャリアを「Resource Unit」(RU)と呼ぶが,Wi-Fi 6/6EではRUの割り当てに柔軟性がなく,端末が増減したり移動したりすると,未使用のRUが生じて利用効率が低下する問題がある。それに対してWi-Fi 7では,RUの割り当てを柔軟に行う「Multi-RU」という仕組みが盛り込まれ,RUの利用率が上がるとのことだ。
さらに,複数のアンテナを端末に割り当てて,効率的に通信を行う「Multi User MIMO」(MU-MIMO)も,Wi-Fi 6/6Eの8x8から16x16に強化される。これにより,最大16本のストリームを同時に送受信できるようになるほか,従来よりもきめ細かなビームフォーミング(※端末に電波を集中させる手法)が可能になる。端末が増えても,従来より安定した通信ができるようになるわけだ。
次世代無線LAN規格「Wi-Fi 7」はいつごろ利用可能に? IntelがWi-Fiの現状と今後の見通しを語る
2022年7月27日,Intelがメディア向け説明会を開催し,次世代無線LAN規格「Wi-Fi 7」の進捗状況や,日本国内での認可が待ち望まれている「Wi-Fi 6E」の普及状況などを紹介した。
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- ライター:米田 聡
電波法施行規則等の一部を改正する省令(令和5年総務省令第95号)の概要
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